音ゲーマニアがLV上げをするようですよ 中編
Player:ぽてとさらーだ『賢者』
Gender:男
Tribe:森精族
Job:賢者 Ⅳ
Sub Job:精霊使い Ⅰ
Clan:異名
LV:103
HP:50
MP:900
STR:50
DEX:200
VIT:50
AGI:300
INT:900
MND:100
LUC:50
Weapon:Left:“全能魔導”【グリモワール】 Right:“世界杖”【ディザスター】
Helmet:知識王の王冠+15 MAX
Armor:妖精龍のローブ+15 MAX
Gauntlets:魔樹のグローブ+15 MAX
Leggings:魔導のレギンス+15 MAX
Greaves:魔晶のブーツ+15 MAX
Accessories:魔導の指輪:魔宝石の首飾り:四精の指輪:魔癒の指輪:不死鳥の耳飾り
Skill
Active
Attack:『』
Defense:『火』『火炎』『獄炎』『水』『凍水』『深海』『土』『大地』『地滅』『風』『疾風』『神風』『雷』『稲妻』『雷霆』『氷』『氷雪』『極寒』『光』『聖光』『闇』『暗黒』
Magic:『火』『火炎』『獄炎』『水』『凍水』『深海』『土』『大地』『地滅』『風』『疾風』『神風』『雷』『稲妻』『雷霆』『氷』『氷雪』『極寒』『光』『聖光』『闇』『暗黒』『癒』『天癒』
Buff・Debuff:『火』『火炎』『獄炎』『水』『凍水』『深海』『土』『大地』『地滅』『風』『疾風』『神風』『雷』『稲妻』『雷霆』『氷』『氷雪』『極寒』『光』『聖光』『闇』『暗黒』『癒』『天癒』
Passive:『魔法使いの心得』『英智』『大賢者』『魔導の極み』『妖精の加護』
Degree:『魔導王』『知識王』『妖精龍』『征蠍者』
表示がおかしくなったのではないかと疑うようなスキル欄。
だが、それは紛れもなく現実だ。
ぽてとさらーだのスキルは全て属性のみしか書かれていない。
普通はスキルに名前がついているものだ、しかしぽてとさらーだのスキルに名前は無い。
しかし、ぽてとさらーだはスキル欄には記載されていないスキルを文字通り無数に使いこなしている。
からくりはぽてとさらーだの第一職業にあった。
【賢者】の職業に就いた瞬間に手に入るパッシブスキル『大賢者』は術者のイメージによってあらゆる魔法を可能とするものだ。
それにより、【賢者】となったプレイヤーは一つ一つのスキルが必要なくなるために、属性という大きな括りでしか表記されないようになったのである。
「そういえば気になっていたんですけどいいですか?」
「……?」
GENZIがクロエから送られてきた仲間のステータスに目を通していると、肩越しに声を掛けられて張り付くように見ていた画面から目を離した。
「どうしてGENZI君は四次職にクラスアップしていないんですか? 条件は満たしていますよね?」
クロエの疑問はもっともであった。
GENZIを除く他三人は一様に四次職、つまりアップデート前の最高クラスの職業に就いている。しかし、GENZIだけは四次職にクラスアップする条件は整っているにも関わらず、三次職のままなのだ。
「あー、言ってなかったっけ? 実は四次職の選択肢の中に一つだけ条件が足りなくて解放出来ていないものがあるんだよ」
「四次職の選択肢の中に……ですか?」
「ほほ~う、面白そうな話してるじゃ~ん」
GENZIとクロエが横に並んで歩いていると、後ろから麒麟が声を挟んだ。
「因みに俺もアプデ前はそうだったんだけどさぁ、アプデ終わって見てみたら……。何と! 選べるようになっていたんだよ!」
「それって、アップデートによって条件が解放された……ということでしょうか?」
「いや、正確に言えば、多分違うと思う」
クロエの言葉をすぐにGENZIが否定すると、視線がGENZIに集まった。
「俺はアプデ前には見れなかった職業の解放条件が見れるようになってた。麒麟もそうだったんじゃないか?」
「ご明察ぅ、俺の場合は第一職業のLVが100以上であること、モンスター・プレイヤー・NPCを合計して殺害した数が十万を超えていることが職業の解放条件だった」
「まさに死神って感じだな……」
「勿論NPCは殺してないぜ?」
「プレイヤーは否定しないんですね……」
話が脱線し始めると、これまで我関せずを貫き通していたぽてとさらーだも会話に交じり始め、結局は四人で話し合うことになった。
「で、俺の職業の解放条件は全部で三つある。一つ、第一職業のLVが100以上であること。二つ、第二職業が夜叉であること。三つ、守護する何かを決めること」
「一つ目と二つ目の条件は分からなくも無いけど……」
「三つ目の守護する何かってのは範囲広すぎじゃねぇ?」
事実その通りだ。
GENZIは分からない点が未だ多く存在するために四次職にクラスアップしていない。
「っと……話してたら街に着いたな。それじゃあ俺はクエストの報告してくるわ」
GENZIが小走りで街中へと駆けていく背中を見送ると、クロエ達は街の外で待機していた。
草原の中程に存在する街、【リーゼ】。
青々と生い茂る草原が地平線の向こうまで続き、風に靡かれた草が嬉しそうに揺られている。
暖かな陽気と、頬を撫でる優し気な微風に思わずうとうとと意識が朦朧とし始めた頃、突然あがった叫び声に麒麟とクロエは飛び起きた。
「な、何事でしゅか!?」
「何だぁ!?」
飛び起きた二人と顔をあわせたぽてとさらーだは、すまんと謝ると少し興奮気味に口を開いた。
「聞いてくれ! ずっと喉元に引っかかって出てこなかったんだがついに思い出した! 前にフレンドから聞いた秘密の狩場を!」
寝落ちしそうになっていたことも相まって、麒麟とクロエが小首を傾げていると、丁度GENZIが戻ってきた。
戻って来るや否や麒麟とクロエが武器を抜き放っている様子が目に映り、思わず臨戦態勢を取るが敵の姿も音も見当たらず辺りを警戒していると、申し訳なさそうに頭を掻きながらぽてとさらーだが事情を説明した。
「なるほど、それで秘密の狩場っていうのはどこのことなんだ?」
次第に頭が覚醒してきた麒麟とクロエも交えながら次の狩場についてマップを見ながら確認していた。
「確か光芒帝国にある劔山脈の一角……だった気がする」
ぽてとさらーだがマップ上にピンを刺したのは、ゼルキア王国と光芒帝国の国境付近に聳える山脈だった。
「はっきりしないなぁ……」
「まあ、とりあえず行ってみましょうか?」
「そうだな」
短い話し合いの末、GENZI達は隣国光芒帝国へと向かうことに決まると、【転移のスクロール】を使用し、向かうべき街の名前を叫んだ。
「転移! 靛青!」
転移した先の転移広場から足を運び、ぽてとさらーだの案内に従って険しい山道を登っていく。
GENZIと麒麟は三度目の登山を噛み締めながら歩いていると、ぽてとさらーだが足を止めた。
「……多分ここだな」
ぽてとさらーだの前に広がっていたのは山脈の一角にぽっかりと空いた洞穴。
明かりが差し込まない奥は暗闇が立ち込めており、冷たい空気が漏れ出している。
GENZI達は陣形を整えると、洞穴の中へと足を踏み入れた。
「おっと、忘れてた」
ぽてとさらーだは右手に持った大杖でカツンと地面を鳴らすと瞳を閉じる。
「追跡せよ、光の源よ……。【ライト】」
ぼうっと白い光が一つ、二つ、三つと現れ、各々の元へと漂っていくと、GENZI達一人に一つの光が付いた。普通の【ライト】による光であれば、その場を漂い続けるだけだ。
しかし、【賢者】である、ぽてとさらーだが作り出した【ライト】は、対象を追尾する機能を持っている。
「便利だなぁ! コレ!」
「だろ?」
得意げな顔でぽてとさらーだがふふん、と鼻を鳴らすと戦闘を歩いていたクロエが立ち止まり、臨戦態勢を取った。
その様子を確認した残りのメンバーも同様に辺りを警戒する。
暗闇の中、水が滴る音に交じり、獰猛な獣の息遣いが洞窟に響いた。
「来るぞッ!」