Case.1-3
「……担保を先にいただくという事は変わりありませんが、返済の条件がかなり厳しくなりますね。まず借入したその日が一度目の返済期限となりまして、以後は必ず1か月毎に返済しなければならない。完済まで一度でも滞る事が許されず遅れた場合すぐに担保の権利を失う。ちなみに利息はお客様の担保に含めてありますので、それだけは問題ありません。以上の条件での借入の限度額は、貴方様ですと……う~ん……70万円といったところですか」
提示された額の意外な大きさに男は驚いた。それだけあれば他社から借りている借金と飲み屋のツケを払ってもなおプラスになるからだ。店員は返済の条件が厳しくなるとは言っているが、利息がつかない事を引き換えにしてもかなり甘い。
「…………本当にそんなうまい話があるのか?他にも何かあるんだろう?」
「はて?言い忘れた事は……ああ、一つありましたね。問題の担保の件ですが、上限額をお伝えしている時点でこちらから指定させていただいています。ただご本人にはお知らせできないという規則になりますので、それだけはご了承ください。ちなみにこちらが借用書となります。全てご説明させていただいた通りの条件も明記してありますので、お好きなだけご覧になられたらよろしいかと。全ての条件を承知し、納得した上で借りるというのであれば筆記用具を置いていきますので、ごゆっくりどうぞ」
飲み物のお代わりをお持ちしますね、と席を立つ店員を後目に男はじっくりと隅から隅まで書類に目を通す。しかしどう読んでも店員が説明したこと以上の明記はどこにも見つからない。よくある小さい字で注意書きなども見当たらないのだ。
その時ふと男にある考えが浮かぶ。身分証明もいらないのなら住所や名前も適当にでっち上げてしまえば、金だけ手に入るのではないかと。ついでに腕時計も担保に入れれば、目隠しできるかもしれない……多少、不便にはなるが時間を知るだけならスマホだけで事足りる。
これならいけると確信を持って思わず笑みを浮かべていると、店員が飲み物のお代わりを持って戻って来た。




