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テレポーター  作者: SoLa
第9章 修学旅行編〈中〉
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第10話 創造都市メルティ ③

 あつくてとけそう(・ω・)


※09/01 白銀色の戦乙女の会話を加筆修正しました※





「良かったら学習院の中を見学していかないか?」


 握手を終えたスペードがこんなことを言い出した。


「……いや、確かに興味はあるがまずいだろう。さっきのアルティア・エースの発言を忘れたのか?」


 俺とお前は青藍魔法学園で会っただけの関係。生徒会役員と、その生徒会に文化祭のスペシャルゲストとして招かれた超有名人というだけの関係だ。


「別にそこで意気投合していたってことにしておけばいいじゃねーか。バンドマンとただの観客って間柄じゃなかったんだぜ? お前は主催者側だったわけだしよ。んで、修学旅行で魔法世界に来るっていうから、俺の方から会いに来た。ついでに学習院を見学させてやろうと思った。十分じゃねーか。異文化交流だよ、異文化交流」


 ……まあ、それだけ口が回るのなら安心できそうではあるが。


「それに、今はどこも講義中だから人目は気にしなくていいはずだぜ。それでも気になるって言うなら、大図書館だけでも見ていかねーか? 興味あるだろう?」


 エルトクリア大図書館か。

 確かに興味はある。行けるなら行ってみたいと思っていた場所の1つだ。


 だが。


「悪いな。遠慮させてもらう」


 それでもリスクは高い。既に色々とやらかしてしまっている以上、これ以上いたずらに危ない橋を渡る必要は無いだろう。勝手に決めてしまって申し訳ないとは思うが、班員たちには後で謝ればいい。学習院の中は祥吾さん達も入れない。この判断は、護衛の観点から見ても間違っていないはずだ。


「そっか。んじゃ、俺は行くわ。気が変わったら連絡くれよ。クリアカードの連絡先交換しておこうぜ」


 そのくらいならいいか、ということで連絡先を交換しておく。


「おし。何かあったらいつでも連絡してきていいからな」


 滅多なことが無い限り絶対にしねぇよ。


「じゃーな!」


 スペードは嬉しそうに学習院の中へと去って行った。


 ……。

 視線を感じる。

 とても強い視線を。


「えっと、みんな色々と言いたいことはあると思う。ただ、内容としてはここで話すことが出来ないものばかりだ。だから、当初の予定通りホテルに戻ってからにしたい。構わないよな?」


 先に話しておくべきかとも思ったが、もうあの2人とは出会ってしまった後だし今更だろう。……『白銀色の戦乙女』とも会ってしまったしな。


 俺の言葉に舞が頷いた。


「そうね。ホテルでじっくりと聞かせてもらおうかしら。こちらとしても、当初より聞きたいことが増えてしまったし」


 それはもう、素敵な笑顔で。

 他の面々も似たような表情だった。







 カウンターで新たに追加された本の目録を目で追っていた今井(いまい)(おさむ)は、ふと気配を感じて視線を上げた。


「ここではいかなる魔法も意味を成さない。それは知っているはずだろう、アル」


 修が視線を固定した先では、エースがしかめっ面をして立っていた。ため息を1つ。入り口を背にしていたエースがゆっくりと歩き出す。


「今日はどうしたんだい? 小説を借りに来た、というわけでもないんだろう?」


 エースはこの空間に目を走らせる。円柱状に伸びるこの空間には、その壁に沿うようにして本棚が展開されており、そこには所狭しと本が詰められていた。学習院の中にある施設の1つであるはずなのに、上を見上げてみても、エースの視力を以ってしても天井は見えない。


 ここは紙の匂いで満たされていた。

 出入り口から正面には、修のいるカウンターがあるのみで、後はその背後に固く閉ざされた扉が2つ。




 この世の全てがそこにある。

 魔法使いという存在はそこから生まれた。

 世界を管理する大図書館。




 この場所を使えるのはエルトクリア魔法学習院の院生と許可を受けた人物のみ。その利用者も口留めされているのか外に一切の情報を漏らさない。それ故に、様々な憶測が飛び交う場所。


 エルトクリア大図書館。

 魔法世界エルトクリアに来た者誰しもが、一度は訪れてみたいと思う場所である。


 エースは自らの頭上、遥か遠くまでの伸びる本棚から修へと視線を戻した。


「『脚本家(ブックメイカー)』に会いに来た、と言ったら?」


「僕を困らせるのはやめてくれ。答えは分かり切っているだろう?」


 修は困ったような笑みを浮かべながらそう答える。予想通りの反応に鼻を鳴らしたエースは、本当の目的を口にした。


「少々調べ物をな。過去、この学園で行われた魔法実験についての資料が欲しい」


 その回答に、修が眉を吊り上げる。


「魔法実験に関する資料なら、同じ物が王城にもあるはずだ」


「そちらには手を付けたくない。学習院での保管先はここのはずだな」


 訳あり、と勘付いた修が表情を正して頷いた。


「協力しよう。どのような魔法実験か、誰が企画したものか、行われた時期はいつ頃か。言える範囲で教えてくれたらこちらで絞り込もう」


 カウンターまでやってきたエースは、顎に手を当てて考える素振りを見せてから口を開く。


「学習院の元教授、ティチャード・ルーカスという者が行った魔法実験で絞り込んでくれ」


「ティチャード・ルーカスね、了解」


 修がカウンターにあるパネルを弄る。エースは腕を組んでその光景を見守った。


 修の言う通り、学習院で行われた魔法実験の結果の全ては、王城エルトクリアにも知らされている。ここで保管されている資料と全く同じ物が王城にもあるだろう。しかし、王城でその資料を漁れば間違いなくギルマン・ヴィンス・グランフォールドにそれが伝わる。エースとしては、それだけは絶対に避けたかった。


 作業を終えた修が顔を上げる。手のひらを固く閉ざされた2つある扉のうち片方へ向けた。多くを聞いて来ない修へ心の中で感謝しつつ、エースはその扉に手を掛けた。







「さて、ケネシーの件はここまでとして次の議題に移ろう」


 シルベスターがティーカップを置きながらそう宣言した。円卓に座るメンバーが頷いたのを確認してから、改めてシルベスターが口を開く。


「皆にはあらかじめ説明していたとは思うが、ギルドの今後の方向性について、ケネシーが副ギルド長から聞き出した。その内容は到底承服できるものではない。その点については、皆も賛同してくれると思う」


 メンバーが再び頷くのを見届けてから、シルベスターが続ける。


「よって、私は『白銀色の戦乙女』のギルド脱退を提案する。異論がある者は挙手を」


 シルベスターを除く6人のうち、1人が手を挙げた。


「レッサー、お前の言い分を聞こう」


「ギルドメンバーでなければ得られない情報がある。今回の大規模クエストも、ギルドメンバーだからこそ、私たちのクリアカードにも参加要請のメールが届いた。こちらが調べなくても、向こうから情報を差し出してくれる立場にある。これを捨ててしまうのは惜しい」


「確かに、一理ある」


 レッサーからの進言に、シルベスターが頷いた。


「ただ、ギルドの対応が許せないものであることも事実。よって、籍だけは残した上でギルドからの要請は一切拒絶することを提案する」


 円卓に沈黙が下りる。皆が複雑な表情をしていた。おそらく思いは皆一緒だろう。ただ、発言者であるレッサーのように割り切れなかったというだけで。


 沈黙を破ったのは、やはりと言うべきかシルベスターだった。


「少々熱くなっていたようだ」


 小さく頭を振りながらシルベスターは言う。


「やり方が気に食わないから脱退、というのは早計だったな。我々が何よりも優先すべきことは『黄金色の旋律』一択だ。有益な存在であるためには私情は捨てなければならない」


 シルベスターの言葉に、皆が頷いた。


「私はレッサーの提案を推す。他に意見がある者は挙手を」


 誰も手を挙げる者はいない。

 それを確認し、シルベスターは言う。


「決まりだな。ギルドには残留とする。但し、今後ギルドからの要請については一切拒絶だ。……、ん?」


 シルベスターの宣言の直後、その音は聞こえた。


「来客か、珍しいな」


 階下から僅かに聞こえるノックの音に、シルベスターはそう口を開いた。『白銀色の戦乙女』が利用するアジトの場所は非公開だ。ケネシーの己が財力にモノを言わせた手法で入手したこの場所は、相手が『トランプ』でもない限り、絶対にバレていない自信がここにいるメンバー全員にあった。


 そうしている間にも、ノックの音は再び鳴る。


「レッサー、ニア」


 シルベスターからの呼びかけに、レッサーとフェミニアが立ち上がった。


「相手によっては殺していい。判断はお前達に一任する」


「了解」


「分かりましたわ」


 レッサーは双剣を抜刀し、フェミニアは円月輪を担ぎ、それぞれ退室する。開けっ放しにされた扉から、2人が階段を降りていく音が聞こえてくる。その音を聞きながらケネシーは頬杖をついた。


「誰かつけられていたのかしら」


「確証は無い。無論、ゼロとは言えないが」


 目を閉じ、腕を組んだシルベスターが答える。

 その直後だった。


 階下から、轟音。

 間違えようもない爆発音。


 部屋が揺れる。

 大きく揺れる。


 足元から揺さぶられるような一撃に、シルベスターとケネシーは思わず顔を見合わせた。


「む」


 声を上げたのはルリ。ちょこんと座っているだけだったルリは、勢いよく立ち上がったかと思うと、円卓に片足をかけ胸に抱いていた銀のお盆をカーテンで閉じられた窓へと放った。


 瞬間。


 ぱす、ぱす、と。

 何かが硝子を突き抜ける、軽い音が2発。

 応じてカーテンに空く風穴。


 そして。

 銀のお盆が、甲高い音を2回連続して響かせる。


 銃弾だった。


 跳弾したうちの1発は円卓の中央に、もう1発は首を反らせたアイリーンの耳元を掠めてから壁へと着弾した。


「良い腕だ」


 シルベスターが褒めたのはルリではなく、狙撃手。ルリが銀のお盆で銃弾を反らしていなければ、着弾先はシルベスターの頭部と胸部だった。


 確実に、殺しに来た二撃だった。

 円卓の上で変形したお盆がバウンドする。


「各員、戦闘態勢」


 シルベスターが口にしたときには、既に全員が抜刀していた。直後に飛来した凶弾2発を、状態強化が付与されたルリの日本刀とその鞘が弾き飛ばす。


「発砲音が皆無。気配も無し。中距離、遠距離狙撃……、む」


 ルリが眉を吊り上げた。次いで、背に守っていたシルベスターへと顔を向ける。


「標的が変わったっぽい」


「レッサーだな」


 ルリの言う通り、窓の向こうから何かを弾き飛ばすような音が聞こえてくる。


「どうするのよ」


「ふむ……」


 ケネシーからの問いに、シルベスターは目を細めながら顎を撫でた。







 アジトを飛び出したレッサーは、狙撃ポイントを割り出すべく、自ら凶弾の放たれる方角へと足を向けた。


「ふっ!」


 迫る弾丸を紙一重で躱し、回避不可と判断したもののみを的確に双剣で捌いていく。弾丸そのものを破壊できなくても、物質強化が付与された得物ならば、軌道を逸らすくらいならできる。


 狭い路地裏にて、身体を捻り、壁を蹴り、しゃがみ、跳躍し、次々と迫る弾丸をやり過ごす。


 そして走る。

 走る。

 ただ、走る。


 凶弾はどれ1つとしてレッサーを傷つけられてはいない。舞うように双剣を操り、衝撃波を散らし、レッサーは突き進む。


「見えた! そこ!!」


 狙撃が止んだほんの一瞬を突いたレッサーが跳躍した。側壁を2回、3回と蹴り上げ、目的のポイントへと到達する。


 そこは民家の屋上だった。

 そこに、狙撃手がいるはずだった。


 が。


「……魔法陣、だと?」


 そこにいたのは狙撃手では無く、淡い光を放つ魔法陣が1つ。

 直後、悪寒。


「しまっ――」


 言葉より早く身体が動いた。無理な体勢で身体を捻ったせいで、節々から悲鳴が上がる。それでも、動かないわけにはいかなかった。


 右足首、脇腹、左ひじ。

 そのどれもが紙一重のところで凶弾から逃れることに成功した。


 だが。


(まだっ!!)


 レッサーは更に身体を捩る。撃たれたのはレッサーの背後から。紙一重で回避した弾丸は、レッサーが発見した魔法陣へと吸い込まれて――。


 ――弾き返された。


 跳弾した3発をレッサーが回避できたのは奇跡に近い。ただ、その間に新たに撃ち込まれた1発が、レッサーの左手が握る双剣を弾き飛ばした。


 舌打ち。

 自らの愛刀へと目をやったレッサーだったが、それは一瞬だった。素早く体勢を整え、射線から外れた物陰へと身を潜ませる。民家の屋上にある、古びた家具などをまとめた物陰だ。耐久性はあまり無いが、身を隠す場所としては十分だろう。


 相手の腕が良ければ良いほど、確実に射線が通る時までは攻撃してこない。なぜなら、撃てば撃つほど、狙撃手のポイントが割れてしまうからだ。


 レッサーは素早く周囲へと視線を走らせるが、少なくとも見える位置に先ほどのような魔法陣は無かった。


「……跳弾用の魔法陣か。大した使い手だな」


 小さく肩で息をしながら、レッサーがそう呟く。頬を伝う汗を手で拭い、物陰から相手側の様子を窺おうとして。


 気付いた。


 身を隠す物陰。

 集められた家具を覆う汚れた布切れの奥。

 ひっそりと輝く魔法陣を。


「――っ」


 咄嗟に跳躍。

 今の今まで自分が潜んでいた場所に、ピンポイントで3発の弾丸が撃ち込まれた。回避を優先したが故に、その後のことは全く考えていなかった。レッサーの身体が、民家の屋上から投げ出される。レッサーは咄嗟に手を伸ばし、浮遊魔法を発現させた。



 自分にではない。

 屋上に転がった愛刀の片割れに。


 お願い、戻ってきて、と。

 レッサーのその想いに応えるようにして、転がっていた愛刀が小刻みに振動してから宙に浮き、そのままレッサーのもとへと飛んでくる。


 既にレッサーの身体は宙に投げ出されており、重力に従って落下を始めていた。それでも、レッサーの顔に浮かんでいたのは安堵だった。飛び込んでくる愛刀を受け止める。そして、レッサーの身体が跳躍したフェミニアに受け止められたのも、ほぼ同時だった。


「レッサー!」


「助かった。ありがとう。敵は跳弾の魔法陣を活用して狙撃してくる。射線が通っていないからと油断はするな」


「了解ですわ」


 長い跳躍からの着地と同時に、フェミニアは抱きかかえていたレッサーを離す。地面を蹴った2人は、別々の物陰へと身を潜めた。呼吸音を小さくし、気配を消していく。


 敵からの攻撃は来ない。

 レッサーとフェミニアが視線を合わせる。


 敵からの攻撃はまだ来ない。

 どちらかが唾を飲み込む音が聞こえた。


 敵からの攻撃は、まだ来ない。

 レッサーの懐でクリアカードが震えた。


 取り出したクリアカードは着信を知らせていた。相手はシルベスター・レイリーだ。レッサーは躊躇いなく通話ボタンを押す。レッサーやフェミニアを送り出した張本人であるシルベスターが、現状を理解していないはずがない。つまり、現状を踏まえた上で連絡してきているということであり、そうなるとそれを無視する選択肢はレッサーには無い。


『レッサー、ニアを連れて帰還しろ』


 その命令は、レッサーとしては受け入れ難いものだった。


「相手はこちらを殺す気で来ている。このままやられっぱなしで帰ってこい、と?」


『その通りだ。我々がギルドに留まると判断した以上、ギルドメンバー同士での争いはご法度だ』


 その断定した口調から、シルベスターは既に襲撃者が何者なのかを特定しているようだった。無論、レッサーとてこの攻撃手段とこれまでの『白銀色の戦乙女』の言動から、相手が誰なのか察しはついていたのだが。


「手を出してきたのは向こうだ」


『違うだろう? 最初に手を出したのはチルリーだ』


 シルベスターからの指摘に、レッサーが押し黙った。


『今なら、こちらも被害者として押し通せる。帰還しろ』


 無意識のうちにクリアカードを握る手に力が入っていることに気付いたレッサーが、意識的に大きく息を吐き出した。


『ギルドへ残ることへの有用性について説いたのはお前だったな、レッサー。我々は何の為にある。考えろ』


「……全ては、『黄金色の旋律』のために」


『その通りだ。そのために、今のお前がすべきことは何だ』


「……追撃を中止、直ちに帰還する」


『よし』


 絞り出すようにして答えるレッサーに、シルベスターが言う。


『リーンを残している。3人で新しいアジトまで来い。尾行には細心の注意を払え』


「了解」







「なあ、1つだけ行ってみたい場所があるんだがいいか?」


 エルトクリア魔法学習院を外から見学していた俺たちだったが、それが一段落したあたりでそう聞いてみた。


「行ってみたい場所ですか?」


 俺の質問に、可憐が首を傾げる。


「ああ、以前アギルメスタ杯に挑む時にMCを新調したんだが」


 学ランの下に忍ばせていたウリウムを取り出しながら言う。


「このMCを譲ってくれた店が、この都市にあるんだ。もっとも、師匠に言われるがままついて行った店だから、そこへ辿り着けるかどうかも分からないんだが」


 もう一度、ちゃんとお礼を言いたいと思っていた。


 俺のことを何度も助けてくれたこのMCを譲ってくれたことを。

 そして、ウリウムと俺を出逢わせてくれたことを。







 通信の切れたクリアカードを手で弄んでいたシルベスターは、不意に手元に影が下りたことで顔を上げた。立っていたのはケネシーだった。


「いいの?」


「何がだ」


「無音白色の連中を野放しにしておいて」


「構わないさ」


 シルベスターはクリアカードを懐に仕舞いながら言った。


「奴らが完全なる奇襲を用いても、我々の誰1人として無力化することが出来なかった。狙撃の腕は素晴らしかったが、結局のところ誰1人として撃ち抜かれてはいない。優勢に立ってからも一向に姿を見せなかったのは、姿を見せれば我々に狩られると理解している証拠。加えて……」


 シルベスターが笑う。


「リーンの話では、ギルド本部でT・メイカー様が直々に手を下したそうじゃないか。ついでに、相手にする価値も無いと判断された、と」


 その言葉に、ケネシーの顔にも笑みが宿った。

 暗い、暗い笑みが。


 そう。

 今回の襲撃者が所属する『無音白色の暗殺者』は、相手にする価値も無いと判断された。


 対して。

 護衛を申し出たアイリーンは、あしらわれてしまったものの対話は成立している。


 つまり、『白銀色の戦乙女』は多少なりとも価値があると判断されているということだ。


「今回のは、あくまで向こう側からの意思表示。ただそれだけのはずだ。『仲間がやられたら、こちらだって黙っていないぞ』という奴だな。奴らが身の程を弁えているのなら、これ以上の追撃は無いだろう。放っておけ。しかし、そうだな……。もし、今後も何らかのアクションがあり、なおかつそれが『黄金色の旋律』へ不利益を与えるものならば……」


 シルベスターは真顔で言い切った。


「殺せ」

 次回の更新予定日は、8月13日(月)です。

 そう、13日の月曜日なのです。 (強調)

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