1 異世界への旅立ち、楽しい人生は……
ああ死ぬな。僕の平凡な17年の人生はここで幕が閉じそうだ。
僕の乗っていた飛行機は現在進行形で墜落している。窓から見える飛行機の翼は折れ曲がり、機内からは炎が立ち上がっていた。
僕は迫り来る恐怖に打ちのめされながら考える。
――なんでこんなことになったんだろう。
僕は乗務員の話を耳をすまして聞く、するとなんと、この状況の原因はとある国の王子さまの命を狙っての犯行だと耳に入った。
――なんで民間旅客機なんかに乗ってくるんだよ。
個人ジェット機とかに乗ってこいよ。
僕は内心で毒づくことしか出来ない。無力な僕とは関係なく着々と飛行機は高度を下げていく。
大きな振動が身体を揺らす。
飛行機が水面に触れたのだろう。
――ああ、生まれ変わりがあるならば、もっと女性と関わりたかったな。なんでおれ高校男子校なんかに行ったんだろう。
今度生まれ変われるならば楽しい人生がいいな……。
そんなくだらないことを考えているうちに、僕の体は水に沈んでいく。
去らばわが人生。
目を閉じる。僕の身体の全身を水で満たされる感覚に襲われる。
不思議な感覚だ苦しくない。
そうか、死ぬってこんな感じなんだ……。
僕はなすすべもなく、ただ単に時間が過ぎるのを待った。
「我が声に応えし勇者の卵よ。皆様のご来訪を我ら一同、心からお待ちしておりました」
声が聞こえた僕はゆっくりと目を開けた。すると視界に広がったのはきらびやかな宮殿のような一室。
――あれ、ここどこ?
もしかして僕、死んでない?
あたりを見渡すと僕と同じ飛行機に乗っていたと思わしき人たちがいた。しかし若い男女10人くらいしかいない。僕の隣の席に座っていた年配のおじいさんの姿などは見あたらない。
「いきなり身も知らぬ場所へ召喚――呼び出された皆様方、心中困惑されているかと存じ上げます。――ここはザウラース王国、皆さまに力を貸して頂きたく召喚させて頂きました。わたしはザウラース王国第二王女のシルヴァニア・S・ザウラースと申します」
そこにはいままで見たことが無いほどの女性――天使がいた。17年生きてきた中でダントツトップの美女だ。
――これってもしかして……
異世界召喚されたとか。
僕の心臓はドクンドクンと力強く鼓動をする。
僕の平凡な人生は終わり、楽しい人生の幕開けの予感がした。