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終わらせるための魔法使い――魔物パンデミックと、壊れた世界の正しさ――  作者: 自ら(Youtubeで朗読ver投稿中‼️)


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第8話「絶望の戦い」

夜が明けた。


空は灰色に曇っていて、まるで世界そのものが悲しんでいるかのようだった。冷たい風が吹いて、病院のバリケードを揺らす。


人々は既に配置についている。魔法使いは前線に、銃を持つ者はバリケードの後ろに、弓を持つ者は建物の窓から狙える位置に。子供や老人は建物の最奥に避難させてある。


俺は病院の正面、バリケードの前に立っていた。美咲が隣にいる。三田とその部下たちも、それぞれの位置についている。


三田が俺に声をかけた。


「準備はいいか」


「ああ」


「魔物が来たら、まず魔法使いが攻撃する。俺たちは援護だ」


「分かった」


三田が周囲を見回す。


「皆、気を引き締めろ!今日、俺たちは生き延びる!」


人々が声を上げる。だが、その声には恐怖が混じっている。


遠くで、地鳴りが聞こえる。魔物が来る。


やがて、魔物の姿が見えてきた。


まず、小型の魔物が現れた。犬型、猫型、鳥型。次々と現れて、こちらに向かってくる。そして、その後ろから、大型のB級魔物が姿を現した。さらにその後ろには、A級魔物の巨大な影も見える。


数は、数え切れない。百を超えて、二百、三百。いや、それ以上かもしれない。まるで津波のように、魔物の群れが押し寄せてくる。


三田が叫ぶ。


「来るぞ!」


魔物の群れがバリケードに襲いかかった。


銃声が響く。人々が銃を撃つ。だが、魔物は倒れない。弾が当たっても、怯むだけだ。


俺は火炎魔法を使った。黒い炎が魔物の群れを包む。魔物が燃える。次々と倒れる。だが、倒れた魔物の後ろから、また新しい魔物が現れる。


美咲が防御魔法を張る。光の壁が現れて、魔物の攻撃を防ぐ。だが、壁にヒビが入る。魔物の攻撃は激しい。


三田のグループの魔法使いたちも戦っている。氷の魔法、雷の魔法、様々な魔法が飛び交う。だが、魔物の数が多すぎる。倒しても、倒しても、次が来る。


戦闘が続く。時間の感覚が失われる。俺はただ、魔法を使い続ける。火炎を放ち、魔物を焼く。左腕の力を使って、黒い炎で魔物を焼き尽くす。


だが、魔力が尽きそうだ。息が荒い。体が重い。


美咲も疲れている。顔が青白い。それでも、防御魔法を張り続けている。


三田が叫ぶ。


「持ちこたえろ!」


だが、バリケードが崩れ始めた。魔物の攻撃で、木材が折れる。バリケードの一部が崩壊する。


魔物が集落内に侵入してくる。


人々が悲鳴を上げる。魔物が人を襲う。血が飛び散る。何人かが倒れる。


俺は集落内に侵入した魔物に向かって、火炎を放った。魔物が燃える。だが、また次の魔物が来る。


戦闘は激しさを増していく。まるで地獄のような光景だ。血、悲鳴、炎、咆哮。全てが混ざり合って、混沌としている。


そのとき、遠くから咆哮が聞こえた。


今までとは違う、圧倒的な咆哮だ。


A級魔物が現れた。


巨大な魔物で、体長は15メートルほどある。竜のような姿で、黒い鱗に覆われている。翼があって、尻尾が長い。目が赤く光っている。


A級魔物が咆哮する。地面が揺れる。人々が恐怖に震える。


三田が前に出た。


「俺が行く!」


三田が銃を撃つ。だが、弾がA級魔物の鱗に弾かれる。


A級魔物が三田を見た。


そして、A級魔物が爪を振った。


三田が避けようとした。だが、間に合わなかった。爪が三田の体を引き裂いた。血が噴き出す。三田が吹き飛ばされて、地面に叩きつけられる。


「三田さん!」


誰かが叫ぶ。


三田が倒れている。動かない。血が流れている。


俺は怒りが湧き上がるのを感じた。また、誰かが死んだ。また、守れなかった。高橋のように。母や妹のように。


俺はA級魔物に向かった。


左腕の力を使う。黒い炎が生まれる。だが、A級魔物には効かない。鱗が炎を弾いている。


A級魔物が俺に向かってくる。爪が俺に迫る。俺は避けた。だが、避けきれず、肩に爪が当たった。痛い。血が流れる。


美咲が叫ぶ。治療魔法を使おうとするが、A級魔物が美咲を狙う。


俺は美咲の前に立った。A級魔物の爪を受け止める。いや、受け止められない。吹き飛ばされる。


地面に叩きつけられる。体が痛い。視界が霞む。


A級魔物が再び攻撃してくる。


俺は立ち上がれない。体が動かない。


このままでは、死ぬ。


皆が、死ぬ。


左腕が呟く。


俺は躊躇した。力を解放すれば、皆を巻き込むかもしれない。高橋が死んだときのように、暴走するかもしれない。


だが、力を使わなければ、今ここで全員が死ぬ。子供たちも、美咲も、皆が死ぬ。


俺は決断した。


左腕の力が解放される。黒い光が左腕から溢れ出す。まるで左腕そのものが闇になったかのように、圧倒的な魔力が俺の体を満たしていく。痛みが消える。疲労が消える。体が軽くなる。いや、軽くなったというより、体そのものが力で満たされて、まるで俺自身が魔力の塊になったかのような感覚だ。


俺は立ち上がった。手を前に出す。


黒い炎が生まれる。今までとは比べ物にならない規模の炎だ。まるで竜巻のように、炎が渦を巻いて、A級魔物に向かって放たれる。


炎がA級魔物を包む。魔物が咆哮する。鱗が焼ける。肉が焼ける。魔物が暴れる。だが、炎は消えない。どんどん強まっていく。


やがて、A級魔物が倒れた。動かなくなった。死んだ。


俺は炎を消そうとした。だが、炎が消えない。


左腕が呟く。声が焦っている。


炎が暴走している。俺の意志とは関係なく、炎が溢れ出す。周囲を焼き始める。地面が、バリケードが、建物が燃える。


人々が逃げる。悲鳴が聞こえる。


俺は必死に炎を制御しようとする。だが、制御できない。体が熱い。頭が痛い。視界が歪む。まるで体の中で何かが暴れているかのようで、それを抑えようとすればするほど、力が暴走していく。


美咲が駆けつけた。


美咲が俺に触れる。温かい光が俺を包む。治療魔法だ。


光が俺の体に染み込んでいく。暴走していた力が、少しずつ収まっていく。炎が弱まる。やがて、炎が消えた。


俺は膝をついた。体が重い。魔力を使いすぎた。


美咲が俺を支える。美咲の顔を見ると、疲れている。だが、笑顔を見せている。


A級魔物が倒れると、他の魔物たちが逃げ始めた。まるでリーダーを失ったかのように、統制を失って、バラバラに逃げていく。魔物の群れが去っていく。


静寂が訪れた。


戦闘が終わった。


人々が呆然としている。皆、疲れ果てている。


俺は周囲を見回した。


死体が転がっている。十名ほどが死んだ。三田を含む。三田の遺体が、血の海の中に倒れている。


人々が泣いている。仲間の死を悼んでいる。


俺は三田の遺体に近づいた。三田の目は閉じている。もう、何も見えない。


「すまない」


俺は呟いた。


また、守れなかった。また、誰かが死んだ。


美咲が俺の隣に来た。


「あなたのせいじゃありません」


美咲がそう言う。


「あなたは、皆を守りました」


だが、俺には、そうは思えない。俺が、もっと早く力を使えば。もっと強ければ。三田は死ななかった。


人々が死者を集め始めた。三田を含む十名の遺体を、並べる。


俺は、ただ、それを見ていた。


空は相変わらず灰色で、冷たい風が吹いている。まるで世界が、死者を悼んでいるかのようだ。

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