第44話「黒川との決着」
黒牙会のアジト。廃工場の地下。
黒川竜二は、部下からの報告を聞いていた。
「首領。柊慎吾が、エマ・ラーソンと接触しました」
黒川がタバコを吸いながら頷く。
「……そうか」
黒川が手元のデータを見る。三十九話で盗み出した「魔物討伐→魔素上昇」の情報だ。グラフが、完璧な相関関係を示している。
黒川が呟く。
「魔物を殺し続ければ、魔素が増える。Level 5に達すれば……」
黒川が立ち上がる。
「面白くない」
部下が驚く。
「首領?」
黒川が窓の外を見る。廃墟が広がっている。
「柊慎吾は、世界を終わらせようとしている」
部下が困惑する。
「え?」
黒川が説明する。
「魔王が復活すれば、魔物が消える。この混乱が終わる」
黒川が振り返る。その目には、狂気に近い光がある。
「俺は、この混乱が好きだ。法もない。秩序もない。力だけが全ての世界」
黒川が杖を握る。
「それを終わらせるなど……許さない」
部下が一歩後ずさる。
「首領……」
黒川が命じる。
「柊慎吾を見つけろ。レッドゾーンにいるはずだ」
部下が頷き、去る。黒川は一人、窓の外を見続ける。
「柊慎吾。お前を止める」
その言葉が、静かに廃工場に響く。
レッドゾーンの廃墟。
慎吾がC級魔物を倒していた。魔物が地面に倒れ、動かなくなる。慎吾は深呼吸をする。
『魔素濃度、上昇している』
左腕が告げる。
「……ああ」
慎吾が答える。四十三話で決意してから、再び狩りを始めた。だが今回は違う。目的がある。Level 5に達するため。世界を救うため。
慎吾が次の場所に向かおうとしたとき、気配を感じた。
振り返る。
黒川竜二が立っていた。
「よう、柊」
黒川が笑顔で言う。だが、その笑顔には敵意がある。
慎吾が警戒する。
「……黒川」
黒川が近づく。
「お前、何しようとしてるか知ってるぜ」
慎吾が何も言わない。
黒川が続ける。
「魔王復活。魔物消滅。世界の平和」
黒川が笑う。
「つまんねぇ話だな」
慎吾が問う。
「どういう意味だ」
黒川が杖を肩に担ぐ。
「俺はな、この混乱が好きなんだよ。力だけが全ての世界。最高だろ」
慎吾が眉をひそめる。
「……お前」
黒川が続ける。
「だから、お前を止める。魔王なんて復活させない」
黒川が杖を構える。雷が杖の先端で弾ける。
慎吾が静かに言う。
「……分かった」
慎吾も杖を構える。
黒川が笑う。
「全力で来い。じゃないと、死ぬぜ」
次の瞬間、黒川が雷を放つ。慎吾が防御魔法を展開する。雷が火の壁に当たり、爆発する。
戦闘が始まった。
慎吾と黒川の激闘。
火炎と雷が交錯する。廃墟が崩れ、瓦礫が飛び散る。
だが、今回の慎吾は違う。四十話の遥との戦闘では、罪悪感で全力を出せなかった。今回は、全力だ。目的があるから。
慎吾の火炎が黒川の雷を打ち消す。黒川が後退する。
黒川が叫ぶ。
「いいぜ! そうこなくっちゃ!」
黒川も全力で雷を放つ。地面が焼け、空気が震える。
戦闘の中、黒川が笑いながら言う。
「なぁ、柊! お前、力を恐れてたよな!」
慎吾が答えない。ただ、魔法を放ち続ける。
黒川が続ける。
「だが、今は違う! 全力で戦ってる!」
黒川が雷の槍を作り、慎吾に投げる。慎吾が火の壁で防ぐ。
黒川が叫ぶ。
「何が変わった!」
慎吾が答える。
「……目的ができた」
黒川が眉をひそめる。
「目的?」
慎吾が静かに言う。
「世界を救う。そのために、魔物を殺す。魔素を増やす。魔王を復活させる」
黒川が一瞬、動きを止める。そして、笑う。
「……ハッ! お前、やっと分かったのか」
慎吾が問う。
「何をだ」
黒川が杖を構える。
「力ってのはな、使うためにあんだよ。目的のために」
慎吾が黒川を見る。
黒川が続ける。
「俺の目的は、混乱を楽しむこと。お前の目的は、世界を救うこと」
黒川が笑う。
「どっちが正しいとか、ねぇんだよ」
慎吾が静かに答える。
「……そうかもしれない。だが」
慎吾の左腕が熱を帯びる。紋様が光り始める。左腕が本気で力を供給する。
慎吾が言う。
「俺は、お前を止める」
黒い炎が左腕から噴き出す。通常の火炎魔法とは違う。黒く、重く、全てを焼き尽くすような炎だ。
黒川が目を見開く。
「おいおい……本気かよ」
黒川も全力で雷を放つ。だが、黒い炎が雷を飲み込む。
黒川が吹き飛ばされる。地面に叩きつけられ、瓦礫が崩れる。
慎吾が近づく。杖を黒川に向ける。
黒川が血を吐きながら笑う。
「……殺すのか」
慎吾が静かに答える。
「いや」
黒川が驚く。
「……なんでだよ」
慎吾が杖を下ろす。
「お前を殺しても、何も変わらない」
黒川が舌打ちする。
「……チッ」
慎吾が続ける。
「だが、二度と邪魔をするな」
黒川が起き上がる。体は傷だらけだが、立てる。血が流れているが、致命傷ではない。
黒川が慎吾を見る。
「……お前、つまんねぇな」
慎吾が何も言わない。
黒川が続ける。
「だが……」
黒川が慎吾の目を見る。
「お前の目、変わったな」
慎吾が黙っている。
黒川が言う。
「前は、死にたそうな目だった。今は……違う」
黒川が背を向ける。
「……好きにしろ。俺は、もう止めねぇ」
黒川が去ろうとする。だが、立ち止まり、振り返る。
「なぁ、柊」
慎吾が顔を上げる。
黒川が言う。
「お前、世界を救えると思ってんのか」
慎吾が答える。
「……分からない。だが、やるしかない」
黒川が笑う。
「……そうかよ」
黒川が去る。廃墟の中に消えていく。その背中は、少し小さく見える。
慎吾は一人、立っている。風が吹き、瓦礫が音を立てる。
『……殺さなくてよかったのか』
左腕が問う。
慎吾が答える。
「ああ。もう、無駄な殺しはしない」
『……変わったな』
慎吾が自分の手を見る。
「……そうかもしれない」
慎吾が空を見上げる。亀裂が、微かに広がっている。
「あと少しだ」
慎吾が歩き始める。次の狩り場に向かう。
左腕が呟く。
『慎吾』
「何だ」
『お前は……本当に世界を救えると思っているのか』
慎吾が立ち止まる。
「……分からない。だが」
慎吾が歩き始める。
「やらなければ、何も変わらない」
『……そうだな』
二人の会話が、風に流れていく。廃墟の中、慎吾の影が長く伸びる。その影は、もう一人ではない。陽菜がいる。桐生がいる。長谷川がいる。そして、左腕がいる。
慎吾は一人ではない。
だが、この戦いの最後は、一人で迎えなければならない。
慎吾がそれを知っている。左腕もそれを知っている。
二人は、静かに歩き続ける。
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