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終わらせるための魔法使い――魔物パンデミックと、壊れた世界の正しさ――  作者: 自ら(Youtubeで朗読ver投稿中‼️)


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第9話「崩壊」

戦いから三日が経った。


人々は死者を埋葬した。三田を含む十名の遺体を、病院の中庭に埋めた。墓標を立てて、皆で祈った。


だが、集落は疲弊していた。


食料は底をついていて、水も少ない。人々の顔には疲労が刻まれている。子供たちは泣かなくなった。泣く気力もないのだろう。


人々の間に、亀裂が生まれていた。


「ここは危険だ。別の場所へ移るべきだ」


ある男がそう言った。


「だが、どこへ行く。どこも同じだ」


別の男が反論する。


「それでも、ここよりマシな場所があるはずだ」


「ない。どこへ行っても、魔物がいる」


人々の意見が分かれる。残る派と去る派。議論は平行線をたどった。


俺は、ただそれを見ていた。


美咲が俺の隣に来た。


「柊さん、どう思いますか」


「…分からない」


「私は、ここに残りたいです。高橋さんや三田さんが守ってくれた場所ですから」


美咲がそう言う。だが、その声には迷いがある。


「でも、皆が疲れているのも分かります」


俺は何も答えなかった。答えられない。どちらが正しいのか、俺には分からない。


その日の午後、遠くで光が見えた。


また、魔法の光だ。だが、今回は違う。もっと強い光だ。まるで太陽が落ちてきたかのような、眩しい光。


俺と美咲、そして数人の男たちで確認に行くことになった。


街を進む。光が見えた場所は、広場だった。


そして、そこに「それ」があった。


巨大な亀裂。


以前見た亀裂よりも、はるかに大きい。高さは20メートル以上あって、幅も10メートルはある。まるで世界そのものが裂けているかのようで、亀裂の向こうからは、不気味な光が漏れている。


美咲が震える声で呟く。


「これは…」


亀裂が脈打つように光る。まるで生きているかのように、光が強まったり弱まったりしている。


そして、亀裂から何かが出てきた。


巨大な魔物だ。


いや、巨大という言葉では足りない。


体長は20メートルを超えている。竜のような姿で、だが今までのA級魔物とは明らかに違う。黒い鱗に覆われているが、その鱗は光を反射していて、まるで宝石のように輝いている。翼が四枚ある。尻尾が二本ある。そして、目が六つある。全ての目が赤く光っていて、まるで地獄の業火のような色だ。


これは、S級魔物だ。


圧倒的な威圧感。その存在だけで、空気が重くなる。呼吸が苦しい。足が震える。まるで、死そのものが目の前に立っているかのような恐怖だ。


美咲が俺の腕を掴む。震えている。


「逃げましょう」


俺は頷いた。


S級魔物と戦っても、勝てない。今の俺では、絶対に勝てない。


俺たちは走った。全速力で。


だが、S級魔物が追ってくる。空を飛んでいる。速い。あっという間に距離が縮まる。


俺は振り返った。S級魔物が、俺たちを見下ろしている。


そして、S級魔物が口を開けた。


炎が吐き出される。巨大な炎が、俺たちに向かってくる。


俺は左腕の力を使った。黒い炎で、S級魔物の炎を相殺しようとする。


だが、力が足りない。S級魔物の炎が、俺の炎を飲み込む。


炎が俺たちに迫る。


美咲が防御魔法を張った。光の壁が現れる。


炎が壁にぶつかる。壁が砕ける。美咲が吹き飛ばされる。


俺も吹き飛ばされて、地面に叩きつけられる。


体が痛い。火傷している。視界が霞む。


S級魔物が近づいてくる。地面が揺れる。


俺は立ち上がろうとした。だが、体が動かない。


S級魔物が俺を見下ろしている。


死ぬ。


そう思った。


だが、その瞬間、美咲が俺の前に立った。


防御魔法を張る。巨大な光の壁が現れて、俺を守る。


「皆、逃げて!」


美咲が叫ぶ。


他の男たちが逃げていく。


俺は叫んだ。


「美咲さん!」


だが、美咲は聞かない。ただ、防御魔法を張り続けている。


S級魔物が攻撃する。爪が壁を打つ。壁にヒビが入る。


美咲の顔が苦痛に歪む。魔力を使いすぎている。


壁が砕けた。


S級魔物の爪が、美咲の体を貫いた。


血が噴き出す。


美咲が吹き飛ばされて、地面に叩きつけられる。


俺は美咲に駆け寄った。


美咲が倒れている。胸に大きな傷がある。血が流れている。止まらない。


俺は美咲の体を抱き起こした。


美咲が目を開ける。血を吐く。


美咲が弱く笑った。まるで何も痛くないかのように、いつもの優しい笑顔を見せた。だが、その笑顔は痛々しくて、俺の胸を引き裂くようだった。


美咲の手が、力を失った。冷たい。まるで氷のようだ。


美咲が目を閉じた。


動かなくなった。


死んだ。


俺は叫んだ。


美咲の名前を叫んだ。だが、美咲は動かない。


また、失った。


また、守れなかった。


母。妹。高橋。三田。そして、美咲。


皆、死んだ。


俺が、守れなかった。


俺の中で、何かが壊れた。理性が、制御が、全てが壊れた。怒りと絶望と罪悪感が混ざり合って、まるで体の中で嵐が吹き荒れているかのようだ。


左腕が叫ぶ。


だが、俺は聞かない。


俺の力が暴走する。


左腕が制御できない。黒い炎が溢れ出す。体の中から、外から、あらゆる方向から炎が噴き出して、まるで俺自身が炎そのものになったかのようだ。


炎が周囲を焼き尽くす。地面が、建物が、全てが燃える。


S級魔物も、炎に包まれる。S級魔物が咆哮する。だが、炎は止まらない。どんどん強まっていく。


やがて、S級魔物が倒れた。動かなくなった。死んだ。


だが、炎は止まらない。


俺の意志とは関係なく、炎が暴走している。周囲の全てを焼き尽くしていく。


人々が逃げていく。悲鳴が聞こえる。


「化け物だ」


「逃げろ」


人々が俺から逃げていく。


俺は、化け物だ。


皆を守るはずだった俺が、皆を殺している。


左腕が必死に制御しようとしている。だが、制御できない。俺の感情が、力を暴走させている。


やがて、俺の魔力が尽きた。


炎が消える。


俺は倒れた。


意識が遠のく。


周囲を見る。焼け野原だ。建物が燃えている。地面が焼けている。


美咲の遺体も、焼けている。


俺は、美咲を焼いた。


俺は、何をしている。


意識が、消えた。

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