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知らぬ間に勇者になりました。ー天秤の勇者になるまでの軌跡ー  作者: 九渡
第二章チャプター1 ー勇者殺しー
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43 解決は一瞬、なぞは……

 港町カイロス構内、夜も更けて、御天等おてんとうが昇っているときは人で溢れかえる商店街の通りも、いまは無いほどの深夜。

 ライは徘徊する。道のどまんなかをてくてくと、誰かに見かけられるように夜道を一人歩き続ける。たまにすれ違う人もいるが、ほとんどが腕に自身がありそうな見た目の人ばかり、ライのようなひ弱そうな人はこの時間帯だと出くわすことはない。

 ライが一刻ほど構内を歩き回り、人の姿が周りに感じられなくなったとき、突如ライは後ろに気配を感じる。後ろを振り返ろうとしたときには時すでに遅し、ライの背中はバッサリと切られていた。ライは意識が薄れゆくなか。


 ――獲物は網にかかった。

【やはりおぬしは呪われておる。だが今回はうまくまわりおったようじゃ】

 ライはほくそ笑んだ。作戦通り、ライは勇者狩りと思われる人物に襲われたのだから……。そして時が巻き戻される。


 ライの抵抗値が2減少しました。


 ライは襲われる前、街中を歩いていた状態へと場面が移る。リブラの時を遡る魔術が発動したのだ。

【おぬし、あの路地裏の影に隠れておるぞい】

 ライではどこにいるか把握できない怪しい人影をリブラから教えてもらい、そしてすかさずライは「アマラー」と夜中にも関わらず大声をあげる。静寂の中、あげた声は邪魔する音が無いため街中によく浸透した。

 ライが大声をいきなりあげたので隠れていた怪しい人影は動こうとする反応を止める。そして一齣ひとこま、そこで様子を伺っていると、屋根の上から飛び降りてくる人――アマラが現れた。アマラは着地を華麗にこなすと「ライ、どこにいる」とライに詰問する。

「あそこの路地裏の影」

 ライは隠れている人影のほうへと指を指し示す。

 アマラは聞くないなや、駆け出し、背中の愛剣アルゲティを振るう。振るった場所にいた人は我が身に迫りくる剣を避けるために飛び込み前転をした。そして体勢を立て直そうとしたとき「はい。動かないで、ちょっとでも怪しい動きをしたら、首が飛ぶわよ」怪しい人の首元にエリィの短剣ダガーがかざされていた。

 アマラとライは怪しい人の動きを止めたエリィに近づく。

「アーがこの街を恐怖に陥れた勇者狩りか?」

 アマラが問うと。

「変ないいがかりはよしてくださいよ。おれは道を歩いていただけですよ。ほら、おれこの街の警備員してるから夜の巡回も含めて歩いてただけ」

 ライはそう言った男の顔をよく見た。するとこの街に入る前に検閲をしていた警備の一人だと気づいた。

「ここからどうしますの?」

 短剣ダガーを首元にかざしたままでエリィはこの先の方針をライに聞いた。ライが先ほど切られた事象を知らないアマラとエリィはライの指示を待った。その指示を出す前に警備の人は口を開く。

「いきなり切りかかって、いまのこんな状況、君たちなにしてるのかわかってるのかい?」

 警備の人はこちらを脅すような口調で語りかける。しかしライはそんなことを気にしない。襲い掛かった事実がなくてもこの警備の男にはまだ余罪の証拠を持ち歩いていると確信しているからだ。

「アマラ、その男の懐を探ってみてよ。きっとマジックアイテムが出てくるからさ」

 男はその言葉を聞くと顔を青ざめさせた。

「おねえさまの手を煩わせないように変な抵抗はしないでね」

 エリィは男が抵抗しないようにけん制した。そしてライに言われたとおりアマラは男の懐を探る。すると胸のポケットの中に獣の目を模ったアイテムが見つかった。

【うむ。むかしと同じ形態じゃ】

「それ、きっと神の目『プロビデンス』だよ」

 リブラのお墨付き、アマラの手にあるのはプロビデンスで間違いなかった。ここまでの展開はライの予想通りである。

「これで決まりね。他にも余罪あるかも知れないし。連行するわ」

 エリィはそういって、手馴れたように男を縄などで捕縛していく。


「そうだアマラ、そのプロビデンスって言うアイテム、商業ギルドに返却する前に少し僕にも触らしてよ」

「うん? 別にいいけど、変なことはしないようにね」

「わかってるよ。少し触るだけ、すぐに返すから」

 アマラからプロビデンスを受け取ったライは数秒ほど触るとアマラへと渡した。

「なんか気になったの?」

 アマラはライの行動が不思議に思い聞いてみた。

「うん。今回の報酬をしっかりともらっておいたんだ」

「??」

 アマラはライの言っている意味がわからなかった。

「まあいいか。今回のこの作戦の詳細もあとで教えてくれるんでしょ?」

「あとでね」


 こうして長い間港街カイロスを騒がしていた事件はライがこの街に来てからたったの二日で解決したのであった。


「それにしてもあの人強そうに見えないよね。勇者狩りなんかしてたからアマラみたいに強い人を想定してたんだけど、勇者ってほんと見た目じゃわからないね」

 ライは勇者狩りの犯人がアマラとエリィにすぐに抵抗出来なくなったのでこのような感想を持ったのであった。

【……】

「リブラ? どうしたの? 考えごと?」

【おぬしよ。あの男は勇者ではない。ただの普人族ニンゲンじゃ】

「えっ??」

 勇者狩りが勇者を襲った理由、事件の謎がいまだ残っていたのであった。


次話は説明会。アマラ視点です。

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