表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終わらせるための魔法使い――魔物パンデミックと、壊れた世界の正しさ――  作者: 自ら(Youtubeで朗読ver投稿中‼️)
3章-真実

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/52

第49話「見送る人たち」

 対策室の解散式。


 魔物が消失したため、対策室は役割を終えた。建物の中に、数十名の職員が集まっている。


 藤崎聡が前に立つ。


 「皆、よく戦った。対策室は、本日をもって解散する」


 藤崎の声は、簡潔だ。感情的な言葉はない。だが、その言葉には重みがある。


 「各自、元の部署に戻るか、次の配属先を待て」


 職員たちが頷く。


 式が終わる。人々が散り始める。


 桐生が慎吾を見つける。


 「柊。屋上に来い」


 慎吾が頷く。


 二人が対策室の屋上に上がる。


 街が見渡せる。かつてのレッドゾーンも、今は静かだ。


 桐生が柵に寄りかかる。


 「柊。久しぶりだな」


 慎吾が隣に立つ。


 「……桐生さん」


 桐生が街を見る。


 「対策室が解散する」


 「知っています」


 桐生が静かに言う。


 「俺も、元の刑事に戻る。いや、定年だから引退だな」


 慎吾が桐生を見る。


 「……そうですか」


 桐生が慎吾を見る。


 「お前は……よくやった」


 慎吾が何も言わない。


 桐生が続ける。


 「最初は、お前を監視していた。危険人物として」


 桐生が笑う。


 「だが、見ているうちに分かった。お前は、誰よりも真剣に戦っていた」


 慎吾が俯く。


 「……そんなことは」


 桐生が静かに言う。


 「いや。お前が決断したから、世界が救われた」


 慎吾が首を振る。


 「……でも、第七班の罪は消えません」


 桐生が頷く。


 「ああ。消えない」


 桐生が静かに続ける。


 「だが、お前はそれを背負って生きる。それでいい」


 慎吾が桐生を見る。


 桐生が遠くを見る。


 「俺も、娘を守れなかった罪を背負っている。それは消えない」


 桐生が初めて、娘のことを具体的に語る。


 「娘は、魔物に襲われて死んだ。俺は、間に合わなかった」


 慎吾が何も言わない。ただ、聞いている。


 桐生が続ける。


 「だが、生きている。お前も、生きろ」


 慎吾が頷く。


 「……はい」


 桐生が手を差し出す。慎吾が握手する。


 桐生の手は、大きく、温かい。


 桐生が静かに言う。


 「……お前に会えて、良かった」


 慎吾が答える。


 「……こちらこそ」


 桐生が手を離す。


 「じゃあな」


 桐生が去る。慎吾がその背中を見る。


 桐生の背中は、まっすぐだ。





 灯火の会の事務所。


 冴が慎吾を迎える。


 「柊くん。来てくれたのね」


 慎吾が頭を下げる。


 「……はい」


 冴が微笑む。


 「お茶、淹れましょうか」


 「……いただきます」


 二人でお茶を飲む。


 冴が口を開く。


 「灯火の会も、規模を縮小するわ。魔物がいなくなったから」


 慎吾が頷く。


 「……そうですか」


 冴が続ける。


 「でも、避難民の支援は続けるわ。まだ困っている人がいるから」


 慎吾が静かに言う。


 「……冴さんらしいです」


 冴が微笑む。


 「ありがとう」


 冴が慎吾を見る。


 「柊くん。あなたは、自分の道を見つけたわね」


 慎吾が首を振る。


 「……まだ、分かりません」


 冴が静かに言う。


 「大丈夫よ。あなたは強い子だから」


 慎吾が何も言わない。


 冴が続ける。


 「ただ……一つだけ」


 「何ですか」


 冴が優しく言う。


 「時々は、誰かに頼ってもいいのよ」


 慎吾が冴を見る。


 冴が微笑む。


 「あなたは、一人で全てを背負おうとする。でも、頼ってもいいの」


 慎吾が静かに答える。


 「……はい」


 冴が言う。


 「約束ね」


 慎吾が頷く。


 「……約束します」


 対策室の廊下。


 森川が慎吾を見つける。


 「柊」


 慎吾が振り返る。


 「……森川少佐」


 森川が笑う。


 「もう少佐じゃない。対策室が解散したからな」


 慎吾が頷く。


 「……そうでしたね」


 森川が真剣な顔になる。


 「お前に、謝らなければならないことがある」


 慎吾が森川を見る。


 「……何ですか」


 森川が静かに言う。


 「あの時、真実を伝えたこと。命令違反だった」


 慎吾が首を振る。


 「……」


 森川が続ける。


 「だが、伝えて良かったと思っている」


 慎吾が静かに答える。


 「……俺もです。教えてくれて、ありがとうございました」


 森川が驚く。


 「……そうか」


 森川が慎吾の肩に手を置く。


 「お前は、信じられる男だった」


 慎吾が森川を見る。


 森川が続ける。


 「これからも、そうあり続けろ」


 慎吾が頷く。


 「……はい」


 森川が手を離す。


 「元気でな」


 「……はい。森川さんも」


 慎吾のアパートの前。


 長谷川が待っていた。


 「柊」


 慎吾が驚く。


 「……長谷川さん」


 長谷川が静かに言う。


 「引っ越すそうだな」


 慎吾が頷く。


 「……はい。このアパートを出ます」


 長谷川が頷く。


 「そうか」


 沈黙。


 長谷川が口を開く。


 「お前と話すのは、楽しかった」


 慎吾が静かに答える。


 「……俺もです」


 長谷川が問う。


 「食事、ちゃんと食ってるか」


 慎吾が頷く。


 「……はい。ちゃんと食べてます」


 長谷川が微笑む。


 「ならいい」


 長谷川が手を差し出す。慎吾が握手する。


 長谷川の手は、温かい。


 長谷川が静かに言う。


 「……元気でな」


 慎吾が答える。


 「……はい。長谷川さんも」


 長谷川が去る。慎吾がその背中を見る。


 長谷川の背中は、少し小さく見える。だが、まっすぐだ。





 数日後。


 慎吾が街を歩いていると、前から人影が見える。


 水無瀬遥だ。


 二人が立ち止まる。


 「……柊慎吾」


 遥が静かに言う。


 「……水無瀬」


 慎吾が答える。


 沈黙。


 遥が口を開く。


 「……終わったな」


 「ああ」


 遥が続ける。


 「魔物が消えた。魔法も使えなくなった」


 慎吾が頷く。


 「……ああ」


 遥が慎吾を見る。


 「私の復讐は……意味を失った」


 慎吾が何も言わない。


 遥が続ける。


 「だが、それでいい」


 慎吾が驚く。


 「……え」


 遥が静かに言う。


 「誠は……世界を救いたかった。お前が、それを成し遂げた」


 慎吾が首を振る。


 「……俺じゃない。みんなで」


 遥が静かに笑う。


 「……そうかもしれない」


 遥が歩き出す。すれ違いざまに言う。


 「……お前を許したわけじゃない。だが、感謝する」


 慎吾が立ち止まる。


 遥が去る。慎吾がその背中を見る。


 慎吾が小さく呟く。


 「……ありがとう」


 その夜。


 慎吾がアパートに戻る。荷物をまとめている。明日、引っ越す。


 段ボール箱に、服、本、日用品を入れる。


 窓の外を見る。街の灯りが見える。


 慎吾が呟く。


 「……みんな、ありがとう」


 慎吾が左腕を見る。


 「お前も」


 慎吾が荷物の中から、何かを取り出す。


 第七班のメンバーの写真だ。


 六人が笑っている。慎吾も、笑っている。


 慎吾がその写真を見つめる。


 「……明日、行く」


 その言葉が、静かに部屋に響く。

読んで下さりありがとうございました!

★★★★★評価と[[[ブックマーク]]]、リアクションお願いします!

Youtubeにて作品公開中!

http://www.youtube.com/@mizukara-h2z

ご感想やご質問など、ぜひコメントでお聞かせください。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ