14 僕の決断と、厄介者は……
議会場に入るとシルヴァニア、騎士団長、神殿長など先程議会場に居た面々が揃っていた。
「ライさまどのようなご用件でしょうか?」
シルヴァニアはライにここを訪ねた理由を問いかけた。
「僕を城から出してもらえないでしょうか」
「……それはどうしてか聞いてもよろしいですか?」
ライは単刀直入に言った。シルヴァニアは突然の内容に驚きを隠せずに聞き返した。
「僕は他の召喚者たちと違って勇者に成れません。そこで僕なりにみなさんの力になれることを考えました。僕は旅行記を書くのが好きです。色んな地域を回って調べたことをみなさんにお伝え出来ればなにかの役に立てると思い、城を出ようと決意しました」
「……この城を出たら危険があることを理解しておられるのですか?」
「理解しています。僕は弱いから魔物に出くわしたら命はないと思います」
「それなのに、城を出ようとお考えになられたのですね」
「はい。ここにいても僕は何も役にたてないと思うから」
シルヴァニアは考え込む、議会場に静けさが漂う。
「わたしは軸原さまとの約束により、あなた方の今後の生活の保証をしています。もしライさまがこの城から出て旅に出たいと申されるならば生活の保証はできかねますが、それでもよろしいのでしょうか?」
「構わないです。旅に出たいって言うのは僕のわがままですので」
シルヴァニアは何か思うところがあるのか少し考え込んでからライに言う。
「決意は堅いようですね。わかりました城から出られることを許可します」
「ありがとうございます」
「少しばかりの助力で申しわけありませんが、旅に必要な物をご用意させていただきますわ」
「ありがたくいただきます」
そう言ったあと、ライは一礼して議会場から出た。
ライはすぐに旅の準備をするために部屋に戻ろうとする。
【う~ん、やけにすんなりと旅に出ることを許可したもんじゃ。おぬし、なにかタネでもあるのかのう?】
リブラはライの意見をすんなりと通したシルヴァニア達の対応が気になった。
ーあるよ。
ーシルヴァニアさんたちは僕のことを厄介者と思ってたからじゃないかな。
【ほっほう、なぜそう思ったんじゃ?】
リブラは興味津々にライに質問をする。それに対してライは淡々と語りだした。
ー僕もやっと推測がたったんだけどね。
ーみっつのことがずっと気になって考えてたんだよ。
ーレオニードが僕のことを気にしてたこと。
ーザウラース王国なのに国王が不在なこと。
ーこの国の3つの派閥のこと。
【それで?そのみっつのおぬしの答えはなんじゃ?】
ーそうだね。
ーまずレオニードが僕のことを気にかけてくれたのは、僕が勇者に成れないのを知ってたから。
ーこの国は勇者が欲しかったからね。
ー勇者に成れない人は必要ないんだよ。
ライはまるで他人事のように言う。
【ふむ。そのとおりじゃのう。】
ーこの国にきたときから僕はおかしいと思ってたんだけど、ここはザウラース王国なのにいまここに国王がいないんだよ。
【王がいないのがどうしたんじゃ?ただ単に遠征しとるだけじゃろ?】
ー本当に遠征してるだけなのかなぁ。
ー異世界の人を召喚して、それも勇者にさせようとする、そんな大きな催しに国王が居ないのは少しおかしいよ。
【なるほどのう、勇者を自国に受け入れようとするのに国のトップが顔を出さないのはおかしいと感じるかもしれんのう】
ーそうだよ。
ーさらに今回の勇者召喚に立ち会ったのは第二王女。
ー第一王女はどうしたのか。
ーそもそも、今回の召喚に立ち会った人たちはシルヴァニアさんが主導して進められたように思えたよ。
【うむ。今回の議会場にいた者のなかで一番偉いのはあの小娘であったと……】
ーそう。
ーそしてこの国は大きな派閥が3つあるってレオニードが言ってたんだけども。
ーそのなかの派閥の1つがきな臭いらしんだ。
ーそのきな臭い派閥ってシルヴァニアさんが所属している派閥なんじゃないだろうかと考えたらある推測がたったんだ。
【ふむ】
ーシルヴァニアさんの派閥は国王に内緒で勇者を召喚したってさ。
ーそして召喚した者を自分達の派閥に加えたあとに王に知らせようとしてるんじゃないかって。
ー王は勝手に召喚したシルヴァニアさん達を処罰しようとするかもしれない。
ーでもそこは処罰されないようにシルヴァニアさんは召喚者達のことを先に世間に公表するんだ。
ーきっとこのあと王が帰還する前に国民に発表すると思うよ。
ーシルヴァニアさんは勇者を召喚した功績を讃えられる。
ーそうすると王は処罰しづらいだろうからね。
ーそれに当初はシルヴァニアさんも時間をかけて僕たちの地盤を固めてから発表しようとも考えてたと思うよ。
ーでも魔物が首都を襲ったために王の帰還が早まった。
ーそのためシルヴァニアさんは早く僕らを勇者にさせてしまおうと魔物の襲撃したすぐあとなのにも関わらず、僕たちに勇者に成るように言ってきたんだと思う。
ー勇者に成ってしまえば予定どおり計画を進めていけばいいだけになるからね。
ーでもここに僕がいると国王はシルヴァニアさんの派閥に責任を押し付けれる可能性があるんだ。
ー勝手に召喚しといてただの一般人を召喚するなんてどう責任を取るんだってね。
ー少しでも責任を追及されかねない存在である僕が城内にいるなんて、シルヴァニアさんたちにとって厄介でしかないよね。
ーだから今回、僕が城を出たいって言ってもすんなり意見を通してくれたんだと思うんだ。
ーだって厄介者が去ってくれるなんて喜ぶことじゃないか。
ーさらにあっちは僕が自身で選んで城を出たというのを理由にして、今回の召喚した者の中に僕の名前を残さないようにするんじゃないかな。
ライは長々と自分が立てた推測をリブラに伝えていった。
【……………………ふっふっふ】
ーあれ?リブラどうしたの?
【なぁはっはぁ。おもしろい、おもしろいぞおぬし、まさかそんなことを考えておったとはのう。おぬしのことをわれは弱くて頭の悪いもんだとばかり思っとったもんじゃ】
ー弱くて頭悪くて悪かったな。
【先ほどのおぬしを見ると、この世界で生きるのを少し楽しくなるやも知れんと思えたぞ。おぬし、誉めてつかわす】
ーはい、はい。
ーありがたき幸せです。
ーリブラさま。
【なぁはっはぁ。さあわれとおぬしの旅路に参ろうぞ】
そういってライの中の魔物は高笑いをしつづけた。




