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テレポーター  作者: SoLa
第4章 スペードからの挑戦状編〈中〉
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第0話 ナニカ

 魔法は、残酷だ。


 魔法は、才能という要因に大きく作用される道具である。

 才能が無ければ、多属性を扱うことができない。

 才能が無ければ、特殊二大属性を扱うことができない。

 才能が無ければ、非属性・無系統魔法を扱うことができない。


 魔法は、残酷だ。


 基本五大属性のうち、いくつの属性が扱えるだとか。

 特殊二大属性のうち、光属性が扱えるだとか。

 非属性・無系統のうち、身体強化系に属する魔法が扱えるだとか。


 そんなことを論じる前に。

 そもそも才能に恵まれ魔力を多く有する人間でないと、魔法は発現することができない。


 魔法は、残酷だ。


 努力だとか。

 根性だとか。

 そんな凡人の努力を嘲笑うかのように。

 天才は余所見をしながら大魔法を発現し、凡人を蹴散らす。


 魔法は、残酷だ。


 凡人が何十人、何百人と集まり、寄ってたかって魔法球を打ち込んだところで。

 天才は障壁ひとつでそれを防ぎ切り、魔法球ひとつで集団を壊滅へと追いやる。


 魔法は、残酷だ。


 結局、どれだけ努力しようが。

 結局、どれだけ耐え忍ぼうが。

 凡人には越えられない一線がある。


 魔法は、残酷だ。


 魔法には、選ばれし者にしか辿り着けない領域がある。

 天才は生まれ持った才能だけで、易々とその一線を乗り越える。


 魔法は、残酷だ。


 だから私は、魔法に絶望した。

 中途半端にしか備わっていない力なら、いっそのこと無い方がまだマシだった。


 魔法は、残酷だ。


 だから私は、魔法に絶望した。

 中途半端に備わっていたせいで、私は無意味な夢を見させられた。


 魔法は、残酷だ。


 魔法は、残酷だ。

 魔法は、残酷だ。

 魔法は、残酷だ。


 魔法は、残酷だ。

   

 だから、私は――――。







「グブッ!?」


 暗い暗い路地裏で。

 その影は、力尽きたかのように膝を折った。


「……、グルルル。グッ!? ガ、ガハッ、ゴボォッ!!」


 口から、黒ずんだ何かを吐き出す。それは液体に近かったが、ところどころ固形物も混じった得体も知れないナニカだった。


「グ、オ、オ、オ、……オォ」


 唸り声が、陽の光がほとんど届かない路地裏に低く反響する。


 周囲に人影は無い。

 その影の荒い息だけが、その路地裏の音の全てだった。


「グッ、グプッ!?」


 常人の二倍ほどの長さがある指が、ナニカの口元を覆った。

 その指の隙間から漏れ出す、黒ずんだ液体。


 ぽたぽた。

 ぽたぽた、と。

 路地裏に染みを作っていく。


「……ウ、ウゥ。……ナ、ゥゼ、……リ、ン……」

 ナニカは、壁に手をあててゆっくりと立ち上がった。

 鈍く紅い色を帯びたその眼は既に虚ろで、どこを見ているのかも分からない。







 ――――魔法世界の孕む闇は、確実に侵食してきている。

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