6話
「あ、暑い」
「おっ、そうだな」
「今年の暑さはおかしいって……」
「そうだよ」
「語録で返さないで?」
もううんざりするくらい暑い。
警報出るくらい暑いってどんだけだよ……。
「エアコンつけてほしい」
「予算の無駄」
「そうだけども……」
こんな何もしない部活が使う部室には勿体ないのは分かってるんだけどね。
暑いんだよ!
シャツがビチョビチョなんだよ!
気持ち悪いんだよ!
「替えのシャツ持ってくればよかった」
「脱げば? 確実に中身透けるけど」
「分かっててやらないよ!」
「じゃあ今だけ乾かしとば?」
え、いや、でも、そのためには上全部脱がなきゃいけないわけで……。
それは年頃の男の子としては恥ずかしいというかー。
………うん、キモい。
「末田くん」
「うん?」
「自意識過剰って知ってる?」
「もうちょっとオブラートに包もう?」
「はち切れた」
ヒドイ。
「それとも、見られる自信でもあるの? ナルシストめ」
「鉄のモヤッとボール投げるの止めない?」
「どちらかというと源泉垂れ流し」
拷問かな?
「あーもう! 分かったよ! 気にしません!」
「そうするといい」
羞恥心を捨てて堂々と脱ぐ。
案の定、シャツは汗でベタついて脱ぎにくかった。
ん?
「不破さん?」
なんか不破さんがこちらをガン見してる。
「どしたの?」
「割れてる……」
「そりゃ、家で筋トレしてるからね」
「末田くんのくせに生意気な」
「なんで!?」
なんか悪いの!?
「ギャップ萌えってこういう……」
「ちょっ、どしたの」
「不覚……」
「だからなんで!?」
「今日はもうカッターシャツ着なくていいよ」
「嫌だよ! 捕まるわ!」
裸の上にカッターシャツを着る。
なんか変な感触。
「………」
「あ、もう興味失せたのね」
「……そういえば」
「はいはい」
「もうすぐ夏休みだね」
そういえばそうだ。
「末田くん、補修はいくつあるの?」
「うん、赤点ある前提で言うの止めようか」
「え」
「なんで驚くの? なんで頭悪いと思われてるの?」
一応全教科平均点は超えてるのに。
甚だ遺憾だ。
「そういう不破さんは?」
「2つ」
「え?」
「数学、英語」
…………へ?
い、いやいやいやいや! それはおかしい! 絶対嘘だ! それ三教科中2/3やん! もう詰んでるやつやん!
「それは、何故に……?」
「勉強してません」
「………」
しろよ。
そう項垂れた僕を、不破さんは不思議そうに見つめていた。
この子、馬鹿だわ。