【――現在のルートが破棄されました――】
3月4日分、最初の更新は第13話です。
読み飛ばしにご注意ください。
現在、3時間毎に1話ずつ更新しています。
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聖夜が本を閉じる。
同時に、今の今までここへいたはずの聖夜の存在が掻き消えた。
本を閉じる直前に『脚本家』が発した言葉が聖夜へ伝わったのかは分からない。本来なら伝える必要の無かった言葉だ。その言葉からは何の情報も得られはしないのだから。だからこそ、意味の無い言葉を発する『脚本家』の抱く感情を、修は正確に理解していた。
静寂が場を支配する。
ため息を1つ。『中条聖夜』と刻まれた本を一瞥し、修はタイトルを一撫ですると『脚本家』へと振り向いた。
「本当によろしかったのですか? 遡りの栞を……、それも特別なものまで使用されて」
『仕方が無い。リナリー・エヴァンスにここで退場されては困るのだ』
それよりも、と『脚本家』は続ける。
『私は休む。ここから出れば巻き戻った後の世界だ。少なくとも、今回の件が片付くまでは目覚めないだろう。後はよろしく頼む』
「分かりました。おやすみなさいませ」
修は一礼してそう言った。
同時にモニター画面が消える。
修は手にしていた『中条聖夜』の本を宙へと放った。すると本は青白い光を発しながらふわふわと飛んで行き、本棚の影に入って見えなくなった。修は反応の無くなった『脚本家』へもう一度頭を下げてからその場を後にする。
扉を開けてもとのカウンターへと戻ってきたタイミングで、懐のクリアカードが着信を知らせる音を響かせた。
「……さて」
修は取り出したクリアカードの券面を見ることなく、通話ボタンをタッチした。
まるで。
誰からの着信か分かっているかのように。
次回更新は、3月5日(火)0時です。
次回更新で9章『修学旅行編』はおしまいです。