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テレポーター  作者: SoLa
第3章 魔法文化祭編〈上〉
78/432

無題5

 夜。

 寮の自室に戻ってきた少年は、乱雑に鞄を放りながらベッドに腰掛けた。


 鞄から覗く資料の束。青藍魔法学園における番号持ちの氏名、性別、年齢、そしてできうる限り詳細に調べ上げられた魔法技能の特徴。束になった資料から1番上の用紙だけ千切り取り、残りを全てゴミ箱の中に投げ捨てた少年はため息交じりに読み上げた。


「1番手が御堂縁、2番手が中条聖夜、3番手が蔵屋敷すー、……あ? 何て読むんだコレ、すずね? ……4番手が豪徳寺大和で、5番手が安楽淘汰。んだよ、水月の野郎入ってねーじゃねぇか」


 序列と氏名が書いてある用紙を人差し指と親指で摘み上げながら、少年は毒づく。


奇縁(きえん)の野郎も1番じゃなかったみてぇだし、器用に手ぇ抜いてやがるもんだ」


 少年も別に1番手の地位を欲して努力したわけではない。実技も筆記も、適当に流してなお1番手の地位に収まったのだ。

 バランスだなんだをこの国の学生に当てはめて考えるなんて酷だ、と少年は白い少女との会話を思い出しながら考える。正直お話になるレベルじゃない。遠い未来、卵が消えることによる魔法使いの枯渇に関して言えば確かに重要な問題かもしれないが、一戦力として考えるのなら論外だ。


「そういや、あの馬鹿が負けたって2番手はこいつか? 中条聖夜」


 廊下で声をかけてきたこの学園の4番手は、青藍の2番手にやられたと言っていた。が、すぐに思い出す。


「あぁ、そういや変わったっていってたっけか、……んで、それが問題だったな」


 髪をぐしゃぐしゃと掻き乱しながら少年は持っていた最後の1枚も丸めてゴミ箱へ放り投げた。


「関係ねーんだよ、名前も能力も全部」


 必要なら全員殺す、それだけだ。

 少年は呟くようにそう言う。


 正直な話。白い少女から持ち出された今回の指令は、少年の中で既に無い物同然になっていた。対象者の名前すら直ぐに思い出せなくなっているのがその良い証拠。自分にとってどうでもいいような内容を一々記憶しておくほど、少年は社交性に富んでいない。

 文化祭の日もサボってしまうか。少年がそう考えた直後だった。

 部屋に1つの音が鳴り響く。


 それはまるで。

 乾いた鈴の音のようで。


 少年は驚かない。まるで慣れ親しんでいる光景の一環であるかのように、自然と口を開く。


「何の用です呵成(かせい)さん。一応こんな俺でもプライベートって奴があるんですけどぉ」


「少し時間を頂けるかな、千金(せんきん)


 お伺いを立てる内容である割に、有無を言わさぬ雰囲気がその言葉にはあった。今まで少年しかいなかったはずの空間に、1人の男が立っている。その男は、どこぞの神官が被っていそうな細長い帽子を被り、青色の魔法服を身に纏っていた。

 呵成と呼ばれた男は、少年の軽口を無視して言葉を紡ぐ。


「一度青藍に潜る。折角だ、君も中を見て回るといい」

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