序
俺が高校に入る一年前の話
俺は月影楓
みんなからの第1印象は明るいだろう
けど笑顔にはちょっと影がある
ついこないだ、俺は事故によって大事な人を失ってしまって以来、本心から笑うことができなくなってしまった
俺は窓際の席でそよそよと吹く風を感じながら、外を眺めていた
「楓
楓聞いてる?」
ぼーっとしていると、声が聞こえた
隣に座って話してるのは、トウマ
トウマは超運動神経も良くて、色々な人から人気だ
同じグループってこともあり、よく気にかけてくれている
「まだ青桐帰って来ないの?」
青桐は俺の弟で何かがきっかけで、留学という理由で現実逃避している
本当の理由なんてわからない
でも現実逃避と言うことでは俺もそうかもしれない
今も逃げてしまっている
「知らない
あいつよくわかんないし」
俺はうやむやに流した
「今日も楓も行くだろ?」
トウマが言うと俺はボーッとしながらも返事をした
「あぁ、一応な」
行くところというのは、俺達の溜まり場は学校の近くの廃墟だ
廃墟に来るメンバーは決まっている
クラスは全員一緒じゃないけど、なんとなく集まっている
青桐も合わせて12人だ
「おい、ほらみんな席つけー」
そう言って入ってきたのは担任
鈴木悟先生
トウマは自分の席に戻って行った
「先生~、今日の学活、校庭行って遊ぼうよ」
1人の女子が言った
彼女は、凪野風花
チャラい女子だが、トウマの彼女
風花が言うと、周りも便乗していって言った
「いーねー
遊ぼうよ」
そう言ったのは拳吾
沼木拳吾
あいつは不良の部類に入るだろう
「だめでぇーす」
先生は言った
「なんでよ」
風花は聞いた
「やることあっからダメだ
今日は将来の夢について作文を書いてもらう」
「えー小学生みたいな作文じゃん」
風花は嫌がっていた
「俺は将来の夢決まってるぜ
プロボクサーだ」
拳吾は立ち上がり、自慢げにシャドーをしてみせた
くだらない
俺は気づくと貧乏揺すりをしていた
無性にイライラしていた
夢を自慢気に語る拳吾に
そしてそれにイラつく俺にも。