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知らぬ間に勇者になりました。ー天秤の勇者になるまでの軌跡ー  作者: 九渡
第一章チャプター2 ー真紅の勇者との出会いー
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25 アマラの心中、小さな背中……

アマラ視点

 真紅の勇者アマラ。


 両親は純粋な普人にんげん。そのため幼い頃に双子の妹と共に森に捨てられた。森に捨てられた二人は運よく犬の魔物に育てられ、強く逞しく育った。

 魔物に育てられたため、野性的に生きていたが、ある日森に魔族が襲来し、親がわりの魔物達、妹を魔族に拐われた。

 独りで生きていかなくなったアマラは人の生活圏に紛れて過ごした。数年は普通の獣人として下働きをして生活していたが、街にふらりと寄った勇者に目をかけられ弟子となった。勇者いわく、アマラは魔物と過ごしていたために、知らぬ間に魔核を摂取する生活を行っていた。アマラは勇者として幼い頃から成っていたのだ。

 師匠はアマラに期待した、自己がなせることができなかった偉業を達成してくれるのことを。その期待の足掛かりとして師匠は愛用していた大剣「アルゲディ」アマラに譲渡した。勇者の弟子になったアマラは愛剣アルゲディを背負い、破格の勢いで成長していく。ただ生きていくために強くなったら、いつの間にかハンターランク緋色に最年少でなるまでになっていた。


 アマラは幼いのに腕が立つということで色んなパーティに誘われる機会があったが、全ての人が偽りを纏っていたため入ることはなかった。

 アマラは嘘を偽りを見抜く目を持っている。嘘を言った対象は黒い影が見えてしまうため、人と付き合うのが得意ではなかった。


 人と余り関わらない生活を過ごしていたが、そんなとき、ローウルフに襲われている人に出会った。その人はなんでかわからないが黒い影がみえなかった。ウーに公衆の面前で尻尾を見てみたいと言ってきたときは、どきりとした。怒りよりも先に照れが生まれた。その人はウーに言った意味を理解したのか直ぐに謝ってきたが、そんなに嫌な気分ではなかったので許してやった。

 その人は、旅人になりたいと言っていたが常識というのが抜けていた。さらに体は小さく頼りがいのないこんな男が旅人になどなれるはずがないと思った。旅人のことをいじると反応が面白いのでついからかってしまう。


 ハンター協会に入るとその人とガンナの旦那がいたのが視界に入ったので近寄ってみた。その人は困っていたので力を貸してやろうと思った。でも力を貸すだけだと面白くないので、ウーの依頼の同行を理由にしてみた。


 馬車の中はいつも気を張ることが多い。でも今回の馬車はなんだか気分が落ち着いていたのかぐっすりと眠れた。それだけで同行させた甲斐があった。


 調査をはじめて楽しいと思った。こんなにのんびりと仕事をしているのも珍しい。それなのに龍が生まれたかもしれない、危険な状況に同行させてしまったのをウーは後悔した。その人とはきっともう会うことはないと思う。今回ばかりは命がないと思う。でもあんな人と最後に会えたのはよかったかな。カマラに会えないのは心残りだけど。



 ギャオオオオオォオオオオ


 アマラは邪悪龍と森の中で遭遇していた。邪悪龍はアマラのことにまだ気づいていない、餓えているのか気性が荒く、手当たり次第に暴れまわっている。体格は中型の竜とさほど変わらない。しかし体から発せられる魔力は莫大な量であり、体に収めることができないのか魔力が外に漏れている。ギザギザとした鱗も黒光りをしており、あの鱗の頑丈さは並みの武具だと弾かれるのが目に見えてわかった。邪悪龍と戦うか魔王に突進しに行くかの二択を迫られたら後者を選ぶかもしれない。それほどの凶悪さが伝わってくる相貌であった。





「これを相手するのは厳しいかな」

 アマラはどんな窮地でも共にしてきた愛剣アルゲディを握り締め気持ちを高めていく。

「そういや師匠が言ってたな」

 この愛剣アルゲディには対となる武器があると、その二対についが合わさるとき、この愛剣アルゲディは星の力を得られ、その力は誰も手に届かない輝きを放つと。


「アーも片割れに会えずに終わるのはいやだよね」

 愛剣アルゲディを撫でる。心に闘志を宿していく、はじめから勝てるとは思っていない、土台無理な勝負だ。いちかばちかの大勝負、悔いのない、自身がもつ力全てを出しきってぶち当たる。アマラがいつもやっていたことをただやるのみ。


 ギャオオオオオオオオオ


 邪悪龍がアマラの存在に気づく。アマラの魔核から発せられる魔素の極上の匂いに邪悪龍は我慢出来ずに涎が止まらなくなる。アマラは邪悪龍に睨み付けられるがアマラも負けずと睨み返す。萎縮されるとすぐさま殺られる気配を浴びせられたからだ。



 ⏩⏩身体強化コルプスアップ⏩⏩

 ⏩⏩思考加速コーギターティオー⏩⏩

 ⏩⏩武装強化アルモーブレイド⏩⏩

 ⏩⏩光盾ルーメンスクタム⏩⏩


 アマラは魔力回路を起動させ、戦闘体制を整える。邪悪龍もアマラが魔術を発動させたのをきっかけに樹々を気にせず突進してくる。首を振り回し、雄叫びをあげる。


 ⏩⏩虚無の咆哮⏩⏩


「やばい」

 アマラは危険を察知し、咆哮から回避するため横へかっとび、転がりながらも木の背に潜り込む。虚無の咆哮、浴びた者の魔術効果を無力化させる龍特有の技である。


 アマラは一ヵ所に留まらずに移動を繰り返し邪悪龍の隙を伺う。周りをウロチョロされ、なかなか仕留めきれないことに苛立ちをあげた邪悪龍は空に向けてブレスを吐き出す。


 ⏩⏩フレイムブレス⏩⏩


 空にばら蒔くように吐かれたブレスは重力に引かれ大地に降りそそぎ、辺り一面炎の海と化す。邪悪龍はブレスを吐いたあと体を休めませるように硬直させる。その様子を確認したアマラは炎の海をかき分け、龍の弱点と云われている喉元へと斬りかかる。喉にアルゲディは見事に強打させた。喉を強打された邪悪龍はそれ以上食らわないように、剣の射程の届かない所まで首を上げアマラを睨み付ける。アマラは一打を叩き込んだあとすぐに距離を取ろうとするが、邪悪龍は体を回転させて尻尾で凪ぎ払おうとしてくる。


スクタムよ」

 アマラは完全に回避することが無理と悟ると、光盾ルーメンスクタムを尻尾に向けて展開する。光盾ルーメンスクタムと尻尾はぶつかり、光盾ルーメンスクタムは砕けるが、それにより生まれた僅かな時間によりアマラは尻尾を無傷で回避する。


「一撃でも食らえば終わりか…」

 アマラが展開した光盾ルーメンスクタムは上級魔術でさえ防げる強度があり、アマラの切り札的な魔術の一つであった。その光盾ルーメンスクタムが木っ端微塵に砕けた。アマラ自身が食らえば一撃で死へと誘う威力があるのは一目瞭然。


 ギャオオオオオオオオオ


 咆哮がまた鳴る。地響きを鳴らしながらブレスを周囲に放つ。暴れまわる邪悪龍から避けるように障害物に潜みながら一打ずつ攻撃を与える。決死の攻防は幾度も繰り返された。神経を磨り減らす闘いが長引き、アマラは一瞬隠れるのを油断した。


「まずい」


 ⏩⏩フレイムブレス⏩⏩

 ⏩⏩切り裂く波動⏩⏩

 ⏩⏩切り裂く波動⏩⏩



 対象を捉えた邪悪龍は逃すまいと怒濤の波状攻撃を繰り出す。ブレスを避けた先に爪から放たれた切り裂く波動を狙われた。


「この」


 愛剣アルゲティを盾がわりに受けるが、切り裂く波動の衝撃により剣ははねあがり、体が無防備になる。そこへ追撃とばかりにもう片方の爪から切り裂く波動をアマラに放つ。



 ー殺られる!


 アマラは防御が間に合わないことを悟る。







 体が浮いた。剣が落ちる。

 横からの衝撃で体は突き飛ばされる。


 そこにはあの変な旅人がいた。


「アブねぇー。死ぬかと思った」


 ライはアマラに突進した。そのおかげで切り裂く波動の軌道からさせることができた。


「アーがなぜここに」

「話はあとで、さっさとこのデカブツを倒すよ」


 ライは立ち上がり言った。その背中は小さいのに大きく見えた。

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