産声
君が産声を上げた時、きっとその声にはもう感情が含まれていたのだろう。君がとめどなく泣いていたのは、ただ肺呼吸をするためじゃなくて、この世界の本質が果てしなく暗い闇であることを、僕に伝えようとしてくれていたに違いない。君はその闇から僕を救うためにこの世界にやってきてくれた、神様の使いだったのだろう。
だけどごめん。
僕は馬鹿だから、その時は君が僕の元へ無事産まれてきてくれたことがただただ嬉しくなっちゃって、君の警告に気付くことができなかった。その結果、僕は君が産まれた後も、色んな失敗をしてしまった。色んな恥を重ねてきたし、色んな悲しみを抱いてきたし、色んな傷を負って満身創痍になったこともあった。でも君はそうなる事を全部、最初から分かっていてーーそして沢山救おうとしてくれてーーそれでも救えなくてーーそしてまた、泣いてくれていたのだろう。
ありがとう。
誰かのために泣くことができる君は、本当に優しい子だ。僕の一部とは思えないくらいーー。君を産んだ僕は、きっと君が思っている以上にポンコツで、どうしようもなくて、浅はかでーー。君を育てる資格もないくらい、下らない人間だと思う。
だけど僕は前を向くよ。
君が泣いてくれるから、君が僕を救おうとしてくれるから、君が僕のために生きてくれているからーー
だから僕も、君と一緒に生きようと思う。
人は失敗しても良いと思う。AIみたいに完璧じゃない僕たち人間は、失敗を経て成長を試み、完璧に限りなく近付こうとする。しかしその営みこそが、AIにはない人間の唯一の個性であると、お互いに認め合っていかなければならないと思う。その考えを持っている人は、きっと世界にはまだ少ない。だからこそ僕は伝えていきたいと思う。
君の姿を通じて、悩みを抱えている人々に、この世にはこんなにも優しい存在がいるんだよって、発信していきたいんだ。
君にはこれから先も苦労をかけるかもしれないけれど、
また手伝って欲しい。
良いかな…?
ーーおぎゃあ、おぎゃあ。
僕の腕に抱かれる小さな赤ちゃんは、また大口を開けて泣き声を上げ始めた。
でも、今度は悲しそうに泣くんじゃなくて、
にっこりと笑いながら泣いていた。




