28 引退した男、不思議な評価を……
ハンター協会受付、ガンナ視点
ハンター協会の受付ガンナ
若かりし頃は凄腕のハンターであったが、勇者たちと過ごしていくうちに己の限界を悟りハンター稼業を引退した。その後人の良さからハンター協会にスカウトされて受付をしている。
今日も受付業務をこなしているとハンターになりたいという新人がきた。この新人は俺の後ろに書いてある「上級ハンター受付所」を読めていなくて人数が少なかったから並んでいたらしい。そのときはこの少年以外俺の列に並んでいなかったので時間を潰すために相手をすることにした。
緋色になりたいとといきなり言うもんだから笑ってしまったよ。この少年はハンターのことをまったくもって知らなかったので、ついでだからハンターののとを説明してやることにした。聞く姿勢はなかなかに積極的で好感をもてる対応をしてやがる。ハンターとしては珍しい部類だ。ハンターに成りたいやつは大きく分けて三種類の部類に別れる。ひとつは生活の為になる奴、ふたつめは夢を見てなる奴。みっつめは目的のための通り道でなる奴。こいつはみっつめのただ目的のためだけにハンターになる奴だと感じた。金も名誉もいらねぇ、珍しいタイプだ。こういうタイプはなにかきっかけが有れば化ける奴らが多い。だから俺はこの少年にハンターとは何かを説明してやってるんだ。
この少年はアマラと知り合いだった。この協会でも二人しか居ない緋色ハンターの一人だ。俺は閃いたね。緋色のハンターっていう化け物に片足突っ込んでる奴らを見ればこの少年が化けるかもしれねぇとな。アマラの奴も同行するのを嫌がってはいなかったから好都合だった。
アマラと少年が竜の調査に出掛けて数日経った。その日はいつもと変わらねぇ一日を過ごしていた。そしたら緊急連絡魔術がハンター協会に連絡された。アマラと少年の調査付近で邪悪竜が出現との一報。ハンター協会内はざわついた。邪悪竜といえば魔の2年間と言われた悪夢を作り出した魔物だった。また悪夢が再来するのかとハンター協会の偉いさん方は戦慄してたね。邪悪竜はSクラスの魔物。緋色のハンターが束になっても倒せるかどうかだ。アマラが現在交戦する体制を取っていると聞いて止めてくれと思ったね。アマラが失われると貴重な緋色クラスのハンターが足りなくなっちまう。今後、邪悪竜を撃破するための戦力として必要な人材なため、ハンター協会は即席でパーティを構成して救援を派遣した。俺もこの時ばかりは受付業務から離れて即席パーティに参戦することにした。
翌日、邪悪竜の出現報告された場所から一番近いトバル村にたどり着いた。近辺は物音ひとつしない静かであった。村を散策しているとアマラと出くわした。アマラの無事を喜び、すぐにでも村から離れようとアマラに提案するが首を振られた。何故だと問いただすと驚くことに邪悪竜は既に討伐済みと言いやがった。アマラが一人で殺ったのかと質問するとまたも首を振られた。じゃあ誰がと聞くとアマラは言う、少年が邪悪竜を撃退した、と。あり得ないと思った。Sクラスの魔物を勇者でもない人間が撃退できる訳がない。出来るとすればそれは人間じゃない、化け物だということだ。それが本当のことなのか確かめるために少年に問いただそうと考えたが、少年は疲れはてたのか寝続けていると言われた。少年の快復を早めるためにガルドシールへと運び休息をさせた。少年は三日間眠り続けた。早く真相を知りたい俺は早く起きやがれと心底思った。
少年に邪悪竜とのことを聞くとアマラから聞いた話と大差なく、ただ撃退したのがアマラと言う部分だけが異なるだけだった。少年が邪悪竜に使った変な魔術についてを聞きたかったがハンターにとって戦闘手段は秘匿すべきものだ。知りたかったが結局聞くことはなかった。この少年は不思議な奴だ。邪悪竜と対峙したという胆力を持っているはずなのに、俺が少し殺気を纏うとビクビクとそこらにいる臆病者のような反応をする。俺は自分勝手に少年を試したことを恥じて謝り部屋を退室した。
アマラが酒場で英気を養っているのを見かけたので、少年が起きたことを伝えるとアマラは頬を赤く染め、無言で酒場を出ていきやがった。アマラのあんな顔を見るのは初めてだ。本当にあの少年は不思議な奴だ。俺はハンターを辞めて良かったとこのとき思ったよ。




