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テレポーター  作者: SoLa
第8章 エンブレム争奪戦編
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第13話 エンブレム争奪戦 ⑤




 可憐が逃走した沙耶と安楽の後を追い、旧館2階へと辿り着く間際にそれは起こった。


 爆音と共に崩落する2階の天井。

 元生徒会長・御堂縁による花園舞脱落のアナウンス。

 そして。


 崩落した場所から姿を現した魔法使い。

 青藍魔法学園における頂点。


 1番手、中条聖夜。


「――っ!?」


 階段を駆け上がる足は止めずに、腕に装着されたMCへと手を掲げる可憐。そんな姿を捉えた聖夜は手を可憐へと向けた。


「まあ、待て」


 制止した手で煙を払いながら聖夜は言う。


「舞が退場するんだ。やるならその後にしよう」


 抱きかかえていた舞を聖夜が離した。瓦礫に足を取られながらも距離を置く舞に、聖夜が声をかける。


「怪我は無いな?」


「……無いわよ」


 顔を合わせようともせずに舞が答えた。その声に混じる複雑な感情に、可憐が僅かに視線を逸らす。


 聖夜はそれ以上口にしなかった。

 舞も何かを話す素振りは無い。無言で聖夜に背を向ける。1階へと続く階段を目指し、瓦礫の上を歩き出す。


 その背中に、声を掛けるべきか。

 聖夜は悩む。


 舞の発現した不完全な全身強化魔法。

 その姿が、以前の自分の姿に重なっていた。


 死すらも覚悟した、あの魔法世界。

 そこで発現した属性共調。


 不安定な魔法。

 自らの魔力が制御できなくなる、あの感覚。


 結局、聖夜は声を掛けなかった。

 舞の姿が階段の下へと消える。


 聖夜は小さくため息を吐いた。







「……ふむ。随分と派手に暴れたようで」


「あー……、安楽先輩。これは俺のせいじゃないですよ」


 ふわふわと宙に浮く安楽先輩へ答える。


 完全に嘘だった。

 確かにこの状況を作り出す要因となったのは舞だ。暴走一歩手前の全身強化魔法の余波によって、旧館3階は凄惨な有様となっている。旧館の耐久値を著しく削ったのが舞であることは間違いない。しかし、最後の最後でとどめを刺したのは間違いなく俺の力技だろう。


「嘘つけ!! 完全にお前が魔力で叩き壊したんだろうが!!」


 そんなわけで、完全に巻き添えを喰らった大和さんがそう叫ぶのも無理はない。


 瓦礫を払いのけるその手と反対の腕には、エマが荷物のように抱えられている。完全に脱力しているエマはおさげと手足をだらーっとさせて、一言も口にしない。拘束が解けたのを良い事に、混乱に乗じて大和さんを仕留めようと動いたエマは、逆に大和さんの手刀によって気絶させられていた。


 そんなエマに同情の籠った視線を向ける。


 本当ならやられていたのは大和さんだった。ただ、足場が崩落するタイミングが絶妙で、ぎりぎりのところで仕留め損なったエマが逆に無力化されてしまったというわけだ。自分を助けようとしてくれた相手を仕留めようとして返り討ちにあったのだから、本来ならば同情の視線すら向けるべきではないのかもしれない。


 エマの今後の課題は体術か。

 そんなことを考えていたところで階段を上ってくる人物に気が付いた。


「……蔵屋敷先輩?」


 思わずその名を口にする。ここにいてはいけない人物がそこにいた。『大地(ダイチ)』を解き、瓦礫を払いのけていた片桐が、なぜか気まずそうに視線を背ける。蔵屋敷先輩はそれに反応しなかった。視線を大和さんの抱えるエマへと向ける。


「お預かりしますわ」


「あー、……助かるわ」


 大和さんが小脇に抱えていたエマを蔵屋敷先輩へと背負わせた。緩衝魔法は発動していないとはいえ、気絶した人間を参加させ続けるのは危険と判断したのだろう。大和さんはお邪魔キャラとしての参加だし、学園側に実力をアピールする必要も無い。これでエマも脱落か。


『気絶により、エマ・ホワイトを脱落とします。試験参加者は、試験官が退出するまで待機してください。こちらが許可するまでの間、魔法の発現を禁じます。なお、現在発現中の魔法については、待機状態にできるもののみ対象外とします。待機状態にできないものは一度解除してください』


 そのタイミングで縁先輩の放送が流れた。蔵屋敷先輩が一礼し、その場を去る。

 指示があるまで待機。

 完全に仕切り直しだな。


 軋む音がしたと思い視線を向けてみれば、安楽先輩が浮遊する車椅子に背中を預けた音だった。その周囲には『風の球(ウェンテ)』が3発展開されたまま待機状態になっている。可憐も何かの魔法を発現したまま待機状態にしているのだろう。その身体には冷気が纏わりつき、きしきしと音を立てていた。


 俺を含め、この場にいるのは争奪戦参加者全員。

 大和さん、安楽先輩、可憐、そして片桐。

 互いにけん制しているものの、誰に意識を一番割いているかは丸わかりだ。


 短く息を吐く。

 ここは2階。蔵屋敷先輩が旧館から出るのもそう時間はかからないだろう。

 そう考えた直後だった。


『試験官の退出を確認しました。5秒後に試験を再開します』


 縁先輩が校内放送でカウントを始める。

 その間、取り囲む面々を見ながら俺はこう告げた。


「宣言しよう。ここから先、俺は身体強化魔法以外、魔法は使わない。好きにかかって来いよ」


 空気が極限まで張り詰めた瞬間。


『ゼロ、試験再開です』


 空間が軋むような感覚。

 可憐の立つ場所から冷気が吹き荒れる。


 ただ、それよりも早く安楽先輩の『風の球(ウェンテ)』が飛来した。

 無詠唱で無属性の身体強化魔法を、右腕と左脚に発現。3発全てを拳で叩き落とし、いつの間にやら背後で発現されていた『風の球(ウェンテ)』2発も蹴り飛ばす。


 その頃には、眼前に片桐が木刀を構えながら迫っていた。

 しかし。


「おらぁぁぁぁ!!」


 俺が対処するまでもなく、大和さんの飛び蹴りが片桐の脇腹にクリーンヒットして、教室と廊下を隔てる側壁に激突する。派手な音を立てて側壁が破損し、片桐の姿が見えなくなった。しかし、他人の身を案じている余裕は無い。


 頭上に違和感を覚え、咄嗟に後退する。

 瞬間、空間が歪むような感覚の後に衝撃音。


 大和さんの無系統?

 エマを抑えつけていたやつか?


 首を反らせばぎりぎりのところを氷の魔法球が通過する。跳躍し、身体を捻る。四方八方から迫る『風の球(ウェンテ)』を躱し、弾き、叩き落とす。崩落させてしまったおかげで天井が高い。側壁を蹴り上げ、さらに上へと跳躍する。


 その動きに、浮遊魔法を使った安楽先輩がついてきた。下から放たれる可憐の魔法球を避けながら声を掛ける。


「最初は貴方ですか。安楽先輩」


 後頭部目がけて放たれた『風の球(ウェンテ)』を、後ろ手に弾きながら笑う。


「随分と発現範囲が広いようで」


「驚いた。初見でここまで易々と対応してみせたのは、かつての『不動の三席』くらいですよ」


 不動の三席。

 2年2学期から始まる選抜試験より上位三席を獲得し、以降一度もその座を譲らなかった時期に、縁先輩、大和さん、そして蔵屋敷先輩についたという非公式な別称だ。


「光栄ですね。あの3人と肩を並べることが出来るなんて」


 背後に次々と『風の球(ウェンテ)』を発現していく安楽先輩へ、そう告げる。


「その一人から目ぇ離してんじゃねーよ!!」


 放たれた回し蹴りを掴み、そのまま手元へ引き寄せた。直後に安楽先輩からの弾幕が殺到する。その全てを大和さんの背中が受け止めた。


「ぐっ!? 聖夜、てめぇ!!」


「いやぁ、流石の防御力ですね。あれだけの数を受けてびくともしないとは」


 掴んでいた脚を離し、2発、3発と拳を躱しながらそう答える。空中で取っ組み合いになった。両手でお互いの両肩を掴み、蹴りを蹴りで弾き返し、頭突きを頭突きで迎え撃つ。側壁を蹴り、右へ左へと流れながら空中を二転三転し、飛来する魔法球も的確に避けていく。


「器用なことをしますねぇ!!」


 安楽先輩が生み出した突風で大和さんとの距離が空いた。俺のもとへと氷の魔法球が殺到する。躱せるものは身体を捻って躱し、無理なものを拳で打ち砕く。


 背筋を悪寒が奔り抜けた。


 咄嗟に下へと目を向ける。

 そこには。


「浅草流風の型――、二式」


 腰を深く落とし、木刀を下段に構える片桐。


「『風車斬斬(カザグルマキリキリ)』!!」


「げっ!?」


 片桐の振るう木刀から、次々とかまいたちが生み出される。それらは空気を割き、側壁を抉りながら飛来する。攻撃範囲が広い。俺だけではない。空中にいる大和さんや安楽先輩まで対応に追われていた。


 こいつ、しっかり奥の手を用意してやがったな!!


 飛来するかまいたちを躱し、逸らし、弾き、打ち落とす。隙を突くかのようなタイミングで放たれる氷の魔法球も同様に処理していく。


 面倒だな。

 先にどちらかを潰すか。


 側壁を蹴り、ついに最高地点へと到達した。3階の天井に足を着ける。そこから下に向けての跳躍。


 弾丸の如き速度で3階部分を突っ切り、大和さんと安楽先輩を躱す。半回転し、2階廊下へと派手な音を立てて着地した。位置は可憐と片桐の丁度真ん中くらいだ。


「しっ!!」


 短く息を吐き、片桐が距離を詰めてきた。中段に構えた木刀を振りかぶるより早く、“魔力の弾丸(マジック・バレット)”で肩を打ち抜く。体勢が崩れた片桐の身体を掴み、可憐の方へと放り投げた。可憐が発現した氷の魔法球の弾幕が、ほぼ同じタイミングで射出される。


「あっ!?」


 その声はおそらく可憐。

 無防備な片桐に魔法球を放ってしまったことで動揺したのだろう。

 しかし、その甘さが命取りだ。


 呻き声を上げながらも、片桐は空中で器用に弾幕を打ち落としていく。

 それをブラインドにして俺が動いた。


 頭上から咆哮。

 そして『風の球(ウェンテ)』の雨。


 しかし、俺の方が早い。


 猛攻を掻い潜り、片桐を追い抜く。

 可憐の双眸が見開かれた。

 発現された『薄氷の壁(クーリリンア)』を叩き割る。


「残念だったな」


 拳が可憐の腹を打つ。


「かっ!?」


「お前の課題は近接戦闘に持ち込まれた時にどう対処するかだ」


 可憐が吹き飛んだ。


『緩衝魔法の発動を確認。姫百合可憐、脱落です』


 なるほど。

 この程度の魔力があれば緩衝魔法を発動できるのか。可憐の身に纏っていた魔力の壁、つまりは防御壁がどれだけ硬かったかで若干の誤差は出るのだろうが。


 階段下へと落下する可憐の安否は気がかりだが、目で追っている余裕は無い。直ぐに振り返り、飛んでくる片桐を迎え撃とうとして――――。


 それよりも早く、俺は横へと自らの身体を投げた。


 直後に、俺が今まで立っていた場所へ音を立てて大和さんが着地する。そこへ片桐が突っ込んだ。


「『風車(カザグルマ)』!!」


「ンなもん効きはしねーよ!!」


 振り抜かれる木刀を腕で受けた大和さんが、片桐の腹に蹴りを叩き込んだ。


「かっ、――はっ!?」


 嫌な音が鳴る。

 しかし、それは大和さんの蹴りによるものではない。


 片桐の握る木刀。

 それがほぼ真ん中から砕けた音だった。


 その光景を目で追っていた俺のもとへ、四方八方から『風の球(ウェンテ)』が飛来する。本当に安楽先輩の発現範囲の広さには驚かされるな。


「ティルティ・クラリネ・モール・ウェルネス」


 耳に届くのは、浮遊魔法によって空中を制する安楽先輩の詠唱。


 しかし、それよりも俺の意識が向いたのは。

 大和さんに蹴りをもらい、吹き飛ばされている最中の片桐が見せた笑みだった。


 側壁へと叩きつけられる片桐の身体。

 空中に飛散する木刀の破片。


 そして呟かれる小さな一言。


「『雷花(ライカ)』」


 青白い花が咲いた。

 一輪や二輪ではない。

 大小様々、数えきれない数の雷の花が。


 発現範囲外にいたのは、大和さんを避けるために移動していた俺のみ。


 一際大きく咲いたのは、不運にも空中にいた安楽先輩の近く。不意を突かれた魔法の発現に、安楽先輩は浮遊魔法のみの無防備な状態でそれを喰らったらしい。思わず目を覆いたくなるような青白い花が次々と開花し、炸裂音を撒き散らす。


 その衝撃で、安楽先輩の身体が車椅子から弾け飛んだ。


「っ!?」


 咄嗟に地面を蹴ろうとした俺だったが、それよりも早く動いた男がいた。


「淘汰ぁぁぁぁ!!」


 同じような魔法を全身に受けながらも、見事にそれを耐え切った大和さんが走る。空中で放り出された車椅子が廊下へ叩きつけられて破損するのとほぼ同時、安楽先輩の身体を大和さんはスライディングしながら受け止めた。


 静まり返る校内。

 そして。


『緩衝魔法の発動を確認。安楽淘汰、脱落です。試験を一時中断します。これより試験官が脱落者の保護に向かいますので、その場で待機してください。試験参加者は、試験官が退出するまで待機してください。こちらが許可するまでの間、魔法の発現を禁じます。なお、現在発現中の魔法については、待機状態にできるもののみ対象外とします。待機状態にできないものは一度解除してください』


 響く、縁先輩の声。

 こういう状況でも淡々と指示を飛ばしてくれるのは頼もしい。


「平気か、淘汰」


「ええ、大丈夫です。まったく不意を突かれたとはいえ見苦しいところを見せてしまいましたね」


「あ、あの、すみません。私の魔法がっ」


 ふらつきながらも片桐が立ち上がり、安楽先輩のところへ駆け寄っていく。安楽先輩は大和さんの手を借りながらゆっくりと壁に身体を預けて座り、そして笑う。


「気にする必要はありませんよ、片桐さん。貴方の魔法はきちんと制御された上で放たれた。今のは受け損なった僕のミスです。誰が悪いかと問われると、悪いのは間違いなく僕です」


「いつ振りでしょうね。自分の操る車椅子から振り落とされるのは」なんて朗らかに笑いながら言う安楽先輩に、胸を撫でおろしながら俺も近づいていく。


「派手にやられましたね」


「まったくです。混戦状態になると感知魔法の効きが鈍るのですよ。特に室内では魔力が滞留してしまいますからね。いきなり足元で炸裂した時は本当に……、いやぁ、参りました」


「まあ、気にすんなよ。片桐。お前は何も悪いことはしちゃいねーんだ」


 安楽先輩の肩を叩きながら、大和さんが片桐へそう言う。うんうんと頷く安楽先輩を見た片桐は、何と答えればいいか分からなかったのだろう。曖昧な笑みを浮かべつつもう一度謝罪した。


 大和さんが苦笑しながら立ち上がる。

 そのタイミングで蔵屋敷先輩が来た。


「来るたびに酷い有様になっておりますのね」


「あ? 聖夜が3階廊下をぶち抜いた時点でお察しだろうが。この程度の被害で目くじら立てるんなら、最初っから『約束の泉』を指定しろよ。3年の試験はあそこでやってるんだからな」


「ちょ」


「花園舞と姫百合可憐は、2年グループ試験の代わりとしてこの試験に参加しておりますので。あまり特例を増やしたくはなかったのでしょうね」


 苦言を呈そうとする俺を無視して、蔵屋敷先輩がそれに答える。大和さんが鼻を鳴らした。


「それこそ、今更だろ。まぁ、高い勉強代になっちまったなぁ。ご愁傷様ってやつだ」


 嬉しそうに喋る大和さんに、蔵屋敷先輩は呆れたようなため息を吐いた。


「安楽先輩、こちらへ」


 片桐が車椅子を持ってくるが、色々と酷い。車輪は片方無いし、あちこちがひしゃげている。辛うじて座れそうではあるが、それだけだ。


「ありがとうございます」


「手をお貸ししましょうか?」


「ありがとう。気持ちだけ受け取っておきますよ、中条君」


 ふわり、と浮かんだ安楽先輩が手探りで車椅子に腰かけた。若干の間を置いて車椅子が浮き上がる。


「それでは参りましょうか、安楽さん」


「ええ」


 蔵屋敷先輩の先導で、安楽先輩がゆっくりとこの場を去る。

 校内放送が鳴いた。


『試験官が退出するまで待機してください。また、安楽淘汰を撃破したのは片桐沙耶であることを確認しました。片桐沙耶、「番号持ち(ナンバー)」入りが確定です』


「だってさ。おめでとう」


「それはどうも」


 片桐の返事は素っ気なかった。思いっ切り睨まれる。


「お忘れではありませんよね。私の狙う首は1番のみです」


 首って表現はやめろ。


「得物が壊れたようだが棄権しなくて大丈夫か?」


「その程度で棄権するほど、ヤワな訓練は積んでいません」


 左様か。


「くくくっ、いいじゃねーか。こいつのことだ。まだ隠し玉はあるんだろ?」


 大和さんの言葉に、片桐は無言で視線を逸らした。


 浅草の奥義の二式をこいつが使えた事にも驚いたが、何よりも驚いたのは先ほどの『雷花(ライカ)』だ。触れた対象を媒介として雷の花を咲かせるこの奥義を、まさか破損した木刀の破片全てに這わせていたとは。正確には壊れかけの木刀に魔法を組み込んでおき、破損した段階で炸裂させたのだろうが、その発想には驚かされた。魔法世界で見た『群青雷花(グンジョウライカ)』のような効果を、こいつは二式を使わずに再現してみせたのだ。


 それもあの混戦の中で。

 安楽先輩が後手に回ってしまったのも仕方が無い。


 あの人の感知能力なら、おそらく破損した木刀に魔力が宿っている程度なら見抜けていたはずだ。しかし、それは片桐が魔法具として使用していた木刀。破損した魔法具に付着した魔力の残滓として、対処するべき対象から外してしまったに違いない。


 大和さんの指を鳴らす音で、思考の海から浮き上がる。


「まあ、好きにかかって来いよ。そっちの方が面白れぇ」


 その言葉を合図にしたわけではないが、ゆっくりとお互いが距離を空け始める。


 残ったのは、俺と大和さん、そして片桐。

 見事に近接戦闘に秀でた3人が残ってしまった。

 まさかの最後が殴り合いで決着かぁ、なんてことを考えていた最中。


『試験官の退出を確認しました。5秒後に試験を再開します』


 縁先輩の校内放送の陰で、こんな呟きが聞こえてしまった。


「何年振りだぁ? 試験以外で呪文詠唱するなんてよ」


 いや、これも試験なんですけどね。

 言いたいことは分かるけど。舞と可憐が落ちた以上、本当にただの争奪戦だし。

 次回の更新予定日は、11月11日(金)です。


聖夜「ここから先、俺は身体強化魔法以外、魔法は使わない」ドヤァ

ウリウム「(゜3゜)」←万年ベンチだった選手が監督自らに肩を叩かれ「出番だ」と言われてテンション上げてホイッスル待ってたんだけどようやく鳴ったホイッスルが試合終了を知らせるものだと気付いた時のような心境

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