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テレポーター  作者: SoLa
第1章 中条聖夜の帰国編
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第4話 お待ちかねの…?

ここで、作中で使ってる☆マークについて触れておきたいと思います。


基本的に文章の間に入るこのマークは、場面転換を意味します。

が、第3話のように★マークがつく場合もあります。

これは、文章が聖夜視点でないときに用います。

その後再び☆マークが付けば、視点が戻ったと考えて下さい。


そんな感じで、これからもお願いします。

 突然だが、この場を借りて改めて明言しておこうと思う。


 俺こと中条聖夜は、呪文詠唱ができない。


 魔法とは現代科学では証明出来ない未知なる力。あるものは物体を燃やし。あるものは物体を浮かせ。あるものは物体を消し去る。そういった現代科学のメカニズムでは証明できない力の総称として用いられる。


 魔法使いが表舞台に台頭してから、どれほどの月日が流れたのだろうか。一昔前のテレビアニメを見てみると、魔法少女やら何やらが使い魔を連れつつ魔法のステッキか何かで華麗に魔法を発動させ、必殺技と共に悪を消滅させるものが多い。が、実際はそんなメルヘンチックなものなど使用されない。


 魔法伝導体。通称・Magic Conductorマジック・コンダクター


 MCと略されることもあるが、それはいい。ともかく、この機械が魔法の杖の代わりになる。


 使い方は簡単。自分の腕なり足なりにセットするだけ。ベルトを巻くだけでいい。見栄えは杖に比べれば劣るだろうが、実戦にそんなものは必要ない。


 但し、このMCさえあれば誰でも魔法が使えるかと問われれば、その答えはNoだ。魔法は先天的な才能に左右される。魔力という名称とて、このエネルギーが無ければ人は生きていられない。つまり、魔力が0の人間は存在しえない。が、人間は誰しも魔力を持っているとはいえ、その魔力容量はそれぞれだ。魔法として具現化出来ない程の微々たる量しか持たぬ者もいれば、膨大過ぎる程の魔力を持つ者もいる。


 MCがあれば誰しもが平等な魔法使いになれるわけではない。


 魔法は、一般的に(、、、、)呪文詠唱を行うことで発動する。


 これは、自身の体内に眠る魔力を、『音』によって導き魔法を練るためである。呪文詠唱には、大きく分けて2つの種類がある。「始動キー」と「放出キー」だ。


「始動キー」とは、読んで字の如く魔力を始動させるために用いるキーを指す。どんな『音』を用いても構わない。これはあくまで自身の体内に眠る魔力を循環・活性化させる為のものであり、魔法発現には直接的には関係しない。つまり、自分の好きな音の羅列で構築できるわけだ。


 で、もう1つの「放出キー」だが、これも文字通り。始動キーによって循環・活性化した魔力を、魔法という形に変化・放出させるキーのことを指す。これは始動キーと違い、どんな『音』でもいいというわけにはいかない。


 それは当然と言えば当然なわけで。 なにせ、この『音』こそが魔法の源泉。つまり魔法を形作る核という扱いになる。放出キーにも2通りあり、自身の考えたオリジナルキーと、世界魔法協議会が公認するオフィシャルキーがある。


 世界魔法協議会とは、魔法使いの魔法使いによる魔法使いの為の組織……。とまではいかないが、ともかく魔法使いによって構成される、世界的機関とでも考えてくれればいい。魔法に関する全ての権限を握っており、魔法使いの資格試験や法律、禁呪の指定なども執り行っている。


 で。

 基本的に用いられるのは後者。オリジナルで魔法を発現するなんてそうできることじゃない。仮に万が一できてしまったら、魔法協議会に申請する。それが個人だけでなく万人によって使用できるということが証明されれば(ここで言う万人とは、あくまで魔法を使える者のみに限る)、晴れてオフィシャルキーとなり、新呪文開発者として『呪文大全集』という公認の呪文書に名を残すことができる。


 これが呪文詠唱と呼ばれるものの仕組み。魔法使いはこのスタイルに則り呪文を詠唱し、魔法を発動させているというわけだ。


 つまるところ、MCなんてのは名前の通り、あくまで魔力を内から外へと伝導させるための補助道具でしかない。確かに、魔法発現までの工程をスムーズに進める為には是非欲しいツールではあるものの、これが無いから魔法の一切が使えませんなんてことには成り得ない(当然、未熟なものであればMCに頼りきりで、無ければ魔法が暴走するってことは有り得る)。


 そして、それは詠唱も同じこと。魔法に慣れてくれば、『音』の力を借りずとも魔法は発現できるようになる。魔法の核を形作る放出キーとて、それはあくまで魔法をそういった形に変化させるよう刺激する為の『音』であり、それが物理的な核となるわけではない。卓越した魔法使いは、『音』を用いずとも自身の体内に眠る魔力を刺激し、思い思いの魔法を発現できる。それを、世間一般では『詠唱破棄』や『無詠唱』と言うわけだ。







 別に気取っているとかではなく、俺はそれなりに勉強できる方だと思う。なにせこれまで俺を鍛え上げてきたあの師匠は、性格以外に欠点らしい欠点が見当たらない完璧超人であり、俺があの師匠に同行していろいろとやってる時も、暇を見ては俺に勉学を叩きこんできた。


 仕事の合間に魔法の修行と学生の本分とも言えるお勉強。正直なところ相当ハードだったが、今にして思えば後者2つは師匠なりの優しさだったと思えなくもない。


 ……いや、思えない。

 やっぱ取り消すことにする。あの師匠に感謝すべきことなどない。なぜなら、それを補って余りあるほど俺はあの師匠に貢献しているはずだからだ。ともあれ。そういったよく分からんことを考えながら、俺は2限目である呪文詠唱の授業を流しつつ聞いていた。


 そう、今は2限目の呪文に関する授業である。


 結局、1限目と2限目の間にある10分間の休憩時間で、質問攻めにあうことは無かった。俺が皆から興味を持たれてないというわけではない……と思う。なぜなら、1限目で数学を担当していた教師は、授業終了のチャイムにまったく気づいた素振りをみせず、あろうことか2限目の教師が教室に姿を現したところで、やっと現状に気づき退室していったからだ。


 よって休憩時間は一切なし。そのまま2限目の授業へと突入していた。が、それももう終わり、か。


 そこでタイミングを見計らったかのようにチャイムが鳴り響いた。







「聖夜ぁ!! てめぇ今朝どこ行ってたんだ!!」


 さっそく将人がやってきた。


「いや、寝坊した。すまん」


「寝坊? 俺たち、お前の部屋まで行ったんだぜ?」


「そうなのか?」


「結構強めにノックしたし、呼んだよな?」


「ああ、少なくとも俺ととおるでお前を抑え込まねばならんくらいの大音量でな」


 将人が後ろに声を掛けると、ついてきていた修平がそう返した。どうやら相当熟睡していたらしい。


「悪かった。すまない」


「あ、いや。そこまでしなくていいんだけどよ」


 素直に立ち上がり頭を下げる。その姿勢に意表を突かれたのか、将人が若干たじろぐ。


「ちょっと本城! なに貴方転校生にいきなり頭下げさせてんのよ!!」


「そうよ、さいてー」


「え!? 俺悪いの!?」


 いつの間にかこちらに集まり始めていたクラスメイトから、思わぬ口撃(誤字にあらず)を受け、将人が目を白黒させる。


「そーだそーだおーぼーだぞー」


「うん。いきなりアレは無いよね」


「てめぇらも第三者演じてんじゃねーよ!!」


 いつの間にか周囲を取り囲むクラスメイトに交じり野次を飛ばしていた修平ととおるに、将人が抗議の声をあげる。しかし、善戦空しく数の暴力に飲み込まれた。


 そして、ある意味でお待ちかねだった質問タイムが到来した。







 昨日の内に泰造氏に連絡を入れておいたのは、正解だったということだろう。『俺が呪文詠唱できないことを克服するためにこの学園に来た』という捏造話は、俺と舞が戦線離脱している間に白石先生が説明していたらしい。


 よって、クラスメイトから寄せられる声は「がんばれ」とか「力になるよ」とかそういったエールが多く、罪悪感が湯水の如く溢れ返った。


「向こうでは何をしていたんだい?」


「こっちと同じだよ。親の事情で向こうに飛んだってだけで、大層な目的を掲げてたわけじゃない。普通に学生やって普通に戻ってきた」


「普通で片付けられるのが凄いよな。言語の壁とかあったろ?」


「はは。そんなの気合でなんとかなるって、向こうで実感したよ」


 当たり障りのない解答で遣り過ごしていく。喋るたびに、事実がフィクションへと塗り替えられていくな。仕方の無いことだけれども。


「向こうでも魔法学校に?」


「ああ。実際のところ、俺はほぼ攻撃魔法も防御魔法も使えないからな。実習とかでは苦労しまくりだった」


「でも、それを補って余りあるほどの魔力があるんだろ?」


「宝の持ち腐れだけどな」


「羨むべきなのか複雑なところね」


「人間、自分に無いものを欲しがるものだ。君が俺を羨む気持ちがあるように、俺は君が羨ましいんだぞ。詠唱できるできないじゃ、大違いだからな」


「……老成してるね」


「そんなことないと思うけど……」


 その感想には、苦笑せざるを得ないな。あの師匠のおかげでいろいろと悟りの境地に立った面もある。


「……で、多分ここにいる皆の誰もが聞きたい質問だと思うんだけど」


 1人の女子生徒が、急に思わせぶりな前置きを置いてきた。


「……?」


「花園さんとは、どういったご関係?」


 ぶっ。


 思わず心の中で噴き出してしまった。一瞬、この輪に加わっていない舞の方へと目を向けるが、背を向けたっきりで反応は分からない。


 さて、どう答えたものかと思ったところで救いのチャイムが鳴り響いたのだった。







 昼休み。


 チャイムが鳴るのと同時に、2人の女子生徒が立ち上がった。それは、花園舞と姫百合可憐。そそくさと教室を出ていく。2人とも同じ行動を取るものだから、てっきり2人で飯でも行くのかと思いつつ、その考えは直ぐに改める。そういや、仲悪いって舞が言ってたな。おそらく、別々でソロだろう。いや、姫百合の方は妹がいるんだっけ。多分一緒に食べるんだろうな。


 ……それにしても。


「そんな壁作ってちゃ、友達なんてできるはずないだろうに……」


「壁ってなんだい?」


「うぉっとぉ!?」


 急に横から声を掛けられたもんだから、ビビった。そこには、将人・とおる・修平のいつも通りの3人組が立っていた。


「学食行こうぜ」


「弁当ってわけじゃないだろ?」


「ああ、そうするか」


 3人の誘いをありがたく頂戴し、席を立つ。ちらりと、主を失った隣の机を見る。


 ……そんなに、敬遠されるような娘じゃなかったと思うんだけどな。


 1限目の時、こっそり解答を教えてくれたことを思い出す。お礼を言った時の反応といい、高飛車な感じも無かったし、むしろ付き合いやすそうなイメージを受けてたんだが……。


「おーい、いくぞー」


「あ、ああ。今行く」


 いつの間にやら教室の外で待たせてしまっていたらしい。俺は思考を断ち切って教室を出た。







 学食も、かなりの広さだった。


 将人たちが走って席を取りにいくような真似をしなかったので、それなりの広さだとは思っていたがここまでとは。確かにこれならば時間に追われることもないだろう。寮の食堂と同じく、テイクアウトも出来るみたいなので、急ぐ必要も無いということか。


「じゃ、食券買いに行くか」


 券売機前の列に並び、ものの数分で機械の前に立つ。ポケットからがま口財布を取り出し、中身を確認する。残額150円。昨日の夕飯は将人たちがテイクアウトして来てくれたもので、生姜焼きのどんぶりものだった。350円。学生の為に存在する食堂ならではの低価格だが、俺にとってはそうではない。今日から飯どうするかな。


 と、言うより今日の昼飯は……。

 俺は、色とりどりのメニューを視界に抑えつつ、泣く泣く一番安いものをプッシュした。







「それにしても、お前随分な人気だな~」


「へ? そうか?」


 学食で素うどんをすすっていたところで、将人から随分と予想外なセリフを受けた。


「やはりイケメンは正義ってことか。目つきが多少悪くても何とかなるんだな」


 イケメンとか久しぶりに聞いたわ。


「お前のセリフには、悪意しかないことだけはよく分かったよ」


 うどんをすする手を再開させる。


「お前らだって別に悪くは無いよな」


 将人は少々馬鹿っぽい印象を受けるものの悪くないし、とおるは長い前髪が中性的な印象を出しているが、それが整った顔を際立たせていると思う。修平に至っては、非の打ちどころのないイケメンっぷりだ。くそ。なんか段々負けた気になってきたな。


 いや、将人はともかくこの2人には負けてるんだろうけどさ。


「でも、聖夜の髪は凄い印象的だよね」


「ん? ああ、これか」


 前髪を摘んでみる。そこには見慣れた白色の毛があった。


「真っ白なその髪は凄くインパクトあるよ?」


「だろうな。けど、好きでこうなったわけじゃないからな」


「らしいな。膨大な魔力による副作用で色素が抜け落ちたって話は、俄かには信じがたいが」


 修平が俺の髪を見ながらそう呟く。髪の話は昨日のうちに既にしていた為、改めて説明するまでもない。


「信じがたくなんてないと思うけど。舞だってあの赤い髪は膨大な魔力を持つ一族の遺伝だし、姫百合可憐だって……ああ、あいつは真っ黒だったか」


「それだよ、聖夜」


「何がそれなんだ?」


 とおるの訳の分からぬ指摘に、首を傾げる。


「2人のお嬢様の呼び名さ。どうして姫百合さんはフルネームで呼び捨ててるのに、花園さんは下の名前で呼び捨てなんだい? やっぱり顔馴染みだったりするのかな」


「ああ、そういうことか」


 何を疑問に思われていたのか納得した。まぁ、別にここは隠すところでもないか。


「幼馴染だ。昔は一緒に遊んでた仲だよ。俺がアメリカに渡ってからは疎遠になっちまったけどな」


「お、幼馴染だと!?」


 将人が急に吼えたかと思ったら、急に立ち上がった。


「……そうだけど?」


「こ」


「なに?」


「このブルジョアジめるとっ!?」


「うおっと、すまん。つい」


 飛び掛かってきた将人に、反射的に膝を出してしまった。カウンターのような形でみぞおちに吸い込まれていった俺の膝は、将人の体に甚大なる被害を与えたらしい。その場で唸りながら蹲る。


「別に聖夜は悪くないと思う」


「ああ、今のは勝手に暴走して勝手にやられたそいつが悪いな」


 とおると修平は、同情のかけらも見せずにそう言い切った。


「けど、聖夜って何かやってるのかい?」


「何の話だ?」


 とおるの疑問に、再び首を傾げる。


「お前の動き。ただの素人には見えないからな。素早いし、狙いも的確だ」


「ああ、そういうことか」


 修平による言葉の補完で、質問の意味を理解した。


「体術を少々ってところだな。魔法が使えないから。実技では肉弾戦に頼ることもしばしばだ」


「なるほど。昨日見た限りじゃ、力も体力もあるようだし良い選択だと思う。詠唱できずともそれなりの魔法は使えるんだろう?」


「……驚いたな。その通りだ」


 まさかこれまでの断片的な情報だけで、俺の根本的な魔法スタイルに考えが及ぶとは思ってもみなかった。修平への認識評価を、更に上げておく必要がありそうだ。


「俺が得意とするのは身体強化魔法を用いた近接術だ。要は殴り合いってことだな」


 魔法使いも何もあったものじゃない。魔法は使うけど。


「俺と一緒だな!!」


「うおっ!?」


 何の前触れも無くいきなり顔を上げて叫ぶ将人に、若干ヒく。


「俺も近接、肉弾戦バトルだ!! やっぱ男は拳で語らなくちゃな!!」


「……いや、別に俺は男の尊厳を賭けたスタイルだと思っているわけではないが」


「あはは。じゃあ、聖夜と将人が戦ったら面白いかもね」


「確かに。将人の近接術についていける使い手は、俺たちのクラスにもそういない」


「じゃあ、一応いるってことか」


「いるだろうってことだよ」


 とおるが曖昧な答えを返してくる。


「うちの誇る二大お嬢様は、その手の内を明かしたことがないからね」


「お嬢さん方は、基本的に実技でも力を発揮したがらないんだ。する時はあの2人がタイマンで対戦相手に指定された時のみ。その時は戦争かっていうくらい大魔法が飛び交うけどな」


「普通に怖いな、それ」


 続く修平の説明に率直な感想を述べた。


「怖いなんてものじゃないよ。それを見た教師は、あの2人を対戦相手として二度と指定しなくなるほどだからね。だから、あの魔法大戦が再現されたのは今までで2回しかない」


 ……つまり、1年の時に1回と2年の時に1回ってわけか。在学中にあるとしたら、後は3年に上がってからってことになるな。いや、流石に新しい教師に代わっても、2度もあった悲劇なら学習してるかな。


「ま、そんなわけで御嬢さんたちの近接術は謎のままってわけさ」


「そのまま永遠に謎のままでいいと思うな」


 そんな恐ろしい場面に出くわしたら、秘密なんてお構いなしに転移魔法使って全力で逃げ出すことにしよう。


「次はいよいよ魔法実習だぜ。今日はこの為に登校したといっても過言ではないっ」


 いや、過言だろ。


「将人はそんなに実習が好きなのか?」


「当たり前だろ!? 机に噛り付いてがりがり勉強なんて、性に合わねぇんだよ俺は」


 ま、そりゃそうか。お前ががり勉くんだったら、俺は一度眼科で精密検査受けてくるわ。


「つーわけで、今日の授業が実践形式だったら、俺と勝負しようぜ!!」


「どういうわけかは知らんが、断る。ふぅ。午後の授業サボるかな」


「な、なんでだよ!? 魔法実習だぞ!!」


「いや、その魔法が満足に使えないわけだから実習が苦痛なわけだけれども」


「うっ……。それは……すまん」


「あ、いや。そういう意味で言ったわけじゃない。俺こそすまん。何か意地の悪い言い返しだった」


 実際のところそんな気にしているわけではなく、ただ面倒臭かったからこそ出ただけの軽口だっただけに、そうして謝られるとバツが悪くなる。


 修平やとおるもそうだが、こいつらは何というべきか……。

 そう。引き際を知ってる。

 どれだけふざけた会話をしていても、相手の触れて欲しくないところや踏み込んでほしくないところには、手も足もかけてこない。こうして日本へと帰国して最初にできた3人の友人がここまでできた人間であったということは、俺にとって間違いなく幸運なことだ。


 ……だからこそ、これからは俺も気を付けてかないとな。


「しょうがねーなぁ……」


 ぼりぼりと頭を掻きながら、そう呟く。何だ何だという目でこちらを見てくる修平ととおるを視界の端に捉えながら、俺は将人と正面から向かい合った。


「もし。次の授業で、実践形式の模擬戦だと言われたのなら。……戦ってやるよ」


「おぉっ!? 本当か~!!」


 将人が嬉しそうな声で叫ぶ。依頼の件に片が付くまでは、実力は隠しておきたかったが、ある程度は仕方がない、か。


 そう思いつつ、将人へ力強く頷いた。

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