18 街の伝説、女性に年齢は……
ーそれにしてもこの街って広いよね。
【われが知っているガルドシールはもうちょい狭かったのにのう。う~む。この街は外壁が段階ごとにあるから増築しやすいのじゃろう。それにこの街は騎士団の支部や、ハンターが居るから魔物に襲われても大丈夫だしのう】
ーへぇーそうなんだ。
ーこの街って昔は小さかったの?
【元々ここは街じゃなくて小さな村だったんじゃぞ】
ーそれがなんでこんなに栄えたの?
【う~む。この村に『ガルド』という勇者が現れてから栄えたんじゃ】
ーガルド?
【そうじゃ。この街の名前にもなっとる勇者じゃ】
ー街の名前になるって。
ーどんなことした人なの?
【確かのう。この村に邪悪な巨大な龍が襲ってきたのを救ったんじゃなかったかのう】
ーそれってどんな話?
【その龍、『ティラノシール』はこの近辺を荒らし廻っとたんじゃ、もうそれは国が総出で退治に出るほどじゃった。だかの国は負けたんじゃよ。ティラノシールはあまりに強くてのう、手がつけられんようになったんじゃ。そこにフラりとこの村に寄ったガルドは一対一で龍を倒しに出掛けてのう、ティラノシールをなんと倒してしもうたんじゃ。それでこの国はお祭り騒ぎじゃよ。国はガルドに報奨を与えようとしたが、『あやつ』は何も要らんと言ったそうじゃ。それでは国の面子が立たんのでな、ここにあった村の名前をを変えて『ガルドがティラノシールを倒した場所』、ガルドシールとなったのじゃ】
リブラは懐かしむように語った。
ー凄い勇者がいたんだね。
【ホントにのう。ほれっそこにある。この街の中央に位置する場所に石像があるじゃろ。あの石像はガルドをモチーフにされとるんじゃ】
そこにあった石像は巨大だった。全長六メートルくらい。背中に槍を3本背負い、左手には四角い盾を携えている。
ーうわあぁ。
ー迫力ある石像だね。
【ふむ。古い言い伝えではのう。あの石像の下にティラノシールの死骸が埋まっとるそうじゃ。そのティラノシールの死骸から発せられる魔力により、ここら近辺には魔物が近づくことは出来んようになっとるそうじゃぞ】
ーえっ?
ー死骸からの魔力で?
【確かなことはわからんぞ?ただの言い伝えじゃからのう】
ーそうだね。
ー言い伝えだもんね。
ーでももし本当に死骸があったらそんなことになるの?
【そうじゃのう。ティラノシールほどの死骸なら魔核は半端なく育っておったのを手に入れられたじゃろうな。あながち魔物避けに最適やもしれん。魔物は自分より強い者には近寄らんからのう】
ーなるほどね。
ー野生の勘みたいなもんか。
【いまでもティラノシールほどの者はめったにおらんからな。居るとしたら魔王クラス以上じゃろうな】
ーふ~ん。
ーちなみにリブラはどのくらいなの?
ー魔王クラス?
【なにを言っとるか!? われは最強じゃ。並び立つもの無しと言われたこともあるんじゃぞ?】
ーあ~はい。
ー凄いですね。
【おぬし信じとらんな!】
ー信じてる、信じてる。
ーさすがリブラさま。
ー尊敬してしまいます。
【ぐっぬぬぬ。われに実体があればおぬしの首をねじきってやろうものを……】
ーはっはっは。
ライはリブラと話していると心が気軽になっていくような感覚を覚えていった。
ーそういえば。
ーガルドのことを『あやつ』って言ってたけど。
ーもしかして顔見知り?
ーリブラって何歳なの?
【なんじゃおぬし。乙女に年齢を聞くもんじゃないぞ?】
ーえっ!?
ーリブラって女性だったの?
ーそう言えば声は中性的……。
ライはいままでリブラがどんな姿か考えたことがなかったために驚いた。
【……。おぬしとはじっくり話さないといけんようじゃのう】
ーいや……。
ーはっはっは。
ーあれっ?
ーあそこハンター協会って書いてあるよ。
ーさあぁ登録しに行こう!
ライはリブラに怒鳴られるのを回避するようにしてハンター協会に駆け込んだ。
【おぬし話を逸らすな!!】




