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知らぬ間に勇者になりました。ー天秤の勇者になるまでの軌跡ー  作者: 九渡
第一章チャプター2 ー真紅の勇者との出会いー
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29 星の欠片について、頬を染める……

 邪悪竜と対峙してから1週間が過ぎた。ガルドシールの街はなにもなかったかのように平常運転に戻っており、ライも体調が快復してハンター協会に足を運ばうとしていた。


 ーなんか城から出てきてから寝てることのほうが多く気がするよ。


 ライはアマラに会いにハンター協会を訪れていた。星の欠片の情報を得るためにはアマラの許可が必要だからである。しかしハンター協会に入るがアマラの姿は見えなかった。建物内できょろきょろと周りを伺っていると。

「おお、坊主、怪我はもういいのか?」

 受付のガンナがきさくに話しかけてきた。相変わらずぶっきらぼうな格好をしており、ハンター協会内で会わなければそこらにいるごろつきにしかみえない人だった。

「はい。おかげさまで快復しました」

「よかったな。おっと、そういえばアマラからおめぇに預かり物があるぜ」

 そういってガンナは受付の奥の棚からガサごそと棚の中にある資料などをかき分けてアマラの預かり物の封筒を取り出してライに「ホラよ」と無造作に手渡してきた。

「これなんですか?」

「開けてみな、おめぇの希望のもんだと思うぜ」

 ライは受け取った封筒を慎重に開封して中身を取り出す。中に入っていたのは硬質の紙で出来た判子つきの用紙であった。ライはじろじろと用紙を見るが文字が読めなかったのでなんと書かれているのかわからなかった。

「なんだ?喜ばねぇのか?そうか、おめぇ文字が読めねぇんだったな。すまねぇすまねぇ、忘れてたぜ。そりゃ緋色の許可証だ。それを交易所にもっていけば星の欠片についての文献が調べられるぜ」

 ガンナは用紙が緋色の許可証と述べた。アマラはライが星の欠片の文献を読みたがっているのを知っていたので、ライのためにハンター協会に許可証を預けていったのだと思った。


 ーこれで星の欠片の手がかりを見つけられるかな。

 ーアマラに感謝しないとな。


 アマラはしっかりと約束を守ってくれた。ライは次にアマラと会うときはお礼を言おうとおもった。そして許可証が手に入ったのだから次にすることは決まった。


「ガンナさんありがとうございます。さっそく交易所に行って使わせてもらいます」

「おうよ、アマラにあったらなんか礼でも言っときな。それとおめぇ、アマラになんかしたのか?おめぇの話をするとアマラの野郎ずくにどっかにいっちまうんだよ」


 ーアマラが?

 ーなんか僕はしただろうか?


 ガンナが不思議そうにしてアマラとライに何かあったのか気にしていた。ただライ自体はアマラに変なことをした記憶はない。いまさら出会った当初のセクハラがライとアマラの仲違い等の原因とは思えなかった。


「さあぁ、なんのことか心当たりはないですね」

「そうか、まぁアマラとは仲良くしてやってくれよ。あいつ仲良い奴少ねぇからよ」

「それはこちらからお願いしたいくらいですよ」


 アマラは元気な女性だから仲がいい人が少ないとは思えなかったがガンナには適当に返事をした。ライはガンナと別れて、さっそく許可証を使用するために交易所へと向かった。


 ーリブラ、アマラについてなにか知ってる?


【くっくっく、おぬしが直接会って判断すればよかろう?】


 道中、アマラのことをリブラに聞いても話をはぐらかしてばかりで教えてくれない。リブラは絶対何か知っているようだったが教えてくれそうになかった。アマラの件でライはもやもやしていたが目の前に旅人の交易所が見えてきたので考えるのを一旦辞めて、交易所すずめのなみだに入ることにした。前回と同じ人が受付をしていた。とりあえずライは受付嬢に緋色許可証を見せると地下にある一般閲覧禁止指定の場所へと案内された。ライは文字が読めないので受付嬢に頼んで星の欠片についての文献を探してもらった。受付嬢は本棚から一冊の分厚い書籍取りだしてライに手渡す。


「こちらにございますのが星の欠片について書かれている文献です。読み終わりましたらお声をお掛けください」

 受付嬢はそういって受付業務に戻っていった。


 ー分厚い書籍だね。


 ライは手渡された本を机の上に置き書籍をみると、それは2000頁は越えてそうな重層な本であることがわかる。汚れを防ぐために外装にはカバーがつけられており、また本が縦に割れないように背表紙に固い補強がされている。


【これは伝承について書かれておる本じゃよ。星の欠片の項目はせいぜいあっても20頁もないぞい。ほれ、読んでやるから椅子に座って頁をめくってくれんかのう】


 リブラの言われたとおりに椅子に座り本をめくっていく。ライは「つぎ」と言われたら頁をめくる単純作業をこなしていく。ペラペラとめくり作業に苦痛を覚えはじめたライは壁にかけてある時計を確かめる。作業を開始してから一時間は過ぎていた。しびれを切らしたライはリブラに進展状況を聞いてみた。


 ーどう何かわかった?


【うむ。大体の情報は得られたのう。ただ詳しい場所までは載っとらんようじゃ】


 リブラはうーん、うーんと考えこんでいた。この様子だとあまり良い情報は得られなかったのだろう。


 ーそれならどうするの。

 ー手当たり次第に探す?


【う~む。そうじゃのう。ありそうな場所を渡り歩くしかないじゃろうな。じゃが、大丈夫じゃよ。われが指し示す道にゆけば星の欠片に出会うじゃろうて】


 ー…なんか頼りない。


【つべこべ言うでないわ】


 リブラもあまりの情報の少なさに自己を叱咤激励するようにライに注意する。ライは、はあぁ、とため息を漏らして椅子に座っていると。


「いた、いた」


 聞き覚えのある元気のよい声がした。声がしたほうをみるとアマラが階段を降りていた。アマラは獣耳をパタパタと揺らしながら階段を降りてきてニコニコと微笑みながらライに近寄ってくる。


「どう良い情報は得られた?」

「いや、あまり成果はなかったかな」

「そうなんだぁ。あのさウーに星の欠片について心当たりがあるんだけど、聞く?」

 アマラは子供が自慢話を人にするかのように目をキラキラと輝かせて聞いてくる。ライは星の欠片の情報ならば僅かなことでも知りたかった。

「うん。知ってるなら知りたいかな」

「そっか知りたいかぁ」

 ライは一度見たことがあるアマラのつりあがった笑い顔をみて、まさかまたか、と思った。


「ウーの育った森に星の欠片があったと思うんだよね。ウーもアーの旅に連れてってくれるなら森の場所まで案内するけど…どうかな?」

 ライの予想通り、先日の竜の依頼ときと同じで、ライを同行させようとしてきた。

「旅に? アマラが一緒に来てくれるなんてこっちからお願いしたいくらいだよ」

 だか今回は少し事情が違う。前回はアマラの用事の同行だったが、今回はライに同行してくれる。旅をしていくのにアマラの戦闘力はとても魅力的であったのでライは案内をしてくれるのを清く受け止めた。


「うん、うん、なら決まりだね。これから同行者としてよろしく」

 アマラは首を縦に何度も頷き、こちらをしばし見つめてからライに手を伸ばしてきた。

「こちらこそよろしく」

 ライは伸ばされた手をぎゅっと掴み握手をする。握手をしたときアマラは照れくさそうに空いている片方の腕で頬をかき、獣耳がほんのりと紅く染まった気がした。


【うっひひひ、旅が面白くなりそうじゃのう】


 おせっかいババアのような引きつった笑い声が頭の中で木霊したがライは無視することにした。

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