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終わらせるための魔法使い――魔物パンデミックと、壊れた世界の正しさ――  作者: 自ら(Youtubeで朗読ver投稿中‼️)
2章-孤立と殺戮

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第26話「物資回収作戦」

 朝日が昇る前に、四人は集合した。慎吾、陽菜、桐生、そして冴。皆、武器を持ち、準備を整えている。慎吾は左腕を見る。紋様が、いつもより少しだけ濃く見える。まるで、今日の戦いを予期しているかのような、そんな気がした。


「行きましょう」


 冴が言う。その声は冷静だった。だが、その目には緊張が宿っている。冴は、戦闘に慣れていない。だが、今日は一緒に来ると言った。避難民のために、自分も戦うと。


 四人は避難所を出て、レッドゾーンへ向かう。朝の空気は冷たく、肌を刺す。息が白く見える。街は静かで、鳥の声すら聞こえない。まるで、世界が死んだかのような、そんな静寂だった。


 目標は、廃墟のスーパーマーケットだ。そこには、まだ物資が残っているはずだ。缶詰、水、医薬品。避難民が生き延びるために必要なものが、全てある。だが、そこには魔物もいる。B級、C級の魔物が徘徊している可能性がある。


 レッドゾーンに入ると、空気が変わった。重く、まるで鉛のような圧迫感がある。魔素の濃度が高い。慎吾は左腕が疼くのを感じる。左腕が、魔素に反応している。


「気をつけろ。魔物がいる」


 桐生が言う。ライフルを構え、周囲を警戒している。その目は鋭く、まるで獣のように、あらゆる動きを捉えようとしている。


 陽菜が杖を握る。その手は震えていない。以前なら、恐怖で震えていただろう。だが、今は違う。修行を重ね、慎吾と共に戦い、陽菜は強くなった。その目には、決意が宿っている。


 冴は、短剣を握っている。魔法は使えないが、最低限の護身術は心得ている。だが、その顔は青ざめている。恐怖を感じているのだろう。それでも、一緒に来た。その勇気を、慎吾は認める。


 スーパーマーケットが見えた。ガラスは割れ、看板は傾き、壁には亀裂が走っている。だが、建物は倒壊していない。中には、まだ物資が残っているはずだ。


「慎吾、先頭を頼む」


 桐生が言う。慎吾は頷き、前に出る。左腕の力を少しだけ解放する。紋様が光り、黒い炎が指先に現れる。その炎は、まるで生き物のように、空気を震わせながら揺れている。


 慎吾がスーパーマーケットの入り口に近づくと、魔物の気配を感じた。複数いる。B級が二体、C級が五体。多い。


「敵がいる。B級二体、C級五体だ」


 慎吾が言う。桐生が頷く。


「陽菜、支援魔法を頼む。冴、俺の後ろにいろ」


「はい」


 陽菜が杖を振る。光が四人を包み、体が軽くなる。筋力が増し、反射神経が研ぎ澄まされる。


 慎吾が入り口を蹴破る。扉が砕け、中に突入する。薄暗い店内に、魔物がいた。B級魔物は、体長三メートルの狼のような姿をしている。その目は赤く、牙は鋭い。C級魔物は、犬のような姿で、B級よりも小さいが、数が多い。


 魔物たちが一斉に襲いかかる。慎吾は左腕を振り、黒い炎を放つ。炎が最も近いC級魔物を包み込み、一瞬で灰にする。だが、残りの魔物は止まらない。


 桐生が銃を撃つ。弾丸がC級魔物の頭を貫き、倒れる。桐生は冷静に、次の標的を狙い、撃つ。その動きは機械的で、正確で、まるで訓練された兵士のようだった。


 陽菜が防御魔法を展開する。光の壁が冴を守り、C級魔物の攻撃を防ぐ。冴は短剣を握り、壁の後ろで構えている。その顔は恐怖に引きつっているが、逃げようとはしない。


 B級魔物が慎吾に襲いかかる。その速度は速く、まるで風のように、一瞬で距離を詰める。慎吾は横に跳び、避ける。そして、反撃する。左腕を振りかぶり、魔物の脇腹を殴る。黒い炎が魔物の体に食い込み、肉を焼く。魔物が悲鳴を上げ、後退する。


 だが、もう一体のB級魔物が、陽菜に襲いかかった。陽菜が防御魔法を展開するが、B級魔物の攻撃は強い。光の壁が砕ける。


「陽菜!」


 慎吾が叫ぶ。だが、桐生が先に動いた。ライフルを捨て、拳銃を抜き、B級魔物の目を撃つ。弾丸が目に命中し、魔物が怯む。その隙に、慎吾が駆けつける。左腕で魔物の首を掴み、炎を流し込む。魔物の首が焼け、内側から崩壊する。魔物が倒れ、動かなくなる。


 残りは、B級一体と、C級二体。慎吾は傷ついたB級魔物に向かう。魔物は既に弱っている。慎吾の炎が、魔物の体を包み込む。魔物が絶命する。


 桐生と陽菜が、残りのC級魔物を倒す。桐生の銃弾が一体を貫き、陽菜の光の矢がもう一体を倒す。


 静寂が訪れた。


 慎吾は息を整える。陽菜も、桐生も、冴も、無事だった。誰も、怪我をしていない。


「終わったか」


 桐生が言う。慎吾は頷く。


「ああ」


 四人は、店内を探索する。棚は倒れ、商品は散乱している。だが、まだ使えるものがある。缶詰、ペットボトルの水、医薬品。冴が目録を取り、必要なものをリストアップする。


「これだけあれば、二週間は持ちます」


 冴が言う。その声は、安堵に満ちていた。


 四人は物資を袋に詰め、運び出す。重い。だが、陽菜の支援魔法のおかげで、何とか運べる。


 帰り道、慎吾は周囲を警戒しながら歩く。魔物は現れない。静かだった。


 避難所に着くと、人々が待っていた。物資を見て、歓声が上がる。子供たちが駆け寄り、母親たちが涙を流す。


「ありがとう!」


「助かった!」


 人々の声が、慎吾の耳に届く。慎吾は、その光景を見ていた。笑顔。涙。感謝。それは、慎吾が今まで見たことのない光景だった。以前は、人々は慎吾を恐れていた。避けていた。だが、今は違う。感謝している。


 陽菜が慎吾の隣に立つ。


「柊さん、見てください。皆、笑っています」


 慎吾は頷く。


「ああ」


「これが、守るということですね」


 慎吾は何も答えなかった。ただ、人々を見ていた。


 冴が物資を配り始める。缶詰を一つずつ手渡し、水を配る。人々が列を作り、順番に受け取る。その光景は、まるで祭りのような、そんな明るさがあった。


 桐生が慎吾に近づく。


「よくやった」


「…ありがとうございます」


「お前は、人を守れる。それを忘れるな」


 慎吾は桐生を見る。桐生の目は優しく、まるで父親のような、そんな眼差しだった。


 夕方になり、避難所に静けさが戻った。人々は物資を受け取り、部屋に戻った。慎吾は一人、窓の外を見ていた。夕日が沈み、空が赤く染まっている。その美しさは、この荒廃した世界には似つかわしくないほど、穏やかなものだった。


 慎吾は、自分の手を見る。この手で、魔物を殺した。この手で、人々を守った。それは、同じ手だ。だが、意味が違う。


 長谷川が部屋に入ってくる。


「柊、飯ができたぞ」


 慎吾は振り返る。長谷川が温かい料理を持っている。その匂いが、部屋に広がる。


「ありがとうございます」


 二人は食事をする。温かいスープ、焼いた魚、炊きたての米。それは、贅沢な食事だった。


「今日は、よくやったな」


 長谷川が言う。慎吾は何も答えない。


「皆、喜んでいた。お前のおかげだ」


「…俺だけじゃないです」


「それでも、お前がいなければ、成功しなかった」


 慎吾は食事を続ける。長谷川も、黙って食べる。


 食事が終わり、長谷川が帰った後、慎吾は一人になった。窓の外を見ると、星が瞬いている。その光は小さく、儚い。だが、確かにそこにある。まるで、人々の笑顔のように。


 慎吾は、今日の光景を思い返す。人々の笑顔。子供たちの歓声。母親たちの涙。それは、慎吾が今まで見たことのない光景だった。以前は、人々は慎吾を恐れていた。避けていた。「殺人者」と囁いていた。だが、今日は違った。感謝していた。


 慎吾は自分の胸に手を当てる。心臓が、静かに鼓動している。その鼓動は、いつもと同じだ。だが、何かが違う。胸の奥に、小さな温かさがある。それが何なのか、慎吾にはまだ分からない。


 風が吹き、窓が揺れる。カーテンが舞い上がり、また降りる。その動きは、まるで呼吸のように、ゆっくりとしたリズムを刻んでいた。


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