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テレポーター  作者: SoLa
第9章 修学旅行編〈下〉
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第7話 発見

 新年あけましておめでとうございます。

 今年もわたくしSoLaと『テレポーター』をよろしくお願い致します。




 ケネシー・アプリコットは天才だった。


 ただ、その才能は彼女が欲していた戦闘職に関するものではなく、どちらかと言えば研究職の方面に向いていた。初めは護身術として始めた格闘術も、良家の嗜みとして始めた剣の腕も、悪くは無いがあくまでその程度。他人には無い幻血属性も、(はかり)属性という中途半端なもの。天から与えられた才能(ギフト)だと喜んでいた気持ちは、その幻血属性固有の能力を知った瞬間に消え失せた。


 秤属性。

 相手が先手を取った時のみに発現する属性魔法で、相手が発現した魔法と同程度の発現量、魔力濃度で自らも同じ魔法を発現できるといったものだ。


 簡単に言えば、相殺するための魔法。しかし、相手が属性を付加させていても、その属性までは真似できない。というのも、相手がどのような属性を付加させてきたとしても、ケネシー側は秤属性という基本五大属性と特殊二大属性にある属性優劣の枠組みから外れた属性を既に付加されているため、発現させた魔法に新たな属性を付加することは現状では不可能。つまりは、ほぼ無属性と同義なのである。


 おまけに。

 相殺するための魔法と言っても、相手が自分よりも格上の実力者だった場合、その相手の発現量や魔力濃度に合わせて秤属性の魔法を使えば、自分の方が早くガス欠になるのは間違いない。秤属性によって同程度に合わせるために使用される魔力は、秤属性が補ってくれるわけではない。あくまで動力源は自らの魔力生成器官からだ。


 使えない。

 ケネシーは直ぐにその結論に至った。


 但し。

 ケネシーは天才だった。

 使えないから切り捨てるのではなく、使えないものを使えるようにカスタマイズしたのだ。







 アイリーンの繰り出した連撃を、クルルが回避する。時に味方からの障壁魔法を交えて的確に躱していく。しかし、アイリーンの属性変異によって生じた黒き雷の機動力特化による攻撃は、もはや常人では目で追えないほどの速度に達していた。


 一撃が、クルルの左腕を掠める。正確に言えば、クルル本体には当たっていない。サイズが大きすぎるが故に慣性の法則で置き去りにされていたローブの一部分が切り取られた。それを、アイリーンの左手が掴む。


 後退。

 アイリーンがその場から姿を消したかと思えば、ケネシーの直ぐ近くに着地していた。アイリーンの手から、ケネシーの手へローブの切れ端が移る。


「ご苦労様。もう少し時間稼ぎは可能かしら」


「無論」


「じゃあ、よろしく」


「了解」


 体勢を立て直したクルルがケネシーのもとへ飛び込んでこないうちに、アイリーンは再び跳躍してクルルとの距離を詰めた。舌打ちをしたクルルがそれを迎え撃つ。その光景を横目で見届けながら、ケネシーは受け取った切れ端を、天秤の胴に空いている口へと入れようとして――。


 美しい軌道を描いた一太刀を、ケネシーは軽く後退することで躱した。次いで襲い来る凶刃をレイピアで弾く。ケネシーは見事に釣り出せた獲物に笑みを浮かべて口を開いた。


「ようやく姿を見せたわね、リーダーさん?」


「見せないわけには行かないでしょう。その天秤は起動させません」


 ケネシーからの台詞に、相手の狙いが分かっていつつも姿を見せざるを得なかったセリア=シャアア・サルネリアはそう答える。


「そう? 出来るものならやってみれ――」


 言い切る前に、ケネシーの左腕が狙撃された。咄嗟に発現した身体強化魔法の魔力を左手に集中させたことで負傷することは避けれたが、手にしていたローブの切れ端は吹き飛んでしまう。


「あら? まさか最後の1人まで潜伏場所を明かしてくれるとは思わなかったわ」


「明かしたところで、行かせませんがね」


 ケネシーは狙撃場所へと向けていた視線を相対するセリアへと戻した。振るわれる凶刃を巧みに躱し続けるケネシーの顔には、笑みが浮かんだままだ。


「何がおかしい」


「いえ、英断だったとは思うわよ? ただ、決断が遅かったわね」


「――何を」


『狙撃警戒!! 対象……、全域!!』


 セリアの耳に装着された通信機器から、メンバー最後の1人であるハレレ=クシュルア・ペルネリモから焦ったような声が届く。言われた言葉を咀嚼し、理解したセリアは表情を歪ませた。


「ぜん、いき?」


 真正面に立ち、剣を交えるケネシーは笑みを浮かべたまま。レイピアという剣は、刺突重視で打ち合いには向いていない。そんな剣でも巧みにセリアからの攻撃を躱し続けるケネシーは、左手の人差し指を空へと向けた。愚行だと思考の片隅で理解しつつも、釣られるようにセリアの視線が上空へと向く。


 そこで現状を理解した。


「撤退!!」


「了解!!」


『了解』


 セリアの絶叫に近い指示に、クルルとハレレが了承する。


 直後。

 流星群の一部が、ショッピングモールを直撃した。







 レッサー・キールクリーンは地面に転がる2人を見て、思わずため息を吐いた。


 弱い。弱すぎる。

 なぜこの程度の腕前で自分の前に立ちはだかろうとしたのか。


 ギルドランクB『風神雷神(フウジンライジン)』キュロット・ヒサミとメロス・ヒサミ。2つ名は無く目立った功績も無い。というより、名前以上のことをレッサーは知らない。名前を知っているだけ奇跡だ。


「あぁ……、どこかで聞いたことがある名だと思ったら、アギルメスタ杯でT・メイカー様に挑んでいた奴らだったな」


 同志と共に繰り返し見ていたT・メイカーの雄姿を目に焼き付けているうちに、自然と相対する魔法使いの情報も頭に入っていたようだ。T・メイカーが参戦したアギルメスタ杯が収められたVTRの再生回数は、100や200では到底足りない。その映像に含まれている情報なら、いつの間にか憶えていても不思議ではないだろう。なにせ、白銀色の面々は目を閉じればいつでもどこでもあのアギルメスタ杯の光景を鮮明に思い出せるだけの境地に達している。


「さて……」


 双剣を鞘へ納めつつレッサーは転がる男たちから視線を外す。それなりに派手にやってしまった自覚はあったので、早々にこの場を後にしなければ次が来てしまう。レッサーが派手にやったのではなく、相手が謎の必殺技を大声で叫んだり、周囲へとやたらにアピールするように魔法を使ったというだけなのだが。


 レッサーが一歩を踏み出そうとして。


「ようやく見つけたぞ。『風神雷神』の者たちには感謝をしないといけないな」


 ナノ・レ・パルパロテ。

 闇夜の灯りが消えた商店街の先に、1人の男。


 ここはギルド本部のある大通りから道を2本外れた先にある商店街。正直、いつギルドランクAの者たちに絡まれてもおかしくはない場所であるとはレッサーも考えていた。ただ、まさか自分たちにとっての本命がわざわざ来てくれるとは思わなかった。


「わざわざ死にに来るとはご苦労な事だな、ギルドの駄犬が。実のところ、私は今相当にキている(、、、、)。殺しは禁止されているが、勢い余って殺してしまうかもしれない。そう思う程度には、な」


「黄金色と白銀色の天下は今宵終わる。『遅延術式解放(オープン)』、『堅牢の天蓋(グンガンガルディガ)』」


 ナノの頭上に、遅延魔法によって発現された天蓋魔法が姿を見せる。その光景にレッサーは眉を吊り上げた。


「いいのか? 防犯カメラが設置されているこんなところでそんな魔法を使っても」


「ふ……、愚問だな」


 ナノは嗤う。


「カメラはあくまで映像のみ。犯罪者に対して懸命に戦ったギルドランクBの者たちに代わり、この俺が天罰を下したようにしか見えんよ」


「なるほど」


 対して。

 レッサーは仕舞われた双剣を抜くことなく、肩を竦めた。


 その仕草に、ナノの眉が吊り上がる。


「……なぜ抜かない? 諦めたのか?」


「馬鹿か、貴様は」


 鼻を鳴らしながらレッサーは人差し指を夜空へと向けた。


「私を撃つ前に、まずはアレらを迎撃してみることだな」


「……は?」


 相対している女が何を言っているのか分からず、呆けた声を上げながらナノは夜空へと目を向ける。そこで初めて気づいた。


 星が降ってきていることに。







「うおっ、マジかよ。本当に星が降ってやがる。こりゃ壮観だな。ははは」


 ギルドランクA『無音白色の暗殺者』のアジトにて。

 窓越しに傍から見れば幻想的に映るであろう光景を眺めながら、リーダーである菅野宮源五郎は笑い声を上げた。


「ボス、本当に行かなくていいのか?」


 ホルダーから抜いた愛銃を眺めながら、ベルリアン・クローズは問う。ドゾン・ガルヴィーンも、サメハ・ゲルンハーゲンもこの場にはいたが、誰も口は開かない。やむを得ずベルリアンは聞かざるを得なかった。招集は掛けられたものの、一向に動こうとしないからだ。


 ベルリアンに問いかけられた菅野宮は、少しの間を置いて窓から離れた。この部屋においてもっとも上座であるその席へ躊躇いなく腰を下ろし、ベルリアンへと目を向ける。


「おう。今回、わざわざこんな時間にお前ら全員を呼び出したのはな。この戦いに参戦させないためなんだわ」


 テーブルの上に置かれた菅野宮のクリアカードには、ギルドから届いた大規模クエストの詳細が書かれたページが開かれている。


「……その理由は?」


「成功するわけねぇからさ」


 ベルリアンからの質問に、菅野宮はつまらなそうに答えた。


「そもそも、黄金色と白銀色が赤銅色に喧嘩を売ったってのが疑問だ。何でそんな無意味なことをする必要がある?」


「それは……、自分たちと同格になる者を疎ましく感じたのではないのか?」


自分(てめぇ)のこと以外、何にも関心が無さそうな黄金色が? 黄金色のこと以外、どうでもよさそうな白銀色が?」


 そう言われてベルリアンが押し黙る。


「むしろ逆だろう? 自己顕示欲の塊だぜ、赤銅色は。英雄(ヒーロー)ってやつに本気でなろうとしてやがる。馬鹿だよなぁ。英雄ってのは『なる』ものじゃねぇ。気が付いたら『なってる』ものだ。黄金色のリナリー・エヴァンスのようにな」


 いつの間にか遠い目をしていた自分に視線が集まっていることに気付き、菅野宮はわざとらしく咳払いした。


「とにかく、無音白色は今回お休みだ。これはリーダー命令、背くことは許さん。陰でコソコソされるのも面倒だ。他に思っていることがある奴はここで言え。何かねぇか?」


「……招集に応じてここへ来た時、ボスはどこへ行っていたのダ?」


 サメハが問う。


 無音白色の面々は各自部屋を別で借りているが、菅野宮はアジトを仮住まいとして利用している。つまり、招集命令に応じたサメハたちよりも遅くここへ着くことはあり得ないのだ。にも拘らず、サメハたちが到着した際、菅野宮はここにいなかった。


「あぁ、ギルド本部に行ってきた。今回のクエストに応じる気はねぇってな」


 その答えに対して、サメハではなくベルリアンが口を開いた。


「わざわざ言う必要はあったのか? スルーすれはいいだけの話だろう?」


「普通は、な。『虹花火』とかはそうするんじゃねーか? ウチは一度T・メイカーの機嫌を損ねちまってるからな。アピールだよ、アピール」


 無音白色は、黄金色がそんなことをするとは思っていません。

 ですので、今回のクエストへの参加は拒否します。


 つまりはそういうことだ。


 言うまでもなく、アピールはギルドに対してではなく黄金色や白銀色へ向けて。昨日の大規模クエストの発端は無音白色。これ以上黄金色や白銀色の機嫌を損ねればどうなるか分かったものではない。菅野宮がいくら頭を使ったところで、リナリー・エヴァンスはそれを力技で平然と突き破ってくるだろう。負け戦をする気はなかった。


「これから周りはどう動くのか。ある程度予想はつくのか? それでなお、俺たちは動かない方が良いと?」


 これまで沈黙を保っていたドゾンが口を開く。


 黄金色や白銀色に敵対しない方が良いことは理解している。それでも、こうした大規模クエストに参戦しないことは、今後ギルドで共に活動していく上で、他のグループからの心証はよろしくないものになるだろう。ただスルーするだけならまだしも、明確に拒絶しに行ったのだから尚更だ。


 それでも、菅野宮の答えは変わらない。


「結論から言えばイエスだ。それでも俺らは動かない」


 煙草に火を付けながら菅野宮は続ける。


「他のグループの奴らも大方予想はつくが……、数が多すぎるからギルドランクAの奴らだけにしておくか。まず、さっきも言った通り『虹花火』は動かないだろうな。リーダーのミネリアン・グネルド・スピーニアは実力者だが、極端なほどに慎重派だ。確実に黄金色と白銀色を悪と断じる証拠がない限り動かねぇ。昨日の大規模クエストにも顔を出さなかっただろう? それが良い証拠だ。次に『若葉色の旋風』は……」


 一度言葉を切り、菅野宮は紫煙をゆったりと吐き出した。


「正義感が強すぎる。昨日の大規模クエストはでかくはなったが人探しってところからスタートしているし、だからこそあいつらは顔を出さなかったんだろうが……、今回は違う。3人しかいねぇ上にストッパーもいねぇ。最前線で戦ってるんじゃねーか? 白銀色の慈悲に期待ってところか。T・メイカー相手なら殺さないでもらえるかもな。んで、『茜色の夕景』は黄金色肯定派だろう? 白銀色に真意を問い質して、今頃は粋がって出てきたギルドランクB以下を潰して回っている頃合いだろうな」


「T・メイカー相手なら殺さないでもらえる。そう考える理由は?」


 ドゾンからの問いに、煙草を咥えた菅野宮は笑みを浮かべた。


「お前が生きているからさ。白銀色クラスのリナリーの狂信者なら、自分の正体が勘付かれたと感じた時点で、対象者は血祭りだろう。大通りでの接触はそれだけ危険だったってことだ。今後は本人に声かけるより、まずは俺たちに声を掛けろ。いいな」


「……了解した」


 ドゾンは神妙な表情で頷いた。


「実力を隠している可能性は?」


「あ?」


 ベルリアンからの問いに、菅野宮は眉を吊り上げた。


「赤銅色が実力を隠して立ち回っていた可能性は無いのか?」


「ねぇよ。0パーセントだ。言っただろう? 赤銅色は自己顕示欲の塊だってな。出し惜しみなんてしてねぇに決まってんだろ。かつての白銀色と同じく最速で駆け上がってる。ただ、違いがあるとすれば……、白銀色はギルドに嫌われていながらも実力で昇格したのに対して、赤銅色はギルドに媚びて評価点で昇格するってところか」


 赤銅色への辛辣な評価に、ベルリアンは思わず笑ってしまう。それを自覚はしているのだろう。菅野宮も軽く笑ってみせた。


「それで……、今後はどうなると予想しているんだ?」


 ベルリアンが先を促す。笑みを浮かべていた菅野宮は、一転してつまらなそうな表情を浮かべつつ、まだ吸える量が残っている煙草を灰皿へと押し付けた。


「黄金色と白銀色が赤銅色を潰して終わりだ。それだけは確実だが……。黄金色がどれだけ白銀色の手綱を握っているのか、T・メイカーという存在が白銀色にとってどれだけの比重を占めているのか、リナリー・エヴァンスが今回の一件に干渉してくるのか。これで結末は大きく変わってくる」


 灰皿から立ち昇る煙に目を細めつつ、菅野宮は目を細める。


「T・メイカーが正しく機能するか、もしくはリナリー・エヴァンスが干渉してくればギルドや赤銅色にとって最高のパターン。おそらく赤銅色は明日も無事に息をしているだろう。ギルドランクSに昇格出来るかは分からねぇがな。最悪なのは、白銀色が暴走したパターンだ」


「赤銅色は生き残れないカ」


「それだけじゃねぇ」


 サメハの言葉に、菅野宮は首を振った。


「ギルドそのものが無くなるだろう。と言うより、随分と他人事のように言うじゃねーか、サメハ。忘れてねーだろうな? 俺たちだってまだ粛清対象なんだぜ」


 菅野宮の言葉に、サメハだけではなくドゾンやベルリアンの表情も凍り付く。


「正直なところ、ここへ全員が無傷で集合出来る確率は60パーセント程度だった」


「……思っていたよりも高い数字だな」


 ベルリアンの呟きを拾った菅野宮は口角を歪めた。


「そりゃそうさ。真っ先に狙われるのは俺だからな」


「免罪符を与えないようにするためか」


 ドゾンの言葉に菅野宮は「そうだ」と肯定する。


「俺たちを粛清したい白銀色からすれば、大規模クエストを拒否させたくなかったはずだ。その点は赤銅色に感謝だな。あいつらが煽ってくれたおかげで、白銀色のヘイトは赤銅色へほぼ全振りだ。この一件が片付くまでは、白銀色の標的は変わらないだろう」


 ため息を1つ吐いた菅野宮は、背もたれに身体を預けながら天を仰ぐ。


「ったく、こんな一大事にあのジジイがいねぇとかふざけてんのかよ。知らねーぞ? 帰ってきたら拠点が無くなってるとか笑っちまう。ラズビー・ボレリアだけでどうにかなるわけねーだろうが」







「……メイカー様」


「おう」


 とある民家の屋根に着地して身を屈めつつ、シルベスターからの声に応える。シルベスターもすぐ傍に着地して気配を消した。


 男3人が路地裏を疾走しているのを発見した。おそらく、戦場へと意気揚々と向かうところなのだろう。うち1人はホテルで会ったノーツ・チェン・ウールアーレ。他2人も直接の面識はないものの、エマから見せてもらった号外のおかげで見覚えがある。


 既に意識は戦場に向いているのか、こちらから発見されたことに気付いていないようだ。気配を消しているとはいえ、流石に不用心すぎるだろう。


「前から順に、赤銅色リーダーのモリアン・ギャン・ノイスヴァーン、ホテルで最初に遭遇したノーツ・チェン・ウールアーレ、最後にサイラン・アークネルラです」


 リーダーもいるのか。

 それなら話が早い。


「シルベスター」


「はっ」


 シルベスターが小さな声で反応する。


「もう会話なんて無駄な工程を挟むのは無しだ。こいつらをここでボコボコにしてギルドの責任者と『トランプ』の前に引き摺っていく。喉は潰すな。俺たちの潔白を証明してもらわなきゃいけないからな」


 俺の言葉に、シルベスターは好戦的な笑みを浮かべながら口を開いた。


「……つまり、最低限喋れる程度であれば好きなようにして構わない、と?」


「俺はな……。正直に言って、機嫌が悪いんだ」


 その強い視線から目を逸らし、戦場へと向かう男3人の背を見る。


「好きに潰せ。俺もやる」


「御意」

 次回の更新予定日は、1月14日(月)です。

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