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半妖精と巫女が行く。  作者: 犬縫 ぬぬ。
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プロローグ

もともと絵描きで文字を書くことには不慣れなので拙い文ではあると思いますが、楽しく描いていきたいです。おにロリは最高位だぜ。_(:3 」∠)_

 しん、と静まり返った森には、何者も拒むかのような冷たい空気が立ち込めている。薄い霧は視界を妨げるほどではないが、立ち入った者をしっとりと濡らしていく。この森にいる者はほとんどいない。全くという訳ではないのだ。

 本来妖精などの神聖な種族から獣まで住み着いている森なのだが、この場所は狩場のようなものになっていて寄り付く気配もない。第一、霧が常に発生していては住み着くやつなどいるわけがない。もしいるとしたら、魔女かただの物好きだけだろう。それに一言に狩場といっても何も知らない人間からすれば、森のそこらとそう変わりない。

 そんな人間には縁遠いはずの森深くの狩場に人影がひとつ。その人物の持つ、エメラルド色の瞳が見つめる先には、一匹のコカトリス。

 青年の目は透き通り、爛々と輝いている。肩から下げた矢筒や尖った耳などからして、大方エルフ族の血を引く種族であることが推測出来た。

 狙いをつけて、一本。ひゅっと飛んで行った矢は、真っすぐコカトリスの目に突き立った。この森でよく見かける獣の一種である。

 二本、三本と矢を射る。三本目を射ったところで絶命したようだ。

 万が一ほかの獣に横取りされぬよう慎重に近づき、確実に息絶えていることを確認する。羽毛を抜き、小さなナイフを取り出して素早く解体していく。腰に下げた袋に内臓と肉とわけていれていく。

 数年も森で一人暮らしをしていたおかげで、狩りにも慣れてきた。最初は弓を弾くことすら出来なかった。今は共に暮らしてはいないが、同じ森に住んでいる祖母に炊事や自給自足の基本を教わった。そのおかげで今日まで生きてこれたと言っても過言ではない。

 今夜はコカトリスを豪快に焼こうか。煮込むのもいいな。あとで婆ちゃんにミルクをもらっておこう。昨日収穫した野菜があるからシチューにしよう。

 コカトリスの解体のために汚れた手を洗おうと、泉へ向かう。

 この森には非常に澄んだ泉がある。エルフやフェンリル、レーシーなんかが水飲み場にしていたりするほどだ。

 いつも通り泉で出会った妖精たちと挨拶を交わしていく。髪に羽がついていることを指摘されたりもしたが、なんらいつもと変わりない光景だ。

 すると一人の妖精が慌ててやってきた。ひどく急いでいる様子だったので、導かれるままについていく。

「何?どうした?…こっち?」

 特殊な言語を使う妖精の言葉は伝わらなかったが、ジェスチャーで大体の意思疎通は出来る。彼女が指さす方向。

 そこには。

「女の子…?」

 泉のほとりにびしょ濡れになった女の子が倒れていたのだ。

 彼女たちのジェスチャーから察するに、泉に浮いていたのをここまで引き上げたらしい。

 とにかく、このままでは目を覚ました時に風邪をひきそうなので、家に運び込んだ。

 異様に白く、痩せた体は容易に持ち上がるほど軽かった。


「いやああぁぁぁ!!」

 しばらくして、俺が夕飯のコカトリスのシチューを作っている時だった。

 確かに今日見つけた女の子を寝かせていた部屋から聞こえた。

「いや!来ないで!ちょっと!!やめなさいよぉ!!」

 切羽詰まった声には恐怖の感情が感じ取られる。強盗か将又山賊でも侵入してきたのかと、急いで部屋へと向かう。

「どうした!?」

 勢いよく扉を蹴破る。

 開かれた扉の向こうでは、女の子と鳥が戯れていた。微笑ましい光景だ。なんだか和む。

「近づかないでよ!動物は苦手―ってあなたが飼い主ね!?なんとかしてよ!こいつ、ずっと突こうとしてくるのよ!」

 彼女と戯れているのは俺のペット、コカトリスのコカちゃんだ。ネーミングセンス悪いとか言うんじゃない。卵とかよくお世話になっている、有り難い存在なのだ。


 とにかくコカちゃんを別室に隔離。落ち着いたところで、彼女のことについて聞くことにする。

「俺はレイシア。レイでもルイスでもいい。お前は?」

「…フリードリヒ。フリードリヒ・フォン・アリーシカよ。アリスでいいわ。」

「ふうん。なんであんなところにいた?この森はほとんど人の入らないようなところだ。」

「話は長くなるし…そう簡単に他人に話せることではないの。そんなことよりも、一刻も早く私は母国に帰らないといけないの。それじゃあね」

 そう言って彼女はベッドから降りた。そうしてやっと、着ている服が自分のものではないことに気づいたようだ。着ていた服は濡れていたから洗濯して干しているところだ。

 アリスは真っ赤になって拳を振るってくる。

「へ、変態!ロリコン!勝手に脱がすなんて最低!」

 細い腕で40㎝ほども身長差があるのだから痛くも痒くもない。


 ぐうううぅぅぅ。ぐきゅう。


 アリスははっとお腹押さえる。

「…とりあえず飯食ってけ。食いながら事情を話せよ。」

 今晩のご飯はコカトリスのシチューだ。皿にシチューを注いでいると、アリスが驚いたような顔をしていた。

「じ、自分でご飯作ってるの…?」

 悪かったな、むさい男が自炊してて。しかし次に放たれたセリフには驚いた。

「ご飯なんてロボットが作ってくれるじゃない」

「ロボット?そんなもん家にはございません」

 ロボットがないと知ったアリスの驚いた顔と言ったら。どれほど裕福な家で育ったんだこいつ。

 そんなことは放っておいて、アリスの尋問だ。詰め寄…らなくても、自分からぽつぽつと話し出した。

「私の国はね、機械が他国よりも優れていたの。そんな国で生まれた奇跡といえるほどの機械がね、神様なの。人と同じように、考えるし人格もある。時には悩むことだってあったわ。それを奇跡だと呼んで信仰した。それが私の国よ。」

「機械が他国より優れていた国…ね。聞いたことはある。ほとんど森からでないからその辺には疎いがな。」

「『アヴァロン』という名の国よ。私はそのお言葉を民に伝える巫女だったのよ。ついこの間まではね。

 神の側近として務めていた男がいたの。だけど彼は自国の利益の為に、戦争を取った。神のご意思に反してね。簡単に言うと私に民へ嘘を吐けと唆した。それに反抗した私は反逆者として、国を追い出された。本当は殺すために湖に沈められたのだけど。そして今に至るってわけよ。

 もういい?」

 わざわざ俺のために説明してくれていたらしい。ワーウレシイナ。

「一国の中心てもんは忙しいもんなんだな。しかしなんで急に話してくれたんだよ。エラソーな態度だったのに。」

「……濡れた服を洗ってくれたし、ご飯までご馳走になったの。その恩に聞かれたことくらいは答えてやろうと思ったのよ、悪い!?」

 なんでこんな上から目線なんだ…。本当に恩を感じているように感じられない。富国の貴族ってのはみんなこうなのだろうか。

「それで?」

「それで、って何がよ」

「だから何のために国に帰るんだよ?反逆者として追い出されたなら余計帰る訳にはいかないだろう」

「それは…っ!……国のためよ。このままじゃ戦争を始めてしまう…。神の力を使ってでも、勝とうとするでしょうね。でも…、そんなの神様の求める平和な国じゃない。私は戦争を止めたい…!あの男を…、殺してでも止めなければならない!だから、だからそのために帰るのよ!『アヴァロン』に!」

 こんなにも小さな少女が、なんとも大きな信念を持ったものだ。

 そんな彼女に俺は力を貸したいと思った。自分が微力でも、少女一人で行かせる訳にはいかない。多少なりとも力になりたいと思った。そう思わせる何かが彼女にはあったのだ。

「それ、俺もついて行ってもいいか?」

「へ…?」

「多少なりとも力にはなれると思うんだが。正確な位置のわかっていない国に、自炊をロボットに任せるようなボンボンのお嬢ちゃんが一人で行けるわけないだろうしなぁ」

 冗談で言ったのに、力任せに殴られた。別に痛くないのだが。

「本当に…本当に私を信じてくれるの…?ついてきてくれるの…?」

「ああ。ちょっと名案があるし、面白そうだもん」

 もう一つ拳をいただいた。割かし真面目に言ったのに。


 そうして。国を一つどころかいくつも変えてしまうような旅の幕が明けたのだ。


プロローグにしても短いなとは自分でも思ってるんですよ…。

次回第一話はもっとまじめに書きます((((

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