そして僕は……。
「オマエ、おカマか?」
ボウズがストレートに聞いた。
「ち、違う」
僕は、何度も首を横に振る。
「何で女の格好しとんや?」
「しゅ、趣味で……」
本当に密かな趣味だったのだから、そうとしか答えられない。
「オマエ、なめてんの?」
ボウズは僕を問い詰めに、一人で来た。
それは本当に男らしくて立派だと思う。
だけど、恐いよ。
ボウズは凄むと一番迫力あるんだ。
「ハヤブサさんのこと、どうするつもりや!あの人は本気やぞ!女の格好して騙して!どう落とし前つけるつもりぞ!」
怒鳴りあげられ、僕は後退る。
「あんなすごい男を手玉にとるつもりか!ドタマカチ割るぞー!」
僕は本当に泣いてしまいそうだった。
それは恐さだけじゃない。
ハヤブサさん。
あんな優しい人を僕は騙していた。
女装して勘違いさせたのは僕だ。
変身した自分に酔っていただけだ。
「そうや!オレはタラコに本気で惚れとる」
公園に大きな影があらわれる。
「ハヤブサさん!」
「要がイヤな目でタラコを見よったから注意しとったんや。そしたら案の定、後をつけさらしてからに!」
ハヤブサさんは怒りの目でボウズを睨み付ける。
「ハヤブサさん!騙されてます。そいつ女やないんですよ。春日太郎って男なんですよ!」
「それがどうした!オレは春日タラコっちゅうオナゴしか知らん。春日タラコっちゅう可愛い女が笑てくれたり、幸せそうにしてくれたらそれでエエんや!」
公園が静寂に包まれる。
僕もボウズも言葉は無く、ただ呆然と突っ立っていた。
「お前は、春日タラコやな?」
ハヤブサさんが問いかける。
「あの、ぼ、ぼくは……」
「春日タラコやな!」
強い口調で断言され、僕は思わず頷いてしまった。
「ほうや。タラコや」
ハヤブサさんが、細い目を更に細くさせて笑う。
「かなわんなぁ」
ボウズが苦笑した。
僕は本当に天王寺隼という男を、好きになっていた。
イヤ、人間としてデスよ。
でも……ベロチューは無理でも、頬っぺにチュウくらいならいいかなって、そんなことを思っていた。
突然風が吹いてきた。
公園の木が大きく揺れて、葉が飛び散る。
砂埃が舞い上がり、目を開けていられなくなった僕は、ウィッグを押さえながら顔をガードする。
「タラコー」
ハヤブサさんの声が聞こえる。
風が竜巻に代わり、あっという間に僕はその渦に巻き込まれた。
「タラコー」
ハヤブサさんの叫び声がどんどん遠くなる。
渦の中に光が差し込み、それが爆発した後、僕は渦の中から放り出されていた。
冷たい床に倒れ込んだ僕は、体が痺れて起き上がれずにいた。
人の気配がする。
話し声が聞こえる。
ハヤブサさん?
「この方が勇者様か?」
「召喚する者は男ではないのか?」
「異世界で一番妖気の強い若い男を選んだはずです」
何かとんでもない事が起こっているのではないか?
僕はますます起き上がれずにいた。
左手にはハヤブサさんがくれたハーブティーが入った紙袋を、しっかりと握りしめている。
「ようこそ勇者様!わがドミニク国へ!」
僕はようやく体を起こす。
ずれ落ちたウィッグを直しながら辺りを見渡す。
広い重厚な空間に、白や薄紫の衣を着たじぃさんたちが僕を取り囲んでいる。
全くワケは解っていなかったが、もうハヤブサさんにもボウズにも会えないんだろうなと、ぼんやりと思った。
これは僕がドミニク国に勇者として召喚されるまでのお話しだ。
最後まで読んで頂いてありがとうございます。短編小説『魔王様が保父』シリーズと、連載小説『ウエスリア大陸へようこそ』『女好きの勇者サマ』『GOGO!ファイブスター』と繋がっている話です。一読いただければ嬉しいです。




