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テレポーター  作者: SoLa
第6章 純白の円卓と痛みの塔編
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【A-4】 拍手

 余計な文章を書き足すのも嫌だったので、今回は特に短めです。




『それでは、花園様と姫百合様の件についてはよろしいでしょうか』


「今後も有益な情報提供に期待しよう」


「同意」


 副会長・大森からの質問に、巡と龍朗が答えた。そこに古宮が口を挟む。


『ふむ。この件についてはもう少々荒れるかと思っておったがの』


『会長、荒れるような発言は控えてください』


 大森からの注意に、良い年した古宮が口を尖らせた。


『それでは「七属星」の選定に戻らせて頂きます』


 大森の発した言葉に、再び緊張感が舞い戻る。


「そう言えば……」


 巡が天井を見つめながら口を開く。


「各属性の第一人者という選定基準で見るなら、風の席には有望な家があったな」


衣笠(きぬがさ)か。あの家はどうにも好かんな」


 巡の呟きに反応したのは龍朗だった。


「先ほど二階堂が言っていた通り、素行についても考慮すべきだぞ。衣笠は先日の一件で浅草を破門にされていたな。『七属星』に据えるには、もう少し功績が欲しいところだと思う」


「花園に同意を。報告書が上がってきた時には目を疑ったもの。外交問題に発展しなかったのは、あくまであちらが非合法な手段を取っていたからなのかしらね」


 剛に続くようにして美麗も頷く。


「他にもかの魔法世界で『猛き山吹色の軍勢』の半数近くを壊滅させ、あわや全面闘争の直前までいったこともあるとか? あの者はもはや国外への渡航を禁じる必要があるかと思いますの」


 手にした扇子を弄びながら、華は草臥れたため息を吐いた。


「そうか。腕っぷしだけは二階堂にも匹敵するかと言う家だ。遊ばせておくには残念だと思うが」


 にやにや笑いを浮かべる巡。その様子を見た大森が眉を顰めた。


『あまり不穏な発言は避けて頂きたいのですが』


「おいおい。私は場を拗らせたくて言っているわけではないぞ」


 嘘つけ、とこの場にいる全員が思った。それを悟ったであろう巡が続けて言葉を発する。


「首輪を付けておきたい、ということだ。『七属星』という首輪を付けることができれば、もはやこちらの管理下だろう?」


「この国の魔法使いである以上、元々こちらの管理下のはずだが? その肩書きが『七属星』に変わっただけで、手綱を差し出してくるとは思えんな」


 腕組みをしながら龍朗はばっさりと切り捨てた。剛もそれに同意する。


「違いないな。そもそもそういった権力を欲しているような者ならば、暴走とも言えるような行動にはでないだろう」


「外聞も気にして頂きたいものね。『五光』と『七属星』とは、この国の魔法使いの模範となるべきなのだから」


「なるほど……。違いないな」


 美麗の言葉に、巡は苦笑しながら頷いた。


「さて、話を変えるという意味もありますが」


 その様子を見た美麗は、改めて口を開く。


「私としては天道(てんどう)家にもう一度お戻り頂けないかしら」


「天道家ねぇ」


 開いた扇子を天井灯に透かしながら華がぼやく。


「あそこはもはや終わった家では無くて? 現当主はまだ学生、それも魔法世界に亡命まがいのことをしたのでしょう?」


「だからこそよ。あの力を国外に置いておくことはこの国のためにならないのでは?」


「一度裏切りを働いた者を信用することなど愚の骨頂」


 その華の言葉に、美麗はむっとした表情を見せた。


「そのような言い方無いのでは? そもそも事の発端は――」


『姫百合や』


 古宮から発せられたその鋭い声に、美麗が口を止める。そして無表情で頭を下げた。古宮が深いため息を吐いて言う。


『他に候補はおるかの』


 沈黙。

 そして、その沈黙を破ったのは龍朗だった。


「いないのではないか? 上に立つ者が頻繁に変わらぬ事を喜ぶべきか、台頭する有力者がいない現状を嘆くべきかは知らないがな」


「非常任理事として1年ごとに指名される交代制とはいえ、それぞれが土地を持ち龍脈を管理する責任者よ。変わらず管理して下さるこの現状を喜ぶべきね」


「もっともだ」


「異論無し」


「異議無しですわ」


 美麗の言葉に、剛、巡、そして華と口々に賛同の声が上がる。それを確認した大森は一度頷き、隣に坐す古宮へと視線を向けた後、改めて頷いた。


『それでは「七属星」の皆さま、ご起立下さい』


 大森の号令の下、『七属星』全7名が立ち上がる。


『「七属星」を現行のままとすることに、賛同される方は拍手を願います』


 応えるのは『五光』。


 花園剛。

 岩舟龍朗。

 二階堂華。

 白岡巡。

 姫百合美麗。


 この国の最高戦力である『五光』、その全員が手を叩く。その光景を確認し、大森は短く息を吐いた。そして告げる。


『ありがとうございます。それでは「七属星」は現行のままと致します。火の席を火車四朗様、水の席を汐留潮様、雷の席を五十嵐辰巳様、風の席を風見刹那様、土の席を木下忍様、光の席を間城龍輝様、そして闇の席を黒堂司様に。五十嵐様につきましては、先ほどお話を頂きました龍脈に関する報告書の提出を合わせてお願い致します』


「謹んで承ります」


 五十嵐が深く頭を下げた。


『「七属星」の選定は以上となります。会長、何かございますでしょうか』


 大森から話を振られた古宮が首を横に振る。


『今後ともよろしく頼むぞい』


 古宮からのその言葉に、『七属星』の面々が頭を下げた。

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