第12話 武闘都市ホルン ⑦
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トイレから戻って来たエマとも合流し、殿堂館の土産屋を冷やかす。その頃には、エマはすっかり元の調子に戻っていた。……少なくとも表面上は、だが。
殿堂館を出て、下町散策に繰り出す。
とはいえ、良くも悪くも大闘技場での催しを中心に回っているこの都市に、その他の見どころなど無いに等しい。結局はホルン大通りでのT・メイカーのグッズ散策となる。着々と舞の手元に積み重なっていくそれらに冷めた視線を送りつつ、班員の後を付かず離れずの距離で追っている時だった。
「聖夜様、栞様より連絡がありました」
舞たちに不審に思われないよう、さり気なく近付いてきたエマからそう声を掛けられる。
「……何?」
俺のその声に、美月から一瞬視線を向けられたが、美月は直ぐに舞や可憐とのT・メイカー談議に戻った。エマからは、分身魔法を舞や可憐に気付かれないように、美月に協力してもらったと聞いている。まだ遡りの話はしていないが、話しても構わないのではとも。
巻き込んでしまうのは心苦しいが、美月の知恵も借りられるのなら大きい。相談出来る相手が増えるのは喜ばしいことだし、今回のようなケースでも協力者としてカウント出来るのは助かる。ホテルに戻ったら夕食は早めに済ませて、王城に向かうまでの間で話を聞いてもらうことにしよう。何なら、俺が王城へ向かっている間にエマから美月に話してもらっても良い。
とはいえ、それはまだ後の話。
まずはこちらが先だ。
エマから差し出されたクリアカードの券面を見る。そこには、栞から送信されたメールの文面が表示されていた。内容はシンプルに、俺へ連絡を取りたいが今は電話しても構わないのか、だ。俺が厄介事に巻き込まれていることを考慮して、まずはエマへとワンクッション入れたのだろう。
エマに許可をもらって、栞に折り返しの連絡を入れる。
応答は直ぐにあった。
『エマさ……、ちょろ子さんですか?』
……あの時のあだ名。
まだ律儀に守っているのか。
「俺だ、聖夜だ」
『お兄様でしたか。……今、お時間を頂戴しても?』
「構わない」
周囲に気を配りつつ、そう答える。
この雑踏だ。多少の会話は耳に入らないだろう。会話を聞きたければ近付く他無く、近付けば隣で警戒しているエマが先に気付く。
『では、先に依頼されていた件から。ギルド本部で御意見番イザベラ・クィントネス・パララシアとの接触に成功しました。白銀色と赤銅色へ、それぞれ御意見番本人が直接依頼を取り付けてくださるそうです。白銀色は本日深夜、予め指定された時刻に。赤銅色については危険区域ガルダーから帰還次第、なるべく早くに。申し付けられた通りに依頼を出しましたが問題はございませんか?』
「無い。良くやってくれた」
遡りの話をまだしていないにも拘わらず、ここまで動いてくれたのは大きいぞ。後はギルド本部に向かいさえすれば、赤銅色はともかく白銀色の協力は得られたも同然だ。後は栞にはホテル・エルトクリアへと戻ってもらい、美月と同じタイミングで遡りの話をしてしまおう。
『後、それから別件で1つ。御意見番よりT・メイカー宛にお話がありまして……』
「……何だ?」
御意見番から、俺に?
まだ今回のルートでは接触すらしていないんだが。
『内容は窺えませんでした。どうしても直接会って話がしたいと。なるべく早めに、とも言われております』
「そうは言ってもな……」
どんな話かは知らないが、こちらも予定が詰まっている。
それこそ、今は舞たちのT・メイカーグッズの引率という出来れば誰かに代わって欲しい役目を果たしているところではあるが、同時に護衛なのだ。先ほどの交易都市クルリアのような一件でもない限り、そう易々とこの場を抜けることなど出来ない。夜は王城へ向かう予定があるし、俺の質問への返答も先ほど受けた。もう予定は変えられないし変えるつもりもない。
そうなると、最短でも王城からの招待を受けた後、白銀色と面会するまでの間ということになる。
「白銀色との面会前。あまり時間は無いだろうが、そこで良ければ応じると伝えてくれ」
前回ルートで会話した限りでは、向こう側はT・メイカーを『ユグドラシル』を釣り上げるための餌として考えていた節がある。その程度の説明なら、向こうに記憶は無いだろうが既にこちらはされているのだから受ける必要は無い。おまけに、御意見番が疑っていたラズビー・ボレリアは既に死んでいるのだ。それもいつ伝えるかだよな。今言えばすぐ来いとなるだろうし、会ってからにした方がいいか。
バレる危険を冒してまで、もう一度分身魔法を使用してこの場を抜け出す気にはなれなかった。無音白色を使ったかく乱作戦はもう使えないし、そうなると万全の状態である花園と姫百合の包囲網を突破しないといけなくなる。危険度は格段に上がっていると言えるだろう。
『分かりました。そのように伝えます』
「ああ、それとこちらからも確認したいことがある」
通話を終わらせそうな雰囲気だったので、切られる前にそう口にした。
『何でしょうか』
「T・メイカーの捕縛クエストは出されていないか?」
僅かな沈黙の後、栞が答えた。
『ホテルの置き手紙にもありましたね。ですが、そのようなクエストは出されておりません。一体どこからそのような情報を入手されたのですか?』
「悪い。話すと長くなるから、それはお前がホテル・エルトクリアに戻ってから説明するよ。今はどこにいるんだ?」
『まだギルド本部です。御意見番には一時的に席を外して頂いています』
なるほど。
「御意見番からは捕縛クエストに繋がるような話は出ていなかったか?」
『微塵も。宜しければ、この後そのようなクエスト依頼があったか確認しますが』
隣のエマを見ると、無言で頷かれた。
「頼む。ただ、現状でそういったクエスト依頼がギルドに来るかもしれないという情報源は、御意見番には明かせないんだ。その辺りは上手く誤魔化しながら聞いて欲しい。出来るか?」
『お任せください。それでは、御意見番との面会は、白銀色の面会前に応じる事、そして、T・メイカーの捕縛クエスト依頼がギルドに届けられているのかどうか。以上2点を確認して、エ……、ちょろ子さんのクリアカードにメールを送りますね』
「頼む」
栞は本当に頼りになる。
もう全てをエマと栞に任せてしまいたい。そこに縁先輩や、蔵屋敷先輩、そして美月のバックアップがあれば、もう俺なんて必要無いのではないだろうか。こういった頭を使う戦いは俺の得意分野では無い。それを今回の件では痛感しまくっている気がするぞ。
『それが済み次第、私はホテル・エルトクリアのお兄様のお部屋へ戻るということでよろしいですか?』
「そうだな。そうしてくれ」
『それから、お兄様。ホテルに戻ったら、お兄様のクリアカードの連絡先、教えてくださいね』
「そうしよう」
『では』
心なしか弾んだ口調で、栞から別れの言葉が放たれた。
俺の返答と同時に通話が切れる。
エマに礼を言ってクリアカードを返しつつ気付いた。中条聖夜名義の新しいクリアカードと栞のクリアカード、まだ連絡先の交換が済んでいなかったな、と。交易都市クルリアにて栞から連絡が来たのは、T・メイカー名義のクリアカードを使用していたからだ。わざわざ連絡先の交換に許可を求めてくる辺り、律儀なあいつらしい。
「仮にイザベラ・クィントネス・パララシアへ捕縛クエストに関する情報が来ていない場合、クエスト依頼を無音白色が出さなかった理由を考えるべきです」
クリアカードを受け取りつつ、エマは言う。
「そうだな」
ギルド長と副ギルド長に連絡が付かない以上、クエスト依頼を請け負ったギルド職員が次に相談する先は御意見番だ。いや、副ギルド長から御意見番へは話を通すなと言いくるめられていた場合、そうとは限らないのか? いや、違うな。そもそも無音白色の依頼自体が突発的なものだ。この件については、ラズビー・ボレリアの介入の有無は関係無いと見るべきか。
しばらく舞たちのT・メイカーグッズ漁りに付き合ってると、エマのクリアカードへ栞からのメールが届いた。舞たちに気付かれないように、さり気なく2人でその内容を確認する。
結果は……。
白銀色との面会前に時間を作る旨は了解。
こちらはいい。
問題なのは。
御意見番に、そのような捕縛クエストの情報は届いていない。御意見番は、念のために受付嬢全員に黄金色関係のクエストが届いていないかも確認した。しかし、そちらもゼロとの事。
こういった内容が栞らしい丁寧な文面で記載されていた。最後に『これよりホテルに帰る。無事に着いたら改めて連絡する』といった内容で締められている。
エマと顔を見合わせる。
「クエスト依頼は出されなかったと見るべきだな」
「そうなりますね」
問題は、なぜなのか。
それが分からない事だ。
T・メイカー捕縛クエストは、こちらにとって足枷でしかない。だからこそ、それを回避出来るなら喜ぶべきだ。しかし、本来なら起こるはずのそれが起こらないことは、違和感を通り越して不気味にすら感じてしまう。
「『ユグドラシル』側の介入と見るべきか?」
「そう判断してしまうのは早計です。『ユグドラシル』側のメリットがありません」
だよな。
俺がT・メイカーとして他のことに気を回さなければいけないのなら、それに越したことは無いはずだ。第一、無音白色の一件は別としても、『ユグドラシル』と繋がりのあったラズビー・ボレリアは赤銅色を扇動して黄金色と白銀色を捕縛しようと企んでいた。わざわざ介入してまで捕縛クエストを取り下げさせるとは考えにくい。
「しかし、そうなると……。そもそも無音白色がギルドにクエスト依頼を出さなかったということだよな」
ギルドにクエスト依頼が出されたら、ほぼ間違いなく御意見番の耳には入るはずだ。クエストが出されていない以上、下の者が独断でクエストを受け入れた気配も無い。独断で破棄する暴挙を冒すくらいなら、御意見番に相談するだろう。そうなっていないということは、クエスト依頼そのものが無かったと言うことになる。
だが、無音白色がクエスト依頼を取り止める理由が分からない。盲目の男と接触し、祥吾さん達が再び俺と接触しようと企んでいたその男を取り押さえようとしていたことからも、クエスト依頼を出す動機としては十分なはずだ。
「……出さなかったではなく、出せなかった、ではどうでしょうか」
出せなかった?
「例えば、既に『無音白色の暗殺者』は全員死んでいる、とか」
……。
ぞわっとした。
そんな俺の様子に気付いたのか、エマはにこりと微笑んだ。
「あくまで可能性の1つです。もっとも、かなり確率は低いと思いますよ。先ほども言った通り、『ユグドラシル』側に介入のメリットは無いわけですから。白銀色がこの段階で動いていないことは、前回ルートで証明されているのでしょう?」
「あ、ああ。そうだな」
そう返しながらも自然に笑えているのかどうか、自信が無い。
いや、正直に言おう。
絶対に自然な笑みなど浮かべられていない。
「何も影響が無ければ、遡りの記憶が無い者は前回ルートと同じ行動を辿るはずなのですが……。そうとは言えないという事なのでしょうか」
「いや、それは考えにくいな。現に盲目の男は前回ルートと同じ場所にいたし、同じセリフを俺に投げかけ、同じ行動を祥吾さん達の前でも見せている」
「……ですよね」
2人で仲良く首を傾げる。
狙ったわけではないが、タイミングから角度、挙句は向きまで。
まるで一緒だった。
その後も。
時折声を掛けてくる舞や可憐に応えつつ、2人であーだこーだと言い合ったが、結局納得のいく回答は見つけられなかった。
「仕方ありません」
気を取り直したかのようにエマは言う。
「分からないものはいくら考えても分かりません。私から提案した手前申し訳ないのですが、回答が出ない問題に思考を割いても時間の無駄にしかなりませんので、一旦打ち止めとしましょう」
「……そうしよう」
頭がパンクしそうだ。
「修学旅行初日のT・メイカー捕縛クエストは出されない。その認識で動きます」
「ああ。おかげで王城に向かう時間も変更しなくて良さそうだ」
もともとT・メイカーの姿で向かうことを想定していなかったため、迎えはホテル・エルトクリアの近くまで来てもらえることになっている。どうせそうならと、前回ルートでギルド本部訪問に費やした分も全て撒いた時間を王城へ向かう時間に指定していた。全ては王城での一件を済ませた後、白銀色の対応に使いたいが為だ。
強欲になっておいて良かった。そして、急用やら突発的な腹痛やらという苦し紛れの時間稼ぎをクィーン相手にしなくて済みそうで良かった。クィーン相手にドタキャンが通用するのは、俺の師匠だけだろう。
「その王城の件ですが……。どうしても私が同行してはいけませんか」
エマから受けた質問への返答は決まっている。
「ああ。悪いが俺1人で行く」
これに関しては、エマが同行することで生じる影響が怖すぎる。貴族都市ゴシャスには、エマの家族がいる。いくら勘当されて家を追い出された立場だとしても、あの問題だらけの『黄金色の旋律』に血縁者が籍を置いたとなっては黙っていられないだろう。特にリナリー・エヴァンスを敵視している家の場合、王城で権力を盾に面倒事を引き起こされる可能性すらある。
ガルガンテッラ家は七属性の守護者の末裔。
確認するまでも無く、王族を除けば魔法世界内における権力は断トツだ。
「送迎にはアルティア・エースが付くはずだ。心配は無いだろう?」
何せ魔法世界最高戦力の一角だ。
「それが心配なんですよ! 前回ルートでは貴族都市ゴシャスで戦闘に及んだと言っていたではないですか」
声を落としながらも悲痛な叫びを上げるという、器用な真似をするエマを手で制する。
「大丈夫だ。前回はT・メイカーとして出向いたこともあって、俺も色々と尊大な態度を取ってしまってな。今回は大人しく謙虚に行くから大丈夫」
俺に興味を持っているという話だったが、最悪泣きながら頭を下げることで許してもらおう。『国の重鎮とも呼べる御方が、他国の小市民を虐めて評判は大丈夫ですか』戦法だ。
それでもなお、不満そうな表情を浮かべるエマの肩を軽く叩く。
「大丈夫、大丈夫だ」
実際のところは、そう思わないとやってられないというだけの事だが。
☆
ホテル・エルトクリアに戻ると既に夕食を食べれる時間になっていたので、そのままバイキング形式のレストランに入ることになった。前回ルートでは一度解散して部屋に戻っていたと記憶しているが、これはT・メイカーの個人展を挟んだことでホテルへの到着時間が変わったからだろう。
夕食時には、特に変わった事はなかった。強いて言えば、将人達からT・メイカー捕縛クエストの話を受けなかったことくらいだろう。この時間になっても捕縛クエストが出ていないという事は、無音白色は本当にクエスト依頼をギルドに出さなかったという事だ。
何が原因かは未だに分かっていない。
まさか、本当に全滅したとかじゃないだろうな。
前回ルートでは魔法世界特有の食材に舌鼓を打っていたはずだが、今回は何を食べたのかすら曖昧なまま食事を終えてしまった。明日朝7時にこのレストランで集合にして解散する。これで修学旅行1日目の班としての行程は全て終了だ。
班員と別れ、0514号室へと戻る。一緒に戻ると舞や可憐に怪しまれてしまう為、エマと美月も一度各々の部屋へと帰って行った。自室のクリアカードは栞が持ったままのため、ノックをして中へ入れてもらう。
そして、一番最初に俺がした事は栞に謝ることだった。
「お兄様、私は怒ってなどいませんから……」
あわあわしている栞へ深く頭を下げる。
部屋に入って俺に対して、栞が「冷蔵庫お借りしています」と言った時は、どういう意味なのかまったく分からなかった。しかし、内容を理解してからは一気に冷や汗が出た。俺は、栞の食事について何も考えていなかったのである。こっちは呑気にバイキングを楽しんでいたのに、だ。機転を利かせた栞が、自分の飲み物や弁当を購入していなければ酷いことになっていただろう。
これは頭を下げずにはいられない。
そこまでまったく気が回っていなかった。
栞から「じゃあ、お兄様名義のクリアカードと連絡先を交換してくれたら許してあげます」という罰にもならないような罰をもらい、連絡先を交換しつつT・メイカー名義のクリアカードを受け取る。
「……それで、説明して頂けるんですよね? ギルドでの依頼の件や捕縛クエストの確認……、そもそもお兄様がなぜリナリーと『ユグドラシル』の会談について知っていたのかを」
「勿論」
全部話す。
だからぜひ力を貸して欲しい。
そのタイミングで、部屋の扉をノックする音が聞こえた。
「来客の予定が?」
「ああ、協力者だ」
覗き窓で確認しつつ、扉を開ける。
「失礼致します」
「説明してもらいに来たよ~」
エマと美月がやってきた。
「舞たちには気付かれていないな?」
「勿論です。2人は露天風呂に行きました。私がまだ本調子ではないので部屋で休むと伝え、美月はその付き添いという名目にしておりますので」
「なら大丈夫か」
女性の風呂は長いって言うしな。
露天風呂ならじっくり楽しんでくることだろう。
「あら? ちょろ子さんに……、鑑華さん。ああ、お二人ともお兄様と同じ班でしたか」
ひょっこり顔を覗かせた栞が目を丸くする。しかし、自分で気付いたようだ。
「え? 栞ちゃん? ……え?」
美月は大量のはてなマークを浮かべつつ俺を見る。エマは、俺がサンフランシスコ空港で栞に声を掛けた事も、魔法世界内でもクリアカードで栞とやり取りしていた事も知っている。だから平然と栞に会釈を返していたが、美月はそうもいかないよな。
「色々と込み入っていてな。説明するから適当に座ってくれ」
エマと美月がベッドへと腰かけている間に、栞が冷蔵庫から人数分の飲み物を持ってきた。どうやらホテル内に潜んでいる間に消費する自分用の食糧の他に、こういった物もちゃんと用意していたらしい。美月の分もある辺り、栞の用意周到さが窺える。
……後できちんと代金は支払おう。
「さて」
と、言ったところで俺のクリアカードが着信音を鳴らした。
ふざけんなよ。
なんてタイミングだ。
そう思いながらクリアカードを操作する。
電話では無くメールだった。
送り主を見て、思わず固まってしまった。
「聖夜様?」
俺の異変に気付いたのか、エマが俺の名を呼ぶ。
「……エマ、済まないが2人への説明を頼んだ。最悪、御意見番と白銀色の相手は、エマと栞にしてもらう可能性もある。その説明もしておいてくれ」
「え? どういうこと、聖夜君」
「お兄様?」
置き去りとなっている美月と栞が、揃って首を傾げた。しかし、それに構っている余裕も無い。急いで黄金色御用達のローブと仮面をナップサックに詰める。
メールの送り主はクィーン。
内容は――。
貴族都市ゴシャスの麓まで迎えを寄越したから、好きなタイミングで登城せよ。
次回の更新予定日は、8月19日(月)です。