第6話 グランダール51 ②
まりか「ボクのネーミングセンスが悪いとか思った奴は手を挙げろ!!」
★
日本五大名家『五光』。
その“元”一角、天道家。
彼らのみが発現を許された幻血属性、その名も『天』。
現存する全ての属性に対して優位に立つであろう、と称される属性に恵まれた彼らは、その一族だけで日本国内のパワーバランスを根本から崩しかねないほどの力を携えていた。その影響力はまさに圧倒的で、国外からも「日本が保有する最大戦力・天道家は、その一族単体で日本の国外への影響力をワンランク上げている」と危険視されるほどだった。日本という国からしてみても貴重すぎる戦力として考えられていたのだが、その強すぎる力が故に、その影響力を良く思わない別勢力の内乱により、没落にまで追い込まれたのは皮肉な話である。
このように、天道一族の発現する天属性は非常に強力な力を持っていたが、彼ら一族の特異性はその幻血属性だけではない。
天道家は、魔法発現に使用する呪文詠唱という技術を、まったく必要としなかった。
呪文詠唱ができないのではなく、しない。
魔法発現のプロセスとして、魔力を始動させるための「始動キー」も、魔法を発現させるための「発現キー」も必要としない。1から10までを無詠唱でやってのける。
魔法の発現全てを自分自身の感覚だけで完結させる、その圧倒的なまでの魔法センス。それに加えて他を圧倒する天属性を携えた彼らが、いかに強大な戦闘力を誇っていたのか。
その答えは今まさに、エルトクリア大闘技場にて再現されていた。
★
決戦フィールドの上空。
浮遊するまりかの頭上、三方向に展開された3つの天蓋魔法。
その全てから、数えきれないほどの魔法球が発射された。いや、発射され始めた。地上へと雨のように降り注ぐ無色透明の魔法球。無論、その全てが天属性。
決戦フィールドは瞬く間に阿鼻叫喚の大地獄と化した。
その中で。
「見ーつけたっ」
魔法ひとつ発現せず、体捌きのみで魔法球の雨を掻い潜る出場者。突如、空中でバランスを崩したかのように前のめりに倒れ始めたまりかは、そのまま空を蹴って魔法球の雨の中へと突撃した。
「げっ!?」
それを、地上から確認したのは。
「キミならそのくらいはやってくれると思ってたっ!!」
「すんごい笑顔で言うのやめてくれるかっ!?」
龍。
中国系の民族衣装を身に纏った青年である。
天属性の全身強化魔法で強化されたまりかの一撃を身体ひとつで躱した龍が、まりか本人の着弾の衝撃によって隆起する地面を蹴って後退する。まずは距離を、と考えた龍の思考を余所に、いつの間にやら彼へと肉薄していたまりかは、その耳元で囁くように。
「魔法、使わないの? すぐ終わっちゃうよ?」
未だに周囲では魔法球が決戦フィールドへと着弾し、地獄のような光景が続いている。龍の立つこの場所も、安全地帯というわけではない。たまたま、今は魔法球が着弾していないだけだ。このすぐ後にも、数えきれないほどの魔法球が降り注ぐかもしれない。
しかし。
どこか甘い匂いが、龍の鼻孔を刺激する。
自らの身体が、温かく柔らかな感触を自覚する。
ボーイッシュな外見や口調とは裏腹に。
蕩けるような声色で囁かれた、その一言に。
龍の思考はほんの一瞬だけ停止しそうになり。
「『火の身体強化』!!」
――――しなかった。
抱き着くような姿勢となったまりかが何かするよりも先に。
攻撃特化の火属性を纏った、龍の両の手が。
密着していたまりかの身体を吹き飛ばす。
「おーっと。あのタイミングで迎撃が間に合ったのかぁ。こりゃ凄い」
まさに他人事のようなノリでそう口にしながら、まりかは両足で決戦フィールドを削って勢いを殺した。天属性の全身強化魔法は、攻撃特化と称される火のダメージをまったく通していない。まりかが行ったのは、あくまで自らの身体を襲った後方へと吹き飛ばされる力を殺すことだけ。
その間にも、空からは魔法球の雨。
「……正気を疑うね。あんた」
龍が苦笑いでその光景を見る。まりかは降り注ぐ魔法球を避けながら、再び地面を蹴って龍へと迫ってきた。驚くべきところは、攻撃特化の身体強化魔法による一撃を受けつつも、すぐに体勢を整え反撃してきたことではない。
出場者を簡単に脱落させられるほどの威力を持った魔法球の雨の中、術者である自らがその中で平然と活動している、ということ。
「これ完全無差別なの!? 自分用の避難場所とか無いのかよ!!」
「あははっ!! そんなの作ったらみんなそこに殺到しちゃうじゃん!!」
「論点違くない!?」
ほとんどの出場者が振り注ぐ魔法球の雨から自らを守ることに必死な中で。
龍とまりかは器用にその弾幕を交わしながら、ズレた会話と共に激突した。
★
魔力の尽きた者から倒れていく。
現状は今まさに、その一言によってまとめられる。
まりかによって展開された3つの魔法陣。
遥か上空にあるそれから無尽蔵に吐き出される弾幕。
しかも、その1つひとつが天属性。
障壁を張って耐え忍ぼうとする者。
身体強化魔法で必死に逃げ惑う者。
幾分か余裕があり、周囲で身動きが取れなくなっている出場者に攻撃をしかけようとする者。
そのいずれかも、圧倒的すぎる力量と数量によって、やがては倒れていく。
この弾幕の中で。
最小限の動きでそれを回避し、残る意識全てを相対する対戦者へと向けて戦うこの2人は、やはりCグループの中でも段違いの実力を有していると言えるだろう。
★
『激突激突激突だーっ!! “天属性の使い手”の天道まりか選手!! そして“無所属”の龍選手!! この雨のように降り注ぐ殺人魔法球の中で!! これは手に汗握る名勝負と言えるのではないでしょうか!? カルティさん!!』
『……これは、凄いね。これほどの腕前を持ちながら無名だった龍選手も凄いけど……。天道選手、これは……、学生のできる動きと魔法じゃないよ』
これまで数多くの魔法使いを見てきたからこそ分かる、その異常さ。カルティの震えた声色の意味を、観客の半数近くも理解している。
それほどまでに、まりかの魔法技能は群を抜いていた。
「お前、年とかサバ読んでないだろうな!?」
「いやいやお兄さん、こう見えてボク女の子だよ? 女の子に年の話ってデリカシーないよねー」
「大丈夫!! 十分に女の子に見えてるから!!」
情けない声色をあげながら、その女の子を蹴り飛ばす龍。天属性の全身強化魔法によってダメージが与えられないことは分かっていたが、これで時間は稼げる。追撃にと放たれた龍からの無詠唱の魔法球5発は、そのうちの3発がまりかに届く前に降り注ぐ魔法球によって撃ち落とされた。複雑な軌道など描かない、対象に向かって直線に飛ぶ魔法球だ。この雨の中、対象にきちんと届く方が珍しい。
もっとも、運良く届いた2発も、結局はまりかの全身強化魔法の前に霧散してしまったわけだが。
「反則過ぎるだろ!! チートじゃねーか!! バグキャラかよ!!」
龍がそう叫んでいる間にも、まりかは龍との距離を詰め、笑いながら一撃で卒倒レベルの拳を放ってくる。
「わははははー。ならお兄さんがパッチでもあてて修正してよ」
「現実に修正パッチなんてあるはずねーだろ!! ていうか自分から言い出しといてアレだけど何だこの会話!!」
まりかの回し蹴りをしゃがみ込んで回避した龍が、両手を地面につけたまま両足を突き上げた。
「ぷあっ!?」
突き上げられるようにして蹴られたまりかの身体が宙に浮く。即座に体勢を整えた龍が追撃に放った膝蹴りは、むなしくも空を切った。
宙に浮いたまりかが、そのまま本当に浮き上がったからだ。
「飛ぶなよ!! 辞めるなよ人間を!!」
「はははっ、お兄さん面白ーい。ボクはちゃんと人間なのにー」
この会話と戦闘を魔法球の弾幕のなかで行っているのだから驚きである。
しかし、有利なのはまりかだ。
前後左右にしか動けない龍に対して、まりかは天属性の付加能力『浮遊』により自在に飛び回ることができる。これだけで戦闘スタイルの自由度は格段に変わる。
加えて、天属性の『属性優位』。龍が発現している身体強化魔法、攻撃特化の火ですら、まりかから距離を取るためだけの衝撃用の魔法に成り下がっていた。
そして。
「っ、ちっ!?」
時間の経過と共に悪くなる、決戦フィールドの足場。
躓きかけた龍の身体、まりかからの回避が一瞬だけ遅れる。掠めるような角度で振り抜かれたまりかの拳に、龍の長髪数本がはらはらと舞った。
★
天に浮く3つの天蓋魔法。
フィールド全てを掃射せんと猛威を振るうそれが、今や平坦なところなど見当たらないほどに決戦フィールドをめちゃくちゃにしていた。
既に生き残りは10人に満たない。この弾幕の中を満足に動けるほどの実力者はそういなかったし、動けた者も「まずは元凶を」とまりかを狙ったせいで返り討ちにされて退場している。今残っているのはこの弾幕の中死闘を繰り広げているまりかと龍、そしてただただ弾幕が止むのを待ち障壁に身を隠す出場者数名だけだ。それも辛うじて生き残っている状態であり、いつ失格になってもおかしくない。
龍が回避に専念して攻勢に回らないのは、自らの手のうちを晒したくないから。
そして、それでも切り抜けられると考えている理由は2つ。
1つめは、まりかの天蓋魔法による無差別攻撃。
これが既に失格になった出場者にヒットした場合、大会ルールの『意識無しと判断された者への、故意の攻撃禁止』に触れるかどうか。触れるのだとすれば、まりかは勝手に自滅してくれることになる。
結論は、触れないだった。
次々と脱落者が出ているにも拘わらず、容赦なく降り注ぐ弾幕。そして、それを黙認する運営委員会。
(……まあ、あのアギルメスタの名を冠した大会だしな。そんな軟弱なルールじゃねーか)
1つめの期待が打ち砕かれたにも拘わらず、龍は特に嘆きはしなかった。むしろ、この弾幕の中を泣きそうになりながら突貫し、脱落者を回収していく治療班へ心の中で賛辞を贈る。
(がんばれがんばれ。あんたらの勇気ひとつで命ひとつが救われるぞ、っと)
まりかの手刀を躱し、肘打ちを打ち込む。もちろん、相手側にダメージを与えられたようには見えない。龍も期待していなかった。
あしらえばあしらうほど、まりかは目を輝かせて嬉しそうに突っ込んでくる。
(嬉々として攻めてきやがって。ドMかよ)
龍は、じゃれてくる女の子にしては不釣り合いな卒倒レベルの拳や蹴りを躱し、足払いをして転ばせようとした。が、天属性の付加能力『浮遊』によってまりかは転ぶことなく、通常ではありえない動きで体勢を整え、改めて龍を襲う。それも龍はうまくやり過ごし、ついでに頭上へと降り注いだ魔法球を躱しつつ、改めてまりかへ裏拳を打ち込んだ。そして、その間に倒れる新たなる犠牲者。
これが、龍が冷静でいられる理由。
龍が現状を切り抜けられると思っている理由の2つめ、時間さえ稼げれば他の出場者が勝手に脱落するからなんとかなる、である。本戦の切符を手に入れられるのは、各グループ2人。つまりまりかと自分が残ってしまえばそれでおしまいと考えているのだ。
天蓋魔法による弾幕は続いている。こうしている間にもまた1人脱落し、泣きそうな顔をした治療班がその回収に乗り出した。
(いいよいいよー。早く脱落しちまえ)
そんなことを考えながら、まりかからの猛攻を回避していく。
「お兄さんの動き凄い凄い!! 全然当たらないよ!? これが中国拳法ってやつだね!!」
「即死級のパンチ放ちながらにこにこ言うんじゃねーよ!!」
(それにいつの間にお兄さんなんて呼び出した……。好感度上げる要素あったか?)
考えられる要素は1つだけ。このCグループにおいて、現状でまりかとやり合えているのが龍ただ1人だから。これが正解だとするならば、根っからのバトルジャンキーということになる。
そして、残念ながらそれが正解だった。
まりかは龍の体術を見れば見るほど、その身に受ければ受けるほど、俄然やる気を出した。どんどん酷くなる足場とどんどん輝きを増すまりかの表情にうんざりしながらも、龍は再びまりかを吹き飛ばした。
★
次々と着弾する天属性の雨、そして一撃で卒倒レベルの拳や蹴りを捌きながら、龍の表情は徐々に険しいものに変わり始めた。
状況は一向に変わっていない、……ならばよかったのだが。
(……こいつ、俺の動きについてきて……っ!?)
まりかを突き飛ばそうと伸ばした腕が弾かれる。足払いしようと浮かせた足が踏みつけられる。躱そうとした身体を押さえつけられる。
「うっ!?」
目と鼻の先をまりかの拳が走り抜けた。あと一歩、回避が遅かったら龍は脱落していたかもしれない。それほどきわどいタイミングだった。
「冗談じゃねー、おお!?」
頭上から降り注ぐ天属性の雨を躱す。そこに追撃を仕掛けるまりか。
「このやろっ!!」
振り上げた足は素気無く躱された。龍もこのくらいでまりかを迎撃できるとは思っていない。そのまま身体を反転させ、腕を振りぬく。まりかは腕をクロスさせることでそれを防いだ。小柄な身体が後方へと吹き飛ばされ、
……なかった。
「はっ!?」
龍の一撃で宙に浮いたまりかの身体。衝撃によって後方へと吹き飛ばされるべきはずの少女の身体は、どのような物理的法則に従ったのか、そのまま龍の方へと突っ込んできたのだ。
「くらえ必殺天印のウェスタンなラリアット!!」
「絶対に今適当に付けた名前だろそれ!!」
笑顔で技名を叫びながら即死級の一撃を繰り出してくるまりかに対して、転がりながら回避した龍がつっこむ。つっこまれたまりかはその勢いが殺せずそのまま隆起した決戦フィールドへと本当に突っ込んだ。
爆ぜた。
漫画かよ、とつっこみたくなるほどのコミカルな爆音と衝撃と共に。
「おかしいおかしい!! 絶対におかしい!! 威力がイカれてるってまじで!!」
その衝撃に、天からの弾幕を防ぐことで精一杯だった出場者数人が巻き込まれた。
『こ、こう着状態だった生き残り人数がこれでまた減ったぞ!? さん、しい、ごお……、残るはあと5人!! 5人だ!! 龍選手が天道選手に仕留められるのが先か!? それとも防御で精一杯な出場者が脱落するのが先か!? 目が離せません!!』
『うぅーん。天道選手も龍選手もどうして守り一辺倒になった選手を狙わないんだろうね? あそこを叩いちゃえばすぐに勝負は決まるだろうに。見ている方は確かに面白いんだけど……。お互い譲れない誇りってやつなのかな』
『なるほど!! 流石はアギルメスタ杯に参戦するだけあって高貴な考えですね!!』
(んなわけあるかアホ!!)
トンチンカンな実況解説の会話に、龍は心の中で盛大につっこんだ。
龍とて、やれることならとっくに残りの出場者を屠っている。
それができない原因はただひとつ。
「集中切らしちゃだめだよ、お兄さん。こっからが面白いところなんだから」
いつの間にやら龍の懐へと潜り込んでいたまりかが不敵に笑う。
「っ!?」
反射で斜めに飛んだ龍は、肩すれすれを魔法球が貫く様を視界の端に収め、叫んだ。
「『火の球』!!」
その数は6。
標的は、至近距離で追撃の姿勢をとるまりかではない。
火属性の身体強化魔法を纏っている右手を、決戦フィールドへと叩きつける。ただでさえぼろぼろになっていた地面が更に隆起し、まりかの追撃を失敗に終わらせる。
その間に、6発の『火の球』は上空から降り注ぐ天属性の魔法球を迎撃していた。天属性の魔法球1発につき、3発。龍直撃コースをとっていた天属性の魔法球2発は、その軌道を僅かに変えて着弾する。
「ぐっ!? 面倒くせぇ!!」
着弾の衝撃で飛んでくる石つぶてを腕で払いのけ、バックステップで更に距離を空ける。すぐにまりかが襲ってきてもいいように体勢を整えた龍だったが。
「うぅーん。やっぱこの程度の火力じゃあお兄さんは真面目にやってくれないかぁー」
隆起する決戦フィールド、そのひとつの頂の上で。
まりかは片足立ちしながら怪しげな笑みを浮かべた。
「もうひとつギア、上げてみる?」
ゾアッと。
龍の身体に冷たい感覚が走り抜けた瞬間には。
「『四天』」
頂に立つまりかの後方、地面と直角になる角度で、新たなる天蓋魔法が発現されていた。
「……お嬢ちゃん。天蓋魔法4つを同時展開とか人外の化け物かよ。普通なら1つの発現でひいひい言うもんだぜ」
「3つを苦も無く捌きながらボクを構ってくれてるお兄さんがそれ言う?」
そんな会話が成された直後。
降り注ぐ魔法球の雨に加えて。
出場者の一切を掃射せんと、横からの砲撃がスタートした。
★
天から降り注ぐ魔法球だけでも阿鼻叫喚の大地獄だったにも拘わらず、横からの乱射までトッピングされたことによって、決戦フィールド内は文字で表現するのは難しいほどにもうむっちゃくちゃのありさまとなった。
「うっひょお!?」
これまでは人を喰ったかのような軽薄な笑みを浮かべていた龍も、さすがに頬を引きつらせる。上から下への魔法球の軌道に横一直線の魔法球の軌道が加わったことで、天属性の魔法球同士がぶつかり合い、あちらこちらで小規模な衝撃波も発生していた。
「どこの戦争映画だよ!!」
この環境を生み出している原因がたった1人であることも恐怖のひとつである。
ただ、それよりも恐ろしいのは。
「さあ!! 第二幕の始まりだよお兄さんっ!! 今度はもう少し本気出してほしいなっ!!」
「にこにこ笑顔で死地に乗り込んでくんじゃねー!!」
この地獄の中、それを創り上げた張本人が平気な顔して突っ込んできていること。
まりかは、もはや自らが生み出した魔法球の弾幕を躱そうとしていない。まりか自身が身に纏っている天属性の全身強化魔法『天ノ羽衣』が、その全てを防ぎきっているのだ。
「くっ!? 本当に規格外だなお前は!!」
「評価は光栄だけど、ならそれを態度で示してほしいかな!!」
龍の回し蹴りを躱しながら、まりかは己の手を龍の鼻先へと突きつける。
「っ!? 何のマネ――」
「必殺天印のでこぴんっ!!」
「名前ダッサ――ぶぼっ!?」
その動作に、迫力などまるでなかった。親指から放たれた中指にそれほどの速度は無く、ほとんど音すらしなかった。
だからこそ、龍は不覚にも油断した。
――――してしまった。
気の抜けるようなでこぴんの動作の直後。
アホみたいな衝撃波が龍を襲い、龍の意識はそこで途絶えた。
次回の更新予定日は、12月31日(水)です。
年末年始の更新については、今日か明日くらいに活動報告にてお知らせします。