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なりきり士、大地に立つ

 俺は絶望した。


「え? なにこれ……俺の人生は異世界でもクソゲーなのか?」


 絶対難易度設定間違っている。ベリーハードどころか、ナイトメアとかヘルとかが生やさしく感じる。

 この現状に難易度名をつけるとしたら「死ね(笑)」だ。

 鑑定スキルでステータスが見えるとか、マジ異世界最高! 大活躍して可愛い女の子はべらせちゃうもんね! とか浮かれた俺だったけど、鑑定スキルそのものが俺を絶望の淵に叩き落とす罠だった。


 名前:十六夜いざよい 統也とうや

 種族:人間

 レベル:1

 クラス:なりきり士

 ステータス:

 MP:0/0

 物理攻撃:1

 物理防御:1

 魔力攻撃:0

 魔力抵抗:0

 速度:1


 スキル:数値化鑑定  鑑定結果を数値化して表示します。


 うん、これぐらいなら難易度ナイトメアとかヘルぐらいだろうし、笑って済ませた。

 パンツ一枚で放り出されたことも、おっちょこちょいな女神様め。と言って笑って許しただろう。


「さ、さすがにこれはないわ……バグか何かだろ……」


 俺の転生人生を狂わせた元凶はステータスでもパン一だったことでもない。

 次のレベルまでと書かれた欄だよ!


 次のレベルまで必要な経験値:成長限界に到達しています。


「レベル1がレベルの限界ってどういうことだよ!?」


 どんな縛りプレイだよと突っ込みたい。

 今すぐ俺を天国に送り帰せと死に際に見た女神に頼みたい。


「というか、せめて街に送ってくれよ!? 何でよりにもよってダンジョンみたいなところに送り込むんだよ!? 何で目の前に死にたての死体があるんだよ!?」


 俺の足下には、今でもだらだらと血を流して倒れている魔女っぽいとんがり帽子を被った女の子がいる。

 もう何から何まで嫌がらせとしか思えないんだけど……。

 唯一救いがあるとすれば、目の前に宝箱みたいなのがあることだけど――。


「司祭のローブに紅石の錫杖って鑑定スキルには出てるんだけど……ステータス的に焼け石に水なんだよなぁ……。ハイ・プリーストの初期装備って書いてあるぞ……」


 それに加えて、俺は回復系のスキルも魔法も使えないので、全く意味が無いという。

 とはいえ、さすがにいつまでもパンツ一枚だけというのも嫌だ。

 どうせ死体になるのなら、パンツ一枚よりちゃんと服を着て死にたい。

 そう思って服に袖を通した瞬間だった。


《なりきり発動、職業を駆け出しハイ・プリーストに変更》


 俺の目の前に、ステータス画面の現れた時と同じ文字が浮かび上がる。

 その瞬間、身体の奥底から力が一気にわき上がるような感覚が芽生えた。


「え? あれ? スキルが解放されていく?」


 しかも、忘れていた記憶を急に思い出したみたいに、この世界の魔法や奇跡の理が浮かんでくる。


「リ、リザレクション?」


 試しに足下に転がっている女の子に蘇生魔法をかけてみる。

 すると、女の子の身体が淡い光に包まれ、ピクッと指を動かした。


「あ、あれ? 生きてる? 女神様に次の人生の人生相談してたのに?」

「すげぇ……本当に生き返った」


 女の子が立ち上がり、俺と目が合う。

 あ、かわいいな。とんがり帽子からこぼれる黒いロングの髪はフワフワだし、赤い目は綺麗だし、何かもうまさに異世界人って感じ。

 なんて見とれていると、女の子はすぐに事情を理解したみたいで、頭を何度もぺこぺこ下げた。


「ありがとうございます。司祭様に助けて頂かなければ、今頃魔物のお腹の中か、アンデットの仲間入りをするところでした」

「あぁ、えっと、生き返って良かったよ」


 実は本当に生き返らせられるなんて思っていなかった、とは言えない。

 実際、俺がしたことと言えば服を着ただけなんだけど……。

 さっきの鑑定はやっぱりタダのバグなのかな?

 そう思って自分を鑑定しようとすると――。


 バコッと何かが割れる音がした。


「で、で、でたああああ!?」

「へ?」

「ド、ドラゴンゾンビです! 私、あいつに吹き飛ばされて殺されたんです!」


 地面の中から異臭を放つ巨大なドラゴンが姿を現した。

 肉はドロドロに溶けていて、ところどころ骨が露出している。

 その姿を見て魔女っ子は腰を抜かしたのか、へなへなとその場に倒れ込んだ。

 あぁ、やっぱり俺の人生クソゲーか!? と思ったその時、俺のステータスが開いた。


 レベル:1

 クラス:なりきり士 駆け出しハイ・プリースト

 ステータス:

 MP:80/0+100

 物理攻撃:1+30

 物理防御:1+50

 魔力攻撃:0+100

 魔力抵抗:0+150

 速度:1+50


 スキル

 ・リザレクション   死んだ者を生き返らせます。

 ・ハイ・ヒール    どんな傷も治します。

 ・ターンアンデット  不死者の魂を天へ送り浄化します。

 ・ホーリーシールド  聖なる盾で敵の攻撃を防ぎます。

 ・ホーリーウェポン  聖なる光を剣に宿し、不使者への攻撃力を高めます。


 嘘みたいに色々なステータスとスキルが強化されていた。

 それと、目を疑う項目が追加されている。


 次のレベルまで必要な経験値:成長限界に到達しています。

 次のコスレベルまで必要な経験値:50


「コスレベル?」


 そういえば、なりきり士の下にハイ・プリーストってあったけど、まさか――。


「司祭様! 危ない!」


 考え事をしていたせいで、ドラゴンゾンビの攻撃に気がつかなかった。

 気付いたら目の前で大きな顎を開けられていたのだ。

 けど、俺は逃げることも、避けることも選ばずに、戦うことを選ぶ。


「ターンアンデット!」


 そう叫んだ俺の手から光り輝く十字架が放たれ、ドラゴンゾンビの喉に突き刺さる。

 その瞬間、ゴーンと鐘のなる音がして、ドラゴンゾンビの身体の内側からまばゆいばかりの光が放たれる。

 その光でドラゴンゾンビの身体は灰に変わり、俺の前で崩れ落ちた。

 そして、ユラユラと目の前に半透明の揺れる文字が現れる。


《ハイ・プリーストのコスレベルが10に上がりました。ランクが駆け出しから初級にアップしました》


 あぁ、そうか。そういうことか。

 コスプレ衣装でその職業になりきることが出来て、俺の代わりに衣装に経験が蓄積されて強くなるみたい。


 つまり、色々な服とか装備を集めることが出来れば、特に修行とかせずに魔法とか必殺技を使えるってことだよな?


「すごいです司祭様! あの、私はニアって言います。司祭様のお名前を教えて貰って良いですか?」

「十六夜統也。それと職業は司祭じゃなくて、なりきり士っていうらしい」


 こうして俺の異世界コスプレ冒険ライフは幕を開けた。

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