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テレポーター  作者: SoLa
第7章 異能力者たちの饗宴編
233/432

第8話 慟哭

2017/8/14 戦闘描写を修正しました。




 岩舟龍朗、花園剛、そして藤宮誠の3名は、実験棟の地下へと足を運んでいた。戦闘音や震源は明らかに上階からだったが、先に地下5階にあるコントロールルームで情報を得ようと考えたのである。

 地下なので、当然窓などは無い。

 非常電源のみとなった薄暗い階段を、彼らは迷いなく進む。







 血の海に鈴音は沈んでいた。

 朦朧とする意識の中、鈴音は手探りで転がっていた『楊貴妃』の柄を掴む。浅草家が保有する名刀であるその一振りは、刀身の半分より上が無くなっていた。


「驚いた。まだ意識があるのか」


 男の声は、鈴音の近くから発せられたものではない。鈴音が緩慢な動きで視線を向けて見れば、男は最初に鈴音と遭遇した位置から一歩も動いてはいなかった。肩を竦める男の動きに合わせ、錫杖が澄んだ音を鳴らす。


「浅草……、地の型で威力を削ったか。微々たるものだったが、それが貴様の命を救ったようだな。おかげで、業務用エレベーターの扉はズタズタのようだが」


 苦笑する気配と共に、男はそう言う。言われた内容をぼんやりと頭の中で反芻させながら、鈴音は頭を動かし、視線をエレベーターの方へと向けた。

 そして、一気に思考が冷える。巨大な業務用エレベーターの機体の中には、数えきれないほどの死体が山となって積まれていた。


「お前、それに乗りたかったんだろう? お生憎だが定員オーバーだな」


「この……、者たち、……は」


「施設の研究員さ。表と裏を含めた、な。主はここを放棄することを宣言為さった。だからもう用済みということさ」


 驚くほど軽い口調だった。

 大量の人間が死んでいるにも拘わらず。

 機体の中に押し込められるようにして積まれているのだ。何人、いや何百人死んでいるのか、鈴音には分からなかった。しかし、鈴音にとってそれ以上の衝撃が男の台詞の中にはあった。


「……放棄、する? ここを?」


「そうだ。この棟の21階から上は我が『ユグドラシル』の持ち物だったからな」


 つまり。

 それが意味することとは。


「そんなわけで、沙羅双樹にはさっさと撤収作業を進めるように指示を出していたんだが。生憎と奴の持ち駒では手に負えそうになかったんでな。勝手に介入させてもらうことにした、ということだ」


 沙羅双樹。

 鈴音は縁からそのコードネームを聞いている。『ユグドラシル』における最高幹部、4人のうちの1人の名だ。だが、問題なのはそこではない。この男は今、鈴音に「沙羅双樹に指示を出していた」と言った。


「……貴方、……何者、なんですの」


「それを伝えてお前に理解できるのか? あぁ、浅草の女ということは御堂縁の配下か。ならば分かるだろう」


 男は言った。


 端的に。

 結論だけを。


天上天下(テンジョウテンゲ)


 その答えに、鈴音は思わず言葉を失った。

 無論、そのコードネームにも聞き覚えがあったからだ。

 トップである天地神明(テンチシンメイ)の側近、そのうちの1人。


 出会ったら、絶対に逃げろ。

 縁からそう伝えられていた、最高幹部すらも上回る最悪の化け物の名だった。







 実験棟最上階。

 火の海に慟哭が響き渡った。







「さて、と。俺の魔法を二撃耐えた奴は、かの宿敵リナリー・エヴァンス以来なもんで、大変に惜しいんだが……。お前は御堂縁の駒だからな。殺すぞ?」


 そのまま放っておいても死ぬであろう失血をしている鈴音へ、天上天下はそう言った。

 ゆっくりとその一歩を踏み出す。先ほどの魔法を使えば一歩も動かずに鈴音を瞬殺できるだろうが、天上天下はそうしなかった。


 しかし、だから鈴音に挽回のチャンスがあるのかと言われれば、それは無いと断言する他無い。鈴音が万全の状態で、かつ持ち得る手を総動員しても、この場からは逃走できないだろう。そして、今の鈴音は立ち上がることもままならないほどの傷を負っている。


 チェックメイトだった。


 それでも。

 震える手で刀身の半分を失った刀を握りしめて。

 震えるその両足で、鈴音は立ち上がった。


 その光景に、天上天下は眉を潜めて立ち止まる。


「何をしている」


 鈴音は答えない。

 答えられない。 

 彼女にとって、もはや立ち上がることですら精一杯だったのだ。


「まだやるのか。いや、まだやれると思っているのか?」


 鈴音は答えない。

 天上天下が深く被るローブの奥で、仄かに笑みを浮かべた。


「勇猛だな。面白い。今の一撃で死ななかったことで、無意味な期待を抱いたか?」


「期待……、など……、抱いては、……おりま、……せんわ」


 絞り出すような口調で、ようやく鈴音はそう口にする。もはや答えが返ってくるとは思っていなかった天上天下が、好奇心を隠そうともせずに聞き返した。


「では、何だ。何がお前をそうまでして突き動かす」


 沈黙。

 やや間があって、鈴音はこう答える。


「最初に、申し上げたではありませんか」


「……?」


 鈴音の台詞に本当に心当たりの無かった天上天下は、思わず首を捻った。


「抵抗せずに首を差し出せる立場ではございませんので。今の私を突き動かしているものがあるとすれば……、そんなどうしようもない理由だけですわ」


 痛みに耐えながらも。

 鈴音はこの言葉だけは震えすら感じさせず、毅然とした声色でそう言い切った。


 天上天下が頭を振る。そして、手に持つ錫杖を床に打ち付けた。澄んだ音色が響き渡る。


「俺の()は、魔力によって生成される。何が便利かお前に分かるか」


 鈴音は震える身体で構えを取ったまま答えない。目の前で、着々と禍々しい魔力が生成されていたとしても。


 魔力はぼんやりと形を成す。自らの魔力で編まれた『刀』を天上天下が左手で握る。


「長さの調節、切れ味の調節、持ち運びの不必要、どれも当たりでどれも外れだ。何が便利かと言うとな……」


 天上天下はそこで一旦言葉を切り、無造作に左手を薙いだ。轟音と共に、『絶縁体』仕様であるはずの側壁へ斜め一直線の傷跡が走る。自らが引き起こした結果を感情の無い表情で一瞥した天上天下が、その視線を鈴音へと戻した。


「俺が創り出した剣こそが、世界最強となることだ」


 魔法での破壊は不可能とまで言わしめた『絶縁体』の破壊。

 それはまさしく世界最強の名に相応しいだけの力がある、と鈴音は明滅する思考の中でそう思った。そして思わず口にする。


「……貴方の魔法、は……いったい」


 その反応に、天上天下は思わず苦笑した。


「おいおい、まさか答えが返ってくるとは思っていないだろうな。それに、お前も『絶縁体』は普通の魔法では破壊できないと信じているクチか? 現場で這いずり回る立場であるお前が、机上の空論で物事を図ってどうする。確かに『絶縁体』は魔法では破壊不可能と言われている素材だ。理論上は、な。だが実際は……」


 天上天下が手にしていた刀を数度薙いだ。その軌跡に沿うようにして、側壁は抉れて細切れとなる。


「この通りだ」


 面白くなさそうに、天上天下は吐き捨てるようにそう言った。


「その体たらくでよく我らとやり合う気でいるものだ。配下であるお前がそうだということは、御堂縁もまさか同じ考えなのか? その調子では、奴も天地神明に相見えることなく死ぬぞ」


 鈴音は答えなかった。

 天上天下が肩を竦めて見せる。


「まだ諦めないか。実力差を理解してなお、剣を引かないのか?」


 鈴音は答えない。しかし、構えを解かないその姿勢が、天上天下の質問に対する答えだった。


「良い。気に入った」


 天上天下はそう口にする。


「この一撃が耐えられたのなら、今日のところは引くとしよう」


 天上天下の立場からすると、鈴音は絶対にここで殺しておかなければならない存在だった。御堂縁と繋がりのある人物であることはもちろん、天上天下は鈴音をここで殺すことを前提として、これまでの会話をしていたのだ。その中には、縁の下へ持ち帰られたくない情報も含まれている。


 それでも。

 天上天下は、目の前で気丈に剣を構える鈴音を殺害対象から外した。


 だから。

 天上天下の最後の一振りは、決して本気のものではなかった。


 もっとも。

 それで尚、鈴音の『楊貴妃』はその刀身を更に半分へと減らし、当たり前のように彼女の身体は袈裟に斬り伏せられたのだが。


 血の海に沈み、ぴくりとも動かなくなった鈴音へと、天上天下は口を開く。


「お前のような剣士に会えたのは久方振りだ。次は是非、きちんと刃を交えてみたいものだな」


 その視線をもはや剣としては機能しないであろう『楊貴妃』へと向けた。


「『絶縁体』を斬れることが最低条件だ。俺はいつでも、クルリアでお前を待つ。条件が満たせたら来るがいい。また遊んでやる」


 最後に血で汚れた鈴音の頬を一撫でした天上天下は、ゆっくりと立ち上がる。


「さて」


 一瞬にしてその眼光から温度を消した天上天下が、視線を上へと向けた。


「御堂縁が来ているのなら、難攻不落では対処できまい。一肌脱いでやるとしようか」


 それは一見すると難攻不落の不手際を補ってやろうとする上司の慈愛からくるものだが、実際のところは鈴音を私的な理由で見逃すことになった負い目からくるものだった。

 しかし。


「せっかくだ」


 それがどんな理由からくるものであれ。


「この国の悪しき象徴であるここに、我らの名を刻んでやる」


 天上天下が魔法を発現すれば。


「『毘沙門(びしゃもん)天地開闢(テンチカイビャク)()刻印(コクイン)”』」


 ――――それは即座に実現される。


 床に打ち付けられた錫杖が自壊する。

 それは細かな粒子となり宙を舞う。


 魔法では破壊は不可能とまで言わしめた『絶縁体』。

 それを基盤に構成されているはずの魔法開発特別実験棟。


 その最下層である地下5階から。

 禍々しい魔力を纏った何かが。

 実験棟を縦一直線に貫通し。

 最上階である25階にて。


 それは、芽吹いた。


 いや。

 芽吹くはずだった(、、、、、、、、)







「動くな」


 難攻不落が後ろのパネルに手を伸ばそうとしたのを見て、縁は殺気の籠った制止の声を掛けた。


「いくつか質問したいことがある。苦痛の無い死を迎えたいのなら、無駄な抵抗はせずに正直に答えることだ」


 縁の言葉に、深くフードを被った難攻不落は眉を吊り上げる。


「その程度の脅しが通用するとでも?」


「どうだろうね。とりあえず、不要な四肢を切り落とすとしよう。そこで改めて質問することにするよ」


 縁は、空虚な笑みを浮かべてそう告げた。


 その直後だった。

 これまでとは比較にならないほどの震動が、縁たちを襲った。


「これはっ!?」


 足元。


 実験棟の下から一瞬にして突き上げてくるような衝撃に、縁の視線が難攻不落から外れる。その隙を、難攻不落は逃さなかった。


「しまっ――」


 不意を突かれ、対処が後手に回った縁の判断ミス。難攻不落がパネルを操作したことにより、両者間に『絶縁体』仕様のシャッターが下りる。


 完全に閉まり切るぎりぎりのところで。

 エマ・ホワイトの身体がその隙間に滑り込んだ。


 無情にも縁の眼前でシャッターは閉まり切る。

 縁とエマは、完全に分断させられた。


「くそっ!?」


 珍しく悪態を吐いた縁が踵を返す。『絶縁体』仕様のシャッターを破壊する術を縁は持っていない。そうなると、彼らがやってきたエレベーターシャフトしか現状出口は無いのだ。


 無詠唱で身体強化魔法を発現し、床を蹴る。直後にエレベーターの扉が閉まり始めた。しかし、縁の方が早い。閉まり切る僅かな隙間をすり抜け、縁はシャフト内に身を投じることに成功した。

 勢い余って側壁に激突した縁が、咳き込みながら落下を始める。


「とんだ失態だ!!」


 らしくもなく、縁は吐き捨てるように叫んだ。


「下の階から回り込めるか!? くそっ!! 面倒な真似を――」


 そこで縁の口が止まる。

 そして、身体中を駆け巡る悪寒に晒された。


「――――何だ!? この魔力は!?」







「自ら死地に乗り込んでくるとはな」


 ただ1人。

 自らの下へとやってきたエマに向かって、難攻不落は後ろ手にパネルを操作しながらも驚いた口調でそう言った。その反応がエマには面白くない。


「そんなに驚くことかしら」


「驚くだろう。御堂縁はシャッターの向こう側。お前は奴の庇護下から進んで抜け出したのだぞ?」


 エマの頬が、僅かにひくついた。


「……どいつもこいつも。御堂縁、御堂縁と」


「何だと?」


 エマの身体から、禍々しい紫色の気体が滲み始める。

 そして。


「私が一刻も早く合流したいのはあの男じゃねええええんだよおおおおおおおおおおおお!!!!!」


 絶叫。

 勢いよく噴き出した謎の気体を防ぐため、難攻不落が自らの正面に幾重にも張り巡らされた障壁魔法を展開する。


 直後に。

 一際大きな衝撃。


 今まさに激突しようとしていた2人の足が止まる。

 難攻不落が呆然と呟いた。


「この魔力は……、まさか」







 最上階で爆散するはずだった刃の礫は。

 運悪く暴走状態だった1人の少年の無系統魔法によってその場から消失した。







「何だ!? 今の衝撃は!?」


 花園剛が叫ぶ。

 なぜか地下5階を封鎖していた『絶縁体』仕様のシャッターを、操作パネルで開錠していた藤宮誠が、弾かれるようにして操作パネルから離れて愛刀に手を掛けた。


「……花園、感じるか」


「あぁ」


 岩舟龍朗の声に、剛はしかめっ面をしながらも頷く。


「嫌な魔力の流れだな」







 天上天下は発現した魔法が自らのコントロール下から外れた感覚を覚え、自らが空けた風穴を上へ上へと駆け抜けていた。


「馬鹿な……、この俺の魔法が不発? いや、繋がりは消えていない? どういうことだこれは」


 御堂縁なら可能だ。無系統魔法“解除(キャンセル)”ならば、例え天上天下の魔法でも消し去ることができるから。

 ただ、天上天下が知る限りでは、縁がその魔法を使用する為には対象となる魔法を正しく認識する必要があるはずだった。そのタイムラグが解除を不可能にするものだと天上天下は考えていたのだ。もしかすると、縁から受けていた説明に虚偽が含まれていたのかもしれない。それならば、天上天下にも納得できる面はあった。


 しかし、天上天下が焦りを覚えたのは、自らの魔法が掻き消されたわけではなかったという点だった。


「“解除(キャンセル)”に似た魔法を持つ人間が他にもいたのか? しかし、そんな魔法は聞いたことが無いぞ」


 わき目も振らず、実験棟を文字通り縦一直線に駆け上った天上天下は、瞬く間に最上階へと辿り着く。そこで、天上天下は見た。


 オレンジ色に輝く火の海。

 機能を失った血だらけの手術台。

 粉砕された実験道具の数々。

 次々に燃えていく資料の束。

 数多の檻。

 どんな手段か見当が付かない、側壁や設備にある四角く抉り取られたような破壊痕の数々。




 そして。

 火の海の中央に佇む、白いローブを身に纏った魔法使い。




 天上天下は誰何ではなく、即座の排除を選択した。

 左手に持つ魔力で編まれた刀を振るおうとして。

 感じ取る、魔法の『発現の兆候』。


 魔力のたわみを明確に感じ取った天上天下が床を蹴る。しかし驚くべきことに、不意を突かれたとはいえ天上天下の跳躍を以ってしても、その発現されるであろう魔法の範囲から天上天下は逃れることができなかった。




 結果。

 右腕の肘から下が、何の音も立てずに消失した。




「がっ!? があああああああああああああああああああああああ!!!!????」


 咆哮。

 しかし、突然の痛みに対する天上天下の行動は迅速だった。脂汗を滲ませながら治癒魔法を切断面へと施す。魔力で膜を張りそれ以上の出血を防ぐ。床を滑るようにして着地した天上天下は、目の前に広がる光景に目を疑った。


 消えたのは天上天下の腕だけではなかった。

 先ほどまで彼が立っていた場所を中心として、一辺5mほどの立方体上に抉り取られていた。それは床だけではない。その範囲内に収まっていたデスクや実験機器、紙媒体の資料など全てが対象だ。


 何が起こったのか、理解不能だった。

 自らが何の抵抗もできずに利き腕を失ったこともそう。

 火の海で静かに佇むあの白い魔法使いが、いったいどんな魔法を使ったのかも。


「……消し飛ばしたのか? 少なくとも純粋な破壊では無いな。破壊音が生じないのはおかしい。ならばいったい何を……」


「お前たちは……」


 天上天下の独り言を遮るようにして、白い魔法使いが口を開いた。それは決して張り上げたものではない。ただ、不思議と天上天下の耳には良く届いた。


「死んだ人間を生き返らせる魔法を作るために、生きている人間を殺すのか」


「……何?」


 こいつは何を言っているんだ、と。

 そう答えるよりも早く、次が来た。


「――――っ!?」


 もはや脊髄反射の域で身体を捻る。『発現の兆候』の通り、彼の脇腹を穿つ角度で手刀が突き込まれた。手刀は天上天下の身に纏うローブを切り裂き、彼の脇腹を抉る。

 鮮血が舞った。

 弾けるようにして天上天下はその場を離れた。必要以上に距離を空ける。天上天下は歯噛みしながら左手の刀身を握りしめた。 


 その頃には、白い魔法使いは天上天下の眼前へと肉薄していた。


「舐めるなァァァァ!!!!」


 咆哮と共に、天上天下が全力でその刀身を振り下ろす。鈴音に向けて放った一撃の比ではない。天上天下の全力。『絶縁体』を軽々と斬り裂く最悪の凶刃。その切っ先の動きに沿うようにして、『絶縁体』仕様であるはずの天井や側壁に太刀筋が生じていく。




 それを。

 少年の手刀が両断した。




「……な、……に?」


 呆然と。

 天上天下は目の前の光景を見つめる。

 その先で。


「別に……、『ユグドラシル』のクソ野郎なら誰でもいいんだ」


 白い仮面で顔を隠した魔法使いは言う。


「絶望を存分に噛み締めてから地獄へ堕ちろ」


 手刀が。

 展開された防御魔法を容易に突破して。

 天上天下の腹を掻っ捌いた。







 公式では地下5階の地上20階。

 しかし、実態は地下5階の地上25階建てから成る魔法開発特別実験棟。


 その更に遥か上空にて芽吹いた悪の華。

 あたかも花びらのように可憐に散りゆくそれは、発現者の意図せぬ場所で開花していた。


 それが。

 無差別にして無慈悲の雨となり、実験棟へと降り注ぐ。

次回の更新予定日は、6月24日(金)です。

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