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テレポーター  作者: SoLa
第10章 真・修学旅行編〈下〉
357/433

第0話 血塗られた真実《結末》

 はっじまっるよー。




 赤。

 視界は、その一色で埋め尽くされた。


 赤。


 赤。


 赤。




 鮮血だ。




 まるで噴水のように噴き上がったそれに、思わず思考が停止する。

 しかし、その状態は長くは続かなかった。


 ネジが抜けたような。

 歯車が外れたような。


 狂人の笑い声が、贅で尽くされた部屋に響き渡る。

 その笑い声の主は言う。


「やーっと隙を見せたねぇ、リナリー・エヴァンスゥ!」


 笑う。

 笑う。

 笑う。


 狂人が笑う。


「師匠!!」


 叫んだ。


 ほぼ同時に椅子が傾く。

 倒れ込む師匠を、咄嗟に抱き留めた。


 太陽の光を反射して輝いていたあの金髪も。

 吸い込まれそうだったあのサファイヤブルーの双眼も。

 女性なら誰もが羨むであろう白い肌も。


 師匠の身体から噴き出したどす黒い血液によって、全てが上書きされていた。


「師匠! 師匠!!」


 腕の中の師匠へ声を掛けるが、反応は無い。


 分かっている。

 そう。分かっている。


 即死だ。


 師匠の身体の至る所に風穴が空いている。腕も一本無くなっていた。床に落ちた腕はもはや原型を留めておらず、無残に斬り刻まれた痕跡がある。こうして目の当たりにしなければ、到底信じられないような状況。滅茶苦茶な状態だった。


 死んだ。


 師匠が。

 リナリー・エヴァンスが。


《マスター!》


 目の前の光景が、それを証明している。

 それなのに、頭が追い付いて来ない。


 まるで夢でも見ているかのような精神状態だ。


 辺り一面が血の海。

 誤解しようも無い事実だというのに。


「中条聖夜」


 声が聞こえる。

 男の声が。


 今の今まで。

 師匠が相対していた男の声が。


「次は君が席に座りたまえ。リナリー・エヴァンス亡き今、『黄金色の旋律』の代表は君だろう。……あぁ

、その席は血で汚れて座りたくは無いのかな? 盛者必衰(ジョウシャヒッスイ)、彼に新しい席を」


「はぁ~い、了解しましたぁ」


 テーブルを挟んだ目の前で1人死んだにも拘わらず、平然と席に座ったまま男は指示を出す。狂ったように笑っていた女がそれに応じて、椅子を1つ引き摺りながら俺のところまでやってきた。


「はい、どうぞぉ」


 この場にまるでそぐわない、甘ったるい声で女は言った。


《マスター!》


「座れという言葉が聞こえなかったのかい? その行為は、時間の浪費にしかならないだろう」


 男の声が聞こえる。


 男が率いる『ユグドラシル』にとっての最大の弊害。

 世界最強の魔法使いと謳われた、リナリー・エヴァンスが死んだというのに。

 

 にも拘らず。

 その男の声色には、喜びや嘲りといった感情などは微塵も含まれてはいなかった。

 含まれていたのは、師匠の亡骸を抱きしめる俺に対する、呆れのみだった。


《マスター、マスター!!》


 そんな男へ、話しかける声が。


「殺さないのか」


《マスター!》


 鼻を鳴らす音。

 そして、男は答える。


「彼は、ね」

 いつも誤字報告をしてくださる皆さま、ありがとうございます。

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