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テレポーター  作者: SoLa
第9章 修学旅行編〈上〉
280/432

オマケ 没になったお話『クラン彼女役確定ルート』

 物語の進行上、没になったお話を公開してみる。

 所謂IFルート。本編とごちゃごちゃにならないよう、ご注意を。


 本編の第4話から分岐する形になります。

修学旅行編〈上〉

第4話 “私は貴方の彼女です”







 空の旅は順調そのもので、悪天候に見舞われることもなく、大幅な遅延もなく、青藍魔法学園2年生の集団はサンフランシスコ空港での乗り換えを済ませ、アオバ空港行きの臨時便は定刻に離陸した。このまま予定通りなら、あと1時間ほどでアオバ空港に着くはずだ。


「いよいよだね~」


 俺の隣に座る美月は、わくわくしている様子を隠すことなくそう言う。手に持つ魔法雑誌は、T・メイカーの特集が組まれているページが開かれていた。


「それ見て楽しい?」


「うん! 聖夜君も見る? このライターって結構辛口評価することで有名な人みたいだけど、べた褒めだよ?」


 なんでだよ。そこはちゃんと辛口評価してくれよ。


「いや、遠慮しておく」


 どれだけ高評価になっているかなんて想像すらしたくない。T・メイカーはアギルメスタ杯参加に必要な捨て駒で、知らず知らずのうちに忘れ去られる存在にしたかったんだけどなぁ……。


 窓の外に目を向けた。そこには一面の青空と白い雲が広がっている。俺は無意識のうちに握りしめていた手紙から、そっと手を離した。







 アオバ空港には定刻に到着した。

 空港の職員に従い飛行機から降り、いくつかのグループに分かれて手続きを済ませる。そこでクリアカードも渡された。


 クリアカードとは、魔法世界で入国の際に必要な身分証明書であり、中で買い物をする際に使用する電子マネーの媒体であり、電話やメールをする際に使用する携帯電話の代わりとなる万能カードのことだ。


 受け取ったクリアカードには「中条聖夜」という名前と「青藍魔法学園2年生」という所属がしっかりと書かれていた。ちょっと弄ってみたが反応しない。そうか、魔力濃度が濃い魔法世界の中でしか他の機能は使えないのか。


 カード内の残高だけは確認できるようで、「101E」と表示された。(エール)とは魔法世界独自の通貨単位だ。前回T・メイカーとして訪れていた時は「1E=100円」くらいだったと記憶しているが、学園側にあらかじめ支払っていた金額から考えると、今は円高のようだ。


 手続きが済んだ者から順に先導され、空港外で待機しているハイヤーに乗り込んでいく。乗ってしまえば5分ちょっとでアオバの大門前だ。「さっきの飛行機は隣に座ったんだから」だの「電車では隣にいた」だの理解不能なやり取りをしている班員どもをハイヤーに押し込み、俺も乗り込む。


 ここが一番手薄になるのだ。空港では遠巻きにこちらを警護している人間を発見できたが、ここではあからさまな配置をしていない。学生の修学旅行のハイヤーの周囲に黒塗りの車で固めるわけにもいかないだろう。


 視線を前に向けてみれば、大門はもうすぐそこだった。


「……まさかまたここへ戻ってくることになるとはな」


 それもこんなに早く。

 ハイヤーから降り、目の前にそびえ立つ馬鹿でかい門を見上げながら、俺はそう呟いた。


 大門。

 魔法世界エルトクリアへ入国する唯一の手段となる場所だ。


「なぁに辛気臭い顔をしてるのよ。もうちょっとテンション上げたらどうなの? 魔法世界よ魔法世界」


 カラカラとキャリーケースを転がしながら、舞がやって来た。その後ろには、可憐、美月、そしてエマが続いている。


「中条さん、あちらが入り口のようです。後続の方々が来ますし、よろしければ行きましょう」


「そうだな」


 可憐に促されて足を動かす。

 そこでは、俺たちより早く着いた面々が通行証を提示して次々と入国していた。


 大門は第8門まであり、入出国する人数や物資の数、大きさなどによって開く門の大きさが変わる。今回の一学年の修学旅行程度なら、一番小さな第1門で対応するようだ。関所に在中しているエルトクリア聖騎士団と思われる男2人で、次々と入国手続きを済ませている。


 前回、師匠と一緒に来た時にいたゴンザという名の隊長さんはいないようだ。良かった。向こうから何かをしてくるとは思えないが、黄金色の旋律として行動していた自分を知る人間とは極力遭遇したくない。何がきっかけで何がバレるか分からないのだ。


 列に並んだ学園生は次々に捌かれていく。クリアカードを専用の機械に読み取らせているようだ。担当している聖騎士も手慣れたもので、あっという間に俺の番がくる。にこやかに挨拶してくる聖騎士へ挨拶を返し、クリアカードを手渡した。同じように機械にクリアカードを通して……。


 一瞬ではあるが、聖騎士の顔が顰められた。

 ……おい。


 聖騎士は無言のまま、こちらから死角になっている机の下で何かをしている。微かに機械の動作音が聞こえることから、何やら別の機械に通されているようだ。そして、何事も無かったかのようにクリアカードを差し出してくる。受け取る際、小声で「メールはお時間のある時に一人でご確認ください」と言われた。……取り繕えているつもりなのかは知らないが、笑顔がひきつっている理由を教えてもらえませんかねぇ。


 促されるがまま、人が1人通れる程度の扉を抜ける。

 その先に広がるのは、堅牢なる大門の内側。


 その正体はアオバ駅の構内だ。

 駅の窓口や券売機、改札機、喫茶店なんかもある。


「遅かったじゃない」


 先に審査をパスしていた舞が声を掛けてきた。というより、俺が最後だった。2人体制で検問をしていたため、何人かに抜かれていたらしい。


「あー、ちょっとな。とりあえず、何も問題は無いから」


 そう返している間に、手にしていたクリアカードが電子音を鳴らした。どうやら魔法世界内に入り、機能のロックが解除されたらしい。




名前 :中条聖夜

職業 :学生(日本)

職業位:B

所属名:―

所属位:―

所持金:101E

備考 :【着信中】

伝達 :【未読】未読メールが一件あります。




 クリアカードを確認して、一番最初に目に留まったのは着信を知らせるアイコンではなく、未読メールのお知らせだった。先ほど聖騎士が言っていたのはこれのことだろう。厄介事を臭わせるメールにうんざりしながらも、音声のみを許可にして通話ボタンを押す。そして、あらかじめ打ち合わせしていた通りの台詞を口にした。


「入国しました。ホテルに到着次第、ホログラムシステムもオンにして連絡を入れます」


『了解』


 通話は直ぐに切れた。

 それを黙って見つめていた舞が、申し訳無さそうな顔をする。


「今の祥吾さんでしょ? 色々と気を遣わせて悪いわね」


「気にするな。ちゃんと対価は貰っているし、基本的にやるのは連絡係のようなものだしな」


 むしろ貰った額に対してそれしかしないのは逆にこちらが申し訳ないと感じるレベルだ。なおも表情を曇らせる舞の肩を軽く叩き、大げさなジェスチャーでこちらを呼ぶ美月たちのもとへと向かう。舞もすぐについてきた。美月に問う。


「どうした?」


「一日フリーパスがあるみたいだから、それ買わない? ホテル着いたらすぐ観光するんでしょ?」


 美月が差し出してくるパンフレットに目を通す。5Eでエルトクリア高速鉄道が1日乗り放題らしい。アオバの次の駅であるフェルリアまでが2Eであることを考えれば、すぐに元は取れそうだ。


「そうだな。そうしようか」


 班全員の承諾を得て、皆がクリアカードを券売機へと挿入する。タッチパネルを操作し、一日フリーパスを購入した。それに加え、俺は更に切符でアオバからホルンまでの乗車券を購入する。フリーパスはクリアカード内にデータとして書き加えられたらしい。別に購入した切符はちゃんと磁気タイプのもので出てきた。それはそのまま握り潰してポケットにしまう。


「何をなさっているのです? 聖夜様」


「いや、別に」


 一部始終を見られていたのか、怪訝な表情をしているエマにはそれだけ返しておいた。




名前 :中条聖夜

職業 :学生(日本)

職業位:B

所属名:―

所属位:―

所持金:92E

備考 :【エルトクリア高速鉄道】一日フリーパス

伝達 :【未読】未読メールが一件あります。




 クリアカードをタッチし、改札機を通る。

 その先は高速鉄道が行き交うホームだ。運の良い事に発車時間までもう間もなくの電車が停車している。キャリーケースを転がしながら乗車した。向かうのはアオバから一駅のフェルリア。旅行中お世話になるホテル・エルトクリアが目的地だ。まずはホテルへ直行し、先生たちが点呼を取る。その後は班ごとに自由行動となる。


 発車ベルが鳴り、扉が閉まる。

 ホームではギリギリで乗れなかった学園生たちが笑い声をあげていた。


 電車がゆっくりと走り出した。アオバ駅を抜けると一面の青空が見え、強い日差しが車内へと差し込んでくる。エルトクリア高速鉄道は、モノレールのように比較的高い場所を走っているため見晴らしが良い。遥か遠くには傾斜に造られた建物によって構成される貴族都市ゴシャス、いわゆる『白亜の頂』が見える。隣に座るエマが舌打ちしたのはきっとそのせいに違いない。


 電車のスピードが徐々に落ちていく。やがて電車は1つの建物に吸い込まれるようにして停車した。


 歓迎都市フェルリアと呼ばれるだけのことはあり、フェルリア駅の構内はアオバとは比較にならないほど豪勢なものだった。人込みも凄い。駅なのにこんな天井を高くする必要なんてあるのか、なんて下らないことを考えながらも人の波に乗って進む。改札機を抜けたところで全員いることを確認し、ホテル・エルトクリアへと足を向けた。


 ちらりとメイド服の女性が見えた気がしたが、きっと気のせいだろう。まさか「メイド服が戦闘服」とか言っていたのが本心だったとは思いたくはない。だから可憐がなんとなく複雑そうな表情をしているような気がするのも、きっと気のせいに違いないのだ。







 ホテル・エルトクリアはフェルリア駅の真正面にある。大きな噴水を中心に据えたバスターミナルを迂回し、無事に辿り着いた俺たちは、チェックインを済ませて一度解散した。各自荷物を部屋へ持って行くためだ。ホテル内の警護は祥吾さんたちが手配した女性の護衛に任せているため、一緒に行動する必要は無い。今後も男が入りにくい、もしくは入れないエリアに行く場合は交代してもらう手筈になっている。


 よって、ここは完全に別行動となり、俺は俺が宿泊する部屋へと足を向けた。


 本来であれば2人1組で部屋を借りているのだが、俺の部屋に相方はいない。俺が『青藍の1番手(ファースト)』だから優遇されているわけではない。単にクラスメイトに同性がいなかったからだ。


 入室するなりキャリーケースを端に追いやった俺は、クリアカードを取り出す。あらかじめ知らされていた番号を入力した。僅か1コールで相手方が応答する。


『やあ、聖夜君。無事にホテルには到着したようだね』


 ホログラムによって映し出された祥吾さんが温和な笑みを浮かべながら言う。


「はい。おかげさまで」


 俺の言葉に、黒服に身を包んだ祥吾さんは苦笑いを浮かべた。


『まだ僕たちは何もしていないんだけど?』


「あれだけ手厚く警護して下さっているにも拘らず何を仰っているのやら……」


 俺の呟きに、祥吾さんは軽く目を見張る。


『あれ? あまり目立たないようにしていたつもりなんだけど』


「流石にメイド服は目立ちますよ。どうにかならないんですか?」


『どうにもならないことは、君も十分に知っているだろう?』


 ですよね。

 あの人にとってメイド服はジャスティスらしい。

 意味が分からない。


『そちらで何か変わったことはないかい?』


 祥吾さんからの質問に、少しだけ考える。

 そして、すぐに思い出した。


「1つだけありました。入国の際、聖騎士からクリアカードを弄られたようで」


『……君のを、ということだよね?』


 首肯する。

 通話はそのままに、クリアカードを操作してメールの文面を表示した。


 ……これは。


『……聞いても構わない内容かな?』


「ええ、内容は2点。1つめは、王城への招待状です」


『それはまた……』


 祥吾さんが言葉に詰まる。だが、心境としては俺も同じだ。送り主は王族護衛集団『トランプ』の1人、クィーン・ガルルガ。王城への招待と言っても、正確には王城の一角であるベニアカの塔と呼ばれる場所への招待のようだ。俺からしてみれば、だからどうしたくらいの違いしかないが。


『聖夜君、返答は少し待ってもらえないか。剛様に確認をしたい』


「ええ、もちろんです」


 形式上、舞や可憐の護衛として雇われている俺が1人でノコノコ単独行動するわけにもいくまい。というより、正直なところ俺としては行きたくない。クリアカードには映っていない誰かに祥吾さんが指示を出している姿を見ながら、1つため息を吐く。


 魔法世界内で、外界に連絡を取る手段は少ない。事情が事情だけに、花園家の権力を使えばその手段も利用できるのかもしれないが、どちらにせよ時間はかかるだろう。むしろ、祥吾さんたちもフェルリアにいるのなら、一度魔法世界を出てから連絡した方が早いかもしれない。


 向こうがある程度落ち着いたのを見計らって切り出す。


「よろしいですか。メールに書かれたもう1つの点についても確認したいのですが」


『うん。聞かせてもらうよ』


「俺たちの護衛役として、魔法世界側からも人間を派遣するとのことなのですが」


 俺の言葉の途中で、祥吾さんは「あぁ」と頷いた。


『それはこちらも聞いているよ。というより、既に会っている。同士討ち、なんて事態は避けたいからね』


 理解できる。

 問題なのはメールにはその先が書かれているということだ。


「……では、『トランプ』の一角が直々に護衛役として派遣されるという件については?」


『……、……は?』


 祥吾さんが完全にフリーズした。

 心境は痛いほどに分かるが続ける。


「一緒にいても周囲に違和感をもたれないよう、年が近い者を派遣しておいたとのことです」


『つまり、僕たちのように遠目から護衛するわけではなく?』


「そういうことになるようです。派遣するという『トランプ』なのですが……」


 そこまで口にしたところで、扉がノックされた。


 ……。

 どうやら来たらしい。


『来客だね。まあ、こちらにもその情報は回ってきているわけだけど』


 頬を引きつらせながら祥吾さんは言う。護衛対象でもある俺の周囲にも目を光らせていたのだろう。その監視に引っかかっていたに違いない。既に扉の外にいる人物の正体を知る祥吾さんは、頭を抱えそうな勢いだ。そして、俺もクィーン・ガルルガからのメールで誰が来たのかは知っている。


 祥吾さんとの繋がりを隠す必要は無い相手。よって、通話状態はもちろん、ホログラムの表示もそのままにして、俺は来客の応対をすべく扉を開いた。


 そこには。


「来ちゃった」


 星でも飛びそうなウインクを決めたクランベリー・ハートが立っていた。







「……聖夜様、これはいったいどういうことでしょうか。説明願います」


「近い近い近い。まずは離れろ」


 集合場所であるホテルのエントランスに向かう最中、階段で偶然出会ったエマから超至近距離で質問された。クランはニコニコ笑顔で俺の隣に立っている。そのクランと一緒にいるところを見られたくないからわざわざ階段を使ったのに、なんでこいつはエレベーター使わないんだよ。


 クランは王立エルトクリア魔法学習院仕様の制服を身に纏っていた。大きなつばの帽子を深めに被ることでなるべく素顔を周囲に晒さないようにしているのだろう。手提げかばんには、猫の人形や缶バッチ、ストラップなど所狭しと猫グッズが装着されていた。


 まあ、余程至近距離でじっくり見ない限り、クランベリー・ハートであることはバレないだろう。


「よろしくね、エマちゃん。私のことはクランで良いわ」


「あ? 私が聞きたいのはそういうことじゃないんだけど」


 お前よく魔法世界最高戦力と謳われる『トランプ』相手にそんな態度とれるな。


「それじゃ、聖夜クン説明ヨロシク~。センセイに見つかっちゃまずいし、私は一度退散するね」


 そう言いながら、やや強めに腕を引かれたせいでバランスを崩す。

 そして。


「お、おい!?」


「あぁ!?」


 腕を抱きかかえられた上に頬にキスまでされたことで、エマの怒りが頂点に達した。そんなエマの様子を見て笑いながら、クランはさっさと走り去ってしまう。学園生が集まるロビーには一緒に行かないとは言っていたが、このタイミングで消えるのは卑怯だぞ!!


「……聖夜様」


 お、おう。

 残されたのは怨念を垂れ流すエマと俺。


「説明してください!!」


 うん。

 分かってる。

 だから一回落ち着け。


「俺、青藍には帰国子女として途中入学だったんだけど、その前はアメリカの学校にいたことになってるんだよね」


 当然、嘘であるが。

 実際は師匠にあちらこちらに振り回される日々だったわけだし。


「で、その時に偶然知り合って付き合い始めたって設定の彼女役らしいよ」


 なるべく大したこと無さそうに告げてみた。


「……」


 成功……、なわけがない。

 エマの顔からは表情が完全に抜け落ちていた。

 なにこれすごいこわい。







『……クランベリー・ハート。一応、俺は「トランプ」とは一切関係の無い日本の学生で通っている身なんだが』


『うん、知ってるよ。だからこの格好で来たんじゃない』


 ひらりと舞うスカートを摘みながらクランベリー・ハートは言う。そしてにっこりと笑った。


『人目を気にしてるのなら、とりあえず入れてくれないかしら』


 ……。

 言われるがままクランベリー・ハートを室内へと通す。本当なら男の借りた部屋に女を招き入れること自体が問題なのだが、ここまで来られてしまってはもう仕方が無い。幸いにして廊下に人気は無かったようだし、バレてないことを祈るだけだ。学園側にバレたら停学、下手をすれば退学だぞ。


『何を考えてるのかは大体想像つくけど、大丈夫大丈夫。そこらへんはちゃーんと抜かりないから』


 左様か。

 そこまで気が回るのなら、もう少し配慮して欲しかったよ。


 勝手に室内を物色し始めたクランベリー・ハートをしり目に、ドアを閉める。

 ついでに鍵もかけた。


『クランベリー・ハート』


『クランでいいよ。そんな長い名前で毎回呼ぶのも疲れるでしょ?』


 特別よ、とか言いながら投げキッスを飛ばしてきやがった。


『そうか……、では遠慮なく。クラン、クィーン・ガルルガからのメールでは、お前が俺たちと行動を共にし、警護を務めると書かれているのだが』


『んー、そうだよー』


 冷蔵庫の中身をがさごそと漁りながら、クランは間延びした返答を寄越す。


『どういう理由付けをするつもりだ?』


『理由付け?』


『俺たちと一緒にいる理由だよ。はっきり言って「トランプ」の名前はでかすぎる。これなら花園家と姫百合家が用意した護衛をそのまま付けて歩き回った方がマシなレベルだ』


『あはは、別に私は「トランプ」のクランベリー・ハートと吹聴して回る気はないよ。だからこそ、わざわざ通ってもない学習院の制服でコスプレしてきたわけだしぃ』


 ……コスプレ言うな。

 満足したのか冷蔵庫の扉をお尻で押して閉めたクランが、ようやくこちらに向き直った。


 そして。


『私は貴方の彼女です』


『……は?』

 修学旅行編〈中〉は、5月14日(月)より更新開始予定です。

 ただ、『これまでの主な登場人物』ページは更新開始前に公開するかもしれません。


 よろしくお願いします。

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