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4-5 SNSと俺とFKCをめぐる冒険

 とあるSNSのやり取り。


〈ねえねえ……〉

〈《セヴェルス》が垢BANされたって……〉

〈本当なのですか???〉


〈事実らしいよ~〉

〈驚きましたね~〉

〈FKC公式のニュースリリースに上がっていましたから~〉


〈とうとうやっちまったな、《セヴェルス》!〉

〈いつか問題起こすと思ってた!〉

〈不正! 改造! インチキ!〉


〈あ~あ、有名プレイヤーだったのに……〉

〈でも《KoF》はどうなるんですかね……〉

〈いよいよ当日という時に……〉


〈垢BANの理由は迷惑行為らしいですね~〉

〈ほら、《ノーネーム》という名前で(ほう)(ぼう)を荒らしていた~〉

〈だからFKC運営の対処は妥当でしょうね~〉


〈運営は自分で自分の首をしめた!〉

〈《セヴェルス》は廃人プレイヤーだったのに!〉

〈優良顧客を切っちゃった!〉


〈ああ、《ノーネーム》=《セヴェルス》でしたか……〉

〈憶測では聞いていましたが、証拠があがったのですね……〉

〈そりゃ仕方のないことでしょう……〉


〈《闇神》さんとかものすごい迷惑行為を受けていましたしね~〉

〈でも、真の被害者は~〉

〈何といっても《殺戮舞踏会》の人たちですね~〉


〈確かに被害者だよね!〉

〈《殺戮舞踏会》は《KoF》を辞退するのかな!〉

〈ホント《セヴェルス》はどうしようもない悪玉!〉


〈まあ《ギルドマスター》が消えたんじゃ……〉

〈いくら《殺戮舞踏会》といえども……〉

〈戦えないような気がしますが……〉


〈これは推測なのですが~〉

〈きっと残ったメンバーで《KoF》を戦うと思いますよ~〉

〈何でも《セヴェルス》を通報したのはメンバーらしいので~〉


〈身内に売られたのか!〉

〈ひでえ!〉

〈いや《殺戮舞踏会》の浄化作用が機能したのか!〉


〈ああ……〉

〈だったら《サブギルドマスター》の人が……〉

〈そのまま《ギルドマスター》に昇格、で合っていますか……〉


〈おそらく、おそらく~〉

〈あの廃人集団ですからね~〉

〈《セヴェルス》だって数いるメンバーの一人ですよ~〉


〈あ、何か楽しくなってきたかも!〉

〈《殺戮舞踏会》の《サブギルドマスター》といったら!〉

〈ワールド《オメガ》民が大好きなあの人じゃん!〉


〈《神食いにゃん子》……〉

〈《神食いにゃん子》~〉

〈《神食いにゃん子》!〉


        ※        ※


 ワールド《ネビリム》にログインした俺はフレンドの状態を確認した。

《堕剣士・真剣優》はもちろん緑色のオンライン状態。

《神食いにゃん子》は赤色のオフライン状態になっている。


「どうしちゃったのかな~。にゃん子さん、最近ログインさえしていない。一番質問しやすいのがあの人なんだよな。ルナはレベルが離れすぎているから」


《神食いにゃん子》が最後にログインしたのは三日前のようだ。

 レベルがまったく上昇しておらず、これはかつてなかった異常事態である。


「もしかして私生活が忙しいのだろうか。だったら仕方ねえな。中の人は若そうだし、受験勉強とかかもしれないし」


 俺はチャット機能を立ち上げてメッセージを作成する。


〈《堕剣士・真剣優》さん、こんにちは~〉

〈おう!〉

〈いよいよですね!〉

〈なんだ、今日は応援に来てくれたのか!〉

〈当然じゃないですか! 応援しかできないので!〉

〈さんきゅ~!〉

〈今日は観戦しています。調子はどうですか?〉

〈もう絶好調よ! ウマい朝飯も食ったし!〉

〈よかったです!〉

〈あのさ、結婚の約束……〉

〈はい?〉

〈あれって本気と思っていい!笑 その場のノリだったら俺が恥ずかしい!笑〉

〈いやだな~。本気ですよ~〉

〈マジで!〉

〈当然じゃないですか!〉

〈本当の本当?〉

〈本当の本当の本当ですよ!〉


 きっと画面の向こうのルナは爆笑しているだろう。

 はしゃぎすぎてゲームパッドを壊さなければいいのだが。


〈はっはっは! やったね! 勇気が(ひゃく)(にん)(りき)だよ!〉

〈もしかして優勝しちゃいます?〉

〈するよ! 優勝するよ!〉

〈期待しています!〉

〈俺が負けるわけないじゃん! みんなの《堕剣士・真剣優》だよ!〉

〈ワールド《ネビリム》で一番人気ですものね!〉

〈はっはっは!〉

〈なんか動画の再生数も絶好調みたいで〉

〈あっ! 《エルフちゃん!》も観てくれたんだ! 嬉しいな~!〉

〈だから《堕剣士・真剣優》さんはヒーローですよ!〉

〈おうよ!〉

〈頑張っている背中を見たいです〉

〈任せとけ! 《ダークナイツ》だろうがその他だろうが負けねえよ!〉


 ルナは強がっているのだろうか。

 いくら能天気な性格とはいえプレッシャーを知らないわけではないだろう。


「プレイ動画をアップロードするような子どもだしな……あいつのことだから重圧とかはあり得ねえか」


 カリンの意見を聞かせてほしいところである。


〈今日は一緒にプレイできないけれど、また今度な!〉

〈はい、楽しみにしています!〉

〈あ、そうそう、この前に話していた《ノーネーム》という人……〉

〈ええ〉

〈《エルフちゃん!》は何かわかった? もしかして見つかった?〉

〈迷惑行為でちょっと問題になっていることしか……〉

〈そっか〉

〈《堕剣士・真剣優》さんは何かご存じですか?〉

〈う~ん、俺も正確なことは知らないけれど〉

〈はい〉

〈もしかしたら、アカウントが消えちゃっているかも〉

〈えっ! そうなのですか?〉

〈まあ、グレーな情報なんだけどね〉

〈ですか……〉

〈ほら、FKCってプレイヤー名を変えられるから、運営じゃないとね~〉

〈まあ、消えたのなら仕方がないですよね〉

〈だから例の知り合いの人にとっては残念な結果かも!〉

〈いえ、情報ありがとうございます〉

〈それにしても探していた理由は何だったんだろうね!〉

〈う~ん、永遠の謎になりそうです……〉

〈そっか! それじゃ、また!〉

〈はい!〉


 ひとりになった俺は冒険クエストをクリアしていく。

 プレイ開始から一か月が経ったこともあり、ちょっとずつ操作のコツをつかめてきた。

《堕剣士・真剣優》や《神食いにゃん子》からレクチャーしてもらえたお陰で、キャラクターの育て方についても理解が進んでいる。


 例えばFKCの育成で大切になってくるのが職業だ。

《エルフちゃん!》は初期からずっと《メイジ》職だったのだが、《オラクルメイジ》という上位の職にチェンジすることで、パラメーターも技も一回り強くなっている。


 もちろんMMORPGに慣れている人にとっては当然の知識であろう。

 俺が往々にして「そんな機能があったのか!」と驚くのはゲーム初心者だからに過ぎない。


 激レア装備《聖杖シャオルーン》についても強化アイテムを注ぎ込めるだけ注ぎ込んでおいた。

 その甲斐(かい)もあってか〈攻撃力:49780〉という、《堕剣士・真剣優》と比べるとまだまだにしても、キャラクターレベルの割には高い数値となっている。


 その代わりといっては何だが、防具の強化は心もとない。

 攻撃は最大の防御なりといいたいところだが、職業《オラクルメイジ》であることを考慮すると育成には明らかに失敗している。

 まあ、楽しければ何でもOKだ。


「あの《神食いにゃん子》さんのプレーがすごいんだよな。ルナとは違った意味で。素人の俺から見ても、あの人のプレイには(はな)がある。全然追いつけそうにないや」


 勝手な予想になるのだが《神食いにゃん子》は格闘ゲームがうまい。

 コマンド入力。

 間合いの取り方。

 ダメージを食らったときの冷静さ。

 キャラクターレベルが《エルフちゃん!》とあまり変わらないのが不思議ではあるが、それはアカウントを再作成したからだろうか?

 ちょっと気になるところである。

 あれは《レベル180》の人のプレイと比べても(そん)(しょく)がない。


「さてと」


 俺にはどうしても一人でクリアしたいダンジョンがある。


《深淵の塔》

《推奨レベル80》


 アイコンはクリア済み。

 しかし、俺の中ではまだ未クリアだと思っている。


 ここのボス敵《ソードマスター・カムイ》を自力で倒してみたい。

 そして《エルフちゃん!》が強くなったということを《神食いにゃん子》に報告してみたい。

 それが恩返しといったら画面の向こうの《神食いにゃん子》に笑われるだろうか。

 いや、親切心の(かたまり)のような人だろうから一緒に喜んでくれるか。


〈ダンジョン《深淵の塔》に挑戦しますか?〉


 俺が震える指先で〈はい〉を(おう)()すると、十体のボス敵が待ち受ける塔へとワープした。

 ここから先は一人きりの戦いだ。

《堕剣士・真剣優》に教えてもらったこと。

《神食いにゃん子》に教えてもらったこと。

 ゆっくりと記憶の糸をたどっていく。


 五階のボス敵まではあまりダメージをもらうことなく倒すことができた。

 六階から九階のボス敵についても回復さえ怠らなければ《エルフちゃん!》の火力で押していける。

 そしていよいよ十階への階段が開かれる。

 この先で待ち受けているのは幽鬼のようなデザインの剣士だ。


〈刀ノ(さび)ニシテクレル……〉


 ふいに《ソードマスター・カムイ》の体が消える。

 しかし、攻撃パターンを一度くらったことのある俺にしてみれば、むしろ予見された動きでしかない。


 雷光のような居合抜きを避ける。

 それから衝撃波のような斬撃が二回飛んできたが、《エルフちゃん!》がまずは右に、続いて左に避ける。


 これなら勝てるかもしれない。

 俺は手応えを感じていた。


《エルフちゃん!》のHPバーが半分を切ったとき、すでに《ソードマスター・カムイ》のHPは残り一割という状況である。

 俺は《白魔法ホーリーレイ》を入力した。

 杖から飛び出した光の矢が《ソードマスター・カムイ》の体を貫通して、残りのHPをきれいに刈り取った。


〈何度デモ……我ハ蘇エル……〉


 勘弁してくれよ、と突っ込みたくなるようなセリフを残してボス敵のポリゴンが砕け散る。

 クリアに要した時間は二十七分。

 体感としては七分くらいだったので、それだけ熱中したということだろう。


 勝利のファンファーレが鳴り、《エルフちゃん!》が杖を高々と持ち上げた。


〈この世界に安寧を!〉


 これは女性エルフに共通する決めポーズだ。

 そしてほほ笑んだときの表情がルナとそっくりである。


「やった」


 リザルト画面に次のようなメッセージが流れてきた。


〈《エルフちゃん!》が《レベル80》になりました。新しいコンテンツが解放されます〉

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