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Utopia Endless Online~音ゲーマニアがいくVRMMORPG  作者: 赤井レッド
ああ、剣虎よ!幾仟の剱と共に
118/138

音ゲーマニアが紅虎に誘われるようですよ

遂に1000000PV突破!!

皆様のおかげ目標を達成することが出来ました!

ありがとうございます!!

今後も出来る限り投稿していきますので、是非、読んでくださると嬉しいです。

(*- -)(*_ _)ペコリ



太陽が昇り、頂点に座した頃、GENZI達は再び山道を歩いていた。

隆起の激しい岩道や、傾斜の強い坂道、断崖絶壁ぎりぎりの小道。

様々な困難を乗り越え、歩き続けること早二時間。

仮想の身体とは言え、流石のGENZI達も精神的に参ってきていた。


「目的地まだぁ……?」

「もうすぐ着くはずなんだけどな……」


山道を歩きながら、麒麟が愚痴を零す。

現在GENZI達が向かっているのは、最後の四神が封印されているという【劔湖沼】。

GENZIがマップで確認する限りではそろそろ着くはずなのだが、一向に目的地に到着する気配が無い。


「あの……気になってたことなんですけど、さっきから同じ場所を行き来してませんか?」

「え……?」

「嘘ぉ?」


GENZIと麒麟は後ろを振り返り、次に辺りを見回した。

だが、二人の目に映る光景はどれも変わり映えのしない自然のみ。

都会で生まれ、都会で育った二人にはそれらを見分ける術はない。

そこに、一足遅れてぽてとさらーだが現れた。大杖に両手しがみつくようにしながら、ヨロヨロと歩いてきたぽてとさらーだは、GENZI達の姿を視界に入れるや否や、その場に座り込んだ。


「はぁぁぁぁぁ……もう無理だわ、ほんと……」


一人地面に腰を下ろすぽてとさらーだは、前方で三人が何やら神妙な顔をしていることに気が付いた。

何事かと思い、疲れた身体に鞭を打つとふらつく足取りで近寄った。


「皆怖い顔してどうしたの? こういう疲れた時こそ笑顔が大事だよー大事大事……。ほらーニコ~……」


そう言ってぽてとさらーだは笑顔を作るが、お前が言っても説得力が無いだろうとGENZIは心の中で感じていた。

場に冷たい空気が流れ、何とも言えない沈黙が続いたが、それを麒麟が破った。


「いや実はさぁ――」


あまりの歩く速度の遅さに、痺れを切らして先に進んでいた三人の元にようやく合流したぽてとさらーだに対し、麒麟が概要を説明する。

事のあらましを聞いたぽてとさらーだは少し考え込むと、体を引きずるようにして近くに置いてあった岩の方へ歩み寄った。

唐突な行動にGENZI達は困惑を隠せない。

ぽてとさらーだは岩に触れると誰にも聞き取れない程の音量で、早口に何かを呟くと岩に向けて大杖を振るい、コツンと先端を軽くぶつけた。

すると――。


「な、なんだ!?」

「うぉぉお?」


突如として、全員の視界がゆらゆらと揺らぎ始めた。

世界が歪んだかのような現象に、思わず吐き気を催した麒麟が口元を手で覆うほどだ。

GENZIやクロエもその場にうずくまり、視界の揺れに耐えきれず目を瞑るが、視界を塞いだとしても脳が直接揺さぶられているような感覚が二人を襲う。

しかし、それらの揺れは次第に勢い減衰させていき、遂には完全に消滅する。

未だに頭を揺さぶられる感覚を残しながら、GENZIはのっそりと立ち上がった。


「おい……なんだったんだよ……今のやつ」

「あー……ゴメン、まさか俺もここまで強力な結界が張られてるとは思っても無かった……うぷっ……」


うずくまったままの状態で、クロエはぽてとさらーだの発言の中に気になる単語が出てきたことに気付いた。


「ぽて、今結界って言った?」

「ああ、うん……。あ~そっか、皆には見えないんだよな……」


顔色を悪くさせたままのぽてとさらーだは、どうしたものかと頭を掻いた。

ぽてとさらーだに視線が集まっていく。


「えー……俺は第二職業(サブ・ジョブ)として精霊使い(エレメンタラー)になったわけなんだけども、精霊使い(エレメンタラー)になったことで世界を漂う精霊を見ることが出来るようになったわけ」


ふんふん、と全員が頷くと、一度話を切ったぽてとさらーだが再び口を開く。


「で、さっきから精霊の動き方がおかしかったんだよ。それで、精霊が集まってる地点が一か所だけあったから調べてみたら、どうやらここに結界が張られているらしいことが分かった。ただ、この結界は邪気みたいなものを感じられなかったから特に報告もせず歩いてたわけなんだけど……」


ぽてとさらーだの視線が泳ぎ、一点を見つめた。

つられるようにGENZI達がそちらへ眼を向けると、そこに広がっていたのは写真でしか見たことが無いような幻想的な光景。

辺りは深緑の木々に覆われ、GENZI達の目前に広がるのは大きな湖沼。

小さな湖のようにも見えるその水面からは、いくつもの葉の無い木が姿を見せ、一面に広がる青空を鏡のように反映している。

そして、湖沼の中央に位置する場所にはこれまで見てきたものと同一の巨岩が見受けられる。


「どうやら、ぽてさらが見つけた結界とやらはここを隠すためのものだったらしいな」

「そうですね」


眼前の光景に見惚れていると、思わず本来の目的を忘れかけてしまう。

はっと我に返ったクロエは、眼前の光景を眺めて素直な質問が出た。


「あの、四神を封印している岩が見つかったのはいいんですけど、どうやってあそこまで行くんですか?」

「「「……」」」


その質問に答える者は誰一人として居なかった。

巨岩までの距離は優に百メートルを越え、いかなGENZIと言えども跳んで届かせるなどという芸当は不可能だ。

麒麟は言うまでも無く、ぽてとさらーだに関しても都合よく船を作り出す魔法何てものは作れない。賢者の利点は様々な魔法を創造できるところではあるが、それにも制約がある。

その一つが物質を作り出せないということ。

つまり、現在GENZI達に巨岩まで辿り着く方法が無いということだ。


「泳いで渡るとかは?」

「止めといたほうが良いぞ……」


麒麟が苦し紛れに出した案も、即座にGENZIに切り捨てられる。

ぐぬぬ、と唸り声をあげる麒麟に、GENZIがため息交じりに説明した。


「さっきから、この湖沼の底からいくつかの馬鹿でかい水を掻く音が聞こえてくるんだよ。まあ、常識的に考えれば十中八九巨大モンスターだろうな」

「泳いで渡るのも駄目、か……」


全員が頭を悩ませている中、再び麒麟が「あ」と口を開いた。


「ならいっそ、あの岩壊しちゃえばいいんじゃねぇ?」

「そんなことはせずとも良い」

「!?」


唐突に増えた低い声音。

背後から掛けられたそれに、全員が一斉に振り返った。

そこに佇んでいたのは、朱く燃え上がる焔のような体毛を携えた巨虎。

突然現れたモンスターに驚愕の念を抱きながらも、流石と言うべきか、GENZI達は即座に陣形を組み武器を構える。

その様子をじっと見つめていた紅虎は、ゆっくりと目を伏せるとその場にしゃがみ込んだ。

何故そのような行動をするのか? 全員の脳裏に疑問が浮かぶと同時に紅虎は口を開いた。


「汝らと争う気はもとより無い。結界を解いてこの場に足を踏み入れたということは、私か、私が持つ封剱を求めて来たか」


落ち着いた物腰で、ゆるりと人語を話す紅虎の様子に一同は驚愕を禁じ得なかった。

これまでに戦ってきた四神は皆、こちらのことを視界に納めるや否や襲い掛かってきたし、人語を解しているようにも、人語を話すようにも思えなかった。

クロエの目前で腰を据えた紅虎は、視線で訴えかけてきていた。

GENZI達は顔を見合わせると、少し距離を取った位置でいつでも武器を取り出せる状況を作る。

代表として、GENZIが紅虎に応えた。


「俺達はあんたの持っている剱が欲しくてここまで来た」

「ほう、やはりか……して、何故だ」


紅虎はGENZIのことを探るように、鋭い眼光をさらに鋭くさせる。


「劔山脈の最も高い山の山頂に存在する剱神の封印を解くためだ」

「ふむ……」


少し考え込むような仕草を取ると、紅虎は間を置いてもう一つ質問をした。


「汝らは……同胞、我以外の四神とは会ったか」

「……ああ、でも、あんた以外の四神は全員俺達の姿を見るや否や、すぐに襲い掛かってきたよ……。それで全て……返り討ちにした」


この言葉がきっかけに、戦闘が始まるかもしれない。

そう考えながら、GENZIは紅虎の方へ視線を送るが、紅虎に戦う意思は一切見受けられなかった。

だが、尻尾をだらんとさせ、眉尻を下げる様子はどこか仲間の死を悲しんでいるようにも見えた。


「そうか……やはり奴らはもう……。感謝する、汝らのおかげで我が同胞は天命を全うすることができたようだ……。よかろう、朱薙のホォン、汝らに封剱を渡そう」


そう言うと、紅虎はどこからともなく取り出した、朱く燃え盛るような刀身を持つ、長大な薙刀を口に咥え、そっとGENZIの前に出した。

GENZIがそれを受け取ると、満足そうに立ち上がり、雑木林の方に向かってゆっくりと歩み始めた。

すると、どういうわけか、GENZI達の視界は再び歪み始めた。

先程のような違和感なく、自然と起こるその現象に不思議な感覚を覚えながら、GENZI達がその場に立ち尽くしていると、振り返った紅虎が最後に一言話した。


「……ティルグリース様は我と同じく無事だろう。だが、それも長くはもつまい、手遅れになる前にあの方のことを任せたぞ」

「それってどういう――」


言葉途中、まだ質問しようと考えていたところだというのにも関わらず、視界の歪みが一気に強まり、気が付いた時にはあの山道へと戻ってきていた。

GENZIは目を擦り上げ、思わず白昼夢でも見たのかと考えたが、自身の手に握られている長大な赤い薙刀が、先程の出来事が実際に起きたことであるという裏付けだった。


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