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テレポーター  作者: SoLa
第10章 真・修学旅行編〈下〉
361/433

第4話 交易都市クルリア ⑦




 預かりものをお返ししよう。

 条件:単独。30分以内に「朱の料亭」023。




 何だ。

 このメールは。


 飾り気の一切ない、要点のみが書かれたメール。


 文面はたったの二行のみ。

 簡潔過ぎるだろう。


 預かりもの、か。


 具体性は皆無で根拠はない。ただ、このタイミングで届いたメールだということを踏まえれば、答えはひとつしかない。


 つまりは、アリスのことだ。


 単独で30分以内に来いだと?

 朱の料亭とやらが指定場所のようだが、末尾についている『023』とは何だ。


 隣で俺のクリアカードを覗き込んでいたエマが、自分のクリアカードを操作して素早くネットに繋ぐ。朱の料亭で検索した。


「歓楽都市フィーナにある飲食店の名前のようですね」


 ……。

 歓楽都市フィーナにある飲食店?


 ふざけるなよ。


 今、俺がいるのは交易都市クルリアだ。向かうには広大な敷地を持つ中央都市リスティルを抜けていかなければならない。公共交通機関を使っていたら絶対に間に合わない時間だ。強化魔法で走ってこいってことかよ。


 末尾の数字についてはすぐに理解できた。エマから見せてもらったその店のホームページによると、その店は個室に分かれた飲食店になっているようだった。おそらくは、そのうちの1つの部屋番号ということだろう。


 完全に密会だな。

 そして。


「明らかに罠ですね」


 そのエマの言葉には全面的に同意する。同時に理解する。エマも『預かりもの』のことはアリスだと考えた上で発言している。まあ、そう考えるしか無いよな。証拠は無いが、否定する根拠も無い。そんなことを考えている時間すらない。


 預かりものとは、アリスであると想定した上で考える。


 ……。

 どうするか。


 前回ルートでは、こんなメールは送られてこなかった。当たり前だ。このメールはアリスが王城に辿り着く前に攫われてしまったからこそ送られてきたもの。つまりは、今回ルートで俺が起こした行動によって生じた差異ということだ。


 くそ。何が悪かったんだ。今回ルートでは色々とやった。今も交易都市クルリアで当初の予定通り観光が出来てしまっているあたり、もはや前回ルートとは完全に別物だ。どの行動が原因となったのかなんて分かるわけがない。


《……あたしとしても、罠にしか見えないんだけど。それもとびきり危険なやつ》


 これまでずっと事態を傍観しているだけだったウリウムも、そう呟いた。


 現状、俺が前回ルートと違う行動を起こしているのは、その全てが今日近未来都市アズサで行われる予定の会談への対策だ。俺が動くことによって不利益を受けるのは『ユグドラシル』。そうなると、目障りとなった俺を排除するための罠と考えるのが自然だ。


 しかし、俺を排除するだけならこんな回りくどい真似をする必要はあるだろうか。


 胸を張って言えることではないが、今の俺では蟒蛇雀1人を相手にしてもほぼ確実に負けるレベルだろう。ウリウムを手に入れたことで戦術の幅は広がったし、高難度の魔法もいくつか使えるようになった。しかし、それだけであの気狂いの魔法使いと同じステージに立てたとは思っていない。


 つまり、俺を排除したいなら、さっさと直接的な手段で来ればいいのだ。『脚本家(ブックメイカー)』の警告通りなら、この地にいるのは蟒蛇雀やアマチカミアキだけではない。『ユグドラシル』の中でも別格とされる実力を持つ天上天下も、唯我独尊も、傍若無人だっている。


 花園や姫百合の護衛が周囲を警戒してはいるが、それすらも容易に突破できるに違いない。祥吾さんや大橋理緒さんのような実力者もいるが、護衛全員が同じだけの実力を持っているわけではない。穴は必ずどこかにある。2、3人が一度に攻めてきたら、1分も経たずに俺を殺せるだろう。にも拘らず、このような回りくどい真似をする必要が果たしてあるのかということだ。


「エマ、どう思う? 俺の排除が目的だとして、『ユグドラシル』側がこんな回りくどい真似を使う必要があると思うか?」


 白銀色の包囲網を、気付かれる事無く突破できるような実力者が控えているのに?


「……分かりません。確かに、聖夜様の排除を目的としているだけだとするならば、このような手法を取る必要はないはずです」


 だよな。


 それなら、『ユグドラシル』ではない、別の誰かとか?

 有益な情報を提供したい、とか。


 いや、無いか。

 それなら誘拐なんて物騒な手段を取る必要など無い。


 それに、本当に接触したいならもう少し信用してもらえるよう努力するだろう。こんな訳の分からないメールは送ってこないはずだ。大体なんだよ、この必要最低限の内容しか書かれていないメールは。内容は2行のみ。それ以上の情報なんて……。


 ……。


 そこで、思考が止まった。

 おかしい。


 もう一度文面を読み返す。

 おかしい。おかしいぞ。


 思わず、まじまじと手にしているクリアカードを眺めてしまう。




 預かりものをお返ししよう。

 条件:単独。30分以内に「朱の料亭」023。




 これが届いたメールの全てだ。

 それ以上の情報は何も無い。


 違和感がようやく形になった。

 なぜ、送り主の情報が一切無いんだ。


 おかしくないか。


 このメールは携帯電話に届いたものではない。

 クリアカードから届いたものだ。


 フリーアドレスですらない。


 このクリアカードは身分証明書としての役割も果たしている。複数のアドレスを作ることは出来ない。というより、アドレス自体がそもそも存在しない。それぞれのクリアカードが持つシリアルナンバーで電話やメールをしているはずだ。


 ならばなぜ、このメールにはその情報が無い。

 これでは返答も出来ない。


 そもそも、なぜこのメールの送り主が俺のクリアカードの番号を知っているのかも不明だ。T・メイカーのものではない、この中条聖夜名義のクリアカードの番号を。


 くそ。

 悩めば悩むほど分からないことが出てくる。


 何だよ、30分って。

 行くなら考える時間なんてほとんど残っていないんだぞ。


「相手側に個人情報を用いずにメールを送る方法は存在します。日本で非通知の電話を掛ける際に184を付けますよね? それと同じようなものです。もっとも、そのクリアカードの機能をメールで使うのは稀です。返信が出来ませんからね」


 エマからの説明に納得した。

 クリアカードにそんな機能があるのは知らなかったな。


 取り敢えず、非通知でメールを送る手段があることについては理解できた。


 ただ、一番問題なのはそこではない。

 このメールを送って来た相手が、俺のクリアカードの番号を知っているということだ。


「相手側は、俺のクリアカードの番号を知っているってことの方が問題だよな」


「ですね」


 エマも頷く。


 誰だ。いったい。

 メールが送られてきたのは中条聖夜名義のクリアカードだ。


 アギルメスタ杯でのいざこざがあり、このクリアカードを発行してくれたのは『トランプ』だが、それだけで『トランプ』から情報が漏れたと仮定するのは早計だ。このクリアカードは、『黄金色の旋律』の構成員だけではなく、舞や可憐、祥吾さんに大橋理緒さんも知っている。何なら青藍魔法学園の知り合いの何人かも登録されていた。


 T・メイカー名義のクリアカードならば、『白銀色の戦乙女』のシルベスター・レイリーとケネシー・アプリコット、『番外』のジャスティンとイレーア、『御意見番』のイザベラ、そして『赤銅色の誓約』のモリアン・ギャン・ノイスバーンなども候補に挙がったのだが、そちらは今回は関係無い。


 これが『ユグドラシル』側からの罠であると仮定するなら、内通者としての疑惑が濃厚な祥吾さんか大橋理緒さんのどちらかから漏れたと考えるのが妥当だ。しかし、このタイミングでこんなメールを送り付けてくる意味が分からない。これでは、内通者がこちらにいると宣言しているようなものだ。舞や可憐は美月がついている。クリアカードを弄っていれば美月が不審に思うはずだ。


「聖夜様。お気持ちは分かりますが、内通者の件については一旦保留にすべきです。まずは、この誘いに乗るかどうかの決断を。時間がありません」


 エマの戒めに、我に返った。


 確かに、その通りだ。30分という制約がある以上、今優先されるべきは行くか否かを決めること。内通者の件も大事だが、このメールから文面以上の情報が得られない限り、内通者を特定することは困難だからだ。


「私情を挟んだ上での意見を述べさせてもらうとするならば、このメールは無視すべきです」


《あたしも! あたしも!!》


 エマの見解に乗じて、ウリウムもそう言う。


 私情を挟んだ上で、か。

 わざわざそう付け加えているということは。


「……警告を踏まえて考えるなら、行くべきってことだよな」


 俺の問いに、エマは視線を逸らしたっぷりと間を空けてから辛うじて頷いて見せた。


《エマちゃんの裏切者!!》


 ……ウリウム。

 お前は少し黙っててくれ。


「その考えを聞かせてくれるか」


「……通常であれば、絶対に乗るべきではない誘いです。それこそ、アリス・ヘカティアの一件が無ければ、見向きもしなかったでしょう。しかし、アリス・ヘカティアとの関係性を匂わせることで引っ掛かりを持たせた。アリス・ヘカティアを王城まで警護するにあたり、聖夜様へ同行を禁じたのは、襲撃者の誘拐を確実に成功させるためだった可能性があります」


 ……。

 そういうことか。


「俺には……、無系統魔法があるからな」


 エマが頷く。


「聖夜様の魔法を使えば、余程の敵でなければ逃走自体は容易でしょう。先ほど、聖夜様の安否は指令の達成条件に含まれていないという言い方をしましたが、指令を受けているのは聖夜様です。少なくとも、指令完遂が確定したルートに乗るまでは、聖夜様は生きていなければなりません。前回ルートの記憶を持ち、それを頼りに未来を変えられるのは、現状では聖夜様だけなのですから」


 実際には、アイリス様やクラン、ドロシーだって記憶自体はあるみたいだけどな。ただ、『脚本家(ブックメイカー)』から指令を受けたのは俺だけだ。指令を遂行する人間が、道半ばで倒れてしまっては困る、という考えには賛成だ。


「シルベスター・レイリーからの話を聞く限り、襲撃者は気配を断ち移動する手段に長けている者のようです。白銀色との直接戦闘を避けていることから、真っ向から力づくで叩き潰しに来るような輩ではない。聖夜様が同行していたとしても、殺害される展開になった可能性は低いと考えます」


 無論、ゼロと断定するには情報が少なすぎますが。

 エマはこう付け加えた上で話を続ける。


「その考えが当たっているのならば、『脚本家(ブックメイカー)』が同行を禁じたのは、やはりアリス・ヘカティアの誘拐を成功させるため。それによって何が変わるか。それが聖夜様に届いたこのメールです。勿論、このメールが、アリス・ヘカティアが誘拐されることによって生じたメールだとするならば、ですが」


 これも仮定の話ってことだよな。


「そのメールの誘いに乗る必要が無いのなら、そもそもメールの存在自体が不要になります。無視するなら、送られようが送られまいが関係無いですからね。送り主にメールを送らせるという行動そのものに意味があるとするなら、これまでの考察全てが無意味なものとなりますが、そのあたりまで考えだすとキリがありません。証明も出来ませんから」


「このメールが無視しても構わないものだとするなら、そもそもメールを送らせる必要が無い。メールが必要無いなら、アリス・ヘカティアの誘拐を成功させる必要も無い。現状がその逆である以上、この誘いに乗ることに、何らかの意味があるってことか」


「その通りです」


 ほとんどが仮定の話ではあるが、辻褄は通っている。この仮定を、確かな証拠を用意して確定させるには情報が少な過ぎる。しかし、タイムリミットがある上にこれ以上の考察は別の手掛かりが無い限り不可能だ。


 これで決めるしかない。

 どうする。


「聖夜様」


 思考の海に没頭しかけた俺を、エマの声が引き戻す。


「色々と面倒な言い回しで話してしまいましたが、結局のところ、貴方がどうしたいかです。『脚本家(ブックメイカー)』の望む展開とは何なのか。正解は誰にも分かりません。でしたら、貴方が思う通りに選択するべきです」


 俺が……、どうしたいか、か。


 俺は。

 少しでも可能性があるのなら、アリスを救いたい。


 小さく、ため息を吐く音が聞こえた。

 視線を向けると、エマが改めて口を開く。


「その上で、言わせてください」


 視線を、しっかりと俺と合わせて。


「決して、優先順位を履き違えないように。貴方にとって何が一番大切なのか。今回は、たまたま貴方の希望と『脚本家(ブックメイカー)』が望んでいるであろうと仮定した選択肢が、同じ方向へと向いていただけです。それが、今後もずっと続くとは限らない。次は、このように私と顔を寄せ合って検討する時間も無いかもしれない。僅か一瞬で求められる選択肢だってある」




 その時、貴方は。

 優先順位が低い方を、容赦なく切り捨てられますか。







「……聖夜君、行っちゃうんだ」


 聖夜の後ろ姿を見送りながら美月が呟く。


 エマは答えなかった。

 無表情のまま、口を堅く結んで。


 その表情から美月はどこまでを察したのだろうか。 


 頭を振った美月は、思考を切り替えることにした。直に、聖夜と入れ替わったウリウムの分身魔法が戻ってくる。分身魔法が来てしまえば、そのフォローに重点を置かなくてはいけなくなってしまう。その前に、美月は話しておくべきことがあった。


「エマちゃん、護衛の鷹津祥吾って人がいなくなってるっぽいんだけど」


「……何ですって?」


 エマの意識がようやく美月へと向けられた。


「確証は無いんだけどね。外と違ってこの建物の中だと、そんなに隠れる場所が無いでしょ? 商品が展示されているこの場所で、怪しい動きをするわけにもいかないだろうし。だから、ちらちら護衛の人たちが見えてたんだけど、鷹津祥吾って人だけが見当たらないんだよね」


「それはいつから?」


「えっと。最後に見たのは天道さん達に会った時だったと思うけど」


 人差し指を顎に当てて答える美月をしり目に、エマは眉間に皺を寄せた。


 聖夜がトイレへと向かったタイミングで姿を晦ませているなら、聖夜を尾行している可能性が高いと判断できたが、それより前となればそうもいかない。美月はあくまで最後に見たタイミングを答えただけなので、その後も普通に護衛として動いていた可能性もある。


(……難しいわね。聖夜様に届いたメールのことを考えれば、いくらでも疑うことは出来るけれど)


 無音白色の暗殺者が、T・メイカー捕縛クエストをギルドへ発注しなかった理由。これが本当に、『五光』のギルドを通じての牽制が無いからだとするならば。


(……試してみる価値はある。確率は3分の1)


 確証が無い故に、これ以上絞り込むことは不可能。

 このままでは堂々巡りのまま。


 仕掛けるなら今しかない。

 本当に祥吾と理緒が別行動しているのなら。


「美月、ちょっとこの場を任せるわ」


「え? あ、うん。分かった」


「聖夜様の分身魔法が来たら上手く取り計らって頂戴。助けが必要なら早めに連絡を」


「オッケー」


 美月が頷くのを確認し、エマは歩き出す。

 タイミングよく、理緒の姿を視界の端に捉えたからだ。


 迷い無く距離を縮めることで、理緒も自分に用があると察したのだろう。近くに控えていたメイド服の女性に何かを囁き、理緒自身がエマのもとへと小走りにやってきた。


「何か問題が?」


 立場上、エマは舞や可憐を護衛する聖夜の補佐だ。理緒からの第一声は、至極当然のものであると言えるだろう。


「いえ、少々気になることが。お時間を頂戴しても?」


「ええ、構いませんよ」


 表面上、理緒はにこやかに頷いた。


「初日のことなのですが。無音白色の暗殺者というグループと聖夜様が接触した時のことについてです。あの後、どのような処置をされたのかを聞いておきたくて」


 理緒の眉が、ほんの少しだけ動いた。


「祥吾さんから中条様にお話があったかと思いますが……。なぜそれを今?」


「確かに、護衛の方々で迎撃して頂いたお話は聞いております。ただ、増援に厄介な幻血属性持ちがいるという話でしたので、また襲撃されるようなことがあれば面倒だな、と」


 エマの説明に、理緒は「なるほど」と頷く。


「無音白色の暗殺者の構成員については、昨日のうちに顔と特徴を護衛全員に把握させています。護衛は絶えず周囲に展開しておりますので、皆様に接触する前にこちらで対処致しますのでご安心ください」


 理緒の口から説明された内容は、聖夜が語っていたものと一緒だった。


 問題は、ここから。

 エマはポーカーフェイスを装い口を開く。


「ギルドには協力を要請しなかったのですか?」


「ギルド?」


 理緒が眉を吊り上げた。


「無音白色の暗殺者はギルドに登録されたグループだったはずです。ギルドに協力を要請し、圧力を掛けてもらった方が良いのでは?」


「それが一番手っ取り早い手段だとは思いますが、残念ながらそうもいきません。国営では無いとはいえ……、国営では無いからこそと言うべきですか。ギルドは魔法世界エルトクリアにとって1つの大きな戦力ですからね。他国の介入は好ましくないと思われています」


 エマは、自らの心音が高鳴ったのを感じた。

 声に震えを出さぬよう注意しながら言葉を紡ぐ。


「しかし、今回の一件については話が別なのでは? ギルドに所属しているグループが、他国の修学旅行生を狙っているというお話ですよ。苦情を入れるくらいなら許されるのではないでしょうか」


「……確かに。言われてみれば一理ありますね。『五光』という立場上、接触は好ましくないと考えていましたが……、立場を意識し過ぎていたのかもしれません」


 腕を組んで思案顔になる理緒を観察しながらも、エマは自らのポーカーフェイスを崩さないように必死だった。沈黙はそう長く続かなかった。理緒が顔を上げる。


「祥吾さんが少々別件で外しておりまして。戻り次第、ホワイト様からの助言を伝えさせて頂きます。ギルドに協力を要請するかどうかの判断は、こちらに任せて頂いてもよろしいでしょうか」


 それはまずい。


 このやり取りでエマが得たかったのは情報だけ。本当にこの案が採用されてしまえば、折角回避していたT・メイカー捕縛クエストが、結局発注されることになりかねない。ラズビー・ボレリアが死亡し、イザベラ・クィントネス・パララシアが既にこちら側の陣営についているとはいえ、万が一がある。


「待ってください。そう言えば、無音白色の暗殺者は聖夜様をT・メイカーだと見破ったのですよね」


「ええ。実際に構成員がその名を口にしていましたので、ほぼ間違いないかと」


「それなら、ギルドに言うのはやめておいた方が良いでしょう。聖夜様が接触した男は盲目だったと聞いています。その男はT・メイカーと接触したからこそ、聖夜様を探そうとしているのです。そこに『五光』がギルドへ『修学旅行生に手を出すな』と忠告してしまうと、T・メイカーが日本の学生であると勘付かれる可能性があります」


 その指摘に、理緒が目を丸くした。


「た……、確かに。その可能性は十分にあり得ますね。その点も踏まえ、こちらでもう一度検討してみます。貴重なご助言、ありがとうございます」


「いえ……、間接的にではありますが、私も雇われの身でありますので。また何か気付いたことがあればお話させて頂きますね」


 理緒の一礼に、エマも会釈をしてから踵を返す。


 表面上は、ただの情報のやり取りだけ。

 しかし、実際は。

 次回の更新予定日は、12月13日(金)18時です。

  ※何らかの奇跡が起きない限り、12月6日の更新はお休みさせて頂きます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] しょ吾さんが裏切ってるのかな...けど書き方が理緒さんが怪しい感じ... [一言] この章は推理小説
[一言] え……何だろ? エマちゃんはこの会話から何の情報を拾ったのか全然分からない……んーー?
[一言] 奇跡を!
感想一覧
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