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テレポーター  作者: SoLa
第11章 女帝降臨編
383/432

第3話 絶対的暴君少女、登場。




「……えっと?」


 この困惑した状況を打破しようと、何とか口を開いた紫会長が助け舟を求めるように白石先生へと視線を向ける。白石先生が再び表情を笑顔に戻してから、隣に立つ女子生徒へと顔を向けた。


「か、神楽さん。自己紹介をお願いしてもいいですか?」


「なぜ」


「えっ」


 そこで「なぜ」と聞かれることは予想外だったのか、白石先生が言葉に詰まる。しかし、それは白石先生が悪いわけではない。誰も予想はできないだろう。なぜ、と来たか。このクラスにおいて、異分子なのは初めて顔を見せた自分であり、まずは自分から挨拶をしなければという認識は無いようだ。


「なぜ私がわざわざ自分のことを語らなければいけないの、と聞いているのだけれど」


「えぇっと、ですね。それは神楽さんが今日初めてここに来たからで……」


「そんな当たり前の事実を聞いているわけではないわ。この国の……、いえ、魔法に携わる者であるなら誰しもが知っている神楽の血統を持つこの私が、なぜその当たり前のことを改めて口にしないといけないのか、と聞いているのよ」


「い……、いや。そう言われましても……」


 鈴を転がしたような綺麗な声色でとんでもない内容を口にする女子生徒である。正論を言っているはずの白石先生が圧し負けそうで不憫なので、口を出すことにした。


「お前が新顔だからだろ?」


「ちょっ、聖夜」とどこからか声が聞こえてきた気がしたが、俺は間違ったことを言っているわけではない。白石先生へと向いていた女子生徒の視線が、俺の方へと向いた。


「今、私に向かって言ったの?」


「他に誰がいるんだよ……」


 その返答も予想外だった。

 しかし、俺の言葉は間違いなく女子生徒に何らかの影響を与えたらしい。


 その勝気な瞳が、ゆっくりと細められた。


「許可するわ。名乗りなさい」


「あのな……。別にこっちも、体育会系の仕来りを持ち出そうとしているわけでも、新手の新人いびりをしようとしているわけでも無いんだよ。ただ名前を言って一言『よろしく』で終わりじゃねーか。お前は小さい頃にお母さんから習わなかったのか? 人に名前を尋ねる時は、まず自分からってな」


 どこからか「中条さん……」と聞こえてきた気がしたが、とりあえず無視をしておく。


「……面白いわね。こんなやつ初めてだわ」


 女子生徒は目を細めたままそう呟いた。しかし、台詞と表情が一致していない。まるで能面のような無表情だった。女子生徒が、何かを制するように左手を挙げる。視線だけちらりと向けて見れば、先程の黒服の女が一礼してから扉を閉めるところだった。


「ねえ」


 女子生徒が言う。


「人が生まれてきた時、最初に与えられるものは何だと思う?」


「はあ?」


 急に何を言い出すんだ、こいつ。

 本当に会話が成り立たないやつだな。


「親の愛情? 自らの名前? 自らの呼吸という行動によって得られる酸素? 目蓋を開くことで受け止める光? 魔法能力の適性の有無? それとも宗教的な観点から見た神の祝福? どれも不正解。答えは『身分』よ。人は生まれた瞬間から、運命を決定づけられる。支配者となるか、被支配者となるか、ね」


 こちらの回答を待たずして、女子生徒はそう言った。


「で?」


「己が立場を弁えたなら、首を垂れなさい」


「頭を下げる理由が思い浮かばないな。別に失礼なことはしていないだろう? 同じクラスメイトになるんだよな」


 俺の返答が面白かったのか、女子生徒が初めて表情を崩す。

 口元を覆い、ぷっと噴き出すようにして笑った。


「面白いわね、貴方」


「その台詞はさっきも聞いたよ」


 女子生徒は長い黒髪を手で払いながら口にする。


「神楽宝樹よ。自分から名乗ったのは初めてかもしれないわね」


 どこの王族だよ。

 よほどちやほやされて育ったらしい。


 やはりそれだけ『始まりの魔法使い』から続く血統というのは凄いもののようだ。もっとも、凄いのはあくまで『始まりの魔法使い』本人であって、こいつではないけどな。まあ、こいつのおじいさんはこの国の魔法協議会の会長をやっているみたいだし、その人も凄いんだろうけど。どちらにせよ、それでこいつが凄いことにはならない。そういう上流階級の仕来りは、それにふさわしい場所でふさわしい相手とやってくれという話だ。


「これから『よろしく』。これでいいわね、中条聖夜」


「……俺の名前知ってたのかよ」


 ちょこんとスカートの端を持ち上げて、絵に描いたようなお辞儀をする女子生徒へ呆れながらそう返す。今までのやり取りはいったい何だったのかと問い詰めたい気分だった。


「み、皆さんが2年生でいるのもあと一ヶ月ないですが、3年の最初の選抜試験を迎えるまではこのクラスはこのメンバーで行きますので、仲良くしてあげてくださいね」


 俺とこの女子生徒、神楽の微妙な雰囲気を見て我に返ったのか、フリーズしたままだった白石先生が急に再起動を果たして捲し立てた。


「それでは神楽さんの席は」


「中条の隣がいいわ」


「えっ」


 後ろに用意した空いている席に、と白石先生は続けたかったのだろうが、神楽の方が早かった。神楽の視線が俺の右隣に席を構えている美月へと向けられる。


「どいてもらえるかしら」


「どれだけ女王様なんだお前」


 美月への第一声がそれなのだから呆れを通り越して笑ってしまいたいところだが、笑いすら起こらなかった。神楽の視線が俺へと戻る。


「貴方に言ったわけではないのだけれど?」


「知ってる。だから口を挟んだんだよ」


 神楽が目を細めた。

 教壇から降りて俺の目の前に立つ。


 上半身を屈めて顔を近づけて来た。

 眼鏡の奥から覗く勝気な瞳が、真正面から俺を射抜く。


「そろそろ立場を弁えなさい?」


 神楽が喋ると吐息が当たってくすぐったい。

 そんな俺の思考を余所に神楽は続ける。


「貴方がまだこうして息をしていられるのは、私の興味がまだ貴方にあるからよ。貴方のその傲慢さが私の興味を上回った瞬間に……」


 神楽が人差し指を立てた。

 それがゆっくりと俺の眉間へと向けられる。


 こてり、と神楽は僅かに顔を傾けて言う。


「死んじゃうよ?」


「面白い冗談だな」


 体感時間にして約5秒ほど、か。

 超至近距離で見つめ合っていた俺たちだったが、鼻を鳴らした神楽が顔を引っ込めた。


「帰るわ」


「へ?」


 神楽の衝撃的な一言に声を上げたのは、俺では無く神楽の後ろでハラハラと成り行きを見守っていた白石先生だった。しかし、そんな白石先生にはまるで構うことも無く、神楽は踵を返して教室の出口へと向かう。


「だ、駄目ですよっ! 帰るって何ですか!!」


 ド正論を叫びながら白石先生が追いかけた。廊下で待機していたであろう先ほどの黒服の女が教室の扉を開く。神楽はそのまま出て行こうとする。その一連の流れを唖然としながら俺たちは見送ることしかできない。その中で、白石先生だけは神楽を追いかけ、何とかその小さな身体を神楽と扉の間に滑り込ませた。


「……何の真似かしら」


「お家の事情が特殊なのは分かりますが、神楽さんはもう私の生徒なのです! そんな気分で帰るようなことは許しませんよ!」


「へぇ……」


 後ろ姿のため、その表情を窺うことはできない。

 しかし、神楽の纏う雰囲気が明確に変わったことだけは理解した。


「お、おい」


 思わず声を上げて立ち上がる。

 まさかとは思うが、そのまさかをやりかねない危うさがこの女にはある。


 その時だった。

 ふと、赤い点のようなものが視界に入った。


 それは、ほんの僅か、一瞬の出来事。


 違和感を頭が覚える前に、身体が動いた。

 咄嗟に身体を後ろへと反らす。


 窓ガラスが割れる音。

 花宮と紫会長の悲鳴。


 俺と同じ最前列に席を構える美月、舞、そして可憐は僅かな間に立ち上がって後退していたのだから流石だ。片桐は木刀に手を伸ばしており、エマに至ってはMCを起動して臨戦態勢になっている。


 俺の眼前をすれすれで通過したであろう凶弾は、教室の側壁を貫通して廊下のガラス窓を破壊したのだろう。廊下からもけたたましい音が聞こえてきた。


「えっ、え、えっ?」


 突然の出来事に何があったのか理解できなかったのか、神楽を通せんぼした体勢のまま白石先生が目を白黒させている。元凶である神楽が、ゆっくりとこちらへ振り返った。


「無傷とは……、流石ね。軽くかすらせる軌道で指示していたのだけれど」


「お前、頭おかしいのか? 殺す気だっただろう!!」


「人の言葉を一度で理解できない奴は嫌いよ。言ったでしょう、かすらせる軌道を指示していたって。貴方が避けなくても眉間から軽く血が出る程度だったわよ」


「もっとも、見当違いの方向へ回避行動を取っていたら、汚い脳漿をぶちまけることになっていたでしょうけどね」と自らの眉間に人差し指を向けてクスクス笑う神楽は、間違いなく狂人の部類に入る危険人物だった。絶句する俺を見て笑いを引っ込めた神楽は言う。


「今の私への暴言は、貴方のその危機察知能力と、その回避を実現させる身体能力に免じて赦してあげる。寛大な処置に感謝なさい」


 その発言に反応したのは俺ではなかった。


「あぁ!? 感謝するわけないでしょうがこの――」


 一瞬で身体強化魔法を発現したエマが飛びかかろうとするのを察知し、同じく身体強化魔法を発現した俺が全力で抑え込みにかかる。道中の机や椅子を蹴飛ばしてエマのもとへ到着するや否や、その身体をエマの机へと叩きつけた。俺のために怒ってくれるのはありがたいが、ここで神楽に手を出そうものなら、どんな仕返しが待っているか分からない。俺を狙ったスナイパーも外で待機しているようだし、下手な行動を取るのはまずい。


 やや遅れて舞、可憐、そして美月が俺の意図を察して、エマの抑え込みに助力してくれた。片桐は紫会長の傍で木刀を構えたまま、視線だけをこちらに向けてくる。これ以上の助けはいらないとアイコンタクトで伝えておいた。花宮は机の下でぷるぷると震えている。……地震じゃないんだから、机の下にいたってあまり意味は無いと思う。


「良い動きね」


 エマの御乱心には目もくれず、神楽は真っすぐに俺を見据えたまま言った。


「おじい様が目を掛けているというから、どれほどのものかと思っていたのだけれど、期待以上だわ。……(あおい)


「はっ」


 教室の扉を開けたまま事態を静観していた黒服の女が答える。


「中条聖夜と遊んでみて。決して殺さないように」


「はっ」


 黒服の姿がぶれた。


「は?」


 思いっ切り身体を仰け反らせた。

 目の前を拳が突き抜ける。


 足払いを小さめの跳躍で躱し、繰り出される掌底を弾いた。繰り出される連撃を捌きながらエマを抑え込んでいる舞たちから距離を空けていく。


「何の真似だ、これは!!」


「申し訳ございません。暫しの間、お手合わせ願います」


「答えになってねぇよ!!」


 黒服の猛攻を躱しながら叫んだ。

 何の感情も読めない冷淡な声で、神楽は言う。


「中条聖夜、反撃を許可するわ。殺せるなら殺してみなさい? 貴方の力量を私に見せて」


「ふざけんな!!」


 回し蹴りを後方へと跳躍することで回避する。

 しかし、距離は開かせないとばかりに、黒服は直ぐに追従してきた。


「やりますね」


 更に何度か黒服からの攻撃を弾いたところで、黒服が呟いた。


「それでは、もう一段階ギアを上げさせて頂きます」


「はぁ!? うおっ!?」


 言葉通り、本当に黒服の動きが変わった。

 耳元を掠めるようにして黒服の拳が突き抜ける。


 こいつ。

 少しでも回避が遅れていたら鼻が潰れていたかもしれないんだが?


「だ、駄目ですよ!! いい加減に――」


「はい、先生は一旦お休みで」


 神楽が指を鳴らす。

 廊下から一瞬で入室した別の黒服が、白石先生の意識を手刀で刈り取った。


「お前! 自分が何をしているのか分かっているのか!?」


「こちらに意識を割く余裕があるなんて素敵よ、中条聖夜。葵、全力でやりなさい」


「はっ。遅延術式解放(オープン)迅雷の(イエロー)』、――がっ!?」


 遅延術式で全身強化魔法を待機状態にさせていたのか。

 それを教室内で使うとは、とんでもないやつだ。


 もっとも、無詠唱で全身強化魔法を発現できる俺の方が早い。


 魔法の解放に意識が向いた隙を突かせてもらった。

 僅かに視線が逸れたタイミングで、即座に顎を撃ち抜いて意識を奪う。


 ――いや。


「あ……、が、……う?」


 足をガクガクと痙攣させながらも、黒服は倒れなかった。

 焦点の定まらない眼差しでなお、意識は相対する俺へと向けられている。


 タフなやつだ。

 一瞬で魔力を顎に集中させたか。


 発現命令を受けながらも、俺の攻撃のせいで中途半端な解放となった黒服の全身強化魔法が暴走の兆しを見せる。それを『不可視の束縛インビジブル・ジェイル』によって無理矢理抑え込んだ。空気中の魔力濃度が高い魔法世界程の威力は出せないが、今の俺の発現量とウリウムのサポートが合わされば、この女程度の魔力は抑え込める。


 魔法は暴走すること無く霧散し、黒服は意識を失った。


「素晴らしいわ」


 手を叩きながら神楽が言う。入室してきた3人目の黒服の女へ、神楽は「回収して」と指示を出した。命令を受けた黒服がこちらへ近付いてくる。思わず身構えそうになったが、あちら側に敵対の意思はまったく無いようで、俺には見向きもしないで倒れ伏した葵という黒服を担ぎ上げた。


「ねえ、中条聖夜。こんなつまらない学園生活からは卒業して、私のモノにならない? まだ若いし、貴方くらいの腕があれば長い間使えるだろうから、それなりの待遇を約束してあげるわよ?」


「お断りだ」


「あら、残念。かなり譲歩してあげたつもりなのに、即答なの?」


 謝罪の1つもなく、そんな失礼な言い回しでのスカウトで譲歩だと? こいつ頭イカレているんじゃないか。蟒蛇雀クラスの狂人だぞ。


 しばらくの間睨み合っていたが、先に視線を外したのは神楽だった。


「先生を保健室へお連れして。どうやら気分が優れないようだから。貧血かしらね?」


「はっ」


 白石先生の意識を刈り取り、その身体を支えていた黒服が一礼する。荷物のように白石先生を抱えて教室を出て行った。


「そんな見え透いた嘘が通用するとでも思っているのか?」


「嘘? 何を根拠に?」


 神楽が嘲るような笑みを浮かべた。


「私がそう言ったらそうなるのよ。いい加減に学びなさい、中条聖夜。それともアノ日とでもしてあげましょうか? 私としてはどちらでも構わないのだけれど?」


 神楽の下品な物言いに反論する間もなく事態は進む。


「いい加減にするのはお前だァァァァ!!」


 エマが吠える。


 舞、可憐、美月によって羽交い絞めにされていたエマだったが、3人の拘束が緩んだタイミングで膨大な魔力を一気に放出した。余波で3人が吹き飛ぶ。


「お、おい、エマ!」


「私の王子様を――」


 ……は?

 違和感を覚えた時には全てが終わっていた。


 思わず自分の目を疑う。凄まじい魔力の奔流を纏い、今まさに神楽へと飛びかかろうとしていたエマだったが、いつの間にかひっくり返って床へと叩きつけられていた。そして、そのエマの頭を踏みつける人物。


 それは、今の今まで教室から出て行こうとしていた神楽だった。


 おい。

 今、何をした。


 神楽は教室の扉付近にいた。

 エマは窓際。

 その間には俺がいたはずだ。


 俺の横を通り過ぎたのか?


 一瞬で?

 俺にまったく気付かれることなく?


 まさか。

 あり得ない。


 敏捷性だけでは説明がつかないぞ。

 どんな魔法を使ったんだ。


「五月蠅い女ねぇ」


 エマの頭を踏みにじりながら神楽は言う。


「ここで殺してあげましょうか? ガルガンテッラ」


「ふざけ――」


 瞬き1つ。

 たった一瞬の出来事。




 いつの間にか、エマは意識を失っていた。




 荒れ狂うような魔力は消え失せ、神楽によって踏みにじられるがままになっている。本当に死んでしまったかのようにピクリとも動かない。


「……な、何をしたの」


「まさか、本当に……」


 吹き飛ばされて打ち付けた身体を擦りながらも口を開く舞と可憐。その呟きに僅かながらも視線を向けた神楽は、面白くなさそうな表情のまま鼻を鳴らした。


「殺してないわよ。わざわざ私がこの手を直接汚すほどの価値も無いし」


 肩を竦めながら神楽は言う。

 その手に握られている物を見て、俺は絶句してしまった。


 その様子に気付いた神楽が口角を歪める。


「見覚えがある? こ・れ・に」


 神楽の右手が握る物。

 それは一冊の本だった。


 神楽は、見せびらかすようにしてそれをこちらへ向ける。

 表紙にはこう書かれていた。






『神楽宝樹』と。






「お前、それ――」


 ぼんやりと。

 青白く輝く本に照らされながら。


 神楽は嗤う。


「私の覇道を邪魔する者など、この世に存在しない」


 遠くから、耳障りな音が聞こえてきた。

 初めは小さく感じられていた音は、明らかに音量を増してきている。


「私の口にすることは、全て正しい。なぜなら、世界がそれに追従してくれるから」


 教室全体が揺れるような錯覚を覚えた。

 窓ガラスが振動し、ビリビリと音を鳴らす。


 葵と呼ばれた女性を背負った黒服が、窓を開けた。

 突風が吹き込む。


 窓の外へ、ヘリコプターが姿を見せた。

 気付いた時には、神楽はヘリコプターに搭乗した後だった。


 まるで、記憶が飛んでいるかのような違和感。


 何だ、これは。

 転移魔法なのか?


 接近した状態で滞空していたヘリコプターに、黒服が窓枠から跳躍して乗り込んだ。身体強化魔法を纏っているとはいえ、人を背負った状態でよくあそこまでバランスが取れるものだ、と他人事のように感心してしまう。接近しているとはいえ、強化魔法無しでは飛び移れない程度の距離は空いているし、おまけにヘリコプターから生じている突風は向かい風だ。


 ヘリコプターの扉が黒服によって閉められる。

 その間際。


 こちらへ顔を向けた神楽の口元が「ごきげんよう」と呟いたように見えた。

 次回の更新予定日は、5月27日(水)です。

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― 新着の感想 ―
[気になる点]  神楽が能力を使ったと思われる描写が、3回あったけどその全てに聖夜は違和感を感じてるんだよね。 1回目 射撃時>>>違和感を頭が覚える前に、身体が動いた。咄嗟に身体を後ろへと反らす。…
[一言] 確かに発言の兆候が分からないってどんな魔法なんだろうね ユグドラシルが今まで手出ししてなかったって時点で強者の家計だとは思っていたけど....時空系だとしても対策できないないは流石にないだろ…
[一言] 強いんだろうけど、神楽家の存在が知られてる上で尚『世界最強』はリナリーなんでしょ? つまり、結局は聖夜より格下になるわけだ。 感想欄で、産まれながらになんだって?って煽られる未来が見えるぜ…
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