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知らぬ間に勇者になりました。ー天秤の勇者になるまでの軌跡ー  作者: 九渡
第二章チャプター1 ー勇者殺しー
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46 鑑定魔術、無邪気に笑う……

「あの人勇者じゃないの?」

 ライはリブラが発した言葉が気にかかり問いただした。


【うむ。先ほどプロビデンスから吸収した力を試しにあやつに使用したのじゃが、何度鑑定しても魔核が表示されんのじゃ】


 ライがプロビデンスを触ったのは鑑定の魔力――プロビデンスの本質である独立している魔力回路を得るためであった。リブラはその魔術回路を使って、魔術の試運転とばかりに鑑定魔術を勇者狩りの男に使用したのであった。その結果、ライの抵抗値を消費せずに魔術は発動した。だがしかし、鑑定した勇者狩りの男には勇者であればステータスに必ず表示されるはずの魔核が表示されていなかった、そのためリブラは勇者ではないと断言したのであった。


「エリィ連行するのちょっと待って」

 ライは警備の男を捕縛していたエリィに声をかけて制止させる。


「どうしましたの?」

「その男に少し聞きたいことがあるんだ」

 ライは勇者狩りに詰め寄り問う。


「あなたは勇者でもないのになんで勇者を狩っていたのですか?」

 ライが発した言葉で、アマラとエリィも顔つきが変わる。


「どういうことですか? この男が勇者ではない?」

 エリィはライが何を言い出したのかわからない。

 捕縛されている男はライに問われても無言を貫き通していた。その姿を見たライはこのままだと聞き出すことは叶わないと考えたので一計を投じた。


「さっきあなたに鑑定をしました。あなたのステータスに魔核が表示されていないのはわかっています。それでも無言をしつづけますか?」

 ライの鑑定という一言を聞いたアマラは、手に持っているプロビデンスを使い勇者狩りを鑑定した。


 エリック・クリプトン

 クラス:警備士

 HP:221/102

 攻撃値:66

 防御値:55

 敏捷値:110

 抵抗値:42

 魔術回路:8

 スキル:隠密:中級・短剣:下級・防衛術:下級・探知:中級



「……アーの言うとおり。魔核の表示がないわ」

 アマラの一言により、エリィも勇者狩りが勇者ではないということを受け入れることにした。


「あなたはなぜ勇者狩りをしていたのですか?」

 ライは再度勇者狩りに問う。すると勇者狩りは口角を吊り上げた。


「おれの仕事はここまでです。あとは頼みます司祭様」

 その一言を述べると勇者狩りの首がスパッと飛んだ。


『えっ』

 宙に舞った首は放物線を描き地面に落ちるところころと転がり、誰かの足にぶつかり止まる。


「もーう。やっぱり下っ端じゃこの程度しか魔素を集められないのよね」

 そこにいたのはベッドで寝ているはずのハルカであった。


「はるちゃん?」

「うー。ライくんったらこんなところにいたんだ。それに雌犬もいっしょなんだ」

 ハルカは笑う。いびつに笑う。ハルカの腕や背中、身体の部位の要所で蠢く触手を生やしながら。


「その背中の触手……やはりあのときの魔物なのか」

 アマラは触手を凝視する。


「なんのこと雌犬さん?」

「……八年前、ブラスカ大森林に住む、賢狼の集落をアーは襲ったのではないか」

「うん? わかんなーい。そんな前のことなんか覚えてないよ」

 ハルカは首を傾げてくつくつと笑う。


「カマラ……その名に覚えは無いか?」

「うん? カマラ、カマラ。あっ、カーラのこと? そういえば雌犬さんカーラに似てるね」

 ハルカはアマラを指差し閃いたことで愉快そうにする。


「……やっと手がかりを見つけた」

 アマラはアルゲティを背中から抜く。


「なに? 雌犬さんあたしとたたかうつもり? やめときなよ……」

 ハルカの体から触手が這いずる。


「カマラはいまどこにいる?」

 アマラの目は血走っている。いまにも飛び掛りそうなほどに。


「うーん。なんかむかつくから教えてあーげない。そうだ。あたしに勝ったら教えてあげてもいいかなぁ」

「そうか、ならば力ずくでもカマラのことを教えてもらうぞ」

 アマラは魔術を発動させる。


 ⏩⏩身体強化コルプスアップ⏩⏩

 ⏩⏩思考加速コーギターティオー⏩⏩

 ⏩⏩武装強化アルモーブレイド⏩⏩

 ⏩⏩光盾ルーメンスクタム⏩⏩


「うふ。その程度であたしと張り合う気なんだ。雌犬さん命知らずだね」

「そのへらず口をどこまで続けられるかな」

 ハルカとアマラ、一瞬触発状態。


「おねえさま。僭越ながら助太刀します」

 エリィも勇者狩りの死体の傍から離れ、ハルカに対して構える。


「うんうん。二対一ね。それくらいのハンデはいるよね」

 ハルカは余裕の表情を崩さない。腕によほど自信があるのが伺える。

 アマラは触手を警戒して迂闊に飛び込まないようにしていた。触手の恐ろしさを知っているからだ。


「さてと、そっちからこないならこっちから行くよー」

 ハルカは身体を浮かし、踵でリズムを取りはじめる。

 とん、とん、とん、ととん、ととん。

 徐々に踵のリズムが加速していく。

 そしてハルカがアマラに触手とともに迫ろうとする。


「まって!!」

 しかしその前にライが割って入った。

「なにライくん。いまからいいとこなのに」

「……はるちゃん。正直に答えて欲しい。今回の事件――勇者狩りのこと知ってたの?」

「うん。知ってるよ」

 ハルカは簡単に言う。

「そこにいる人、あたしの団体の下っ端さんだからね。そうそう聞いて聞いてライくん。あたし司祭やってるんだよ。すごいでしょ」

 無邪気に笑うその顔は昔によく遊んで見た表情と一緒であった。


「なんで、こんなこと……人を襲っているの」

 ライは聞かずにはいられなかった。


「うーん。あたしは別にどうでもいいんだけど、うちの団体の人たちが魔素を集めるために必要だって言うからやってるかな?」

「……はるちゃんの入ってる団体ってなに?」

「うんとね。九曜って言うの」

『なぁ!?』

 九曜と聞いて驚いたのはアマラとエリィ。二人は九曜という団体を知っていた、むしろ九曜を知らないはずがなかった。この世界で九曜とは魔王を指す言葉と同義だからである。


「あたしは九曜のノイン、天啓のノイン。いちおう魔王やってます」

 幼女はあっけらかんと自己紹介をした。



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