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Utopia Endless Online~音ゲーマニアがいくVRMMORPG  作者: 赤井レッド
欲を使役し欲に呑まれた英傑よ
10/138

強欲ヨ全テヲ喰ラエ 弐

こんな自分の作品でもジャンル別ランキングに載ることができました。

これも偏に読者の皆様のおかげです。

今後もUtopia Endless Online~音ゲーマニアがいくVRMMORPGをよろしくお願いします(*- -)(*_ _)ペコリ


訂正 『明日の日没』~『今日の日没』


少しばかり不味いことになったかもしれない。


五輪之介から受けたユニーククエストを攻略するために向かった荒城の地下にあった謎の空間。そしてそこで見つけた人型のモンスターと思わしき何かに襲われた。


ここまでなら別に問題はないのだが、問題なのはその後だ。


俺達はその何かに殺され、リスポーンした。その時に俺はLUCとVITが0()()、麒麟はMNDが0になりスキルが一つ()()()()()()


「どういう原理か分からないが、あいつに殺されるとステータス、もしくはスキルを二つ消されると思っていいんじゃないか?」


「うん、そうだね…でもそうするとさ、あいつの攻略難易度ってバカみたいに高くなるよね?」


言われてみればその通りだ。ほぼ皆無と言っても差支えがないほどに暗く。闇が広がる広大な空間の中で、少しでも視界を広げるために松明を持つため、片手は使えなくなる。


さらにその状態でどこから襲ってくるかも、攻撃方法さえも不明な相手と戦ったらどうなるか?答えは勿論敗北あるのみだ。


「GENZI、多分だけど俺達は何か重要な要素を見落としてる」


「どうゆうことだ?」


「俺もあんまりやらないんだけど昔MMORPGをやった時があってね。その時に確かレイドボスって言われる複数のパーティーが集まって一体のボスに挑むっていうクエストをやったんだよ」


「それが今の状況と何か関係あるのか?」


「まあ最後まで聞けって、それでその時はレイドボスと戦う前に事前に準備をしていたんだ。詳細は省くけど結論からいうと、その事前準備をしないとレイドボスにダメージを与えられず、尚且つ相手の攻撃を一撃でも喰らうと即死っていう鬼畜ゲーになるんだよね」


「つまり麒麟が言いたいのはそのレイドボスの時のように何か事前準備を見落としているんじゃないか、ということか」


「その通り~、GENZIは確かユニーククエストをクリアしたんだよね?その時って予め何かを用意するとかはなかったの?」


「特になかったよ、俺の場合はゲームが始まった瞬間にユニーククエストに飛ばされたからな…」


「あー、成程ねぇ。それじゃあもう一回あの城を探しに行く?」


「そうだな、まずは出来ることをやってみよう」


「おー!」


荒城に出発し、二手に分かれ、城内をもう一度隅から隅まで探索していくが俺の方は特にめぼしいものは見つからなかった。


するとチャットが麒麟から送られてきたので内容を確認すると、今すぐ俺のところまで来てくれ、とのことだった。


ミニマップに表示される反応からおおよその位置は分かるので向かうと麒麟が少し興奮気味に詰め寄ってきた。


「GENZI!やっぱりあったよ!ほらこれ見て」


手渡されたボロボロの紙切れ、所々掠れていて何が書いてあるのか分からないが文字が書いてあるのは確かであった。


「これをどこで?」


「そこの本棚の本を片っ端から見て言ったら謎解きみたいになっててさ、それを解いたら俺が今立ってる床のタイルが外れてこれが見つかったってわけ」


「マジでよく見つけたな…」


呆れ半分、感心半分で麒麟を見ていると、このボロ紙に書かれている内容を既に解読していたのか、説明してくれた。


「この紙に書かれていたのは、暗闇を晴らす方法、それからボスっぽいあいつの弱体化方法だった」


「それ、そんな大事な内容が…流石だな麒麟」


「ドヤァ~、それはまあいいとして。どうやら暗闇を晴らす方法は、ディバイン神聖国にある、とある教会で保管されている何とかのオーブっていうのが必要みたい」


「それとボスの弱体化方法だけど、これはカトレア連邦の秘境に住む魔女が作ったとされる、万能の回復薬、『エリクシル』が必要って書いてあった」


ここ、ゼルキア王国から見て北と南の国、それぞれにキーアイテムがあるとなると少々面倒だが、これもユニーククエストをクリアするためならば仕方がないだろう。


「真反対に行かないといけなくて面倒だから、二手に分かれて行動しない?」


「別に俺は構わないけど、麒麟は大丈夫なのか?」


「これでも一応プロゲーマーだぞ?舐めんなヨ」


「そっか。なら二手に分かれて行動しよう。俺はカトレア連邦の方に、麒麟はディバイン神聖国の方に行くって事で大丈夫か?」


「りょうかーい、そしたら俺はもう行くよ。お互いにキーアイテムをゲットしたら連絡するってことで。じゃね~」


転移アイテム、『転移のスクロール』を使い、麒麟は一足先にディバイン神聖国へ向かった。俺もその後を追うように、麒麟が向かったのとは反対のカトレア連邦に向け転移した。


~~~~~~~~~


この前のレベリングで他国にも足を延ばしていて助かった。あれがなければ今頃歩いて国境の山脈まで向かっている頃だろう。


俺が転移したのは首都アルヴだ。俺は足早にアルヴから離れるように森の中に入った。


他国だからと安心はできない。俺がユニーククエストをクリアしたことはワールド全体へのチャットで発表されている。


「それにしても…やっぱり御伽噺に出てきそうな国、だよな」


思わず俺が口に出してしまうのもこの街を見れば分かると思う。町の中央にそびえ立つ巨木、ユグドラシル中心にそれを囲むようにして作られた首都アルヴ。


ここで見かけるNPCは人族ではなく、森精族(エルフ)ばかりで、生活の様々な所で魔法が使われている。空飛ぶ箒に跨って飛ぶプレイヤーもいれば、中央の噴水の水が妖精の形をとったり、ドラゴンの形をとったりしている。


名残惜しいが今ここにいるのは観光が目的ではないので、先を急ぐ。


麒麟いわく、秘境の魔女が創った『エリクシル』というのはプレイヤーが入手する手段はあるにはあるが、誰も手に入れたことはないそうだ。


まず、向かうべきなのはアルヴからさらに北上していったところにひっそりと建つ、秘境の魔女の家だ。これも麒麟に教わったことだが、秘境の魔女というだけあって魔女の家がある場所というのが変わっているらしい。


「お、ここだな」


そこには家はなく、ただ水溜まりがあるだけだった。


「確か…この水溜まりに白のアネモネを入れてから入ると…」


景色が一変する。周りにあったはずの木はなくなり、視界が晴れる。目の前には煙突から煙の登る一軒家があった。


本当にこのゲームは良く作り込まれている。ゲームにも関心するがそれ以上に初めてこの場所を発見したプレイヤーのことを尊敬する。


とあるクエストをクリアすると報酬として秘境の魔女の家がどこにあるのかを教えてもらえるらしい。しかしその場に向かうとあの水溜まりしかなく、初めプレイヤーたちはその情報を嘘だと思った。


だが、一人のプレイヤーが検証を続けた結果別のクエストの報酬で白のアネモネの花言葉と、昔秘境の魔女の家に行ったことがあるというNPCの情報を入手した。


それらを統合し、ようやくこの場所を見つけたらしい。ここを見つけた時は最高級回復薬を独占できると思ったことだろう。


まあそれは不可能だったようだが。


コンコンとドアを二回ノックする。


「どうぞ」


家の中から想像していた以上に若い声が聞こえ驚いたがそのまま中に入る。家の中は暖かな雰囲気で揺り椅子に腰かける魔女の後ろ姿見えた。


「私に何の御用かしら?」


「俺に『エリクシル』を譲ってくれませんか?」


「はぁ…一応聞くけど、どうして『エリクシル』が欲しいのかしら?」


「ある、モンスターを。ゼルキア王国のとある荒城の地下に封印されていたあるモンスターを倒すためです」


その時初めてこちらを向き直った魔女の姿に呆然としてしまった。魔女、というくらいなのだから皺まみれのおばあさんかと予想していたのだが、その魔女は二十代前半としか思えない見た目で、紫色の長い髪を下ろし、妖艶な雰囲気を醸し出していた。


「あなた、今何て言った?」


「俺はゼルキア王国のある荒城の地下に封印されていた人型のモンスターを倒すために『エリクシル』が必要なんです」


「それは誰から頼まれたのかしら」


「言っても知らないと思いますよ?」


「いいから言ってちょうだい」


「五輪之介です」


「五輪之介…やっぱりそう…だとしたらこの子が…あ、ごめんなさい。あなた名前は?」


「GENZIです」


「GENZIね、いいわ『エリクシル』を譲ってあげる」


「え、いいんですか?今までここに来たプレイヤーは話も聞いてもらえずに追い返されたと聞きましたが」


「ちょっと理由があるの。もちろんタダではあげないわよ?私の出した試練を乗り越えられたらあなたに譲ってあげる」


すると目の前にウィンドウ表示された。


クエスト『秘境の魔女の試練』

クエストを受理しますか?


もちろん、承諾をタップする。


「それじゃあ試練について…その前に、私の名前はレヴィア。レヴィって呼んでいいわよ。それとあまり私は堅苦しいのが好きじゃないの。だから敬語は止めて普通に話してくれるかしら」


「分かった。それでレヴィさん具体的に試練って何をすればいいんだ?」


「あなたに今回やってもらうのは…そうね、森の聖獣の内どれでもいいから手懐けて帰ってきたら合格にしてあげるわ」


「聖獣?」


「知らなかった?聖獣っていうのはこの森特定の箇所にいるモンスターのことよ」


「なるほど…それで手懐けるっていってもどうすればいいんだ?」


レヴィさんは白いてを二つたて説明してくれる。


「モンスターを手懐ける方法は二つあるわ。一つは卵から孵化させ育てること。もう一つはある程度知能のあるモンスターにしか通用しないけど、戦って力を認めさせることよ」


「分かった。試練の期日はあるか?」


「今が大体日が高くてお昼くらいだから、期日は今日の日没。それまでに聖獣を手懐けて連れて帰ってきたら試練は合格よ」


「了解、聖獣の場所が分からないから教えてくれたりとかは…」


「それは自分で見つけなさい、それも含めて試練よ。さあそれじゃあ行ってらっしゃい」


気が付いた時には既に魔女の家の姿はなく、近くには先程までなかった木々が乱雑に生えている。


「戻されたってわけか。さて、まずどこを探すかな…」


近くを見渡し最も高い木を探すと、軽快な動きで木を登り辺りを見渡す。


しかし、聖獣がいそうな雰囲気の場所は特に見つからず、ひとまず木を降りた。


次に考え着いたのはマップでそれらしい場所を探すことだった。結果からいうとこれも失敗に終わった。カトレア連邦は領土の殆どを木々で埋め尽くされている為全く分からなかった。


仕方がないので最終手段として森の中を駆け回ることにした。モンスターは集まってくるため、片っ端から切り捨てていく。


一時間程走っただろうか。その時整備された道に出た。すぐに森の中に戻ろうと思ったがあまり見ていて気持ちの良くないものを見てしまった。


行商らしき人物たちの荷馬車?を襲い、中の商品を根こそぎ奪っていく、プレイヤー達の姿を。


ここでこのまま無視して進むこともできる。だがそれをしたら俺は後悔するだろう。そう思った。


「なあ、あんたら何をしているんだ?」


「あ?見て分かんねえのか?金稼ぎだよ。新しい武器を買いたくてよ、急いで金を稼ぐ必要が出たからフレンドとこうやって金を稼いでるんだ」


「NPCの荷馬車を襲ってか?」


「そうだよ、悪いか?別に運営が禁止しているわけでもないんだ、俺達がいくらNPCから物を奪っても構わないだろ?」


「お願いします!!助けてください!この商品がなければ私は商会をクビになってしまいます…」


「はぁ……なあ、あんたら。この人にだって生活があるんだ。こんな金の稼ぎ方は止めて真っ当にモンスターを倒したりクエストをクリアして金を稼げよ」


「さっきからうるせえなぁ!!おい!コイツ先に殺すぞ!」


そのプレイヤーの一声に反応し、プレイヤーたちが俺のもとに続々と集まり出した。数は全部で八人。


円状になって俺を包囲しながら少しずつ距離を詰めてきている。


(見るからにアホ丸出しだったが、流石に簡単にやられてはくれないか。ひとまず相手の動き(リズム)を見させてもらおうか)


「オラァ!!」


男が後ろから斧を振りかぶってくる。それを横に移動して避ける。


「ふんっ!」


次は左に居たプレイヤーが槍で距離を取りながら三段突きを繰り出す。


これもまたスローモーション映像を見ているかのように見えたので僅かにバックステップして避ける。


順番に一人ずつが攻撃して俺を休ませない作戦だろうか。だとしたら失敗だろう。


明らかに初めよりも連携の練度が下がってきている。それにこんなに遅く攻撃して当たるはずもないだろうに、それだけ俺が舐められているということか。


動き(リズム)を覚えるまでもない。こんなものは難易度Easyだ。


「『ソードダンス』」


「なにっ!?」


「っぐ…ふ…」


「がぁっ!!」


「ごへっ!」


「うっっぷ…」


五連斬撃スキル『ソードダンス』。名前がカッコいいというのもあるが性能も中々のものだ。舞うように、剣で四方八方から相手目掛けて斬りつけるこのスキルは、汎用性が高くお気に入りだ。


そして、まだ敵はそれでも三人残っているので、追い打ちをかける。


「『スピンエッジ』」


「うがっ!?」


「ちょっまっ…」


「やめ……」


回転斬撃スキル『スピンエッジ』。これはその場で高速で回転しながら相手を斬りつけるスキルだ。雑魚MOBが大量に群がってきたときなどに重宝する。


別に何のことはなく殺してしまったがペナルティーは特にないんだと再確認したい気持ちでいっぱいだった。


「あ、ありがとうございます!!貴方様のおかげで私はクビにならずに済みます!」


「え、ああ。良かったですね」


「ええ!本当にありがとうございます!これをお持ちください」


手渡されたのは金属で出来たカードのようなものだった。


「これは?」


「それは我が商会のVIPカードでございます。それがあればうちの商会で様々なサービスを受けられると思います」


「そりゃどうも。あ、少し聞きたいんですけど、聖獣の居場所についてご存知だったりしませんか?」


「聖獣…でございますか?」


聖獣という単語を言った途端に商人の雰囲気が変わった。先程までの少しダメな商人といった雰囲気は微塵も感じさせず、鋭い眼光でこちら見ている。


「冒険者様はそれを知ってどうなさるのですかな?」


「実は秘境の魔女から聖獣を手懐けてこい、と言われたんですよ。そうすれば俺に『エリクシル』をくれるとも」


「ふむ…冒険者様にはお世話になったので教えてさしあげたいですが、それはできませんな」


「どうしてですか?」


「貴方は自身の欲のために聖獣を利用しようとしている。それは我等、聖獣を崇め守ってきた一家としては見過ごせぬことです」


「確かに…その通りかもしれません。でも俺もやらなくちゃならない理由があるんです」


「………」


ジッと、静かに。まるで商品を値踏みするかのような眼差しでこちらを見つめ、何かを決めたのか商人の雰囲気が緩んだのを感じた。


「見た所嘘はついていないようですし、貴方には恩もある。荷台に乗ってください。聖獣様のもとへ案内いたします」


「ありがとうございます!」


荷台に乗ると商人は倒れてしまっていた翼の生えた馬を起き上がらせると鞭を打った。


すると馬?の鳴き声と共に空を飛んだ。


「え?えぇぇぇぇぇぇええ!?」


突然のことに驚いた俺の声を聴き、商人が振り返る。


「どうかなさいましたか!?」


「い、いやだって空を飛んで…」


「何だ、そんなことでしたか。空を見渡してください」


言われた通りに見渡すと他にも空を飛ぶ翼の生えた馬や絨毯に乗った人々が見える。


「ここ、カトレア連邦は魔法で発展した国。この程度は当たり前ですよ」


ハハハと笑う商人に俺も苦笑いを返し、一つ質問をした。


「ちなみに俺達は今どこに向かってるんですか」


「首都アルヴですよ」


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