49 乗船前日、光舞う人影……
短め。
港町カイロスで起きていた二つの事件が解決してから二日経ち、船の航路も順調に再開し始めていた。やっと港町という名のとおりに活気が戻ってきていた。
いままで船を利用できていなかったお客が殺到しており、船の乗船待ち、予約でいっぱいであった。
ライたち一行も乗船しようとしていた。事件を解決したという功労者ということもあり、商業ギルドの口利きにより早めの乗船が出来るようになっていた。
乗船日前日、食堂一階でそれは起きた。
「おねえさま。私も連れていってください。きっとお役に立ちますわ」
エリィがアマラに旅の同行を求めていたのであった。
「前にも言ったが、エリィと旅をする気はない」
アマラは会うたびに旅の同行を求めているエリィをいつもどおりに断ろうとしていた。
「なぜ、あのライという男と旅をされていますの」
「……」
アマラはライと同行しているいま、エリィを拒否する理由がなくなりつつあった。いままでは、ひとりのほうがいい、実力が見合ったら、など口を濁してなんとか断っていた。だが現状ライを引き合いに出されるとエリィを断る理由がうまく見つけられない。
「ライとは……一時的に旅を同行しているだけよ」
「なら私も一時的に行動をともにさせてください」
エリィは目を潤ませながら食い下がる。
「はぁ……わかったわ。でもウーの独断で決めるつもりはないわ。ライに了承を得られたらだけどね」
「わかりましたわ」
アマラはエリィを旅に連れていくことになると思った。ライがエリィに詰め寄られて断れるはずがないからだ。
「いまからあの男から了承を得てきますわ」
エリィは足早に二階へと駆け上がった。そして数分もしないうちに激しい物音と叫び声が二階から響く。
「はあぁ。エリィも相変わらずね」
アマラはエリィの奇行を知っている。エリィの奇行の対象が昔は違うものに向けられていたもので、ただその対象がいまはアマラに向けられているだけ。
ところかわって船の近辺。
暗がりに潜み、大きな棺な様な物を持ち、こそこそとする人影がひとつ。人目に見つからないように船に乗り込もうとするその姿は怪しさ丸出しである。
「おねがい。人が居ないところまでわたくしを導いてちょうだい」
一人しかいないにも関わらず、その人は誰かに語りかけていた。語りかけた空間はきらきらと光る。
「ありがとう。いつも助かるわ」
光りに導かれるようにして人影は船に進入していった。
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