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知らぬ間に勇者になりました。ー天秤の勇者になるまでの軌跡ー  作者: 九渡
第1章 チャブター1 ー異世界転移ー
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3 騎士との試合、結果は……

 異世界転移二日目


 ライは異世界転移というわからないことばかりが起きたことにより、疲れがたまってたのかぐっすり寝てしまっていたようであった。


 ――今日はみんなでお城の中を案内してもらえる予定だったかな。

 もう外も明るいし集合する予定の場所に行こう。


 昨日の会合での話し合いのときにシルヴァニアが言っていた、城を案内される予定を思い出したライはほんの気持ちだけの準備をして集合場所にむかった。しかし集合する場所に指定されていた部屋に行ってもそこには誰も居なかった。


 ――あれ? みんないない。来るのまだ早かったかな?


 ライはなにも不思議がることなく部屋で待機していると、近くを通りかかった騎士が話しかけてきた。


「召喚者様なぜここにおられるのですか?」

「ここでみんなと集合する約束をしているんだ」

「そうなのですか、他の召喚者様たちはすでに城の案内をされておりましたのでどうしたのかと思いました」

 ライは騎士の一言にビックリした。


 ――なに!? 他の奴等は既に案内されてるの?

 まさか寝過ごした?

 しまったあまりに寝心地がよかったからぐっすり寝てしまっていたのか!!


 ライは慌てて騎士に確認を取ろうとする。

「騎士さん。他の召喚者がいまどこにいるかわかりますか?」

「いまですか、そうですね。いまだと騎士の修練場かと思われます。そちらの扉を出て、道なりに真っ直ぐ行ったあと、右に一回曲がっていただければ着きます。」

 慌てているライに親切に対応する騎士であった。

「ありがとう騎士さん」


 ――優しい騎士さんだ。君のことを騎士1号と名付けよう。


 ライはそんなことを考えながら騎士1号に教えてもらった道を進むと、右側に降りる階段があった。


 ――真っ直ぐ行って右だったかな。


 ライは騎士の話を慌てて聞いていたので、右に行くということしか覚えていなかった。そのため間違って右側の階段を降りていった。階段を降りていくと細長い道へと繋がり、さらに細長い道を奥にすすむと巨大な扉へとたどり着いた。


 ――この扉の先が修練場かな。


 ライはなにも疑う様子もなく扉を開けようとするが、巨大な扉が少しだけ開くと中から獣の叫び声が壁を伝って響いてきた。その叫び声は雄叫びを合唱しているかのような数多あまたの声であった。


 ――これ確実に修練場じゃないよね。間違えたかな。

 来た道を引き返そうかな。


 ライは道を間違えたと思い、開けた扉を閉めてこの場所から離れようする。来た道を引き返していると、階段の隅にきらきらとしている赤石のようなモノが落ちていることに気づいた。その赤石が気になったライは近づき、手にとってみると、まるで生きているかのように光の点滅をしていることがわかった。


 ――なんだろこの石?

 赤く光って点滅してるぞ。

 珍しそうだし拾っておこうかな。


 道端に珍しい物があったら拾ってしまうクセのあるライは赤石をポケットに入れて、騎士1号が言っていた通りの道へと戻り、道なりに進む、すると人の声が向かい側から聞こえてくるようになってきた。修練場に着くと、そこには召喚者達が各々武器を持って騎士と試合をしていた。ライが来たことに気づいたシルヴァニアはライに近寄よると。

「あら、ライ様起きられたのですね。メイドが起こしに行ってもぐっすり寝ていましたね。あまりに起きられなかったので、そのままにしておりましたかが、お身体の体調は大丈夫でしょうか?」

 体調を気遣うように問いかけてくれた。

「大丈夫です。こっちこそすみません」

 ライはシルヴァニアさんに心配をかけてしまったことで申し訳ない気持ちになった。

 ――シルヴァニアさんに心配させてしまったなぁ。


 ライは気を取り直して、シルヴァニアさんと話をしようとしたとき、早乙女がこちらにぶんぶん手を振り挙げて駆け足で寄って来た。


「ライくん来たんだ」

 早乙女はあいかわらず元気一杯の様子であった。そんな早乙女とは対照的にライは顔を曇らせる。


 ――早乙女こっちに来るんじゃない。

 せっかくシルヴァニアさんと話すチャンスなんだぞ。

 邪魔をするな。


 ライは食卓でのの早乙女の質問攻めを思い出し、早乙女と関わるのを避けようとするが。早乙女は持ち前の活発さでぐいぐいと話を進める。


「レオの意見で、いまみんなは自分に合う武器を選んでいるんだ。勇者になってもならなくても必要になるからってレオが言っててさ。ほら、ライくんも選ぼうよ」

 ――こらー腕を引っ張るな。

 早乙女はなんて馬鹿力なんだ。僕より腕は細いのに抵抗することがまったく出来ない。

 くそ、シルヴァニアさんとの貴重な会話のチャンスを奪いおって、早乙女許さん!このゴリラ女め。


 早乙女はライの腕を掴み強引に引っ張られ、せっかくのシルヴァニアとの会話をすることが出来なかった。

 修練場へとライは早乙女に引っ張られていくと、仁王立ちしているレオニードの所に着いた。


「やっと来たのか」

 レオニードは待ちくたびれたという顔をした。


「ライくんはお寝坊さんみたいだから許してあげてよ。それよりレオ、ライくんに合いそうな武器ある?」

 早乙女に言われてレオニードはライに合いそうな武器を探す。レオニードは武器に精通している様子で、修練場に置いてある武具の中からライに合いそうな物を物色する。


「そうだな。これなんかどうだ?」

 そういってレオニードが手渡してきた武器は小型剣ショートソードであった。小型剣は誰にでも使いやすいように目立った特長もなく、どこにでもありそうな一品であった。


「君はそんなに器用そうにみえない。それに筋力も低めだ。弓や槍は器用さが必要になる。斧や長剣は筋力がある程度ないと体が流される。棒や短剣も合いそうになさそうだからな。後方で動いて、護身用に小型剣を扱えるようになるのがよいだろう」

 レオニードはライの身体的特徴を述べてライに適した武具を選んでくれたようではあったが。


 ――なんだとこの野郎、一言ごとに貶してきてんじゃねえか!

 確かに器用でもねぇ、力もねぇ、でも直接言わせると傷つくわ!

 レオニードの言うとおりなのだが、人に言われると傷つくピュアな心の持ち主のライは気持ちがへこんだ……。


「ライくんガンバ」

 そんなライの姿を見かねた早乙女は励まそうとしてくるが、顔は笑っていた。


「……早乙女さんはなににしたの?」

「うち? うちは長槍と両手に小手かな。うち武道少しやってたからこれがいいかなって」

 早乙女は少し恥ずかしそうに言う。

 そんな早乙女の声を聞いてか、「ぶっ」と笑って近づく男が言った。

「なにが少しだ。お前が少しなら他の奴はなんもやってねぇことになるだろうが」

「なによ武志、べつにいいでしょ」

 武志と呼ばれた男と早乙女は仲良さげな雰囲気で返答していた。

 ー武志? 片手に剣をもってるな。女子にモテそうな精悍な顔つきしてやがる。男の敵か!?

 ライは武志という男に向かって内心で悪態を吐いた。ライが悪態を吐いているとは知らない武志はライに自己紹介をする。


「おう。俺は軸原武志じくはらたけし。剣には自信があるんだ。よろしくな」

 軸は剣を縦を前にかざしながらライに挨拶をした。


「武志は剣道の全国優勝経験者なんだよ」

「美樹だって空手世界大会優勝者だろうが」

 早乙女と軸原はお互いの肩を押すように言いあっていた。


 ――なんだって! 

 このゴリラ女(早乙女)そんなすごい奴だったのか。

 モデル体形なのに馬鹿力なわけだ。

 というよりこの二人仲良さげだなぁ。

 そうか……。

 リア充は爆発するがいい。


 ライはいちゃついているように見えた軸原と早乙女にまたまた悪態を吐く。ライに何度も悪態を吐かれている男、軸原は何かを思い出したようで早乙女に話をふっていた。


「そういや気づいたか美樹、俺たち召喚者たちはなにかしらの優勝とかしたり、有名な奴ばかりなんだぜ」

「そうなの?」

 早乙女は首を傾げて召喚者達を見わたした。

「ああ。あそこにいる背の高い奴は野球のピッチャーをやってる奴で小西隆司こにしりゅうじ、まだ中3なのに150㌔を越える豪速球を投げるって噂になった奴だ」

  軸原は召喚者たちがどんな人なのか指を指してひとりずつ説明していく。



 ――まじか、中3で150越えるって化物だな。

 将来プロになってたんじゃないのかな……。

 ライは小西という男の話を静かに聴いていく。小西の話を終えた軸原は別の人物を指差した紹介していく。


「そんでもってあそこの肌が焼けてる外国人はダニエルって言うらしいが、クレー射撃の大会を連覇してるらしいぜ」


 ――クレー射撃は詳しくないけど、連覇してるってことは凄腕なんだろうなぁ。どっかの有名なヒットマンみたいに。


 軸原に話しかける度胸のないライはは胸の中で答えることにしていた。

 数分その場でライやレオニード、軸原、早乙女が話し込んでいたのが目に入ったのか、軽井沢匠という筋肉の塊の男、カルがライたちへと近寄ってきた。


「あんさんら集まってなんのはなしをしてはんの? たのしいはなしなら、わても混ぜてぇな」

 カルは筋肉をぴくぴくと動かしながら話に入りたそうにしていた。


「カルさんはなんかの大会とかで優勝したこととかありますか?」

 軸原はさきほど立証した自分の説が正しいかどうか、確かめるようにカルにも質問をしてみた。


「わて? わては学生プロレスチャンピオンでっせ。プロとよう試合させてもろたりしてましたわ」

 カルは大きな胸を張りだして思い出すように陽気に語りはじめた。そんな様子の影でこっそりと軸原はつぶやいた。


「なぁ俺の言ったとおりだろ。きっとあそこにいる。金髪の女性とお嬢ちゃんもなんかあるぜ」

 軸原は自分の説が当たってることに自信が出てきたのか、まだ質問をしていない召喚者たちにも推測を当てはめようとした。


 ――まさか召喚されたみんながエリートの集まりだったとは驚きだ。

 ん?

 待てよ

 僕はなんの大会優勝も、武道も頭も良くないぞ……。


 ライは軸原の説に自分が該当してないことに気づいたが、、それを自ら言うのも野暮な気がして胸の内にしまっておこうと、自分から評価を下げるようなまねをして得することもないことだからという理由でそう思った。

 そんなライの心中とは関係なく、修練場にいた老齢の騎士がこちらに近寄りライへと話しかけてきた。

「いまわしは召喚者たちの腕前を各自確認しておるのだが、ライ殿も三本勝負をわしとどうですかな?」

 軸原たちの会話に混ざれそうもないライは老齢な騎士の申し出を受けようと思った。

 ――みんなも騎士たちと試合してるし僕もやろうかな。


 老齢の騎士の申し出を受けたライは足取り軽く試合場に足を運ぶ。


「ライくん、ガンバれー。うちその人から一本取れたからライくんも一本取っちゃえ」

 試しに試合をするだけという気軽な気分だったライにプレッシャーをかけるような一言が早乙女から発せられた。


 ――えっ!? 

 本職の騎士から一本取ったの!

 早乙女は本当に武道に優れてるんだなぁ。

 少し尊敬するかも。


「はっはっは。早乙女嬢にはやられてしもうたが、わしもそうやすやすと一本取らせる訳にはいきませんぞ」

 老齢な騎士は自然体で剣を正眼に構えた。その姿を見たライもまねするように剣を構える。


 ――早乙女も一本取れたんだし、頑張れば一本取れるかも。

 よし。

 シルヴァニアさんに格好いい姿を見せてやるぞ。


 ライはいいとこを見せようと意気込む。

 互いに剣を構え、「はじめ!」の声の合図とともにライの記憶は途切れた。



 バシャンと冷たい水がライの顔にかけられる。


 ――冷たい。なんだよ。


 ライはなにが起きたのかわからず、上体をむくりと起こした。

 ライの周りには心配そうな顔の早乙女やレオニードたちがいた。


「大丈夫ですかなライ殿。すまぬ。早乙女嬢はワシのぶちかましを受けきったので、ライ殿も受けれると思うてしもうた」

 ライと試合をした老齢の騎士から謝罪の一言を聞いたライは状況を察した。


 ――ああ、僕は剣を押し合う体当たりで倒されたのか。

 なんだよ。

 早乙女も軸原も心配そうな顔すんなよ。

 そんな顔されると惨めな気分になるだろ。


 ライは暗い気持ちになっていた。早乙女や軸原の視線が胸に突きさったからだった。暗い雰囲気が場に伝染しようとしたとき、シルヴァニアがパンパンっと手をたたいた。


「午後もみなさまを案内いたしますので、ライ様はそれまでそちらでお体をお休みくださりませ」

 シルヴァニアはライの体調を気遣い休むように言うと、集まっていた人たちを散開させるように誘導する。ライはシルヴァニアの機転に救われた気持ちではあったが。


 ――シルヴァニアさんにもカッコ悪いとこを見せちゃったな。

 それに心配までさせちゃうし。

 いいとこなしだ。

 

 シルヴァニアの優しさが余計ライの気分を滅入らせたのであった。



 異世界転移生活二日目の午前


 *****


 あたりは黒一色、どこがわからない歪んだ空間に二体の魔物がそこにはいた。

「――もう一度申すがよい」

 魔物の一体は人が聞けば魂が抜けるほどの威圧が篭った声で言った。

「御意――ザウラース王国が勇者にするための人材を異世界から召喚したとのことです」

 もう一体の魔物は膝を曲げ、まるで神と応対するかのように鎮座している。

「異世界召喚……星核の力を発動させたのだな……」

「はい。おそらく……ザウラース王国首都、アルハゲ城から絶大な魔素が感知されました」

「ザウラース王国……偽造の星核を使い、我ら魔神を愚弄するか」

「いかがなさいますかアンタレス様」

「お前が出陣して殲滅しろ」

「承知致しました。アンタレスの第四魔王グラフィアスの名に懸けてザウラースを殲滅して参ります」


 魔王と呼ばれる1柱がライたちの住む場所へと迫ろうとしていた。

9月16日改稿しました。辛口感想お待ちしています。

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