強欲ヨ全テヲ喰ラエ 肆
ここにきてGENZIとレベル上げで各地を回っていた甲斐があったとしみじみ思わせれた。
『転移のスクロール』を使い転移した先はディバイン神聖国にある辺境の町だった。
辺りを見回しても村人達の姿は見えない。その時鐘の音がなった。
すると、教会から村人と思わしき人々がぞろぞろと列を作って出てくる。何をしていたのか気になったため一人の男性に話しかけてみた。
「すいません、今教会で何をされていたんですか?」
「そんなことも知らねえのか?ん?あんたこの国の人間じゃないのか。なら教えてやるよ」
何でもディバイン神聖国では正午になると教会に集まって礼拝をする仕来りがあるそうで、丁度今の鐘の音が礼拝終了の合図だそうだ。
(確か俺が手に入れなきゃならない何とかのオーブってやつも教会にあるんだっけか?)
特に手がかりもないので教会の人に話を聞こうと思い、村人達の波に抗い教会の中に入った。
「おや?見かけない顔ですがこの村の方ではありませんよね?どのようなご用件でしょうか」
穏和な表情で出迎えてくれたのは修道服を着た、年配の女性であった。
「実は少し探し物をしていまして。シスターは変わった教会をご存知ですかね?」
「変わった教会…ですか?えーっと…変わった…申し訳ありません。そのような教会は存じませんわ」
「そうですか。それじゃあ何か特別な物を祀っている教会をご存知ですか?」
「………申し訳ありません。やはり存じ上げません」
「分かりました、質問に答えて頂いてありがとうございます」
「いえいえ、貴方に運命神の加護があらんことを…」
さて、今の会話の中で一つ収穫があった。あのシスターは間違いなくオーブの事を知っている。
そう思ったのには原因がある。俺と話しているときに変な教会と言った時、それと特別な物を祀っている教会があるかと尋ねた時、シスターは目を逸らし、微動だにしなかった。
これこそが原因だ。俺は家庭の事情で少しばかりそう言ったことに精通している。嘘のサインを見逃すわけがない、ただシスターはNPCであるためそれが通用するとは限らないが。
知っていてあえてそれを隠した。つまり何か隠す必要があったということだ。
(そうとなれば、周辺から調べてみようかなー)
これまでの経験則からRPGではNPCとの会話をすることで、何らかのフラグが立つことが多々あることを知っている。なのでまずは村人に聞き込みをすることにした。
~~~~~~~~~
「はぁー………」
大きく長い溜息をつき、近くにあった石段に腰を下ろす。
「まさか、何一つ情報が出てこないとは…」
時刻は既に夕方、村人全員に聞き込み調査を実施したが結果は惨敗。手がかりと言えるものは何一つなかった。
途方に暮れていると、足下にボールが転がってきた。それを追って一人の男の子がこちらに近づいてきた。
「どうぞ」
男の子は緊張した様子だったので、優しく笑いかけてあげると、にこっと笑い返してくれた。
その男の子にはまだ話を聞いていなかったのでダメもとで尋ねてみることにした。
「ねえ君、君は変な教会のことを知ってたりするかな?」
「変な教会?」
「うん。お兄さんちょっと用事があってね、そこに行かなくちゃならないんだ。でもその教会の場所が分からなくって困ってるんだ」
「あ!僕知ってるよ!」
「ホント!それでどこにあるのかな?」
男の子はボールを片手に持ち替え、ある方向を指差した。
その指の先にあったのは、俺が昼間に尋ねた教会だった。
「え…?どうして君はあの教会がおかしいと思うの?」
「えっとね、僕、みんなが礼拝してる時にトイレに行きたくなっちゃったんだ。だから教会の中でトイレを探してたら本がたくさんある部屋に入っちゃったの。そしたら置いてあった本に躓いちゃって…」
「うんうん」
「そしたら本棚にぶつかったんだ。そしたらその本棚が回転したの!その先は下に続く階段があったんだけど、その時にシスターが後ろに居てね、こっちは入っちゃだめよって言うから戻ったんだ」
「そうなんだ~教えてくれてありがとうね」
優しく頭を撫でながらお礼を男の子に言った。
「うん!」
笑顔でうなずくと、手を振りながら走ってどこかへ行ってしまった。
「さて…俺も行動に移しますかねー」
まずは作戦を実行するために教会のすぐ近くの路地裏まで向かった。
路地裏に着くと機会を静かに待つ。
(俺にはGENZIみたいな音ゲーの才能は無いけど、自分でもFPSの才能はあると思うんだよなー)
俺がこの年でプロゲーマーになれたのは勿論理由がある。俺は別にエイムが良いのか、と言われれば別にそうでもない。むしろ他のプロゲーマーたちに比べれば劣るとさえ思っている。
ならなぜ俺が日本トップクラスのプロゲーマチームにスカウトされるに至ったのか。それは純粋に立ち回りが上手いからだ。
戦場でする銃声の音やミニマップに映る反応、そして家庭の事情で精通してしまった心理学を応用して相手の動きをほぼ完全に読み切ることによって、裏どり、待ち伏せ、etc…
こうやって敵をkillしていたから俺はチームメンバーたちから『神出鬼没』とよく言われたものだ。
そんなことを考えているとチャンスが到来した。
教会前の広場に誰も村人が居なくなるこの瞬間を待っていた。
急いで教会の扉を僅かに開き、体を滑り込ませるように中に入れると、すぐさま長椅子の後ろに隠れる。
長椅子から顔を少し出し、様子を窺うとどうやらシスターはいないようだった。この隙に、と思い教会の奥の部屋に入っていく。
(確かあの男の子は本がたくさんある部屋で隠し通路を見つけたって言ってよな?)
一つずつ、部屋を開けて確認していくが中々それらしい部屋は見つからなかった。本が置いてある部屋を探していると、後方から扉の閉まる音が聞こえた。
(まずい!)
音の遠さから考えて恐らく入り口の扉を僅かとはいえ開けっ放しにしてきたため、それをシスターが閉めた音と考えて良いだろう。
急いで近くにあった空の木箱の中に隠れる。
すると、この部屋の扉が開かれ、シスターが中に入ってきた。
扉を閉めると鍵をかけ、俺の入った木箱のすぐ近くまでやってきた。木箱の蓋の方に手が伸びてきたため、見つかると思ったが、シスターの手はそのまま壁面に置かれた。
するとシスターはレンガ積みの壁を押し、何かが動く音が聞こえた。
木箱の隙間からは見えにくいがシスターは壁があるはずの方に進んでこうとしたが、その瞬間。背後から何かが割れる音がしたため、シスターは急いで扉の鍵を開けると、小走りで音がした方向に向かった。
シスターが走り去ったのを確認してから、木箱から出る。
シスターが何かをしていた壁面を見るとそこには驚きの光景が広がっていた。何とあったはずの壁が消え、大量の本が詰まった本棚が置かれている部屋と繋がったのだ。
「マジか…」
過程はどうあれ、結果として探していた本がたくさんある部屋を見つけたので本棚を一つずつ押していくと、一つだけ回転するものを発見した。
そのまま隠し通路を通り階段を降りて先に進もうとすると、背後に人の気配を感じたため、後ろを振り向く。するとシスターが立っていた。
「貴方、何故ここに入っているのですか?」
「いえ、実はこの先にある物に用がありまして。それにしたってシスターさん酷いじゃないですか、何か特別な物を祀っている教会を知っていますか、と聞いたら知らないって嘘をつきましたよね?」
「申し訳ございません。ですが私にも守秘義務がございますので。それでは冒険者様はここでお帰りいただけますか?この先にある物を誰かに渡すわけにはいかないのです」
「そうはいきませんよ。俺もあのオーブが欲しいんです。ゼルキア王国のとある荒城の地下に封印されたモンスターを倒すためにね」
「…!?ある、モンスター…?」
「ええ、そいつを倒すためには秘境の魔女が作った『エリクシル』と『何とかのオーブ』が必要だとこのボロ紙に書かれていたのでね」
「それを見せていただけますか?」
「大丈夫ですよ」
ボロ紙をシスターに手渡すと、何かを理解したのか紙を返してくれる。
「分かりました、貴方が『永光のオーブ』を持っていくことを許可しましょう。ただし、この先の迷宮を踏破したらの話ですが」
すると目の前にウィンドウが表示される。
クエスト『永光のオーブを求めて』
クエストを受理しますか?
無論YESなので、承諾をタップする。
するとクエストを受注したことでフラグが立ったのか、シスターの話しが続いた。
「この先は巨大な納骨堂となっております。年々増える死者の亡骸を納骨するために増築を繰り返したことで、中は複雑になり、アンデッド系のモンスターが発生しており、私共ですら近寄れない状況となっております」
「そこを一人で突破すればその『永光のオーブ』は貰っていいってことですよね?」
「はい、その通りでございます」
「それじゃあ早速」
「あ、お待ち……!」
シスターが何か言おうとしていた気がしたが、急いでいたので気にせず走って奥に向かった。後になってシスターの話を聞かなかったことを後悔することになるのを今は知る由もない。
GENZI先輩とその仲間について語るスレPart1
1 名も無き冒険者 2047/04/29 20:48
このスレはGENZI先輩とそのお仲間さんについて語るためのスレである。
何を話そうと私は一向に構わん。
というかGENZI先輩の信者なので活発に話そうではないか。
2 名も無き冒険者 2047/04/29 20:49
GENZI先輩がヤバい奴なのは知ってるけど結局仲間の二丁マスケット銃ニキは誰なんだ?
3 名も無き冒険者 2047/04/29 20:50
確かに銃をあそこまで上手く使うプレイヤーは会ったことがないw
普通に人間離れしてるよね、あの黒い貴族服の人。
4 名も無き冒険者 2047/04/29 20:52
あの人のプレイヤーネームって確か麒麟だったよね?
どっかで聞いたことある気がするんだよなぁ…
5 名も無き冒険者 2047/04/29 20:52
え?麒麟っていうの?
6 名も無き冒険者 2047/04/29 20:53
>>5
何か知ってんの?
7 名も無き冒険者 2047/04/29 20:53
>>6
思い出したわ。
どっかで聞いたことあるなーって思ってたんだけど多分プロゲーマーだった気がする。
8 名も無き冒険者 2047/04/29 20:54
>>7
kwsk
9 名も無き冒険者 2047/04/29 20:55
同一人物かどうか分からないんだけど、某有名VRFPSで活動してる日本のトップクラスのプロチームが居るのよ。
そこのメンバーの一人がKirinっていうプレイヤーネーム使ってるんだよ。
10 名も無き冒険者 2047/04/29 20:56
>>9
ナイス情報。
ただそれだけだと断定は厳しいかな。
因みにGENZI先輩のリソースってあったりする?
11 名も無き冒険者 2047/04/29 20:57
知らん
12 名も無き冒険者 2047/04/29 20:58
僕GENZIってプレイヤー知ってますよ。別ゲーですけど。
13 名も無き冒険者 2047/04/29 20:58
>>12
何てゲーム?
14 名も無き冒険者 2047/04/29 20:59
>>12
教えるな。
これ以上GENZI先輩と麒麟氏の詮索はよそうぜ?
下手すると俺達までBANされかねないし。
15 名も無き冒険者 2047/04/29 21:00
>>14
そんなことでBANされるか?
16 名も無き冒険者 2047/04/29 21:01
>>15
既に前例があるんだよなぁ
17 名も無き冒険者 2047/04/29 21:02
異議なーし
18 名も無き冒険者 2047/04/29 21:03
それじゃあGENZI先輩と麒麟氏のことを俺達はこれからも暖かく見守っていくとするか。
19 名も無き冒険者 2047/04/29 21:03
ウィっす。
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「うわっお兄ちゃんメッチャ書き込まれてるし…」
「掲示板でこれだけ書かれてるとなると、やっぱり上位層のプレイヤーは絶対見つけに来るだろうなぁ…」
「はぁ…」
自分の事で妹が頭を悩ませていることを兄は知らない。
そうして知らぬ間に亜三が裏で動いてくれているのだがそれは別の話。