17 調べもの、人任せな……
ライたちが乗っている馬車は無事にガルドシールまでたどり着いた。
「ようこそ旅人と狩人のはじまりの街、ガルドシールへ。ここはアーのような旅人なのに世間知らずな者にうってつけの街よ」
アマラはあのあとライに対しておちょくるように接してくるようになった。そんなに尻尾の件を根にもたなくてもとライは思った。
馬車はガルドシールの街並みをゆっくりとすすむ。
「すごいですね。アルハゲ城の城下町より広いんじゃないですか?」
「ガルドシールは広いよ。ザウラース王国一の街だからね。この街は商業、鍛冶、ハンター、全ての物を見つけられる街よ。あなたの旅行記に気にいる話も見つかるんじゃないかな?」
ー確かに、この街に来てよかった。
ーこの街なら星の欠片の情報も手に入れられそうだ。
【そうじゃろう、そうじゃろう。われの道しるべに間違いはないのじゃ】
街に入ると、アマラは馬車の目的の商品を納品するため、ライは別の目的のため馬車から下りた。
「助けてくれてありがとうございました。ホントにお礼はいらないんですか?」
「いまは別にいいよ。ウーの一族に『した恩は時を経って倍になって返ってくる。だから恩は直ぐ受け取るな』って諺があるんだ。だからまた次に会うときをウーは楽しみに待ってるよ」
「わかりました。次にあったとき、なにかお礼をさせていただきます」
「楽しみに待ってるよ」
そういって、アマラたちと別れた。
【親切な人に会えてよかったのう】
ーほんとにね。
ーさて、これからどうすればいいの?
【まったく、おぬしは人任せだのう。まあぁよい、それでは旅人の交易所へ行ってもらおうかのう】
ー旅人の交易所?
【おぬしが知ってる知識で言うと、情報屋を兼ねておる図書館と言ったところかのう】
ーなるほど。
ーそこで調べるのか。
ーそれじゃ向かいますか。
ー案内できる?
【もちろんじゃ。その右の通りをまっすぐ歩いて行けばたどり着けるぞい。そうじゃ。ついでにおぬしもアマラの小娘のようにハンター登録をしに行っとくかのう】
ーハンター登録?
【簡単にいえば、ギルドで冒険者登録じゃ】
ーああ、そういうことね。
ーでもさっきからなんで僕の知ってるような知識で言えてるの?
【それはのう。いまおぬしの頭んなかをちょちょちょいと覗いておるからじゃ】
ーえっ!?
ーそれってまさか……。
【うむ。おぬしのことはなんでもお見通しじゃ。さっきアマラの獣耳に欲情しておったのも、おぬしがエルフ好きなことものう】
ープライバシーの侵害だー!!
ー即刻やめてくれー。
【いいじゃろうが。われなんもすることなくてひまなんじゃよ】
ーひどい。
ーすることがないからって僕の秘密を覗くなんて。
【わかったわい、わかったわい。機嫌を直すのじゃ。ほれ、おぬしが女性に言って欲しいことベストスリーの「ダーリン」っと呼んでやるからのう】
ーリブラに言われても嬉しくないよ……。
【まったくメンタルの弱い宿主じゃ。ほれこんなことを話しとる間に交易所の近くに来たぞい】
ーはぁ。
ー今度から覗くときは言ってよね。
リブラの案内により旅人の交易所『雀の涙』の前に着いたライは交易所の中へ足を運んだ。交易所の中は入り口から入ってすぐ前に受付のような場所があり、そこへまずライは寄った。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
受付嬢のような人に話しかけられた。
「えっと、星の欠片についての情報が欲しくて来ました」
「星の欠片ですね。かしこまりました。お調べ致しますので少々お時間を頂きます」
受付嬢はそういうと手元の台帳をペラペラとめくり、星の欠片の項目を探してくれていた。
「お待たせ致しました。星の欠片の情報は一般閲覧禁止指定の物です。申し訳ありませんがハンターランク緋色以上の方や市長のご許可が必要です。なにか許可書をお持ちでございますでしょうか?」
「あっ、持っていません」
「それでしたら申し訳ございませんがお見せすることは出来ません」
「わかりました。また来ます」
ライはそう言うと旅人の交易所『雀の涙』から出た。
ーどうしようか。
ーなにかしらの許可が必要なんだってさ。
【う~む。われも予想外じゃ。まさかいまは禁止指定されとるとはのう】
ーどうする? このあと。
【そうじゃのう。ハンターランクの基準緋色というのになれば閲覧出来るそうじゃから、ひとまずハンター登録しに行こうかのう】
ーそうだね。
ーまたまた悪いけど案内よろしく。
【おぬし自分で調べようとは思わんのか?】
ーリブラが知ってるなら、調べなくてもいいでしょ?
【……。この通りを真っ直ぐじゃ】
ーあいよ。
【……。なんでこやつにわれの天秤が傾けられたのかのう……】
ーん?なんかいった?
【なんでもないわ。ほれっ、そこの曲がり角を右じゃ】
リブラに怒鳴られるようにしてライは道を歩む。




