リベンジ
目の前に急に現れたのは――。ひと月も前に俺をふった憎き元カノの顔だった。
小さな個室の中、目の前に迫る元カノ――。いったい何が起きたのか!
俺の体をグリグリする。こそばい、こそばいって!
なんなんだよコイツは! 急に俺をふったくせに、なんで目の前に現れて俺を……?
――俺を片手で掴み上げ、腹や胸の辺りを巨大な親指でグリグリするのか――!
指圧マッサージか?
久しぶりに顔を見たが……なんか、痩せたというか、やつれたというか。
スッピンを見るのは初めてではないが、俺はこんな色気のない女に熱狂的に惚れてたんだなあ……バカバカしい!
一人暮らしを始めたみたいだが、トイレでうんこしながらスマホを操作していやがる! 誰も知らないからって下品なやつだ。
俺はこの女を一生、許したりはしない――。急に別れのメッセージをスマホで送ってきやがって、その後、俺からのメッセージを一切受け付けなかった――。既読にならなかった! 連絡も通じなかった!
のうのうと今、他の男とメッセージを交わし合っているのが――ガチでムカつく。
なぜ男と連絡を取り合っているのかが分かったかというと、メッセージが「俺」に送られてくるからだ――。
『今度いつ会える? 早く会いたいなあ』
……。
『今週は忙しいから無理』
『じゃあ、来週に会おうよ。楽しみにしてるよ♡』
虚ろな瞳のまま返信を考えている。
『ところでさ、今、何しているの?』
……。
『今からお風呂に入る』
『え! お風呂? いいなあ~! 俺も一緒に入りたいなあ~!』
……。
……こいつもムカつく野郎だと悟った俺は、メッセージを勝手に作成し、返信してやった。
『今、トイレで大きなうんこをしている最中なのよ。一緒に入りたいってお前、変態かよ! バーカ! クソして寝ろ!』
「――! ちょっと何よこれ! なんで急にこんな文字が現れるのよ!」
送信完了。へっへっへ、俺の仕業ですよ~。
お前に壮絶なフラれ方をした未練タラタラ男の悪戯っすよ!
『……おやすみ』
その文字だけが送られてきたのを表示する。ああ、なんかスカッとした!
俺を握る手が小刻みに震えている。顔が驚きの顔になっている。
――転生した俺は、
俺をふった元カノのスマホになっていた――