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テレポーター  作者: SoLa
第6章 純白の円卓と痛みの塔編
218/432

AとB=収束




 伝達。


 玉石同砕、並びに一刀両断との通信が途絶えました。

 各実働部隊の隊長は、メンバーの所在を至急確認し、沙羅双樹へ報告してください。

 死体回収班はこちらで手配します。


 一攫千金、並びに合縁奇縁の逃走を確認。

 発見した者は即時排除を。

 但し、これは最優先事項ではありません。


 運び屋より、素体回収を確認。

 日本魔法開発特別実験棟での活動はこれにて終了。

 以降、この運び屋の日本脱出を最優先事項とします。


 現場指揮官には難攻不落を指名。

 これは天地神明の名の下による厳命です。

 各実働部隊隊長は、その命に速やかに従うようメンバーに徹底してください。


 確認済みの情報。

 監視対象が保護区外へ。

 “旋律”が出てくる可能性は極めて低いと考えますが、交戦の際は細心の注意を。

『五光』『七属星』に現状の動きなし。

 交戦は極力避けてください。


 未確認の情報。

 アメリカ合衆国『断罪者』が秘密裏に入国しているとの情報有り。

 交戦は極力回避してください。


 以上。







 都会の雑踏に溶け込むようにして、彼らは居た。


「動いたようだ」


 通信機から手を放してからそう言った男に、隣を歩く眩い金髪を肩まで伸ばした女性、アリサ・フェミルナーは直ぐには返答しなかった。目を閉じ、息を吸い込み、意図的にゆっくりと吐き出す。

 まるで、何かのスイッチを入れるかのように。

 開いた双眸から覗くのは、冷徹な光。


「よせ。フェミルナー」


 完全なる戦闘態勢に移行しそうになるアリサに、男は苦言を呈した。射殺すような眼光が男を射抜く。


「何が」


「俺たちの立場を忘れるなよ。やる気を出すのはいいことだがな」


 何かを口にしようとしたアリサだったが、結局は何も言わなかった。鼻を鳴らして目を逸らす。ご丁寧に唇まで尖らせたアリサに、苦笑した男はこう続ける。


「日本政府に勘付かれたくはない。正規の手段で入国していない以上、容易に国際問題にまで発展するだろうからな。ボスのようにはいかなくても、努力はしろ」


 ボスという単語に、アリサの表情が露骨に歪んだ。


「あの子みたいになれる自分が想像できないんだけど」


「だから言っただろう。努力はしろ、とな。俺だってボスの領域まで辿り着けるとは思っていないさ。あれこそ、人間が到達できる極地だろう」


 もはや崇拝に近い眼差しを空へと向ける同僚に、アリサは「アナタ実はロリコンだったの」という軽口を飲み込んだ。


「アナタがそこまで言い切るのは珍しいわね」


「最高の頂きまで上り詰めた者は、人を殺す際に殺意を覚えない。なぜなら、それは単なる作業と化すからだ。だから驚くほど静かに処理できる。あくまで俺の持論だがね」


 肩を竦めるようにして男は言う。


「人を殺すという覚悟や罪悪感もどこかへやってしまうということ?」


「殺すのではない。この世界から消すんだ」


 その表現に、アリサは眉を吊り上げた。


「同じじゃないの?」


「さて。その違いが分かることこそ、あの頂きに足を掛ける一歩になるのではないか?」


 質問に質問で返されてしまった。これ以上、有意義な意見は聞けないと判断したアリサが前を向く。男もそれに倣った。


「目標はあくまで捕縛だ。但し、逃がすくらいなら殺害しても構わないと許可も下りている」


「了解」


「それと、殺害した場合は必ず死体を持ち帰れ」


 その命令に、アリサが視線だけを男に寄越す。


「分かっている。荷物になるということだな。ただ、ボスは相手側に死体を回収されたくないようだ。理由までは教えて貰えなかったがな」


「……了解」


 少し考えれば、いくらでも理由は思いつく。それを敢えて言わないということは、あくまで命令は厳守であり、その理由まで開示する必要は無いと上が判断したのだろう。

 そう割り切ったアリサは、少し間を空けた後にそう答えた。

 第6章 純白の円卓と痛みの塔編・完


 次章は、4月下旬頃からの公開を予定しています。

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