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終わらせるための魔法使い――魔物パンデミックと、壊れた世界の正しさ――  作者: 自ら(Youtubeで朗読ver投稿中‼️)
3章-真実

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第51話「相良の記録」

 相良健一の自宅。


 相良がパソコンの前に座っていた。画面には、文章が表示されている。


 タイトル。


 「終わらせるための魔法使い――魔物パンデミックと、壊れた世界の正しさ――」


 相良が過去のノートを見る。慎吾の写真。黒牙会の記録。対策室の資料。陽菜の笑顔。左腕の紋様。戦闘の記録。


 二年間の記録が、ノートに詰まっている。


 相良が呟く。


 「……二年間の記録だ」


 相良がキーボードを叩く。文章を書き続ける。


 「柊慎吾は、誰よりも世界を終わらせたかった。だが、彼が終わらせたのは、パンデミックだった」


 相良が一度手を止める。


 窓の外を見る。青い空。雲が流れている。


 相良が自問する。


 「……これを、誰が読む」


 答えは分からない。


 「誰も読まないかもしれない」


 だが、相良は書き続ける。


 「だが、記録する。それが俺の仕事だ」


 相良がタバコを吸う。煙が部屋に広がる。


 相良が再びキーボードを叩く。


 文章が、少しずつ完成していく。





 数日後。


 相良が慎吾に連絡した。


 電話越しに、相良が言う。


 「柊。会えないか」


 慎吾が答える。


 「……相良さん」


 「記録が完成した。お前に見せたい」


 慎吾が少し躊躇する。


 「……分かりました」


 数日後。


 喫茶店。相良と慎吾が向かい合っている。


 相良が原稿の束を持っている。厚い。数百ページはある。


 相良がそれを慎吾に渡す。


 「これが、俺の記録だ」


 慎吾が原稿を受け取る。重い。紙の重さだけではない。中身の重さだ。


 慎吾がタイトルを読む。


 「……終わらせるための魔法使い」


 相良が頷く。


 「ああ。お前の物語だ」


 慎吾が相良を見る。


 「……俺の?」


 相良が首を振る。


 「いや、正確には違う。パンデミックの記録だ。だが、中心にいたのはお前だ」


 慎吾が原稿をめくる。


 最初のページ。第七班壊滅事件のこと。


 次のページ。左腕を手に入れたこと。


 さらにめくる。陽菜のこと。桐生のこと。冴のこと。


 慎吾が読み続ける。自分のこと、第七班のこと、全てが書かれている。


 慎吾が顔を上げる。


 「……これを、どうするんですか」


 相良が答える。


 「出版する。誰も読まないかもしれないが」


 慎吾が何も言わない。


 相良が問う。


 「お前は、どう思う」


 慎吾が原稿を見る。


 「……分かりません。でも」


 慎吾が相良を見る。


 「これは、事実ですね」


 相良が頷く。


 「ああ」


 慎吾が静かに言う。


 「なら、いいと思います」


 相良が微笑む。


 「そうか」


 二人でコーヒーを飲む。


 沈黙。だが、それは心地よい沈黙だ。


 相良が口を開く。


 「柊。お前に、感謝している」


 慎吾が驚く。


 「……え」


 相良が続ける。


 「俺は、記録者だ。記録することでしか、生きられない」


 相良がコーヒーを置く。


 「お前の物語を記録できた。それは、俺にとって意味があった」


 慎吾が何も言わない。


 相良が続ける。


 「お前は、世界を救った。だが、誰もそれを知らない」


 「だから、俺が記録した」


 慎吾が首を振る。


 「……別に、知られたくはありません」


 相良が頷く。


 「分かっている。だが、記録は残る」


 相良が窓の外を見る。


 「いつか、誰かが読むかもしれない」


 「そして、知る。柊慎吾という男がいたことを」


 慎吾が静かに聞いている。


 相良が慎吾を見る。


 「それでいい」


 慎吾が静かに頷く。


 「……はい」


 相良が立ち上がる。


 「じゃあ、俺はこれで」


 慎吾が呼び止める。


 「相良さん」


 相良が振り返る。


 「ん?」


 慎吾が静かに言う。


 「……ありがとうございました」


 相良が微笑む。


 「こちらこそ」


 相良が去る。慎吾がその背中を見る。


 慎吾が原稿を見る。「終わらせるための魔法使い」というタイトル。


 慎吾が呟く。


 「……終わらせる、か」


 その言葉が、静かに流れる。





 その夜。


 相良が帰宅する。パソコンの前に座る。


 原稿を見る。最後のページ。


 相良が、あとがきを書く。


 「この物語は、終わっていない」


 相良がキーボードを叩き続ける。


 「柊慎吾は、今も生きている」


 「彼がどこで、何をしているのか、私は知らない」


 「だが、彼は生きている」


 「それだけで、この記録には意味がある」


 相良が最後の一文を書く。


 「何も終わらなかった。だが、それでいい」


 相良がキーボードを閉じる。


 「……終わった」


 相良がタバコを吸う。窓の外を見る。


 街の灯りが見える。人々が生きている。


 相良が呟く。


 「柊。お前は、生きろ」


 その言葉が、煙に混ざって消えていく。


 相良が原稿を抱える。


 「誰も読まないだろうけどな」


 相良が独言する。だが、顔には満足感がある。


 記録者としての仕事を終えた、満足感だ。


 相良が原稿を机に置く。


 「でも、それでいい」


 相良が立ち上がる。窓の外を見る。


 「記録は残る。それだけで、十分だ」


 相良がタバコを消す。


 部屋の中に、静寂だけが残る。


 だが、その静寂には、何かが満ちている。


 達成感。安堵。そして、小さな希望。


 相良が微笑む。


 「終わった。俺の仕事は」


 その言葉を最後に、相良が部屋の明かりを消す。


 暗闇の中、原稿だけが机の上にある。


 「終わらせるための魔法使い」


 そのタイトルが、月明かりに照らされている。

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