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Utopia Endless Online~音ゲーマニアがいくVRMMORPG  作者: 赤井レッド
欲を使役し欲に呑まれた英傑よ
15/138

強欲ヨ全テヲ喰ラエ 漆


「ご馳走様ー」


「あら、今日は早いのね?」


「まあね」


食べ終わった食器をシンクに持っていくと、冷蔵庫から秘蔵のエナジードリンクを取り出し、自分の部屋に向かった。


部屋に入ると持ってきたエナジードリンク、ALIEN:Transcendecseの口を開ける。一気に飲み干すとやはり感じるこの高揚感。それは通常のALIENのそれを凌駕していた。


ALIENシリーズの三作品目、ALIEN:Transcendecse。日本語に直訳すると超越する、という意味だったと思うが、このALIENの効き目は尋常じゃない。


まず飲んだだけで体感だが集中力が長時間向上し、眠気その他諸々を吹き飛ばし、強い高揚感を与えてくれる。本当に違法な物が使われていないのか気になって、昔何度も商品表示を読んだことを覚えている。


「さて、準備完了だ。やるか」


一応始める前に麟に連絡をした後ヘッドセットの電源をつけ、UEOを開始した。


~~~~~~~~~


「お帰りなさいませ、GENZI様。GENZI様は本当にトラブルに巻き込まれやすい体質のようですね」


「どういうことだ?」


「いえ、何でもございません。それではすぐにプレイ致しますか?」


「ああ、頼む」


「かしこまりました、それではご武運をお祈りしております」


いつも通りノブを回してドアを開け、その中に入った。


~~~~~~~~~


いつも通り扉を抜けてゲームを始めたが、エアリスが言っていたことが気になっていた。どうしてエアリスは俺のことをトラブルに巻き込まれやすい体質、と言ったのだろうか。まるで俺のプレイを見ているかのように。


俺は頭を振って考えるのを止めた。すぐに余計なことを考えてしまうのは俺の悪い癖だ。これからユニーククエストに挑むのだ、こんなことを考えている場合じゃない。


ヴィートの広場で少し待っていると、数分と経たずに麒麟が現れた。


「おっすー!」


「おっす」


「俺は準備完璧だぜぇ」


「俺もだ」


「それじゃあユニーククエスト攻略に向かいますか!」


そのまま歩いて荒城に向かおうとする麒麟の腕を掴み、止めた。


「待て、ユニークの前に俺とお前のステータスとスキルを確認しておこう。それから戦闘の時の役割もな」


「了解、じゃあ俺から見せるねー」


麒麟から送られてきたステータスを確認する。


Player:麒麟

Gender:男

Job:介錯士

Clan:無所属

LV:65

HP:100

MP:200

STR:150

DEX:300

VIT:70

AGI:300

INT:80

MND:0【50】

LUC:50


Weapon:Left:古式短銃『零式』+5 Right:永愛歩兵銃『ロージュエリオット』

Helmet:灰鳥のトリコーン+2

Armor:ブラックキメラのジャケット+2

Gauntlets:ブラックキメラの手袋+2

Leggings:ブラックキメラのズボン+2

Greaves:ブラックキメラのブーツ+2

Accessories:装備なし:装備なし:装備なし:装備なし:装備なし


Skill


Active

Attack:『ファイア』『リロード』『チャージ』『オーバーチャージ』『バレットシェイク』『ユッドバレット』

Defense:『アクロバット』【二重回避】LOST

Magic:『バレットチェンジ』(フレイムバレット・アイスバレット・ウインドバレット・セイクリッドバレット・ダークネスバレット)『コンプレスバレット』

Buff・Debuff:『アクセラレート』『クイックリー』『ストレングスパワー』『闇の衣』


Passive:『銃の心得』『見切り』


「やっぱりMNDとスキルは失ったままか…」


「まあなくなったってもそこまで問題無いもので良かったよー」


「そうだな…そう考えるべきか。俺の方も見せるよ」


Player:GENZI

Gender:男

Job:羅刹

Clan:無所属

LV:70

HP:5

MP:50

STR:550

DEX:500

VIT:0【5】

AGI:300

INT:30

MND:5

LUC:0【80】


Weapon:Left:獄刀『不知火』 Right:血刀『狂い桜』

Helmet:結晶蝶の仮面+2

Armor:蛮竜の鎧+2

Gauntlets:蛮竜の籠手+2

Leggings:蛮竜の腿当て+2

Greaves:蛮竜の脛当て+2

Accessories:魔王の護符:装備なし:装備なし:装備なし:装備なし


Skill


Active

Attack:『一刀両断』『修羅の解斬』『スパイラルエッジ』『スピンスラッシュ』『ソードダンス』『羅刹 の救撃』『神判の裁き』

Defense:『転身』『トライアングルステップ』『舞踏』

Magic:『印』

Buff・Debuff:『ビーストハウル』『ウィンドスピリット』『インファイト』


Passive:『修羅の呪い』『羅刹の契り』『龍の血脈』


「うわぁ…やっぱりGENZIって脳筋なんだな。しかも紙装甲だし」


俺のステータスを見た途端ゲラゲラ腹を抱えて笑っている友人を見て、何がそんなに面白いのか自分には理解できなかったが楽しそうで何よりだ。


「昔どこかで聞いた名言なんだが、当たらなければどうということは無いってやつだよ」


「まあ実際いつもやってるしね」


「それで作戦なんだが~~~~~~~~~」


~~~~~~~~~


「よし、それでいこー!というわけで出発!」


話を聞くや否や走り出す麒麟を見て一抹の不安を感じたが、あいつはあれでちゃんと理解しているので大丈夫だろう。


後を追うように俺も駆け出し、辺境の町ヴィートを出発した。


『修羅の呪い』と『羅刹の契り』の効果で勝手にモンスターが集まってくるのはレベリングやドロップアイテム狙いの狩りをしているときには便利だが、今のように先を急いでいる状況では足枷にしかならない。


幸いこの付近のモンスターのレベルは低いので、近寄ってくるモンスターを手早く片付けつつ荒城を目指した。


~~~~~~~~~


「ふぃ~ようやく着いたな」


「悪いな、俺のジョブのパッシブ効果のせいで」


「いやいや、全然気にしてないよ。むしろレベリングの時とかにGENZIのおかげで効率よく狩れたんだしさ」


「…ありがとな…さあ行くか!」


「おう!」


玉座を動かし隠し通路を露出させると、迷いなく底の見えない縦穴に飛び込んだ。


前回は下に着いた時に気絶していたが今回はどうなるだろうか。


俺、麒麟の順に飛び込んだが今回は気絶することなく、普通に着地して、あの洞窟に到着した。


「ついに戻ってきちまったな…」


「ああ、それで『永光のオーブ』?はどうやって使うんだ?」


「何かボロ紙に書いてあった内容いわく、あのだだっ広い空間の一番奥にある祭壇に置けばいいらしいよ」


「え?ちょっと待て、それってつまりあのよく分からん敵の居る空間を通り抜けないといけないのか?」


「………つまりそういうことだってばよ…」


「マジか…」


麒麟がボロ紙をもう一度暗号と見比べながら読み返していると、何かに気が付いたようだった。


「あ!GENZI、何か音を立てなきゃ大丈夫みたいだぞ」


「マジ?じゃあやってみるしかないな…」


壁に沿ってゆっくりゆっくり、歩いていく。音を立ててはならないというプレッシャーと、前回体感したあの恐怖を感じながら暗闇の中を進んでいく。


「ゆっくり歩けよ…」


「GENZIこそ…」


一歩一歩に細心の注意を払いながら歩き続けていくと、あの呼吸音が聞こえてきた。


(奴の呼吸…!!)


段々と暗闇に目が慣れはじめた俺と麒麟は顔を見合わせると無言でうなずき、より一層集中し、精神を研ぎ澄ましていく。


「ハァァァァ…ハァァァ……」


進めば進むほど近づき、大きくなる音に俺達の恐怖心はさらに高まっていった。何てことは無いただの暗闇と呼吸音なのに、今まで生きてきた中で感じたこともない恐怖に身を震わせていた。


それでも俺達は歩みを止めなかった。どれだけ怖かろうと、どれだけ恐ろしかろうと、前へ前へと壁伝いに進んでいく。


少しずつ奴の呼吸音が遠ざかっていったかと思ったころ、どれほど進んだのかは分からないが右手に感じていたごつごつとした岩の感触が滑らかな手触りに変わった。


後続の麒麟にもその変化を何とかジェスチャーだけで伝えると、麒麟は何かに気が付いたように、ある一点を指差していた。


目を凝らしてその方向を見るが、俺には見えなかったので、近づいてみるとそこには俺達が探していた祭壇の姿があった。


「…!!」


麒麟も祭壇に近づくと、手には光輝く水晶玉を持っていた。そしてその水晶玉をそっと祭壇の上に置く。


すると、祭壇の方から順に壁際にあった松明に火が灯っていく。暗闇に包まれ、見えていなかった広大な空間の全貌が明らかになった。


その広い空間は何もなかった。ただ一つ、中央に存在する何かを除いて。


広大な空間の四方から伸びる巨大な鎖に手足を繋がれ、両膝を付いている人の見た目をした何か。奴に俺達は殺された。方法も分からぬまま、あっという間にやられ、気が付いた時にはリスポーンしていた。


「おい…お前たチ…早…ク…此処を…去レ!」


鎖に繋がれた男は苦しそうに俺達に叫ぶ。


「早…ク…あああぁぁぁあぁぁあぁぁ!!!」


まるでこと切れたかの如くぷつりと喋らなくなったかと思っていたら、次の瞬間には鎖を外れ、祭壇の方に向かって歩いてきていた。


「お前ら前も来たよな?懲りねえなぁ…ひゃはははははは!!」


先程までの男と同じ声。それなのに何故だろう、先程までの男の声からは窺うことのできた理性を欠片も感じない。今の男から聞こえる声は狂気に濡れているように思えた。


「GENZI!!すぐに『エリクシル』を奴に使え!!」


「使うって…ックソ!これでも喰らえ!」


ショートカット欄に登録しておいた『エリクシル』をその男目掛けて投げつける。


しかし…


「うお、いきなり何すんだよぉー。当たったら危ねぇじゃねぇか」


俺の投げつけた『エリクシル』は男に容易くキャッチされ、地面に叩きつけられて割られてしまった。中身の液体も地面に流れ出し、ユニーククエストのキーアイテムである『エリクシル』を失ってしまった。


「嘘だろ…」


「マジぃ…?」


「ひゃはははははは、残念だったな。せっかく用意してきたものが台無しにされちまって…」


男の姿が消える。


「…よぉ!」


現れたのは俺達の背後、これで終わり。奴はそう思っていたのだろう。その一言が喜色に満ちていた。


だが生憎、俺達もそう易々とやられてやるつもりなど毛頭ないのだ。俺は既にショートカットに新しく登録していた()()()()()()()を手に持っていた。


「お前が案外馬鹿で助かったよ!」


手に持っていた『エリクシル』を男の顔面目掛けて投げつけてやった。


「な…!?」


『エリクシル』の容器であるガラスの割れる軽い音と共に『エリクシル』が奴の顔面にぶちまけられた。


「あああああぁぁぁぁああっぁぁぁぁぁぁあぁあ!!!!」


獣のような雄叫びをあげて叫び、のたうち回る男の姿を横目に麒麟の方を見ると満面の笑みで男を見ていた。


「お前本当に性格悪いよな…こんな作戦まで考えてさ」


この作戦ではわざと俺が偽物の『エリクシル』を投げて外したように見せ、相手が油断して近づいてきたところで本物の『エリクシル』を投げつけるというものだった。


「GENZIもノリノリだったじゃ~ん。それにこれが一番確実に、かつ面白くあいつに当てられる方法だと思ったんだよぉ」


悪びれもせず答える麒麟に溜息をつきつつ地面でのたうちまわっている男の方へ向き直った。


「それじゃあ追い打ちといきますか…!!」


「ヒューッやっぱりGENZIのそういう所好きだよー!!」


俺は『不知火』と『狂い桜』を、麒麟は『零式』と『ロージュエリオット』をそれぞれの手に握り締めた。


「お前たち…!!よくもやってくれたなぁ!!」


男は俊敏な動きでまたしても俺達の背後を取ろうとする。しかし、その行動は俺達の目に確かに映っていた。


「早い…!だけど見える!!」


「見えるっていうなら、避けられでしょ!!」


それぞれ左右に回避することで奴の攻撃を避ける。


俺達が今いた所にクレーターが出来ている。少しでも判断を誤れば死んでいた。


そして今の攻防で分かったことが二つある。


一つ目は確かに『エリクシル』の効果はあり、奴が弱っていること。二つ目は奴の攻撃方法だ。


奴の攻撃方法、恐らくそれは影を媒介にして使う魔法のようなものだ。今一瞬だったが影から伸びた触手のようなものが見えた。


前回ここに来たときはこの空間は暗闇に包まれていた。それはつまり、巨大な影があるのと同じこと、奴はどこからでも攻撃を仕掛けることが出来たということだ。しかし今はどうだろう。


『永光のオーブ』を祭壇に置いたことによって、暗闇は無くなり、影と呼べるものは俺達の影くらいなものになった。


二つのキーアイテムによる二重の弱体化。その過程を踏んでなお、この強さ。


やはりユニークモンスターは油断ならない。


「麒麟!こいつの攻撃手段が分かった!恐らく影から触手のようなもので攻撃している!」


「了解!それじゃあ俺達の影に警戒しつつ、あいつにダメージを与えていけばいいわけだね!」


「俺がお前を一撃も喰らわずに(ノーミスで)倒してやる(クリアしてやる)…!!」


戦いの火蓋は切って落とされた。全ての準備は整い、万全の態勢で臨んだ戦い。勝利(クリア)するのはGENZI達か、それとも謎の男か。


ユニーククエスト『強欲ヨ全テヲ喰ラエ』


GAMESTART。


本日はやる気が起きたのでもう一話投稿させていただきますので良ければそちらも楽しんでください。(*- -)(*_ _)ペコリ

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