先生
小学生の大西健太は、いつも通りに教室に入った。
教室は、生徒達の声が入り混じって賑やかな雰囲気になっている。
しばらくすると、田中先生が入ってきた。
教室が静かになる。
田中は、
「えーと、確か1時間目は体育だな。さーて、何をしようかな?」
と言った。
そして、少し悩んでから、
「そうだな…よし! 腕相撲大会をするぞ!」
と言った。
健太は、
「体育の授業で腕相撲は無いな……でも腕力は自信があるからいいか…」
と思った。
健太は、今まで負けたことがないのだ。
田中は、自信ありげに、
「勝負はトーナメント戦だ! 1番強い奴は先生と直接対決だぞ!」
と言った。
クラスは、32人なので5回勝てばいい。
しばらくして勝負が始まった。
健太にとってはクラスの友達など敵ではない。
すべて秒殺で、あっさり優勝してしまった。
クラスのみんなは、健太をヒーローのような眼差しで見ている。
「健太、腕相撲強いな!」
「スゲー!」
「カッコイイー!!」
すると、田中が、
「優勝は健太君か、よし、前に出て来い! 先生と勝負だ!」
と言った。
田中は、大きな机に肘をついて待っている。
健太は、田中に近づくと右手をがっちり組んだ。
田中は、心の中で、
「よし! ここで、先生の威厳を保つためにも、ガツンと強いところを見せておくか」
と思った。
それでは、さっそく勝負の開始だ。
「準備はいいか? それでは行くぞ!」
田中は、健太に声をかけた。
健太は、
「いつでもいいですよ」
と言った。
気合十分だ。
田中は、
「レディー!」
と言ってから、少しだけ間をおいて、
「ゴー!!」
と言った。
勝負が始まった!
「うおーりゃー!!」
2人の声が教室に響く!!
健太も田中も顔を真っ赤にして耐えている!!
両者まったくの互角か?
と思ったが、健太が少しづつ押してきた!!
クラスのみんなが応援する!
「健太!! がんばれー!!」
すると、田中が何やらぼそっと言った。
「ひゃく…」
健太は、必死になりながらも、
「…な…なんだろう?」
と思って耳をかたむけた。
すると、田中が小さな声で、
「ひゃ…ひゃくえんで…どうだ…」
と言った。
健太は、
「…は?」
と思った。
田中は、もう一度小声で、
「ひゃ…100円で…どうだと…いって…るんだ」
と言った。
この先生……なんと、買収しようとしてる!
健太は、少し迷ったが、5秒ほど考えて、
「に…200円なら…」
と言った。
100円では、納得いかないようだ。
すると、田中は小声で、
「…に……200円は高い……ひゃ…150円で…どうだ…」
と言った。
セコイ奴だ。
すると、健太は、
「ひゃ…160…」
と言った。
こっちもセコイ。
田中は、
「…それは無理だ…155で…どうだ?」
と言った。
すると、健太は、
「156…」
と言った。
セコすぎる…
田中は、
「…し…仕方ない……では…156円で…」
と諦めた。
すると、健太は、
「157……」
と言った。
1円づつ上げようとしている。
田中は、
「こ…これ以上はダメだ……156!」
と言った。
すると、健太は、
「157…」
と繰り返した。
田中は、
「…くそっ………………わかった…それじゃ157円で…」
と言った。
すると、健太は、
「158…」
と言った。
まだ上げようとしている。
田中は、
「…おい…コラッ…157と言ったろ…あまり…調子に乗るなよ…」
と言った。
すると、健太は、
「…そうですか…わかりました…」
と言った後、
「うおーりゃー!!」
と急に気合を入れた!!
田中が押されてきた!
クラスのみんなは、
「健太いけー!!」
と応援している。
田中は、焦りながら小声で、
「わっ…わっ…わかった…わかりましたよ……それじゃ…158円で…」
と言った。
すると、健太は、
「159…」
と言った。
田中は、
「…おい!…158と言ったろ……これ以上は……無理だぞ…」
と言った。
すると健太は、
「159…」
と繰り返した。
田中は、
「159は……無理だ……158!」
と言った。
すると、健太は、
「…そうですか…わかりました…」
と言った後、
「うおーりゃー!!」
と急に気合を入れた!!
田中が、また押されてきた!
クラスのみんなは、
「健太ー!! やっちゃえー!!」
と応援している。
田中は、焦りながら小声で、
「わっ…わっ…わかった…わかりましたよ……それじゃ…159円で…」
と仕方なく納得した。
すると、健太は、
「……先生……やっぱり細かい話はやめましょう……ここはきっちり160……いや……200円で…」
と言った。
田中は、
「…きっちりの意味がわからんぞ!……何で一気に200に飛ぶんだ!……これ以上は……無理だからな…」
と言った。
すると、健太は、
「…そうですか…わかりました…」
と言った後、
「うおーりゃー!!」
と急に気合を入れた!!
田中が押されてきた!
クラスのみんなは、
「健太がんばれー!!」
と応援している。
田中は焦りながら小声で、
「わっ…わっ…わかった…わかった……仕方ない……それじゃ200円で…」
と言った。
すると、健太が力を抜いたので、また互角になった。
そこで、すかさず健太は、
「ご…500円…」
と言った。
田中がピクッとした。
「…ご…500円?………200円…って……言っただろ…」
すると、健太は、
「ご…500円…」
と言った。
すると、田中は、
「…お…おまえな………500円は無理だ…」
と言った。
すると、健太は、
「ご…500円…」
と言った。
すると、田中は、
「だ…だから…500円は無理だ…」
と言った。
すると、健太は、
「ご…5000円…」
と言った。
田中は、
「えっ……い……いま……なんて言った…」
と訊いた。
すると、健太は、
「ご…5000円…」
と言った。
田中の体がピクピクッ!! と動いた!!
「…け……健太さん………そ…それは……無理です…」
なぜか敬語になってる。
すると、健太は、
「…そうですか……わかりました……」
と言った後、
「はぁーーー!!」
と気合を入れた!!
田中が、また押されてきた!
クラスのみんなは、
「健太いけー!!」
と応援している。
田中は、
「わっわっ…わかった……これ以上は……これ以上は無理だぞ…」
と言った。
すると、健太は、
「…では……5000円で……」
と言った。
田中は、
「…と……取り引き……せいりつ…だな…」
と言った。
すると、健太は、
「…ま…まだです…」
と言った。
田中の体がピクッピクッピクッ!! と動いた!!
「…ま……まだ……まだ何が欲しいんだ…」
すると健太は、
「…せ……成績……オール5……お願いします…」
と言った。
田中は、
「…そ……それは……無理だ……」
と言った。
すると、健太は、
「…あ……そうですか…」
といって手に力を入れた。
「グイッ!!」
すると田中が押されてきた!
「うわっ!!」
田中は、
「…わ…わ…わかった……わかりましたよ……オール5……了解しました……これで…取り引き成立だな…」
と言った。
すると、健太は、
「…ま…まだです…」
と言った。
田中は、ピクッピクッピクッピクッ!! と体が動いた。
そして、
「……これ以上は……もう何も…できんぞ……」
と言った。
すると、健太は、
「やっぱり……何もしなくても……いいです……ちょっとからかっただけですから…」
と言った。
田中は、
「……どういう……ことだ?」
と言った。
すると、健太は、急に腕に力を入れて大声で、
「こういう事じゃー!! うりゃーーーー!!」
と言って、田中の手の甲を、
「ポコン!!」
っと机に当てた!
あっさり健太の勝ち!!
バンザーイ!! バンザーイ!!
「ワー!!! 健太スゲー!!」
「健太カッコイー!!」
クラスのみんなは歓喜の声をあげている!!
健太は、
「先生、もう一回やりますか?」
と言った。
田中は、
「はは…ははは…ちょっと体調が悪かったかな? 今日は、この辺でかんべんしてやるぞ」
と言って教室を出て行った。
次の日、田中先生は、学校を休みました。
(おしまい)
たまに来てね!
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