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テレポーター  作者: SoLa
第9章 修学旅行編〈上〉
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第11話 T・メイカー捕縛クエスト ②




『黄金色の旋律』は、魔法世界のギルドに登録されているグループの中でも飛び抜けて異質なグループであると言える。


 まず第一に、構成員をギルドが把握していない。


 普通に考えてあり得ないことではあるのだが、本当に把握していないのである。

『黄金色の旋律』の設立は、リーダーであるリナリー・エヴァンスが行った。王立エルトクリア魔法学習院を卒業してすぐにギルドを訪れたのだ。無論、ギルドは諸手を挙げて歓迎した。なにせ、学習院史上最高の天才魔法使いだ。それほどの人材がギルドメンバーに名を連ねてくれることは、ギルドとしては断る理由を探す方が難しかっただろう。


 リナリーはギルドに登録した際、様々なグループからの勧誘をすべて断り、自ら新たなグループを設立した。それが『黄金色の旋律』である。当初の構成員はリナリーただ1人。そして、ギルドが『黄金色の旋律』として登録したのは、後にも先にもリナリーただ1人である。


 しかし、初めの頃はそうでもなかったのだが、時が経つにつれて『黄金色の旋律』の戦果が明らかに個人では不可能なものに変わっていく。それこそ、同時期に別の場所でリナリー・エヴァンスが暗躍しなければ成し得ない事例もあった。だからこそ、ギルドは何度もリナリーに問い合わせた。新しいメンバーを迎えたのか、と。それに対する回答は否、それはそのうち無視に変わる。ギルドは様々な手段を講じたが、結局リナリー以外の構成員の姿は影も形も捉えることが出来なかった。


 そして先日、ついに姿を現した『黄金色の旋律』の構成員。

 それがT・メイカーだった。しかし、そのT・メイカーのクリアカードに『黄金色の旋律』を登録したのは王族護衛『トランプ』であり、ギルドには何の情報も入ってこない。『トランプ』側に直訴しても「答えられることは何も無い」の一点張り。しかし、そもそもグループの登録や運用はギルドの管轄であって、『トランプ』の裁量権の範囲内には無い。にも拘らず、ギルドの頭越しに手続きが進められ、いつの間にやらT・メイカーはギルドメンバーとなり、いつの間にやら『黄金色の旋律』の構成員が増えていたのである。ギルドとしては当然面白いことではなかった。


 第二に、『黄金色の旋律』に与えられたギルドランクSは、本来の選定基準から与えられたものでは無く、超例外的措置によって与えられたものだということ。


 ギルドに登録されているグループは、発注される様々なクエストを地道にこなしていくことで評価され、ギルドランクを上げていく。対して『黄金色の旋律』は、正規の手段でクエストを受注し完遂させたことは数えるほどしかない。5本の指で数えようとしても指が多すぎるくらいだろう。にも拘らず、『黄金色の旋律』がギルドランクSの地位足り得ているのは、リナリー・エヴァンス個人の戦果に他ならない。


 頼まれたことはやらないくせに頼まれていないことはせっせとこなす。複数のグループに同時受注させることで完遂を目指す大規模クエストを準備していたところ、何も知らされていなかったリナリーが偶然クリア条件を満たしてギルドにやってくる。危険区域ガルダーで討伐難度Sの生物が生息地を移しリスティルの近くまでやってきていると非常事態宣言を出そうとすれば、何も知らされていなかったリナリーが近くの飲食店にその生物を引き摺ってきて調理を頼んでいたこともある。賞金首の手配書を発行しようとすればリナリーが討伐済みだし、貴重な薬草採取を手配しようとすればリナリーが採取済み。その薬草を買い取ろうとすれば法外な買取額をふっかけられる。ガルダーとリスティルを結ぶ門が破られ市街地に危険生物が侵入した時は、ギルドに集められた者誰しもが死を覚悟したが、いつの間にかリナリーが討伐しており街の英雄に祀り上げられていたことだってある。


 他のグループといざござを起こせばリナリーが相手を壊滅させて終息、『トランプ』からの名指し依頼はスルー安定で気まぐれに受注してもドタキャンは当たり前、しまいには王様にタメ口と来た。


 そんな人物がギルドの言いつけを守るはずもなく、度重なる規則違反に強制クエストの理不尽な拒絶。拒絶の意思表示があればまだ良い方で、クリアカードに何通送りつけたところで基本的には既読スルーである。そもそも読んでいるかどうかも怪しいレベルである。


 ここまでくれば、お分かり頂けただろうか。

 そう。




 ギルドは、リナリーの自由奔放さを正当化させるためにギルドランクSを与えたのである。




 無論、その戦果はギルドランクSに相応しいものがあっただろう。しかし、ギルドランクSはただ結果を出せば良いという話ではない。呼び出しは当たり前のように無視され、呼んでも無い時に顔を出したかと思えば他のグループと喧嘩して相手を血祭りにあげる。クエストに向かったグループから、リナリーから仕事を横取りされた助けてと苦情が上がったことだって100や200ではきかない。同じくギルドランクSの『白銀色の戦乙女』の方がよっぽどその地位に相応しいと言えるだろう。


 そんな評価が真っ二つに分かれるグループの構成員の捕縛クエストである。しかも、いつもの見込みの全くないものとは違い、ギルドである程度名を上げたグループからの目撃情報有りのクエストだ。


 ギルドとして、突っぱねるのは難しいクエストだった。日頃から鬱憤を溜めまくったギルドメンバーの反発は買いたくなかったし、そもそもギルドが受理しないことで勝手に騒ぎを起こされても困る。ならば自分たちで手綱を握っていた方がコントロールしやすいと考えたのだ。


 もちろん、ギルドとして正体不明のT・メイカーと繋がりを持っておきたいという思いもあった。頭越しに登録されたせいで、ギルドとしてT・メイカーと接触したことは一度として無い。ギルドには所属する魔法使いの立場を保証する条文があるが、登録にギルドが関与していない以上、この条文をギルド側が律儀に守ってやる必要も無い。


 T・メイカーを敵に回したいわけではない。ただ、一度腰を据えて話し合いの場を持ちたいだけなのだ。今後はきちんとギルドを通して活動して欲しい。そして、可能ならばリナリーとの窓口役を担って欲しい。


 ギルドは、そんな淡い期待も抱いていたのである。




 そして。

 ――――それら全てが裏目に出た。







 中央都市リスティル。

 その一等地にあるギルド本部の扉が押し開かれた。


 大規模クエストの発生によって活気づいていたギルドには、ここ数時間ひっきりなしに魔法使いが出たり入ったりを繰り返していたため、それ自体は何ら珍しいことではない。だから、次々に舞い込む情報を精査し、まとめ上げる立場にいたギルド職員は、ルーチンワークのようにして手元の資料から顔を上げた。また誰かが新たな情報を持ち返って来たのか、と。


 そして。

 やって来た人物に真っ先に目を向けたそのギルド職員は、手にしていた資料を取り落とした。


 その音に気付いた魔法使いの1人がそれらを拾ってやる。しかし、その資料を差し出しても受け取らないギルド職員を怪訝に思い、その視線の先に目を向けた。


「……え」


 その僅かな声を聞き取った魔法使いが。

 その魔法使いの仕草に違和感を覚えた者が。

 いきなり話を打ち切り呆然とする話し相手に文句を言おうとした者が。


 静まり返る。

 静まり返っていく。


 ギルド本部にやってきた者は、白いローブを身に纏っていた。

 そして、顔には白い仮面。


 耳障りなほどの喧騒に包まれていたギルド本部は、今や痛いほどの静寂に包まれている。

 沈黙を破ったのは来訪者だ。


「邪魔をする」


 男の声だった。

 仮面によって若干くぐもった声が、ギルド本部に嫌に響く。


 男が一歩を踏み出す。そのすぐ後ろから、ピンク色の魔法服を身に纏った少女が姿を見せた。その姿に一部からどよめきの声が漏れる。その中で、後ろを歩く少女の名前が呟かれる。


 クランベリー・ハート、と。


 それらを無視し、男は正面のカウンターにて硬直していた受付嬢のもとまでやってきた。


「話を聞きたいのだが、構わないか」


 カウンターを挟み、男は言う。

 その隣にクランベリー・ハートが並んだ。


「……ク、クランベリー、ハート様」


「んー? 用があるのは私じゃないよ? 私、ただの付き添いだし」


 その言葉に、一部のどよめきが一層強まった。当然だ。クランベリー・ハートは王族守護の役目を担う魔法世界最高戦力が一角。そのクランベリー・ハートが、自らのことを隣にいる男の付き添いだと言ったのだ。


「……お、おい、てめぇ」


 震える声を上げたのは、白い仮面の男でも、受付嬢でも、クランベリー・ハートでもない。

 背中に斧を背負った髭面の男が、床を軋ませながら群衆の中から一歩前に出た。


 カウンター越しに受付嬢を見ていた白い仮面が、ゆっくりと髭面の男へと向く。

 そして。


「まさ――があっ!?」


 凄まじい衝撃音だった。

 髭面の男は、斧に手を掛ける暇すら与えてもらえず地面に叩きつけられる。


 再び静寂が訪れた。

 微かな呻き声を上げる髭面の男だったが、白い仮面の男は既に興味を失くしているのか、その仮面を受付嬢へと向けた。


「あの男は今、背の斧へと手を掛けようとしていた。正当防衛だな?」


「あ、あの、えっと」


「正当防衛だ。そうだな?」


「正当防衛だね。私のハートの称号に賭けて断定するよ」


 狼狽える受付嬢に代わり、白い仮面の男の横に立つクランベリー・ハートがそう宣言した。白い仮面の男は1つ頷くと、改めて受付嬢へと口を開いた。


「話を聞きたいのだが、構わないか?」


「ど、どのようなご用件でしょうか」


 他、誰1人として口を開かない。

 誰1人として動こうとしない。


 その中で、白い仮面の男は淡々と口にする。


「俺の捕縛クエストがこのギルド本部で受注されたと聞いた。その真意が聞きたい。責任者はいるか」


 その言葉に、受付嬢が息を呑んだ。

 いや、それは周囲の者も皆同じだ。


 ひりついた空気が辺りを満たす。


「あ、貴方は」


「身分証明か? したければ好きにしろ」


 震える声で口を開く受付嬢の先手を取り、白い仮面の男はぞんざいな仕草でカウンターへクリアカードを放る。それを恐る恐る受け取った受付嬢は、そこに書かれていた名義を口にした。


「T……、メイカー」


「では、こちらの問いに答えてもらえるか?」


 確認の言葉を投げかけるようなことはせず、T・メイカーは受付嬢の手から自らのクリアカードを引き抜き懐に仕舞った。


「俺はギルド本部の真意が聞きたい。ギルドには所属する魔法使いの立場を保証する条文があったはずだが、だとしたらこれはどういうことだ? まさかとは思うが……」


 T・メイカーが、僅かに首を傾げる。


「俺に喧嘩を売っているのか?」


「そ! そのようなことは決して――」


「T・メイカーァァァァ!!」


 咆哮。

 倒れ伏す髭面の男を飛び越え、ターバンを巻いた男がT・メイカーに飛びかかろうとして。


 煌く、銀色の閃光。


 抜き放たれた短剣は、T・メイカーが手を下すより早く弾き飛ばされた。甲高い音が鳴り響き、ターバンを巻いた男の後方に転がっていく。


「引け。さもなくば斬る」


 気迫に負け、ターバンを巻いた男が尻もちをつく。自らの得物を鞘に仕舞ったアイリーンは、もはやターバンを巻いた男になど目もくれず、T・メイカーの前で片膝をつき首を垂れた。


「『白銀色の戦乙女』所属、アイリーン・ライネスと申します。我がリーダー、シルベスター・レイリーより、貴殿を守護せよと仰せつかっております。貴殿の力に比べれば微力なれど、手足のようにお使い頂ければ」


 別グループとはいえ、同じギルドランクSに位置する者とは思えない態度だった。一瞬面を喰らったように硬直したT・メイカーだったが、端的にこう言い放つ。


「不要だ」


 冷酷に告げられたこの一言に、アイリーンはより一層深く首を垂れた。


「矮小なこの身であるにもかかわらず、出過ぎた真似を致しました。ご容赦を」


 そう言って立ち上がったアイリーンは、もう一度深く頭を下げると、素早く元の位置へと戻っていった。そして自らのクリアカードを取り出し、何やら操作を始めている。


 T・メイカーは再び意識を受付嬢へと戻す前に、ぐるりと室内を見渡した。


「話の腰を何度も折られるのは面倒だ。他にかかってきたい奴はいるか?」


「おっ――」


 俺がやる、と。

 言い終えるより早く、男は白目を剥いて倒れた。次いで、我こそはと身を乗り出そうとした者たちも、次々に卒倒していく。


 魔法の発現の兆候など、誰も感じないままに。


「さて」


 僅か数秒。

 たったそれだけの時間で、十数人の魔法使いを無力化してしまった。

 T・メイカーの仮面が受付嬢へ向く。


「答えを聞こう」


「わ、私たちはT・メイカー様の立場を危ぶめようとなど思っておりません!」


 その言葉に、T・メイカーが鼻で嗤う。


 直後、机の一角に積み上げられていた資料の束が前触れもなく弾け飛んだ。集められた情報を整理していたテーブルの資料が紙吹雪のように舞う。近くにいたギルド職員は驚きのあまりひっくり返った。


 仮にギルドの目的がT・メイカーとの繋がりを欲したが故の行動であったとしても、こういった状況に陥っている以上、T・メイカーを納得させるのは不可能だった。


 だからこそ、T・メイカーはその立場を逆手に取る。


「ならば、今、俺の前で。このクエストを取り下げてくれるということだな?」


 押し黙る受付嬢。

 当然、彼女にそんな権限は無い。


「T・メイカー」


 彼女の上司に当たる人物がようやく我を取り戻し話に加わろうとするが、それよりも早くT・メイカーに声を掛ける人物がいた。


 T・メイカーから少し離れた場所、背後に位置するテーブルから立ち上がったベルは、いつでも愛銃に手を伸ばせるよう意識しながら口を開く。


「俺は今回のクエストを依頼した者だ。名をベルリア――ぐっ!?」


 衝撃音。


 ベルは愛銃を抜くことすらできずに吹き飛ばされた。テーブルを転がし、資料の束を派手に撒き散らし、ベルは側壁へと叩きつけられてから地面に転がる。


 その間、T・メイカーは振り向くことすらしなかった。「……お前がそうか」と呟いただけだ。


「ぐ、あっ……、ごほっ、ごほっ、くっ」


 不意の衝撃にまともな受け身すら取れなかったベルが、咳き込みながら起き上がろうとする。

 しかし。


「よくもまぁ、面倒を持ち込んだ身分でありながら気軽に声を掛けてきたものだ」


「がああああああああああっ!?」


 ベルは起き上がることなどできず、その身体は容赦なく不可視の衝撃によって押し潰された。その衝撃で中途半端に引き抜かれていた愛銃の片方が、ベルの手から弾け飛ぶ。そこへ謎の衝撃波が殺到し、愛銃は修復不可能なまでに破壊された。


 そこでようやく、T・メイカーが背中越しに振り返る。


「用件を聞こう。ただ、手短に頼むよ。お前は俺に興味があるのかもしれないが……」


 数瞬の間。

 T・メイカーは躊躇いなく言い放つ。


「正直に言おう。俺はお前に興味が無い」


「ははっ、随分な言い草じゃァねーかよ。T・メイカー」


 ギルドの扉が開かれた。

 現れたのはギルドランクBのグループ『猛き山吹色の軍勢』のリーダー、牙王(ガオウ)だった。その好戦的な笑みを向けられたT・メイカーは、仮面の下で小さくため息を吐く。


「次から次へと……、血気盛んな奴らだ。いや、ギルドに名を連ねる者たちだ。それも当然ということか」


「よく分かってるじゃねーか」


「おっとそこまで」


 牙王が一歩を踏み出すより先に、クランベリー・ハートが割って入った。


「これ以上の私闘は見逃せないかな。双方魔力を抑えて」


 言葉に反し、ネコミミフードの奥から覗く笑みは不敵なものだ。言っているクランベリー・ハートの身体から魔力が漏れ出している。


 当然、牙王もそれには気付いているわけで。


「はーっ、天下の『トランプ』様に言われたんじゃァ、しょーがねーなって言うとでも思ってんのかボケェェェェ!!」


 咆哮と共に生じる衝撃波。

 牙王を中心として拡散するそれは、付近のテーブルや椅子ごと吹き飛ばして荒れ狂う。周囲にいるのは手練れの魔法使い達。弾き返すなり叩き落とすなりと慣れたものだったが、そのうちの1つのテーブルが、あろうことか戦闘能力があまり無い受付嬢の1人へと飛んだ。


 誰よりも早く、T・メイカーが動く。


 カウンターへと身を躍らせたT・メイカーが、飛んできたテーブルを蹴り飛ばす。その衝撃で砕けた破片から守るように、受付嬢を自らに抱き寄せたT・メイカーは言う。


「無関係な者を平気で巻き込む。貴様の腕もたかが知れているというものだ」


「ふっざけんなァァァァ!!」


「はいはい、そこまでって言ったでしょー」


 クランベリー・ハートが片手を振る。弾丸の如き速度で突っ込んできた牙王が、飛びかかる体勢のまま突如として宙で止まった。


「―――なっ!? クランベリーィィ・ハートォォォォ!!」


「貴様のT・メイカー様への言動、万死に値する」


 バチリ、と。

 牙王の耳に、放電の音。


 音も無く一瞬で距離を詰めたアイリーンの握る魔法剣が、青白い稲妻を纏い、牙王へと容赦なく振り下ろされる。


 しかし、その刃が牙王に届くことは無かった。


「うがああああああああああァァァァァァァァァ!!!!」


 牙王の咆哮に呼応し、体内に眠る膨大な魔力が一気に噴出する。


「うっ!?」


 それを超至近距離でまともに喰らったアイリーンが吹き飛ばされる。というより、これはもはや距離などは関係無かった。ギルド本部1階にいた全ての者が、牙王を中心として吹き荒れる魔力によって吹き飛ばされる。


 舌打ち1つ。

 腕の中で悲鳴を上げる受付嬢を無視し、T・メイカーは自らが吹き飛ばされた先にある壁へと視線を向ける。瞬間、その壁の一部が細切れになった。すり抜けるようにしてギルド本部の外へと躍り出る。


 その直前。


「クラン!」


「オッケー!」


 外へと身を躍らせるT・メイカーからの呼びかけに、クランベリー・ハートが答えた。


「逃がすか小娘ェェェ!!!!」


 クランベリー・ハートが右手を薙ぐ。距離があり、物理的な接触など何もなかった牙王が転倒した。それに向けてあっかんべーをしたクランベリー・ハートは告げる。


「というわけで、さらばだー。ギルドの諸君はさっさとクエスト撤回した方が良いぞー。そして、牙王。今回の非礼は多めに見てやるぞよ。余は寛大であるが故にー、なんちゃって! はっはっはー」


 芝居がかった台詞と高笑い。

 クランベリー・ハートは実に上機嫌な様子でギルド本部を去った。


 あまりの事態について行けず、完全に蚊帳の外にいた副ギルド長が膝から崩れ落ちる。

 ギルド本部1階はめちゃくちゃになっていた。

次回の更新予定日は、2月26日(月)です。

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