42 夜風にあたる、違和感を……
短めです。
部屋でひと悶着あってから数刻。
ライはハルカをベッドに寝かせて、一人夜風を浴びに外へと出かけていた。
「そういえばリブラさ。同胞って言ってたけどたくさんいるの」
周りに人の気配がないため、ライは人目を気にすることなく声に出してリブラに話しかけていた。
【同胞のことのう。あまり言いたくない奴等ばかりじゃからのう】
「そういえば城にいるときも知り合いとかいってた人いたよね? あの人も同胞のかた?」
【レグルスのことかえ? おぬしの言うとおりあやつはわれの同胞じゃな】
「そうなんだ」
【われとおぬしと同じで召喚者にとり憑いておったのう】
「え!? だれに!?」
【ほれレオニードとかいう偉丈夫じゃよ。あやつはおぬしとちがってレグルスの力を完全に使いこなしておった節もあったのう。いや違うのう。あれはレグルスがレオニードに溶けきっておる。きっと生まれたときからレグルスと共存していたのではないかのう】
「それで……あれ? もしかしてレオニードってこの世界のこと最初から知ってたのかなぁ? だからあんなに詳しかったのかな」
ライはレオニードの言動を思い出しながら考えていた。もし自身がレオニードと同じでもとからこの世界のことを知っていたらどういう行動をしていただろうか。
「レオニードか……いまどこにいるのかな」
レオニードは城に魔物が襲来してから姿が見えなくなっていた。
【うむ? あやつなら魔物と一緒に行動しておるのではないかのう?】
「魔物と行動? どういうこと」
【おぬしは質問ばかりじゃのう。少しは自分で考えんか】
「知らないことばかりなんだから仕方ないだろう」
ライは正直にリブラに返答した。
【ふぅーむ。レグルスもこの世界について思うところがあるのじゃろう】
リブラははっきりと述べることはせず、有耶無耶にした。
【おぬしは人のことを考える前に自身のことでも心配しとれ。勇者狩りとアイテム泥棒の犯人の目星でもさっさとつけるんじゃな】
「そうはいっても、なんもわかんないよ」
ライはいまのところ犯人がどんな人なのかさっぱり検討もついていない。
【はぁー。城のときのような鋭い感性はまぐれじゃったのかのう】
「ひどい言い草だな。僕だってやればできるんだからね」
ライはリブラにけなされたような気がして、いじけて口を開く
「だいたい勇者狩りは勇者を倒せるぐらい強いんだから僕の出番はないよ。勇者じゃない僕にはね。アマラみたいな有名な勇者にまかせるのがいちば……ん。有名?」
ライは違和感を覚えた。
「リブラ……勇者と一般人の違いは魔核があるかないかだったよね?」
【そうじゃ。それがどうしたんじゃ?】
「勇者狩りはどうやって勇者を見分けているのかな。アマラみたいな有名人のことなら知ってるかもしれないけど、襲われているのはすべて勇者に成り立てか、まだ強くなっていない人だったよね」
ハンター協会で聞いた話といままでの情報を頭の中でまとめていく。
【そうじゃのう。犯人は鑑定の魔法でも使えるのではないかのう】
「そうかな。確か人の能力を鑑定をする魔術の使い手はあまりいないんだよね? つまり使える人は有名の可能性が高い。そんな人が勇者狩りなんかしてたらすぐに捕まるんじゃない? だからこそ今回の勇者狩りの事件は難航していた。無名の人が勇者狩りをしているから」
ライの中で犯人の姿がかたどられていく。
【……。ふむ】
「リブラ、魔核以外で勇者の見分けかたってあるの?」
【うむ。魔核は首元に寄生するといわれておる。だが外から見分けることは困難じゃ】
「つまり外見からは判断しずらいけどよーくみればわかるってこと?」
【おおむねの】
「それならもしかしたらだけど――だけど――これがわかっても――どうすれば」
ライは犯人の可能性のことをリブラに相談する。しかしわかってもこの後どうやって勇者狩りに出会えばいいのかライには思いつかなかった。
【おぬしよ。われにいい考えがあるのじゃが乗るかえ?】
「どんなの?」
【おぬしの可能性――おぬしだから出来るかもしれんことじゃよ】
ライはリブラが楽しそうに微笑んだ気がした。
「ならそれをさっそくやりますか。アマラとエリィにも伝えないとね」
ライはリブラの作戦を開始する。
ライのスキルが発現しました。
『直感』:低級。違和感を覚える。




